お隣の花屋さんと僕
僕・黒瀬夏向くろせかなたは、今年で南丘中の二年生になる。
こうやって自分の振り返っているのは。今が春休みであるから。
新たにやって来る新入生の先輩としての心構えだ。
ウチの中学校では春休みの宿題がない。今日も一日暇なので、外にでも出て気分
転換するか。
そう思い、外へ出た。
[水平線]
家は一軒家で、大通りに面している。しかし、車がビュンビュン通っているわけではなく、比較的静かなので、そこそこ暮らしやすい立地だ。
そう、何時もならば、静かなはずなのだ。
今日に限って、お隣さんが引っ越してきたらしい。
引越し業者のトラックが沢山止まっていて、排気ガス臭い。
僕は周囲の人より鼻が利きやすいタイプなので、早々に立ち去ることにした。
が、家から出てくるのを、引っ越してきた隣人(仮)に見られてしまったようだ。
「あッ、もしかして、お隣さんですか?」
そう声をかけてきたのは――
[水平線]
引っ越してきたであろう青年だった。
パッと見、女受けの良さそうなキラキラとした笑顔をしているが、そこには、僕のような若者よりかは成熟している大人っぽい笑みがあった。
「今日からお隣になります、榎本えもとといいます。」
榎本さんか。
「どうも、黒瀬といいます。宜しくお願いします。」
すると、榎本さんはすっと目を細めてこういった。
「黒瀬さん、君、中学生だよね」
「は、はい、」
何故わかるのだろう。まあ、身長や動作的にわかるか。
「そっか。じゃあ、黒瀬さん、お気をつけて。」
今のは何だったのだろう。
[水平線]
気を取り直して、散歩の続きを始める。
このあたりには公園やコンビニなどがまあまああり、小中学生にとってはとても暮らしやすい。
僕もそのうちの一人だ。
そう考えながら、家から最も近い公園についた。
その公園は、僕が小学校低学年の頃からある馴染み深い公園だ。
僕は、その公園にあるベンチで寝転び、空を見ることが好きだった。
何時ものように寝転んで、昼寝を開始した。
[水平線]
「ん...」
目にかかる影で目が覚めた。
何時の間にか空は曇り、今にでも大粒の雨が降ってきそうだった。
というか降ってきた。
(うぇッ、やっば..!)
急いでベンチから起き上がり、忘れ物がないかの確認を始める。
(え...スマホがない...)
パーカーのポケットに押し込んだ筈のスマホがなくなっている。
(どこだよッ)
ベンチの周辺を探すが、無い。
もう既に雨は降ってきていた。
ザアァァァァァァァァア
「あった...!」
スマホはベンチの下にあった。
恐らく、昼寝中に落ちて転がってしまったのだろう。
雨の滴る髪を拭いながら、スマホをパーカーのポケットへ戻す。
「急いで帰らなきゃ...」
そう言って、ダッシュで家に帰ろうとした。
(次回へ)
こうやって自分の振り返っているのは。今が春休みであるから。
新たにやって来る新入生の先輩としての心構えだ。
ウチの中学校では春休みの宿題がない。今日も一日暇なので、外にでも出て気分
転換するか。
そう思い、外へ出た。
[水平線]
家は一軒家で、大通りに面している。しかし、車がビュンビュン通っているわけではなく、比較的静かなので、そこそこ暮らしやすい立地だ。
そう、何時もならば、静かなはずなのだ。
今日に限って、お隣さんが引っ越してきたらしい。
引越し業者のトラックが沢山止まっていて、排気ガス臭い。
僕は周囲の人より鼻が利きやすいタイプなので、早々に立ち去ることにした。
が、家から出てくるのを、引っ越してきた隣人(仮)に見られてしまったようだ。
「あッ、もしかして、お隣さんですか?」
そう声をかけてきたのは――
[水平線]
引っ越してきたであろう青年だった。
パッと見、女受けの良さそうなキラキラとした笑顔をしているが、そこには、僕のような若者よりかは成熟している大人っぽい笑みがあった。
「今日からお隣になります、榎本えもとといいます。」
榎本さんか。
「どうも、黒瀬といいます。宜しくお願いします。」
すると、榎本さんはすっと目を細めてこういった。
「黒瀬さん、君、中学生だよね」
「は、はい、」
何故わかるのだろう。まあ、身長や動作的にわかるか。
「そっか。じゃあ、黒瀬さん、お気をつけて。」
今のは何だったのだろう。
[水平線]
気を取り直して、散歩の続きを始める。
このあたりには公園やコンビニなどがまあまああり、小中学生にとってはとても暮らしやすい。
僕もそのうちの一人だ。
そう考えながら、家から最も近い公園についた。
その公園は、僕が小学校低学年の頃からある馴染み深い公園だ。
僕は、その公園にあるベンチで寝転び、空を見ることが好きだった。
何時ものように寝転んで、昼寝を開始した。
[水平線]
「ん...」
目にかかる影で目が覚めた。
何時の間にか空は曇り、今にでも大粒の雨が降ってきそうだった。
というか降ってきた。
(うぇッ、やっば..!)
急いでベンチから起き上がり、忘れ物がないかの確認を始める。
(え...スマホがない...)
パーカーのポケットに押し込んだ筈のスマホがなくなっている。
(どこだよッ)
ベンチの周辺を探すが、無い。
もう既に雨は降ってきていた。
ザアァァァァァァァァア
「あった...!」
スマホはベンチの下にあった。
恐らく、昼寝中に落ちて転がってしまったのだろう。
雨の滴る髪を拭いながら、スマホをパーカーのポケットへ戻す。
「急いで帰らなきゃ...」
そう言って、ダッシュで家に帰ろうとした。
(次回へ)