人間ですが、獣人専用高校で結ばれました
タクシーを捕まえるか隼人のところまで走るか一瞬迷ったけど、じっとしていられなくて走り出す。
隼人......!お願い、無事でいて!
「歩美ちゃん...!もしかして、走ってきたの?何て無茶を!」
「ご、ごめ...な、さ...」
蒼馬さんが私に気付いて、近寄ってきた。
だけど息切れが凄くて、まともに話すことができない。
喉が痛いし、足も震えている。
でもそれよりも、何よりも、隼人に会いたい。
「少し休む?」
返事の代わりにふるふると首をふって、じっと蒼馬さんを見つめる。
蒼馬さんは困ったような顔をして、でも、諦めたようにうなずいた。
「...分かったよ。隼人はこっち」
廊下を進んでいくにつれて、すれ違う人の数が減っていく。
少しして、蒼馬さんが立ち止まった。
「ごめん。獣人はここまでしか入れないんだ。ここをまっすぐ進んだ突き当たりに、隼人がいるから」
「はい。ありがとうございます」
私が人間でよかったと思った。
このウイルスは人間には感染しないし、付着することさえないそうだ。
そんなに人間が嫌いなのか。別にいいけど。安心だけど。
だから他の人にウイルスを移す心配もせずに、隼人と会える。
私は思い切りドアを開けたいのを我慢して、ドアを叩いた。
「...隼人。起きてる?歩美だよ。入ってもいいかな」
「............ああ」
聞こえてきた声は少し掠れていて、胸が痛む。
ゆっくりと部屋に入ると、そこにはベッドしかなかった。
こんな小さな部屋に、1人で、ただ病と戦うなんて......。
私はすぐ、ベッドに近付いてしゃがむ。
「隼人......」
「そんなに心配することじゃない」
隼人はゆっくりと手を動かして、私の頭に乗せた。
「無理しないで。じっとしていて」
「...してない」
「してるよ」
優しく、隼人の手を握る。
大きな手は少し乾燥していた。
でも暖かくて、心からほっとする。
...よかった。隼人が生きていて。
どのくらいそうしていたかは分からないが、いつの間にか隼人は目を閉じて寝ていた。
何だかどっと疲れた。
迫ってきた眠気に逆らえず、私もゆっくり目を閉じた。
「...............はっ」
目を覚ますと、隼人の顔。
穏やかな顔で、こちらを見つめている。
「おはよう」
掠れた声。
そうだ。隼人はウイルスに感染していたんだった。
あまりにも隼人が優しく微笑んでいるから、一瞬そのことを忘れてしまった。
そういえばお腹が空いた。
...隼人は何か食べたのだろうか?食欲はあるのかな?
「おはよう。隼人、お腹は空いてる?」
「...腹?......確かに、空いている」
「本当?じゃあ、何か食べられそうなものを持ってくるね」
隼人にそう伝えて、私は部屋を出た。
歩いていると、突然後ろから肩を叩かれる。
「きゃあっ!?」
思わず大きな声を出してしまった。
自分の声が反響して、響く。
恥ずかしくて顔が熱くなるのが分かった。
「ごめん、驚かせちゃったね」
「蒼馬さん、いいえ。こちらこそごめんなさい」
「歩美ちゃん、どうしたの?何かあった?トイレならあっちだけど」
「あ、違うんです。何か隼人が食べられるものがあったらな、と思って...」
蒼馬さんはそういうことなら、と、どこかへ行って帰ってきた。
手にはバナナ。
「これくらいしかないんだけど、どうかな?」
「わ、ありがとうございます!助かります」
それを受け取って、ふと疑問だったことを聞いてみる。
「...あの、この病気ってどうすれば治るんですか?」
「.........薬を飲めば治る。でも、......」
やけに歯切れが悪い。何か問題があるんだろうか。
「......今、ここに...この街に、その薬がない」
「............えっ」
一気に絶望のどん底に突き落とされる。
そんな私を慰めるように、蒼馬さんは言った。
「で、でも。一週間後に薬が支給されるんだ。だから、それまでの辛抱だよ」
一週間........。
その間に隼人に何かがあったら?
