二次創作
静かにできない国々たち
____……そうけ、ならゆっくり食べよっさ
「…」
聞くところによると、あのやさしさは私にだけらしい。
「…合理的なあの人のことですから、
きっと今、たくさん貿易をしているから、私に優しいのでしょうけれど
…うれしいものですね」
桜の咲く庭園をぼんやりと眺めながら、私はそんなことを言う。
ぽちくんしか聞いていないことをいいことに。
大阪「日本さーん、オランダはんが来てくれましたよー!」
「え…」
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蘭「今日はえらいはっきりと物事をしゃべるんやな」
蘭さんとしばらく話していると、不意にそんなことを言われた。
蘭「日光にでも当たってきたんか?」
「…さすが蘭さん、鋭いですね。」
「といっても、そこの縁側から桜を見ていただけですけれど」
蘭「そう言うても、今までは四季も楽しもうとせんかったやろ。
お前らしくないもんだからものごなってたわ」
そう言うとぽんぽんと頭をなでてくれる。
「こういう些細な事から、外に慣れてみようと思いましてね」
「そうだ、蘭さんも見ていきますか?桜、綺麗ですよ」
蘭「…ほーやな、お菓子もあるやざ」
「本当ですか?うれしいです」
お菓子で釣られてしまう私も私ですね…と思いながら、障子を開ける。
[水平線]
蘭「おめのところの桜は綺麗やのぉ」
蘭さんもちゃっかりお菓子食べながら、私の隣で桜を見上げる。
彼、意外と花好きなんですよね。かわいらしい。
「私も開国したら、ぜひ欧州の花を見てみたいものですねぇ」
蘭「ほんならはよ開国しねま」
「まだ心の準備ができないんです」
軽妙なやりとりが心地いい。
____ずっとこのままならいいのに。
[水平線]
____文明開化、素晴らしいじゃないですか…
____私はぜひともイギリスさんと同盟が組みたいのです
____私の、国民たちが…
____私が判断を間違えたから______
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???「おい」
「…夢、?」
軽く頭を小突かれて、目が覚める。
ああ、そうでした。私は国際会議が終わって、それから少し寝てしまって___
長くて懐かしい夢を見たんですね。
蘭「おめ、疲れてるやろ」
「蘭さん?!」
蘭「やからさっきから声かけとったやろ」
「気づけないとは……」
蘭「もう俺らしかおらん。あそこで施錠係のやつがえらい顔しとる、はよ行こな」
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「蘭さん、私が起きるまでずっと居てくれたんですか?」
長い付き合いだからわかる。蘭さんはそういうところがある。
蘭「…ほーやな。」
こちらと目を合わせずそういう蘭さんは、いつもの頼れる存在というだけでなく、
私よりやはり幼い存在だと思わせる可愛らしさがあった。
「ありがとうございます。」
「…そうだ、久しぶりに私の家に来ますか?そう遠くありませんし」
蘭「…ほな、仕事もないし、お邪魔させてもらうわ」
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「そうだ、あなたが来たら食べてもらいたいものがあったんです」
蘭「…なんやざ」
「今持ってきますね。ちょっと待っててください」
戸棚にしまっておいた、先日買ったお菓子。
「これです。お茶を入れてきますから、一緒に食べましょう?」
蘭「おう」
蘭「…なっ!?」
菊「あら、開けちゃいました?もう、仕方ないんですから。」
机にはフタの開けられたチューリップの形のチョコレート。
「あの日あなたが教えてくれた、「ちょこれーと」ですよ。いつかあなたとまた一緒に食べたいと思って」
外にはあの日と同じ桜が咲いている。
私のぽち君と蘭さんのうさぎが、花びら散る庭で楽しそうにじゃれていた。