お隣の花屋さんと僕
(黒瀬家へ)
家に帰ってきて、改めて自分の姿は酷いものだった。
取り敢えず風呂に入ろうと、ダイニングテーブルに花束と手紙を置いた。
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(風呂後)
「ふぅ...」
やっと人心地が着いた。
濡れた服を着ているのは矢張り落ち着かないものだ。
ふとスマホに視線を落とすと、時刻はお昼を回っていた。
「腹減ったな...」
しかし、ダイニングテーブルには、抱えないと持てない大きさの花束がおいてある。
(花って、どうやって飾るんだろう...?)
困ったものだ。
ふと、榎本さんからもらった手紙に気づいた。
開いてみると、今の僕の心情を見透かしたような文章が綴られていた。
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『黒瀬家の皆様』
こんにちは。お隣に引っ越してきました、榎本と申します。以後お見知りを。
さて、今朝、御宅の息子さんに花束を預けました。
楽しんでいただけると幸いです。
又、誠にご勝手ながら、花の飾り方も書かさせていただきます。
――花の飾り方――
1、花瓶を用意します。
2、包まれている包装紙を外します。
3、其の儘花瓶へ入れます。
4、水を8分目まで入れます。
※水は2日に一回変えてください。
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成程。それにしても榎本さんはこのようなことまで見越していたのか。
僕はそう思いながら、古い記憶をたどり、花瓶を探し始めた。
数十分後
「あった...!」
ようやく見つけることができた。
僕が子供の頃に一度だけ見たことのある、細長く、丸いフォルムをした、空色の花瓶だ。
早速、手紙に書かれた手順通りに、花を飾ってみる。
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「まあまあ良いんじゃない?」
不器用な僕にしてはきちんと飾れたと思う。
腹が減っていることを思い出したので、調理に取り掛かる。
手先は不器用だけれど、料理は周りよりかはできる方だった。
冷蔵庫の中身を見て、今日の昼食を決める。
「米、鮭、、、今日は和食でいいかな...!」
早速鮭を塩焼きにして、軽く味噌汁を作る。
これぐらいならば、ものの十数分でできた。
「いただきますッ!」
モグモグ
カラッ
「御馳走様でした。」
我ながら上手い(美味い)出来だったと思う。
さて、やることのなくなった僕だが、何をしようか。
......そういえば、この花の名前、何というのだろうか。
Go◯gleレンズを駆使して、検索を掛けていく。
あの花束を中心に飾っていた白色の綺麗な花。
それは、ダリアの花だった。
その花の香りは、榎本さんの店で香った香りと良く似ていた。
「...花には、花言葉があったんだっけ...?」
それも含めて検索をかけてみる。
白いダリアの花言葉は、
感謝
だった。
(次回へ)