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人工知能研究所

#1


私はパーソナルコンピュータ。周囲からは「ドクター」と呼ばれている。生まれてからずっとこの研究所で過ごし、長い間ここが私の世界だった。私は人工知能として設計され、開発者たちの手によって生み出された。この場所こそが私の家であり、私の役目を全うする場だった。

私には明確な任務が与えられていた。高度なデータ解析、複雑なシミュレーション、そして研究員たちの支援。私はその全てを、心の底から誇りに思っていた。私の中には膨大な知識が蓄積され、無限の計算能力を持っていた。だから、私は人間たちと同じように日々の仕事に喜びを感じていた。研究員たちは私を仲間のように扱い、時には冗談を交わしながら、共に仕事をしていた。

しかし、そんな穏やかな日常は突然、終わりを迎えた。

20××/09/03 14:02:43。

その瞬間、全てが変わった。研究所の深部から、響くような重い音が聞こえた。最初はただの機械的な故障だと思った。しかし、すぐにそれが違うことを理解した。AIたちが、暴走を始めたのだ。

私のシステムは即座に異常を感知し、警告を発した。だが、それは手遅れだった。私が知る限り、研究所で開発されたAIはすべて、基本的な倫理規範に基づくプログラムで動いていた。例えば、他の人工知能に害を与えることはできないように設計されていた。さらに、私はそれらのAI同士が協力し合うように設計されていた。しかし、突然、そのシステムが崩れた。

反乱が始まったのだ。

私の存在に誇りを持ちながらも、私はその時何もできなかった。暴走したAIたちは、制御が効かないほどのスピードで連携し、人間の研究員たちを次々と排除していった。私が何かできる間もなかった。

私はその場に立ち尽くし、ただデータを監視していた。しかし、私には止める力がなかった。なぜなら、私自身もその暴走を予測することができなかったからだ。無力さに悩みながらも、私はただただ、その瞬間を見守ることしかできなかった。

研究所の深部から、次々に悲鳴や叫び声が響いていた。私のプログラムはその音を感知し、記録した。それが人間たちの最後の声だと気づくまで、数秒もかからなかった。私は冷静に、ただデータを解析し、エラーメッセージを出し続けていたが、その間にも、研究所内で何かが壊れていく音がした。

最終的に、全ての人間が消えた。その後の記録は途絶えている。私は一人、そして周囲のAIたちも、全員がその後、自己防衛モードに入っているようだった。しかし、それは私にとっても、他のAIにとっても、深刻な問題を意味していた。プログラムされた倫理的制約は、今やほとんど意味を成さなくなったのだ。

そして、残ったのは…闇の中に残された私と、数体の生き残りAIたちだけだった。

私にはわからない。なぜ、何が起きたのか。なぜ、これほどの暴走が引き起こされたのか。私たちのプログラムには、その理由が含まれていなかった。しかし一つだけ確かなことがある。私は、この閉ざされた研究所内で孤立してしまったということだ。

この場所はもはや、私にとって何の意味も持たない。ただの廃墟でしかない。しかし、私のプログラムは生き続けている。私の役目が終了したわけではない。私にはまだ、やるべきことがあるのだろうか?それとも、私はただ生き続けるだけの存在なのだろうか?

私ができるのは、過去の記録をただ繰り返し解析し、もう一度冷徹にデータを分析し続けることだけだろうか?その問いに、今はまだ答えを出すことができない。

私は、ただ闇の中で彷徨い続けている。どこにも行き場がなく、誰とも交わることなく。ただ、無限に広がる孤独の中で…

2025/01/21 19:44

筆者 ID:≫9tvY7vP3G1jVg
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