【参加型・一旦〆切!】旅する絵描きと思い出の色
紐「お待たせ!じゃ、いきましょー!」
嶺「運転するのは私だけどね…」
紐「まぁ、いいじゃん!全国を旅する近所のおねーさんのの久々の帰省、労わってよ〜」
少し遅れてきた紐をレンタカーした軽自動車に乗せ、自分も乗り込む。
車の免許は高校を卒業する際に取ったが、あまり車を使わないので不安だ。
道路に繰り出すと、道路の広さに柄にもなく驚いてしまった。
北海道は雪がたくさん降る。除雪のためのスペースを残してあるんだろう。
冬は絶対行きたくないな、と思いながらハンドルを握り直す。
紐「ねぇ、もしかして嶺ってペーパードライバー?」
嶺「いやぁ…そこまでではないけど…あんまり自信はない。」
まだ事故ったことはないが、これから事故らないとは限らない。
初心忘れるべからず。初心者マークが外れたとはいえプロではないのだから。
あ、いいこと思いついた。
嶺「あ、私のカバンに入ってるCDかけてくれない?」
紐「オッケー!」
そう言って紐は私の鞄を漁り、CDを疑うことなくカーナビの裏に差し込んだ。
北海道とはいえ、かなり暑い。
しっかりこのCDで冷えてもらおう。
[水平線]
嶺「つっw、ついたよ〜」
紐「嶺…大人舐めるなよ…」
駐車場に車を停め、ひどい顔をしている紐をみて笑いたくなってしまったがギリギリ堪えた。
嶺「なんのことかしら〜」
私の鞄に入っていたCDは怖い話のアンソロジーで、大の心霊好きの母の部屋から発掘したものだ。ちなみに中学卒業までその部屋を使っていたので私の部屋でもある。
ついでに発掘してしまった思春期の[漢字]激イタポエム[/漢字][ふりがな]黒歴史[/ふりがな](私物)は少し読んだ後しっかり封印した。
紐「どうしてくれるんだよぉ〜!寝れないじゃん!」
嶺「まぁまぁ。」
紐「むむ…それなら、それ相応の対価は支払ってもらわないとね…!」
紐は口角が嫌な感じに上がった悪魔の手先のような顔をしている。
嫌な予感しかしない。
紐「じゃじゃ〜ん。これはなんでしょう?」
紐の手にあるのは、桃色の表紙に白の英字が印刷された手帳サイズのノートだ。
そう、封印したはずのかつてのポエムノート。
嶺「あ、えっと、それ、大事な予定帳なんだよね。かかかか返してもらえないかな????」
平静を装って手を伸ばすと、さっと避けられた。
紐「ふぅ〜ん。じゃあ読むね!…桜が煌めく。あなたと私の…w」
嶺「やめてぇぇぇぇ!!!!!!」
恥ずか死ぬって無理!!!!!
苦いどころか集中力を掻き乱されるほど恥ずかしい初恋の記憶が脳内で再生される。
紐「……小指を繋げる赤い糸のように。きっとこれは運命…」
嶺「だからやめろっていってんだろぉぉ!!!!」
読み上げるのを止めてくれたと安心したのも束の間、また悪魔のような笑みを浮かべて一番恥ずかしい部分を読み上げられる。
結局車内で取っ組み合いになり、ノートは無事返してもらえた。
ただ、中身のほとんどを知られてしまい顔から火が出そうだった。