前代未聞の最強総長、今日も一途に執心中。
「彼女が編入生の、星野月だ。」
よくある定番の、先生が黒板に転入生の名前を書いて、それと同時に転入生が自己紹介や挨拶をするというテンプレートをそのまま使用した流れを、先生は組み立てているようだった。
興味本位から、SSSクラス全体を見回すけど、なんだかみんな落ち着かない雰囲気の様子。
室内はしんとしずまっていて、咳払いひとつでさえ目立ってしまうくらいだった。
よし...!緊張するけど..まずはやっぱり、自己紹介だ。
意を決して、わたしは声を張り上げた。
「ほ、星野月です...!今日からこのクラスに編入する事になりました、よろしくお願いしますっ......!」
言い切れた....!何を言おうか直前まで迷っていたけど、なんとか場しのぎはできた。
緊張からか、自然と顔が下へ向いていた事に気づき、はっとして目を上げる。
ついさっきも見た同じ光景だけど、緊張が和らいだのか、さっきよりもなんだか視界が広く見える。
そしてわたしは、見慣れた顔を目にした。
「ゆえねえ...!」
翔ちゃんだ.....!
目があった途端、翔ちゃんはいつものきらきらとしたかわいい瞳をこちらに向けてきた。なんだか微笑ましくなって、わたしは翔ちゃんに向かってにこりと笑顔を見せる。
_________パリンッ!
そんな微笑ましい時もすぐ過ぎ、窓ガラスが割れる音がした。
何事かと思い窓側へ目をやると、1人の男子生徒が窓ガラスを割り、窓から教室へ入っている姿が目に映った。
ま、窓ガラスから教室に入ってきたの.....?普通に扉から入ればいいと思うんだけど.....
「.......は!?」「......おい、なんであいつ来てるんだよ..」「今日雪でも降るのか...?」
すると、あちこちからそんな声が聞こえる。
あいつ.......とは、窓ガラスを割って入ってきた人の事だろう。
「......俺の席、どこ......」
相当機嫌が悪いのか、そんなぶっきらぼうな声で彼はそう言った。
.....あれ、この人、どこかで.........
「......っ、は、はやてくんっ....?」
________お、思い出した.....
この人は、わたしの前の前の学校の同級生で、1番仲の良かった、[漢字]黒瀬[/漢字][ふりがな]くろせ[/ふりがな][漢字]颯[/漢字][ふりがな]はやて[/ふりがな]くんだっ.....!
「.........は?」
そしてまあ思ったとおりと言うかなんとういうか...はやてくん、やっぱりわたしの事覚えてないよね...
「誰こいつ」とでも言いたげな表情を浮かべている。
それより..どうしてはやてくんが、この学園に......?
もしかして、颯くんも編入してきたとか....?聞きたいことは山程あるけれど、彼がわたしを覚えていないのなら話にならない。
するとはやてくんは、驚いたように言葉を発した。
「......え.....ゆ、ゆえ、....!?」
「う、うんっ..!月、月だよ...!」
お、覚えててくれたっ.....!
嬉しくて、つい駆け足ではやてくんのもとに走っていってしまった。
「久しぶりに会えて嬉しいっ....!同じクラスだったんだね....!」
そう言うと、はやてくんはわたしから顔をそむけてしまった。
.....わ、わたし今なにかしちゃったかな....?
「.......えー..感動の再会中申し訳ないが.....星野は、[漢字]桐生[/漢字][ふりがな]きりゅう[/ふりがな]の隣だ。」
"桐生"
それにも、とてつもなく聞き馴染みのある名字だった。またまたまさかと思い、先生の指指す方向へ体を向ける。
「ゆ.....え....?」
や、やっぱり......!
まだまだ、感動の再会は続きそうです......!
