水槽の底で恋をした
見つけたのは、遥の部屋の、本棚の奥。
埃をかぶったアルバムの裏に、封も切られていない白い封筒が挟まっていた。
宛名は、俺の名前だった。
震える指で封を切ったとき、
心臓が、久しぶりに痛みを感じた。
そこにあったのは、遥からの、最後の言葉だった。
「蒼太へ」
この手紙は、たぶん君の手に届かないつもりだった。
でも、どこかで、君が見つけてくれるような気もしてた。
勝手だよね、ごめん。
君と出会ってから、俺は何度も「生きたい」と思った。
あの笑顔に触れるたび、
何気ない言葉を交わすたびに、
どこかにまだ、自分の居場所があるような錯覚がした。
でもね、それは本当に“錯覚”だったんだ。
君の手はあたたかい。
でも、俺の中には、もう何も残っていなかった。
自分が壊れてることは、ずっと分かってた。
君がどれだけ真剣でも、俺はそれに応えられない。
君を愛したかった。ちゃんと、普通に。
でもその“普通”が、俺にはもう届かない場所にあった。
だから、逃げることにしたんだ。
弱くて、ごめん。
君の全部を好きになってしまったからこそ、
君を汚したくなかった。
君が笑う未来を、誰よりも願ってる。
だから、俺のことは――
少しずつ、忘れていい。
でも、できたら一つだけ、覚えていてほしい。
俺は君に、救われてた。
本当に、本当に、ありがとう。
好きだったよ。
それだけは、嘘じゃない。
遥より
封筒の中には、小さな栞も入っていた。
二人で図書室で読んだ小説のタイトルが、手書きで書かれていた。
「“終わりじゃない。君が覚えている限り、物語は続く”」
蒼太は、その場に座り込んで、初めて泣いた。
声を殺して、手紙を胸に抱えながら、
心のどこかで、遥の声が聞こえた気がした。
まだ、終わらない。
まだ、ここにいる――。
埃をかぶったアルバムの裏に、封も切られていない白い封筒が挟まっていた。
宛名は、俺の名前だった。
震える指で封を切ったとき、
心臓が、久しぶりに痛みを感じた。
そこにあったのは、遥からの、最後の言葉だった。
「蒼太へ」
この手紙は、たぶん君の手に届かないつもりだった。
でも、どこかで、君が見つけてくれるような気もしてた。
勝手だよね、ごめん。
君と出会ってから、俺は何度も「生きたい」と思った。
あの笑顔に触れるたび、
何気ない言葉を交わすたびに、
どこかにまだ、自分の居場所があるような錯覚がした。
でもね、それは本当に“錯覚”だったんだ。
君の手はあたたかい。
でも、俺の中には、もう何も残っていなかった。
自分が壊れてることは、ずっと分かってた。
君がどれだけ真剣でも、俺はそれに応えられない。
君を愛したかった。ちゃんと、普通に。
でもその“普通”が、俺にはもう届かない場所にあった。
だから、逃げることにしたんだ。
弱くて、ごめん。
君の全部を好きになってしまったからこそ、
君を汚したくなかった。
君が笑う未来を、誰よりも願ってる。
だから、俺のことは――
少しずつ、忘れていい。
でも、できたら一つだけ、覚えていてほしい。
俺は君に、救われてた。
本当に、本当に、ありがとう。
好きだったよ。
それだけは、嘘じゃない。
遥より
封筒の中には、小さな栞も入っていた。
二人で図書室で読んだ小説のタイトルが、手書きで書かれていた。
「“終わりじゃない。君が覚えている限り、物語は続く”」
蒼太は、その場に座り込んで、初めて泣いた。
声を殺して、手紙を胸に抱えながら、
心のどこかで、遥の声が聞こえた気がした。
まだ、終わらない。
まだ、ここにいる――。