新しい花が咲く頃に
ぞろぞろと人が入り、席が埋まっていく
私はそれを眺め、暇していた
けれど、
『なーんかなぁ..........』
暇なはずなのに、暇じゃない
暇なこの時間も、私にとっては幸せだと思える。
ただの木の椅子に座れる、皆んなの中に混じれる、教室の空気が吸える。
そんな当たり前のことが、当たり前だと思えることは、とても喜ばしい
自分の机から見える青空は、とても澄んでいた
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「2-2担任、城市蘭華(しろいち らんか)です。1年間よろしくね」
可愛らしい字で黒板に書かれた、「城市 蘭華(しろいち らんか)」という文字。
城市蘭華先生の第一印象は、お淑やか、甘美、上品、高貴だった。周りにふわふわと優しい花が咲いていそうだ
「.....んと、直ぐで申し訳ないんだけど、今から始業式だから並んでくれるかな?」
どんな並び順でもいいよ、と割と適当に並び始めた
そんな時に、私の前に割り込んできた者が1人
「ん、俺ここな〜!」
『蛭ケ島くん私好きすぎ〜』
「殴るぞ」
冗談飛ばすと、間入れずに無表情で言われた
きゃー、こわぁい.....!と怯えた仕草をしたら、呆れられた。私はそれに、少し笑みをこぼした
こんな、何気ない日常でだって笑える私は、とんだ幸せ者だ
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「ーーーだ、ーーすーなーーーーーら。ーーーーすねーーー一ーーーいーー」
あまり耳に入ってこない校長先生の話。
まぁ、主に聞いてなくても影響はないだろうに
「恵林寺〜?起きてっかー?」
『おーおー、蛭ケ島くん........めちゃ眠いですよ』
寝んなよー、と眠たそうな声色で言われ、お互い様だな、と考える
そんな、彼の背中を見ていると気づくことがある。........蛭ケ島くん、どこ見てんの?
彼の視線はやや左へと、向かっていた。ははーん?蛭ケ島くん、さては........
『浅間先輩見てんの?』
「........!」
蛭ケ島くんに問いかけると、肩が上がり、図星だということを感じられた
なぁに、校長の話聞かずに好きな人見てんだ
『浅間先輩きれーだねぇ.......』
「だろ?」
自慢気に口角を上げる蛭ケ島くんに、なんで自慢気なの、と後ろからデコピンを打つ
痛いと悶えるフリをした蛭ケ島くんを置いて、浅間先輩を見る
いや、本当に綺麗だな.......?サラサラの茶髪ロングにぱっちり二重、凛々しい背筋。まるで高嶺の花だ
そうしたら茶髪の髪がさらりと華麗に揺れ、綺麗な黒の目が私を見つける
あっ、見過ぎたかな.......蛭ケ島くんが目ぇ合ったら良かったのに
私の周りの空気が酷く冷たくなる
浅間先輩はニコリと笑い、周りに鋭い花が咲き乱れる
『.......っ、?』
冷却室に居るように、空気が重く冷たい
ぶるりと身震いを起こした身体に、疑問を覚えるしかなかった
(気のせい、だよなぁ........?)
…ルドベキア「あなたを見つめる」「正しい選択」「公平」「正義」