新しい花が咲く頃に
『.........』
「.........」
チクタク、と時計の音がよく響く
公園のベンチ、子供が遊んでいる姿が少し見える
この気まずい空気をどうにもできず、時間は過ぎていく
「......っあ、の」と私が意を決して、口を開いた
『.......まず、嘘ついてごめん』
「........許さねぇっつったら」
『.....そこは許してよ』
ふっ、と少しの笑いが溢れる。
それに釣られ、私も笑いを溢す。そのまま2人、少し懐かしさを取り戻した
先程まで固かった空気が柔らかくなっていく
「俺なぁ、ずっと後悔してたんだよ」
『......うん』
「すれ違い起きてなかったら、俺がなんか言ってたら、なんかしてたら........今も、白藍の........!.......あぁ"っくそ、なんか恥じぃわ......」
髪を掻きむしりながらそっぽを向く晴誠くんに、そんな癖、あったなと勝手に思い出す
はる、ごめんね。私が何も言わなかったから。.......ううん、今でも言えない
「........なんで、明星高(めいせい)行ったのか教えてくんねーの?」
『なんでって..........』
眉を下げながら優しく笑いかけてくれる晴誠くんに、つい本音を言ってしまいそうになる
私は目を逸らして、『......そりゃあ、自分が行きたかったし、偏差値も合ってたから.....。』と呟き気味に言う
晴誠くんは、俯いて「......そーかよ」と納得のいかない、と言いたげな声で察してくれた
俯いた顔を上げ、晴誠くんが前を向く
「白藍ってさ、ふらっと居なくなりそうなんだよな」
『.......っえ、?』
「なんか秘密ごと多いし、踏み込ませてはくれねーし。知らないうちにいつの間にか、白藍は居なくなりそうなんだよ」
それがすっげー怖かったんだろうな、と目を伏せがちにして笑う
「まぁさ、今後悔してももう手遅れだし」と晴誠くんが続ける
「なぁ、白藍。一緒に居たの、彼氏だろ」
『.......っ、うん。.....そだよ』
「ははっ、やっぱな」
彼氏の威嚇感じたわ、と怖がる様子を見せる晴誠くん
"彼氏の威嚇"って........。洸先輩が、?勘違いだって.......
"勘違い"。そう思わなければ、洸先輩への罪悪感が拭いきれない
苦しい、痛い、嬉しい、心地良い。色んな感情が突き刺さって、胸が痛い
はると会って、どこか"嬉しい"と感じた自分が居た
はるとは円満に終われたとは言い切れない、だからこそ私は、どこまでも未練がましく引っ付いている
「彼氏と幸せに、な」
だから、晴誠くんが言ったこの言葉に私は胸を痛めるしかなかった
(....ははっ.........言われなくても、幸せだから)
(.......良かったじゃん)
…トリトマ「恋するつらさ」「あなたを思うと胸が痛む」