二次創作
静かにできない国々たち
※「蘭菊」要素が含まれます。ちうい。
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菊「これって何ですか?」
俺が何を持って来ても、お前はそう言って尋ねた。
その姿は、幼かったころの妹に似ていた。
菊「…!これ、おいしいですね!」
ひと際お前が目を輝かせたのは、甘味とか食べモンだった。
「えらい気に入ってんな」
菊「はい!」
「ほならまた持ってきたるわ。」
菊「本当ですか!?やったぁ!」
そういって笑う菊の姿は、その名に恥じぬ可憐さがあって。
気を抜くと、自分よりずっと年上であることも忘れそうなほどにあどけなかった。
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「また日本に行くんですか?ほんとに根っからの商売人ですね~…」
「せやな。全部金に換えて帰ってきたる」
「それは頼もしいんですけども…」
人が生きるには銭が必要や。
だから、金のために海へ出るのも嘘じゃない。
でも…
_____オランダさん!また来てくれたんですね!
「…」
あの声を聴きたい。
あの顔を見たい。
あの人に会いたい。
そんな思いも多分少なからずあった。
菊「あっ!オランダさ~ん!」
「こないだぶりやな、菊」
菊「また来てくれたんですね!うれしいです!」
「今日もお前が気に入りそうなモンようけ持ってきたでな、こっち来ねま」
菊「はいっ!」
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「ほれ、食ってみ」
菊「な、なんですかこれ…甘い匂いですが…?」
「[漢字]chocolade[/漢字][ふりがな]チョコレート[/ふりがな]やざ」
今日は菊の知らなさそうな菓子を持ってきた。
甘くて苦くて、そういうと煙草とちょっと似とるな。
菊「ち、ちょこらー…?」
「ほや」
菊「むぐっ…もぐもぐ……!おいしいです!」
「やろ?」
菊「はい!…でもこれ、どうやって作るんでしょう…」
「カカオ豆っちゅう豆を加工して砂糖入れて作るんやで」
菊「なるほど…」
「お前が気に入ったんなら今度はその豆も持ってきたる」
菊「ほんとですか?!」
多少強がってしまったが、まぁ次来るまでには仕入れれるやろ。
菊「あの…オランダさん、もう一個食べていいですか?」
「?別に、金払ってんねやったらお前のモンやし好きにすればええやざ」
菊「いや、その…」
菊「おいしいものって、すぐに食べちゃうともったいなくないですか…?
消えてなくなっちゃう感じがして…」
「……そうけ、ならゆっくり食べよっさ」
菊「ふふ、はい!」
不意打ちで顔が赤くなってるだろうなというのをごまかすように一服煙草を吸う。
そういえばこいつは、やっぱり俺よりずっと大人だった。