二次創作
❥ 稲荷崎夢短編集
🍙 「 ●● 。 おはようさん 」
🌸 「 治くん 。 おはよう 」
俺が挨拶をすれば 、 ●●は振り返って挨拶を返してくれる 。
今日もかわええな 。
何て 、 本人には絶対言えへん 。
綺麗でさらさらな髪を撫でたい気持ちを抑えて 、 ●●の隣に座る 。
HRまでまだ時間がある 。
同じ部活 、 同じクラスの角名はまだ来ない 。
暇やな 、 と思いちらりと●●を見ると 、 一瞬 、 ●●が先に教室に居るのに違和感を覚えた 。
ジャージから制服に着替えんの早ない ?
俺 、 結構急いで着替えたんやけど 。
朝練中の●●を思い浮かべると 、 疑問はすぐに消えた 。
… ああ 、 せや 、 そういや今日は 「 着替えんのめんどくさい 」 とか言うて制服でマネ業しとったわ 。
違和感の正体が分かり 、 そういうことか 、 と小さくため息をつく 。
🍙 「 …… 」
… 何もすることがなくなった 。
暇つぶしに 、 スマホゲーで遊んでいる ●●に話しかける 。
🍙 「 … それ楽しいん ? 」
🌸 「 楽しいよ 」
… 全然楽しそうに見えん 、 こいつポーカーフェイスすぎるやろ 。
🍙 「 … なあ 、 ●● 」
🌸 「 何 ? 」
女子にしては少し低い 、 安心感のある声が返事をする 。
🍙 「 あー … 」
話しかけたんはええけど 、 話題全く考えてへんかったわ 。
どないしよ 、 と少し考える 。
🍙 「 ぇー 、 うー … 」
🌸 「 何 、 どしたの ? 」
●●がスマホから視線を外し 、 俺を見る 。
落ち着いた金色の目に見つめられ 、 心臓が跳ねた 。
🍙 「 … あ 、 きょ 、 今日一緒に昼食わん … ? 」
赤面しないよう必死に気持ちを落ち着かせて 、 なんとか言った 。
すると 、 ●●は一度きょとんとした後 、 吹き出した 。
🌸 「 … ふは 、 それ言いたかっただけ ? 」
スマホを左手に持ちつつ 、 右手の甲で口元を覆いながら笑う●● 。
🍙 「 へ 、 ? 」
今度は俺がきょとんとすると 、 ●●はくすくす笑いながら言った 。
🌸 「 毎日一緒に食べてるじゃん 。 今日どうしたの ? 」
●●の言葉に 、 緊張してぐっちゃになっていた思考回路が整理されていく 。
🍙 「 ~ っ 、 せやったわ … !
俺 、 何言うてんねやろ 、 笑 」
●●はくすっと笑い 、 またスマホをいじりはじめる 。
恥ずかしさのあまり 、 机に突っ伏して小さいため息を吐いた 。
─── ほんま 、 何してんねやろ 。
会話の一つ一つに緊張なんて 、 北さんと話しとるんやないんに …
少しだけ顔を上げ 、 スマホをいじる●●を盗み見る 。
綺麗やわ 。
7:3 の、 俺と同じ左流しの前髪 。
腰まで伸びた 、 さらさらな黒髪 。
長い睫毛 。
金色の猫目 。
全部 、 可愛くて綺麗で 、 愛おしい 。
ふと 、 視線を感じたのか 、 ●●がこっちを見る 。
ばちっと目が合い 、 また胸がきゅんと締め付けられる 。
🌸 「 … 治くん 、 最近よく私のこと見てない ? 」
🍙 「 ぇ 、 ? 」
そう言い放った●●は 、 思い出そうとするように視線を天井に向ける 。
🌸 「 体育の授業中とか 、 部活のときとか ?
なんか 、 ふと治くんを見ると目が合うこと多いなって 」
●●の言葉を頭の中で反芻する 。
だんだんと意味が分かってきて 、 顔がじわじわと熱くなっていく 。
🍙 「 う 、 、 え 、 」
🌸 「 … 治くん 、 ? 顔赤いけど大丈夫 … ? 」
●●の心配そうな声に返事をしながら 、 自身の行動に猛烈な反省をする 。
… 俺 、 ずっと●●のこと見てたん 、 ?
…… ~~~ っやば 、 恥ずすぎる … ッ 、 //
片手で顔を覆って唸っていると 、 朝練からやっと戻ってきた角名が ●●の前の席に座った 。
📱 「 おはよ 、 ●● 」
🌸 「 おはよう 、 角名くん 」
簡単に挨拶を交わした2人は 、 俺を話題に話し出した。
📱 「 何 ? 治どうしちゃったの ? 」
🌸 「 あ ー 、 さっきね 、
最近よく目が合う気がするんだけど気のせい ?
って聞いたらフリーズしちゃって 」
📱 「 あ 〜 … 」
角名はばっちり理解したのか 、 苦笑した 。
📱 「 治 、 取り敢えず手退けてよ 」
🍙 「 …… やだ 、 」
📱 「 なんで 」
🍙 「 やってまだ顔赤いもん絶対 」
📱 「 耳真っ赤 、 ウケる 」
🍙 「 ウケへんわ 」
ふと 、 カシャ 、 とシャッター音が鳴る 。
ちらりと指の隙間から様子を伺うと 、 角名と目が合う 。
角名は目を細め 、 撮った写真を表示したスマホをちらつかせて意地悪く笑った 。
📱 「 じゃーこの写真侑に送ろっかな 〜 」
🍙 「 … 分かった 、 ! 手ぇ退けるから侑には送らんといて 」
📱 「 はいはい 笑 」
しぶしぶまだ熱の残る顔から手を退けると 、 角名は吹き出す 。
📱 「 まじで真っ赤じゃん 、 林檎みたい 笑笑 」
🌸 「 なんでそんな赤いの ? 熱 ? 大丈夫 ? 」
全部分かってて笑う角名と 、 何も分かってない●● 。
また写真を撮る角名を少し睨んだ後 、 ●●に言い訳をする 。
🍙 「 いや 、 今日の朝練結構ハードやったやんか 。
まだその熱が残ってんねや 」
🌸 「 ああ 、 そういうこと …
でも 、 体調悪くなったらすぐ言ってよ ? 」
🍙 「 おん 。 … なんや●● 、 おかんみたいやな 笑 」
🌸 「 燃費悪すぎて無理だわ 」
🍙 「 酷 」
よかった 、 なんとか言い訳通じた 。
… おい角名 、 顔伏せとっても肩震えてんねん 、 笑っとるのバレバレやわ 。
🌸 「 … 治くん 」
🍙 「 ん 、 ? 」
●●の呼びかけに応えると 、 ●●は椅子から腰を上げ 、 俺の耳元でこう囁いた 。
🌸 「 ─── お昼 、 今日も楽しみにしてるね 」
●●が俺から離れ 、 また席に座る 。
悪戯っ子みたいに微笑む●●を見て 、 俺はまた顔が熱くなる感覚を覚えた 。