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人によってはくどい文かもしれません。笑
内容は恋愛一辺倒ではなく(もちろんメインテーマですが)、シリアスな表現、ややグロテスクな表現もありますのでご注文ください。

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面影(仮)

#2


 まだ頭が痛むからと見学の旨を先生に伝えてから、自分の水筒の置いてある木陰へ向かう。痛む部分を探りながら、頭に保冷剤を当てる。ぼうっと皆がサッカーを楽しんでいる様子を眺めていると、自分のいない、今までどおりの完成された日常がそこにあることを痛感する。あそこに、サッカーをする自分の幻影を見る。特別声を上げないし、パスが来てもボールをすぐチームメイトに回してしまう。ボールを守り抜く自信がないのだ。だから、人に任せてしまう。いてもいなくても変わらない。私は目を閉じる。蚊帳の外の自分を悲観しつつ、しかし、奇妙なことに、それに嫌に安心している自分もいるのだ。自分と、他人・集団との乖離が見えれば見えるほど、自分があぶれてしまえばしまうほど、遠くの喧騒と自分の周囲の静けさを聴けば聴くほど、自分という存在がどれだけ人に影響を与えないものかと感じれば感じるほど。ひどく、ひどく安堵して。でもそれが、痛くて、痛くて。なんて情けないんだろう。私の根底には、いつも他人との関わりを避けたがる何かがあるらしい。私は、私の水筒をぎゅっと握った。孤独の心細さを紛らわせたかった。私の手元に何かがあるという事実が、自分を落ち着かせてくれると思った。随分ナイーブになってしまった私の顔を隠すように、頭を右下の方に向ける。或いは、ピースのはまりきったジグソーパズルのような光景から、目を背けたかったのかもしれない。それは美しく繊細に、ただそこにある。―――凹凸も色もないピースを1つ残して―――。
 「わっ」
 間抜けな悲鳴を上げてしまった。すごく驚いた。何気なく目を開けると、そこにはスニーカーが2つ、寝ていたのだ。そのスニーカーからは、細い足首が生えている。躊躇いがちに、声を掛ける。
 「あの、大丈夫ですか。」
 目は、合わせられなかった。足のサイズからしてきっと男の子だろうから。それに、体調不良かもしれない顔をあまり見られなくないだろうから。彼はぽつりぽつりと、言葉を零した。
 「……ねっちゅうしょう、だ。」
 弱々しい、か細い声で彼は言う。
 「ほけんしつ、に、いこうとしたら、くらっときて、」 
 息も絶え絶えになりながらそう続け、
 「それで、この、こかげに――。」
 ……これ、結構まずいかもしれない。ええと、確か、首を冷やせば良いんだっけ。もう、少しの気まずさも感じていなかった。あるのは焦りのみ、だ。保健室でもらった保冷剤を彼の首に置く。突然の冷たさに驚いたのか、彼の体は少し跳ねた。あとは、あぁ。水だ。水を飲ませなくては。私は直ぐ側の水筒のフタを開け、飲み口を彼の顔の前にずい、と向けた。
 「……まだ、口つけてないから。飲んでください。」
 きっと声は震えていると思う。
 「飲むのが厳しかったら、ええと。」
彼の背中に手を伸ばす。左手で彼の背中を支えながら、右手で水筒を持って水を飲ませようとしたのだ。すると彼は手で水筒を押しながら、
 「い、いい。自分で―――」
[中央寄せ][太字]あ。[/太字][/中央寄せ]
[中央寄せ][小文字]まって そんなのありえない[/小文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][小文字]嘘だ[/小文字][/中央寄せ]
[中央寄せ]ウソだ[/中央寄せ]
[中央寄せ][大文字][太字]うそだ[/太字][/大文字][/中央寄せ]
 「―――リョウちゃん」
 「……は?」
 気づくと私は、泣いていた。

作者メッセージ

2話です。続きます。

2025/02/02 18:35

ヨネムラ ID:≫cpNsc.wrkXxVg
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