[水平線]
side 翔
とてつもなく驚いた。
まさか、あの"漆黒の番犬"と周りから強く恐れられている[漢字]黒瀬[/漢字][ふりがな]くろせ[/ふりがな][漢字]颯[/漢字][ふりがな]はやて[/ふりがな]に、俺の家族を除き唯一の信頼関係にあった[漢字]桐生[/漢字][ふりがな]きりゅう[/ふりがな][漢字]水雲[/漢字][ふりがな]みなも[/ふりがな]でさえも、ゆえねえの知り合いだった。
俺は、どんな人間であろうと話す内容の一切にゆえねえという存在を出したことがないから、向こうも俺とゆえねえがまさかきょうだいだとは思ってもいないだろう。
それは兄さんも同じだ。こんなにかわいいゆえねえを、どんな手を使って奪ってくるかわからない暴走族のやつらに自ら白状しに行くバカじゃねえからな。
色々あいつらとゆえねえとの繋がりに関して連想できる事があったが、1番はゆえねえの前の学校又はその前の学校での知り合いだという事が1番説得力が高い。
ゆえねえは、4月いっぱいは東北に位置する名門私立校・[漢字]皇[/漢字][ふりがな]すめらぎ[/ふりがな]中学校で過ごしていた。
そして5月、6月の月初めあたりまでは、関西に位置する日本難関中学校のうちのひとつ・[漢字]轟[/漢字][ふりがな]とどろき[/ふりがな]中学校にいた。
これもすべて、出張の多い母親が原因。
もともと俺らは関東住みで、そこから一度東北へ母親が出張する事になった際、母親はどうしてもゆえねえだけはおいていけないと言って、ゆえねえを連れて東北へ渡ってしまった。
.........まあ、こんな男まみれなきょうだいの中にこんなにかわいいゆえねえだけおいてくわけにはいかないしな......
シングルマザーの家庭の俺たちは、その期間だけいとこの家に住まわせてもらっていた。
そして3ヶ月ほど、ゆえねえに会えない時期が続いていた。
心配で心配でままらなかった。
けど、それは空くんも兄さんも同じ。全員、ゆえねえが好きすぎて気が気じゃなくなっていた。
そして6月に入ってすぐ。
ゆえねえが関東に帰ってくると同時に、ゆえねえが星ノ宮学園へ編入するという事を耳にした。
いやあそこは男子校.....だと思ったが、なんと今学期から共学になることが判明。
編入自体はゆえねえが決めたそうで、あの学園でやりたいことがあるから...と言っていた。
俺も兄さんも星学通いだからテンションは上がっていたけど、星学の姉妹校・光が丘学園通いの空くんはもう大発狂。
その時はなんとかゆえねえがあだめていたけど、いつあの空くんの本気が出るかわからないから、空くんの前では星学の事はあまり口には出してはいけないという謎の暗黙のルールが、俺と兄さんの間には勝手に製造されていた。
話はそれたが、その皇と轟で、ゆえねえはこいつら2人と関係を持った可能性が高い。
...........とにかく、水雲にはあとで話を聞くとして....
まあ...番犬についても、ゆえねえから聞き出せばいっか。
俺はそんな事を考えながら、ゆえねえが俺ではない別の人間に向ける笑顔を、ただ見つめていた。
side 颯
嘘だろ嘘だろっ......!
ゆえ、か...?ほんとに俺の前に居るのは、月なのか......?
「久しぶりに会えて嬉しいっ....!同じクラスだったんだね....!」
ああ、これは月だ.........
一瞬幻かとも思ったが、こんなにかわいい笑顔は、幻なんかじゃ作りきれない。本当に、世界1かわいい.......皇に居た頃と、全然変わってないな.....
俺はとにかく月と再会できたという事実にただただ興奮するばかりで、それを抑えるのに必死で月から顔をそむけてしまった。
........そういや俺、さっき窓ガラスから教室入っちまったな.....
そう思い、割れた窓ガラスの破片をじいっと見つめる。
あーもう...
なんだよこれ.....
かっこわりーとこ見せちまって...まじ俺なにし[小文字][/小文字]てんだよ..
臨機応変に感情がころころかわっている自分に、少し驚いた。月は、ここまで俺を変えてしまえるのか.....
そんな事を1人考えうじうじしていると、担任が声を張り上げた。
「.......えー..感動の再会中申し訳ないが.....星野は、[漢字]桐生[/漢字][ふりがな]きりゅう[/ふりがな]の隣だ。」
待てよ、このクラスに星野って2人いねえか....?
月と.......あああいつか、Regulusの"狂犬"。確か名前は、星野翔。
そして同時に、世界一たどり着きたくない月と狂犬の関係が浮かびあがってきたが、俺は見ないふりをした。
「ゆ.....え....?」
気づけば他の人間が、月の名前を声に出している事が聞こえた。
.......あ゛ぁ..?誰もお前が月の名前を無条件に呼んで良いなんて言ってねえんだよ...
