新しい花が咲く頃に
「恵林寺、白藍先輩」
ぽかん、と間抜けな顔をして太陽に反射するその子を見る
少し風が吹いて、その子の黒の髪が靡く。
ふわっ、と見えたターコイズブルーのインナーカラーに、思わず「きれ.......」と声が漏れる
「あぁ、私の髪ですか?最近染めたんです!」
『え、あぁうん......』
オシャレでしょう〜?と髪をくるくる触るその子に、困惑してしまう
ん?あっすみません。と気気付いたように謝るその子。
自己紹介まだでしたよね、と苦笑してしまうその子に、表情豊かだなと、小学生並みの感想を並べる
「[漢字]沙梨娜透逢[/漢字][ふりがな]さりたすあ[/ふりがな]です!」
初めまして!と元気よく挨拶をするその子に、違和感を覚える
沙梨娜透逢、ってなんか聞き覚えあるんだよな
はじめまして.......と、悩みを頭の端に置いてその子に挨拶をする
「初めましてですけど私、恵林寺白藍先輩のこと、よく知ってるんですよ!」
『え、』
気の抜けた声が出てしまう
私、年下と関わることなんて滅多にないんだけど........と頭は困惑したまま
恵林寺白藍先輩は、[漢字]喜瀬[/漢字][ふりがな]きせ[/ふりがな]中学ですよね?と捉えようによっては、怖い問いを投げかけられる
『そ、うだけど.......なんで、』
「私も喜瀬中だったんです!」
だから、先輩のこと知ってるんですよ。と、あまり納得のいかない返答を返された
私の何を知ってるの?と、少し震えた声で沙梨娜ちゃんに問う
最悪の場合、何がなんでも沙梨娜ちゃんの口封じをする
「うーん、これといって特別な情報はないですけど........
恵林寺白藍先輩が、赤瀬晴誠先輩と付き合ってたことは知ってます」
最近よく聞く"赤瀬晴誠"という並びに、肩をびくりとして反応をする
っ別れた理由は.......?と聞くと、さすがにそこまで知らない。と首を振る様子を見せた
沙梨娜透逢ちゃん........誰だ。どこで聞いたことがある?
頭を回らせて、只今良い印象がない沙梨娜ちゃんの、正体を必死に暴こうとする
「私、今年サッカー部のマネージャー入ったのに、なんで先輩居ないんですか?」
『なんで、って.......』
私のやる気が削がれていきます........と、落ち込んだ様子を見せた沙梨娜ちゃんに、嫌悪感が増す
私が中学の頃、サッカー部のマネージャーだったことを知っている
尾けられていた?まさか。それなら、もっと重大なことを知っているはず
心の内を読んだように、沙梨娜ちゃんが口を開く
「うーん、別に尾けてた訳じゃないんですけど........」
『じゃあ、なんでそこまでわかるの』
私の額に、少し汗が滲む
私の記憶力を巡っても、この子の姿が一向に出てこない
焦る気持ちに追い込むように「先輩の表情見てたら、なんとなぁく分かっちゃうんですよね」と、さも当然かのように爆弾を落とす
ほら、私天才ですし?と自信満々に言った沙梨娜透逢ちゃんに、記憶の欠片を拾い上げた
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《2年ー期末テスト結果ー》
1位 "沙梨娜透逢 500点"
2位 田中ーー 4ー2点
3位 ーー嶺縷 48ー点
4位 貴ー咲 ー82点
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気持ちいいほどに記憶の欠片が見つかり、思わず沙梨娜ちゃんを指差す
その時、廊下にいた2年生の会話を思い出した
《一位はさすがの
"不動の秀才"だな》
『"不動の秀才"!!』
私がそう言うと、さらりと見えたターコイズブルーが、嬉しそうに笑ってみせた
(私、沙梨娜透逢ですよっ!)
(頭いい人.......?)
…イシミカワ「正体不明の」「謎に包まれている」「気まぐれ」