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これが4人のルームシェア

#20

温泉と4人!!


午前9時50分。
夏の朝の空気はすでに蒸し暑く、蝉の声が遠くに響いていた。

ぎんじ「……オレ、10分前集合したけど、もう来てるの前田さんだけか」

カラカラとキャリーを引きながら言った

前田「5分前行動は基本だろ」

ぎんじ「社会人か。……てか、オレらこの旅まともに休めるの?」

前田「休めなくていいから、騒がしくならないことを祈ってる」

その時、遠くから誰かの叫び声。

雪世「おーーーーい!! まってくれ前田さーーーん!!!」

倉近「ちょ、走らんといて!キャリーぶつかる!こけるって!!」

雪世がコンビニ袋と旅行カバンを抱えて突っ走ってくる。
その後ろを、派手な帽子とサングラス姿の倉近が息を切らしながら追っていた。

ぎんじ「……戦地から帰還?」

前田「いや、前線から突撃してきたやつの顔だな」

雪世が急停止して、仁王立ち。

雪世「前田さん、今日こそ、同じ部屋で夜を迎えるんで」

前田「何の宣言だそれ」

倉近「あっつ……てかあんた、気合い入りすぎ……」

倉近が肩で息をしながら言った

雪世「だって旅だぞ!? ふたり部屋だぞ!? 温泉街だぞ!? こんな運命が転がってる日、全力で挑まんでどうする!」

ぎんじ「ジャンケンで決まる運命になに全力注いでんの」

倉近「まあでも、女子旅っぽいの久々だし〜、岩盤浴も楽しみ〜!」

[小文字]前田「……男いるだろうが」[/小文字]

雪世「いるからいいんだよ、前田さん?」

前田「怖い。会話の流れがホラー寄りになってきてる」

その時、改札から車内アナウンスが聞こえてくる。

「まもなく、特急“〇〇12号”が○番線に到着いたします──」

ぎんじ「ほら来たぞ。行くか」

倉近「ちゃんと切符あるー?充電大丈夫ー?」

雪世「バッテリー3台持ち。行くぞ、運命の旅へ…!」

前田「大げさなんよ、全部」

そのまま4人は、特急列車に向かって歩き出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


特急列車内 ― 目的地へ向かう途中

4人は横並びの座席に座り、缶コーヒーや駅弁を広げながら、少しずつ旅気分に入っていた。

ぎんじ「2時間弱か。着いたら、浴衣着て温泉入って、あとは寝るだけだな」

倉近「おいこら、まだ昼前やぞ。寝るだけってなに。観光するよ?」

前田「観光、って何すんの。滝とか見に行くの?」

雪世「いや…温泉街と言えば、射的、温泉まんじゅう、そして──ふたり部屋」

前田「最後だけ違う。おかしい、目的が」

ぎんじ「ていうか、部屋どうすんの? 二部屋だっけ?」

倉近「二人ずつよ~。もうジャンケンだね、これは」

雪世「運命、決めるしかない。ジャンケンは世界の理だ」

前田「……その顔やめろ。変なテンション入ってる時の顔だ、それ」

倉近「いやでも、たしかにちょっとドキドキはするよね~、誰とペアになるかって」

ぎんじ「雪世は100%、前田さん狙いだろ?」

雪世「無論だ。オレは今日という日のために、ジャンケンの神に祈りを捧げてきた」

前田「一周回って宗教っぽいわもう」

ガタン、と列車が揺れる。
窓の外には緑が広がり、夏の光が差し込んでいた。

倉近「あ、なんか…ほんとに旅って感じするね」

ぎんじ「確かに。日常からちょっと抜け出した感じ」

雪世「非日常のなかで、人の距離は縮まるっていうしなぁ!」

前田をチラ見しつつ

前田「やめろ。その目でこっち見るな」

雪世「“宿命”って、読んで字のごとく、“宿”で“命”を分かつんだぜ?」

ぎんじ「言葉の重みの割に、やってることはジャンケンだけどな」

笑いが漏れ、旅の緩やかな空気が流れる。
そうして列車は、温泉街のある終着駅へと近づいていった――。



[水平線]

旅館にいきチェックイン直後

受付カウンター前、浴衣への着替えを済ませた4人。
宿の女将が微笑んで案内する。

女将「お部屋は、4名様用のお部屋が2つでございます。2人ずつのご利用ですね」

雪世「…ってことは?」

前田がすぐに察知して前を指差す

前田「やめろ。お前の陣地はこっからここな!ここから先来たら、死だよ?」

ぎんじ「小学生か?」

倉近「じゃああたしとれんちゃんでいっか~」

倉近の提案を雪世が食い気味で止めた

雪世「待てや」

ぎんじ「部屋割り、どうする?」

雪世「ジャンケンしかないだろ。ここは、もう…運命に任せるしかない」

真顔の雪世がそういう

ぎんじ「運命のジャンケン、勝ったら前田さんと一緒の部屋になる可能性あるぞ?」

雪世「望むところだ」

前田「負けたら死…負けたら死…」


ラウンジ前ジャンケンバトルを開始した

4人が円になって向かい合う。

雪世「ルールは簡単。勝った2人が“好きな相手”を選んでペアを組む」

前田「…負けた2人、残るとか、戦争じゃん」

倉近「こわい〜、平和に生きたい〜、でも岩盤浴で寝たい〜」

ぎんじ「よし、行こう。」

1回戦目!