だが、その声の持ち主を見る月の瞳は、ついさっき俺を見つけたときと同じ、きらきらと光っていた。
月の綺麗な淡いピンク色の瞳に映っていたのは、
__________桐生水雲、暴走族史上最速で幹部に成り上がったと恐れられている中々の[漢字]兵[/漢字][ふりがな]つわもの[/ふりがな]だった。
よくある定番の、先生が黒板に転入生の名前を書いて、それと同時に転入生が自己紹介や挨拶をするというテンプレートをそのまま使用した流れを、先生は組み立てているようだった。
興味本位から、SSSクラス全体を見回すけど、なんだかみんな落ち着かない雰囲気の様子。
室内はしんとしずまっていて、咳払いひとつでさえ目立ってしまうくらいだった。
よし...!緊張するけど..まずはやっぱり、自己紹介だ。
意を決して、わたしは声を張り上げた。
「ほ、星野月です...!今日からこのクラスに編入する事になりました、よろしくお願いしますっ......!」
言い切れた....!何を言おうか直前まで迷っていたけど、なんとか場しのぎはできた。
緊張からか、自然と顔が下へ向いていた事に気づき、はっとして目を上げる。
ついさっきも見た同じ光景だけど、緊張が和らいだのか、さっきよりもなんだか視界が広く見える。
そしてわたしは、見慣れた顔を目にした。
「ゆえねえ...!」
翔ちゃんだ.....!
目があった途端、翔ちゃんはいつものきらきらとしたかわいい瞳をこちらに向けてきた。なんだか微笑ましくなって、わたしは翔ちゃんに向かってにこりと笑顔を見せる。
_________パリンッ!
そんな微笑ましい時もすぐ過ぎ、窓ガラスが割れる音がした。
何事かと思い窓側へ目をやると、1人の男子生徒が窓ガラスを割り、窓から教室へ入っている姿が目に映った。
ま、窓ガラスから教室に入ってきたの.....?普通に扉から入ればいいと思うんだけど.....
「.......は!?」「......おい、なんであいつ来てるんだよ..」「今日雪でも降るのか...?」
すると、あちこちからそんな声が聞こえる。
あいつ.......とは、窓ガラスを割って入ってきた人の事だろう。
「......俺の席、どこ......」
相当機嫌が悪いのか、そんなぶっきらぼうな声で彼はそう言った。
.....あれ、この人、どこかで.........
「......っ、は、はやてくんっ....?」
________お、思い出した.....
この人は、わたしの前の前の学校の同級生で、1番仲の良かった、[漢字]黒瀬[/漢字][ふりがな]くろせ[/ふりがな][漢字]颯[/漢字][ふりがな]はやて[/ふりがな]くんだっ.....!
「.........は?」
そしてまあ思ったとおりと言うかなんとういうか...はやてくん、やっぱりわたしの事覚えてないよね...
「誰こいつ」とでも言いたげな表情を浮かべている。
それより..どうしてはやてくんが、この学園に......?
もしかして、颯くんも編入してきたとか....?聞きたいことは山程あるけれど、彼がわたしを覚えていないのなら話にならない。
するとはやてくんは、驚いたように言葉を発した。
「......え.....ゆ、ゆえ、....!?」
「う、うんっ..!月、月だよ...!」
お、覚えててくれたっ.....!
嬉しくて、つい駆け足ではやてくんのもとに走っていってしまった。
「久しぶりに会えて嬉しいっ....!同じクラスだったんだね....!」
そう言うと、はやてくんはわたしから顔をそむけてしまった。
.....わ、わたし今なにかしちゃったかな....?
「.......えー..感動の再会中申し訳ないが.....星野は、[漢字]桐生[/漢字][ふりがな]きりゅう[/ふりがな]の隣だ。」
"桐生"
それにも、とてつもなく聞き馴染みのある名字だった。またまたまさかと思い、先生の指指す方向へ体を向ける。
「ゆ.....え....?」
や、やっぱり......!
まだまだ、感動の再会は続きそうです......!
