なんだかんだいって本番が来てしまった。昨日かけた大雨の呪文はどうやら効かなかったようだ。
びっくりするくらい今日は晴れていた…快晴だ。

「おっはよ〜」美奈が僕にぶつかりながら挨拶してきた。
「おはよ」

教室につづく廊下を二人並んでまっすぐ歩いているとスキップしながら萌が登場する。
「おっは〜」
僕は真ん中になって萌と美奈に挟まれる。以前の僕じゃなかなかにない光景だ…だめだ少しむずむずする。
「お、おはよ」
ぎこちない挨拶を返した。
「さあさあ、待ちに待った体育大会ですよ〜！」
萌は教室の開けると同時に耳が壊れそうなくらい大きい声で胸を張って言った。

「はあ…」
僕は大きくため息をしながら教室の席に着く。
「まりくん、頑張ってね！」
美奈の笑顔が僕のむねに突き刺さる。恋の病ってやつは恐ろしいんだな。



『パ〜ン！』
ピストルがなると同時に運動会は始まった。お腹が痛い…トイレ行きたい…僕は、人生一緊張している。
「無事に終わるといいな」
待機テントの下で僕は、嫌なフラグを立てていた。

着々と競技は進んでいく…
第二学年の借り物競走が始まった。僕は出ないけどね…確か美奈が出るはずだ。
僕は少し小さい身長を背伸びで伸ばし、美奈を見つける。そんなとき萌が…
「まり〜もしかして美奈のこと探してる？」
「…え？いや、別に…」
図星すぎて心が痛い。なんでわかるんだよ…変なところで変な能力だしてくるな…。

「好きなら好きと言えばいいのにね〜」
「うっ…」ニヤニヤとしながら萌は見つめてくる…ほんと嫌なやつだな。
「あ、美奈の番だよ」
「え、どこ？」
「やっぱり、美奈のこと好きじゃん」
こいつ一回、大玉で潰していいかな？
「ちっ、」
おっと、思わず舌打ちが…

でも、美奈の番は本当だったみたいだ。キョロキョロしながら走って、一体何を探しているのだろうか。
ほんの少し、ちょっと美奈のことを見てたら、目が合ってしまった。なんだ、こっちに走ってくる。
「まり、くん？来て？」
「え、あ…、なんで…？」
「それは…」
「まりくん行ってあげなよ〜？」
ニヤニヤしている萌からの追撃を喰らった。なんで僕が行かなければならないのだろうか…。
「え、まあ。うん」
「じゃあ、はい」
美奈は手を出してくる…。え…？これはいいのか？それをする必要はあるのか…？
「ええ、ああ、うん。」
美奈の手は温かくてなんだかドキドキする。僕の体温はだんだん高くなっていく。
後ろで悪い顔をしている萌が見えたのは気のせいなのか…。僕たちは手を繋いでゴールした。

「あのさ、なんて書いてあったの？」僕は気になったので聞いてみた。
「う〜ん、ひ、秘密！」そう言って、赤い顔を手で隠しながらチラチラ僕を見てきた。
僕は結局わからなかった。