妖怪*コメディ
希空は廊下に佇む異形の女の子を見て妙に肝が据わってしまい、如匁に尋ねた。
「如匁さん、さっきのって…?」
「追手、よ」
如匁さんは険しい顔で答えた。
希空はぴきん、と凍りつく。
(いやいやいやいやいや、何の追手なのよ!?)
そんな希空の心を読んだかの様に、瑚猫が口を開く。
「如匁、そんな事も教えてあげてねーのかよ?
マジで役立たずだなぁ如匁は」
…答えるんじゃなく悪口だった。
如匁が憤怒の顔で瑚猫を睨みつけ、希空に向き直った。
「…希空ちゃん。覚えている?…お母さんの事」
如匁の言葉に、希空は息を飲んだ。
しかし…
「のあに、母なんて、いません」
口に絞り出すと、何かが違うような気がした。
でも、考えようとすると頭に鈍い痛みが走るのだ。
記憶がぼんやりしていた。
如匁とは初めて会ったような、顔見知りのお姉さんのような、仲のいい年の離れた従姉妹のような。
瑚猫とも、初めましてで合っていたのか分からない。
「記憶がなくなってる。瑚猫、覚を呼んで」
「はいはいはいはい」
覚、という奴を呼びに天井裏に潜って行った瑚猫の背中に、如匁が叫んだ。というか怒鳴った。
「はいは一回!!!」
「るっさあい!」
瑚猫も天井裏から怒鳴り返したため、如匁がイラついたが
瑚猫は恐らく行ってしまった。
如匁が舌打ちをして、希空の方に目をやる。
「あらごめんね、希空ちゃん?」
(…なんか、こいつら、怖い)
希空は微笑を浮かべながら思っていた。
「はい呼んできた」
びゅん!と音を立てて飛び降りてきた瑚猫の腕に、
真っ白の髪をさらさらと鳴らす女の子が乗っていた。
顔の右半分に、瑚猫と同様に朱色のリボンが通っている。
腰よりも長く伸びた髪をオレンジの紐で結ぶと、その子は姿に合わない喋り方で話しかけてきた。
「この娘か?」
「そうだよー。名前は希空」
如匁が気楽に答える。
希空は、なんでこんな人外の奴らと普通に喋んなきゃいけねえんだと思いながら返事をした。
「のあの名前は希空。よろしくね!」
女の子は、にこりともせず答えた。
「我の名は覚凪(かくな)。覚じゃ」
さとり?とは?希空が首を傾げると、黙っていた瑚猫が笑った。
「まあ、例えばあたしは猫又だろ?如匁は…」
「うんうんうんうん、何でもないよね??」
如匁はぎりぎりと瑚猫を締め上げる。瑚猫が喘いだ。
「こいつは一反木綿だっ!」
「い、いったんもめんん?」
それって妖怪の名前では?と希空は思う。
はあ、と如匁が息をついた。
「そう、私は一反木綿。化けてるのよ、ヒトに」
そう言うなり、如匁が元の姿に戻った。
桃色の髪と瞳、髪は一つの緩い三つ編みに編まれていた。
「希空ちゃんの記憶見てみて!」
覚凪が紫の目で見つめてきた。
全てを見通すような視線に驚くと、覚凪が視線を外した。
「ないぞ、其の記憶は」
二人が息を飲む。
「「ないって…!?」」
希空はそんな二人の間で板挟みになっておろおろしていた。
「如匁さん、さっきのって…?」
「追手、よ」
如匁さんは険しい顔で答えた。
希空はぴきん、と凍りつく。
(いやいやいやいやいや、何の追手なのよ!?)
そんな希空の心を読んだかの様に、瑚猫が口を開く。
「如匁、そんな事も教えてあげてねーのかよ?
マジで役立たずだなぁ如匁は」
…答えるんじゃなく悪口だった。
如匁が憤怒の顔で瑚猫を睨みつけ、希空に向き直った。
「…希空ちゃん。覚えている?…お母さんの事」
如匁の言葉に、希空は息を飲んだ。
しかし…
「のあに、母なんて、いません」
口に絞り出すと、何かが違うような気がした。
でも、考えようとすると頭に鈍い痛みが走るのだ。
記憶がぼんやりしていた。
如匁とは初めて会ったような、顔見知りのお姉さんのような、仲のいい年の離れた従姉妹のような。
瑚猫とも、初めましてで合っていたのか分からない。
「記憶がなくなってる。瑚猫、覚を呼んで」
「はいはいはいはい」
覚、という奴を呼びに天井裏に潜って行った瑚猫の背中に、如匁が叫んだ。というか怒鳴った。
「はいは一回!!!」
「るっさあい!」
瑚猫も天井裏から怒鳴り返したため、如匁がイラついたが
瑚猫は恐らく行ってしまった。
如匁が舌打ちをして、希空の方に目をやる。
「あらごめんね、希空ちゃん?」
(…なんか、こいつら、怖い)
希空は微笑を浮かべながら思っていた。
「はい呼んできた」
びゅん!と音を立てて飛び降りてきた瑚猫の腕に、
真っ白の髪をさらさらと鳴らす女の子が乗っていた。
顔の右半分に、瑚猫と同様に朱色のリボンが通っている。
腰よりも長く伸びた髪をオレンジの紐で結ぶと、その子は姿に合わない喋り方で話しかけてきた。
「この娘か?」
「そうだよー。名前は希空」
如匁が気楽に答える。
希空は、なんでこんな人外の奴らと普通に喋んなきゃいけねえんだと思いながら返事をした。
「のあの名前は希空。よろしくね!」
女の子は、にこりともせず答えた。
「我の名は覚凪(かくな)。覚じゃ」
さとり?とは?希空が首を傾げると、黙っていた瑚猫が笑った。
「まあ、例えばあたしは猫又だろ?如匁は…」
「うんうんうんうん、何でもないよね??」
如匁はぎりぎりと瑚猫を締め上げる。瑚猫が喘いだ。
「こいつは一反木綿だっ!」
「い、いったんもめんん?」
それって妖怪の名前では?と希空は思う。
はあ、と如匁が息をついた。
「そう、私は一反木綿。化けてるのよ、ヒトに」
そう言うなり、如匁が元の姿に戻った。
桃色の髪と瞳、髪は一つの緩い三つ編みに編まれていた。
「希空ちゃんの記憶見てみて!」
覚凪が紫の目で見つめてきた。
全てを見通すような視線に驚くと、覚凪が視線を外した。
「ないぞ、其の記憶は」
二人が息を飲む。
「「ないって…!?」」
希空はそんな二人の間で板挟みになっておろおろしていた。