新しい花が咲く頃に
『ふぁー.......あー....』
退屈な始業式も幕を閉じようとしていた
私はそこら辺をきょろきょろと目線を泳がしていると
ぱちり、背の低い女の子と目が合い、その女の子がぱあっ!という効果音がつきそうなくらい笑顔になる
『.........?』
訳が分からず、ぼーっとその子を見つめていると手を小さく振られる
一応振られたら振り返すのが礼儀だ、私もふりふりと少し笑みを浮かべながら手を振った
そうしたら次の瞬間、噛み締めるように胸元を押さえるその子が写り、おもわず嬉笑する
『ふはは.......っ』
なんでこんなことになったか分からないけど、初対面、ましてや顔しか知らない子で笑えるなんて........
本当に外の世界は謎多きだな
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2-2のドアを通る。各自、少しダラダラと自分の席へと向かい、座り始める
ガタガタ、という音がなくなり、静寂が起きる
「はい。じゃあ、定番の自己紹介しよっか」
げ、自己紹介.........こういう時名前が早いと不利なんだよな.....
一番最初の人が立って、喋り始める
私は4番。頭の中で自己紹介を考え、その時を待つ
自分の席の前が、ガタリと音を立てて座る
『.......恵林寺白藍です。好きなものは辛いもの、苦手なものは"花"です。1年間よろしくおねがいしまーす』
まるで説明書に書いてあるような典型的な自己紹介を済ます。
社交辞令じみた拍手が巻き起こる
「蛭ケ島時雨でーす!なんとでも呼んでいいっす!得意なことはバスケ、苦手なもんは器用な人ができること........!マジで苦手っす.......」
蛭ケ島くんの自己紹介に笑いが起きる
明るく元気に、面白い自己紹介にその場の空気が和む
やっぱりムードメーカーだなぁ
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『んー........バレー部は楽しそうですね〜』
「うん、楽しいよ」
帰り道、先輩の温かい体温を感じながら歩く
ふっと笑った先輩に、本当に部活が楽しいんだなと実感させられる
バレー部........かぁ.....はるはサッカー部だった......
って、今はるは関係なくて......、一緒に居るのは洸先輩だから
「白藍ちゃんはさ、部活入ってなかったよね?」
『....っあ、はい。入りたいと思う部活がなくって.......』
苦笑する私に、困った顔をした先輩
サッカー部のマネージャー........なら、したことあるんだけどな
あーあ.......部活も、はるが居たら楽しく.....
『っ........』
今、なんて思った?
なんではるのこと考えたの、バカじゃないの
今、目の前に居るのは洸先輩だよ?
良からぬ思考を払い落として、先輩に笑顔を向ける
「ねぇ、白藍ちゃん」
『........どうしましたか?』
上手く、笑顔作れてるかな
目の前に居るのが洸先輩じゃなくて、はるに見えるって言ったら困るだろうな。幻滅するだろうな
やけに真剣な顔をした洸先輩に、ふと、朝の占いを思い出す
桜が咲く季節。冬の終わりを告げる、春の季節
新たな出会いと、さよならを告げるそんな季節
その季節をどう呼べばはっきりするだろう
桜が運んでくる恋心。懐かしの貴方を思い出した
《いやお前........変な奴だなって》
《ばぁか、そこはちげぇだろ》
《手前のせいだろ!?俺なんもやってねーよアホ!》
《白藍、俺の彼女になんねーか?》
《.......っごめん.......、》
「っおま、白藍か.....?」
『.........っあ、.....』
聞き覚えのある声に呼ばれる私の声に、過剰に反応し、後ろを振り向く
その姿、その声。全てが脳に流れてきて、とくん......と音を奏でる
桜がまた、懐かしの恋心を運んできてしまった
(《ずっと会いたいと思ってた人と再会できるかも!?》)
…黄色いゼラニウム「予期せぬ出会い」