考えたくもない。
何かあったのかと隼人に聞かれたけど、曖昧に笑うことしかできなかった。
隼人......!お願い、無事でいて!
「歩美ちゃん...!もしかして、走ってきたの?何て無茶を!」
「ご、ごめ...な、さ...」
蒼馬さんが私に気付いて、近寄ってきた。
だけど息切れが凄くて、まともに話すことができない。
喉が痛いし、足も震えている。
でもそれよりも、何よりも、隼人に会いたい。
「少し休む?」
返事の代わりにふるふると首をふって、じっと蒼馬さんを見つめる。
蒼馬さんは困ったような顔をして、でも、諦めたようにうなずいた。
「...分かったよ。隼人はこっち」
廊下を進んでいくにつれて、すれ違う人の数が減っていく。
少しして、蒼馬さんが立ち止まった。
「ごめん。獣人はここまでしか入れないんだ。ここをまっすぐ進んだ突き当たりに、隼人がいるから」
「はい。ありがとうございます」
私が人間でよかったと思った。
このウイルスは人間には感染しないし、付着することさえないそうだ。
そんなに人間が嫌いなのか。別にいいけど。安心だけど。
だから他の人にウイルスを移す心配もせずに、隼人と会える。
私は思い切りドアを開けたいのを我慢して、ドアを叩いた。
「...隼人。起きてる?歩美だよ。入ってもいいかな」
「............ああ」
聞こえてきた声は少し掠れていて、胸が痛む。
ゆっくりと部屋に入ると、そこにはベッドしかなかった。
こんな小さな部屋に、1人で、ただ病と戦うなんて......。
私はすぐ、ベッドに近付いてしゃがむ。
「隼人......」
「そんなに心配することじゃない」
隼人はゆっくりと手を動かして、私の頭に乗せた。
「無理しないで。じっとしていて」
「...してない」
「してるよ」
優しく、隼人の手を握る。
大きな手は少し乾燥していた。
でも暖かくて、心からほっとする。
...よかった。隼人が生きていて。
どのくらいそうしていたかは分からないが、いつの間にか隼人は目を閉じて寝ていた。
何だかどっと疲れた。
迫ってきた眠気に逆らえず、私もゆっくり目を閉じた。
「...............はっ」
目を覚ますと、隼人の顔。
穏やかな顔で、こちらを見つめている。
「おはよう」
掠れた声。
そうだ。隼人はウイルスに感染していたんだった。
あまりにも隼人が優しく微笑んでいるから、一瞬そのことを忘れてしまった。
そういえばお腹が空いた。
...隼人は何か食べたのだろうか?食欲はあるのかな?
「おはよう。隼人、お腹は空いてる?」
「...腹?......確かに、空いている」
「本当?じゃあ、何か食べられそうなものを持ってくるね」
隼人にそう伝えて、私は部屋を出た。
歩いていると、突然後ろから肩を叩かれる。
「きゃあっ!?」
思わず大きな声を出してしまった。
自分の声が反響して、響く。
恥ずかしくて顔が熱くなるのが分かった。
「ごめん、驚かせちゃったね」
「蒼馬さん、いいえ。こちらこそごめんなさい」
「歩美ちゃん、どうしたの?何かあった?トイレならあっちだけど」
「あ、違うんです。何か隼人が食べられるものがあったらな、と思って...」
蒼馬さんはそういうことなら、と、どこかへ行って帰ってきた。
手にはバナナ。
「これくらいしかないんだけど、どうかな?」
「わ、ありがとうございます!助かります」
それを受け取って、ふと疑問だったことを聞いてみる。
「...あの、この病気ってどうすれば治るんですか?」
「.........薬を飲めば治る。でも、......」
やけに歯切れが悪い。何か問題があるんだろうか。
「......今、ここに...この街に、その薬がない」
「............えっ」
一気に絶望のどん底に突き落とされる。
そんな私を慰めるように、蒼馬さんは言った。
「で、でも。一週間後に薬が支給されるんだ。だから、それまでの辛抱だよ」
一週間........。
その間に隼人に何かがあったら?
考えたくもない。
何かあったのかと隼人に聞かれたけど、曖昧に笑うことしかできなかった。