全員「最初はグー!ジャンケンポン!!」

ゆず:パー
雪世:チョキ
前田:パー
ぎんじ:チョキ

雪世・ぎんじ勝利!

場が騒然とする

雪世「…やったぞ、神よ」
雪世が誇らしげな顔を、前田は絶望を

前田「地獄ってここだったんだ。でもぎんじに選ばれれば…」

ぎんじ「じゃあ…俺、倉近さんで」 

前田「おい」

ゆず「まぁいいけど」

雪世「……おい、ぎんじ、それは、オレ前田さんををををを、同じ部屋に──」

ぎんじ「うん。2人、話す時間あったほうがいいかなって」

ぎんじが頷く

雪世「…お前、仏か?」


みんなお風呂!



[水平線]

女子風呂

前田(……こんな風呂、ちゃんと入るのいつぶりだろ)

ざば、と肩まで浸かり、軽く息を吐く。
目を閉じて一呼吸おいたところに、ぱたぱたと倉近の足音が入ってくる。

熱い湯に浸かりながらの心地よさが、じわじわと効いてくる。

前田「あっ……なんか、頭がぼーっとしてきたかも……」

倉近「あんた、それのぼせてるやつ」

前田「え、そんなすぐにのぼせるわけ……」

ぽーっとする目を擦りながら、前田はゆっくりと湯から出ようとするが、足元がおぼつかない。

倉近「ほらほら、無理すんな!水分とれ!」

脱衣所の水飲み場を指差し、倉近が促す。

前田は慌てて立ち上がり、ふらつきながら水を飲んで、少しずつ落ち着いてきた。

前田「はぁ……なんとかセーフ……やっぱり温泉は危険だな」

倉近「たまにはあたしのいうこと聞けー」

前田は苦笑いをしつつも、いつもとは違う倉近の手際のよさに感謝した。





男子風呂

脱衣所で浴衣を脱ぎ捨て、二人はゆったりと湯船に浸かった。
湯気がふんわりと漂い、夜の静けさに混じって時折浴槽の水音が響く。

雪世「いやー、やっぱ温泉は最高だな!今日のジャンケン、俺の勝ちだし、もうテンション爆上げ!」

ぎんじ「勝ったのは偶然だろ。まあ、楽しそうで何よりだ」

雪世「ああ、だってさ、前田さんと一緒の部屋とか、運命感じちゃうよな!」

ぎんじ「……まぁな。でも気をつけろよ。あいつ、なかなか強いから」

雪世が肩越しにニヤリと笑う。

雪世「ぎんじ、お前こそどうなんだよ? 倉近さんとずっとカードゲームしてるけど」

ぎんじ「楽しい。後でそっちもどうだ?」

雪世「やるー」

ぎんじが湯をかき混ぜて、湯面がざわつく。

ぎんじ「こうやってゆっくり話すのも悪くないな」

雪世「そうだな。旅館の夜って感じで、いいじゃん」

二人は無言のまま、ゆっくりと湯に浸かり続けた。






その夜・部屋割り後

女将が布団を敷く部屋で、
ぎんじ&倉近チームはのんびりトランプ。

一方、
雪世&前田チームは

どーでもいいことをだらだら話していた

雪世が話題を変え、こんな事を言う

雪世「前田さん、こんな狭い部屋で二人きりってさ、なんか運命感じない?」

ニヤニヤ嬉しそうにお風呂でのぼせた前田に言う

前田「運命ってより、酸欠で意識飛びそう…」

雪世「それ、お風呂でのぼせたからじゃないの?」

前田「それもそーっすね」

雪世「じゃあアホが抱きついてもいいってこと?」

のぼせた前田は理解に遅れる

前田「何言ってんだよ。アホはお前だろ…」

雪世「前田さんにアホとは言ってないけど…」

雪世が何かを決めたように前田に近づく

雪世「よし、いくぞ!ハグっ!」

前田「う、うわっ、なにいきなり抱きついてんだよ。酔っぱらいかぁ?」

雪世がふらふらの前田に強引に抱きついた

雪世「あはは。前田さん暑いね、ふらふらしてんね。」

前田「あついよ…。でもなんで…ハグすんの…?」

雪世「た、たまにはいいじゃん」

誤魔化すように雪世が言う

前田「えぇ……まあ、いいか。今日は頭が回らんし…」

そっと雪世を抱き返す

雪世「え、マジで!?前田さん…!」

雪世は一度に驚きと満足が来たことに、思考が止まりかける

前田「え?何か…言った?…なんでも良いから、寝たい…」

雪世「いや、なんでもないっす。あ、はい連れてきます」

照れながら前田を抱え連れてく
前田を布団に投げる

雪世「なぁ、前田さん、俺さ──」

前田(布団をかぶる)「寝る。黙れ。息も静かにしろ」

雪世「…息も…?」

作者メッセージ

もうちょいで閲覧1000いきそう!

2025/07/13 20:26

かのん ID:≫ 1.9m6zyG3vt12
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