[水平線]
side 翔
とてつもなく驚いた。
まさか、あの"漆黒の番犬"と周りから強く恐れられている[漢字]黒瀬[/漢字][ふりがな]くろせ[/ふりがな][漢字]颯[/漢字][ふりがな]はやて[/ふりがな]に、俺の家族を除き唯一の信頼関係にあった[漢字]桐生[/漢字][ふりがな]きりゅう[/ふりがな][漢字]水雲[/漢字][ふりがな]みなも[/ふりがな]でさえも、ゆえねえの知り合いだった。
俺は、どんな人間であろうと話す内容の一切にゆえねえという存在を出したことがないから、向こうも俺とゆえねえがまさかきょうだいだとは思ってもいないだろう。
それは兄さんも同じだ。こんなにかわいいゆえねえを、どんな手を使って奪ってくるかわからない暴走族のやつらに自ら白状しに行くバカじゃねえからな。
色々あいつらとゆえねえとの繋がりに関して連想できる事があったが、1番はゆえねえの前の学校又はその前の学校での知り合いだという事が1番説得力が高い。
ゆえねえは、4月いっぱいは東北に位置する名門私立校・[漢字]皇[/漢字][ふりがな]すめらぎ[/ふりがな]中学校で過ごしていた。
そして5月、6月の月初めあたりまでは、関西に位置する日本難関中学校のうちのひとつ・[漢字]轟[/漢字][ふりがな]とどろき[/ふりがな]中学校にいた。
これもすべて、出張の多い母親が原因。
もともと俺らは関東住みで、そこから一度東北へ母親が出張する事になった際、母親はどうしてもゆえねえだけはおいていけないと言って、ゆえねえを連れて東北へ渡ってしまった。
.........まあ、こんな男まみれなきょうだいの中にこんなにかわいいゆえねえだけおいてくわけにはいかないしな......
シングルマザーの家庭の俺たちは、その期間だけいとこの家に住まわせてもらっていた。
そして3ヶ月ほど、ゆえねえに会えない時期が続いていた。
心配で心配でままらなかった。
けど、それは空くんも兄さんも同じ。全員、ゆえねえが好きすぎて気が気じゃなくなっていた。
そして6月に入ってすぐ。
ゆえねえが関東に帰ってくると同時に、ゆえねえが星ノ宮学園へ編入するという事を耳にした。
いやあそこは男子校.....だと思ったが、なんと今学期から共学になることが判明。
編入自体はゆえねえが決めたそうで、あの学園でやりたいことがあるから...と言っていた。
俺も兄さんも星学通いだからテンションは上がっていたけど、星学の姉妹校・光が丘学園通いの空くんはもう大発狂。
その時はなんとかゆえねえがあだめていたけど、いつあの空くんの本気が出るかわからないから、空くんの前では星学の事はあまり口には出してはいけないという謎の暗黙のルールが、俺と兄さんの間には勝手に製造されていた。
話はそれたが、その皇と轟で、ゆえねえはこいつら2人と関係を持った可能性が高い。
...........とにかく、水雲にはあとで話を聞くとして....
まあ...番犬についても、ゆえねえから聞き出せばいっか。
俺はそんな事を考えながら、ゆえねえが俺ではない別の人間に向ける笑顔を、ただ見つめていた。
side 颯
嘘だろ嘘だろっ......!
ゆえ、か...?ほんとに俺の前に居るのは、月なのか......?
「久しぶりに会えて嬉しいっ....!同じクラスだったんだね....!」
ああ、これは月だ.........
一瞬幻かとも思ったが、こんなにかわいい笑顔は、幻なんかじゃ作りきれない。本当に、世界1かわいい.......皇に居た頃と、全然変わってないな.....
俺はとにかく月と再会できたという事実にただただ興奮するばかりで、それを抑えるのに必死で月から顔をそむけてしまった。
........そういや俺、さっき窓ガラスから教室入っちまったな.....
そう思い、割れた窓ガラスの破片をじいっと見つめる。
あーもう...
なんだよこれ.....
かっこわりーとこ見せちまって...まじ俺なにし[小文字][/小文字]てんだよ..
臨機応変に感情がころころかわっている自分に、少し驚いた。月は、ここまで俺を変えてしまえるのか.....
そんな事を1人考えうじうじしていると、担任が声を張り上げた。
「.......えー..感動の再会中申し訳ないが.....星野は、[漢字]桐生[/漢字][ふりがな]きりゅう[/ふりがな]の隣だ。」
待てよ、このクラスに星野って2人いねえか....?
月と.......あああいつか、Regulusの"狂犬"。確か名前は、星野翔。
そして同時に、世界一たどり着きたくない月と狂犬の関係が浮かびあがってきたが、俺は見ないふりをした。
「ゆ.....え....?」
気づけば他の人間が、月の名前を声に出している事が聞こえた。
.......あ゛ぁ..?誰もお前が月の名前を無条件に呼んで良いなんて言ってねえんだよ...
だが、その声の持ち主を見る月の瞳は、ついさっき俺を見つけたときと同じ、きらきらと光っていた。
月の綺麗な淡いピンク色の瞳に映っていたのは、
__________桐生水雲、暴走族史上最速で幹部に成り上がったと恐れられている中々の[漢字]兵[/漢字][ふりがな]つわもの[/ふりがな]だった。