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【参加型】旅する絵描きと思い出の色

#2

流石の北海道様も地球温暖化には逆らえないようです

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「[漢字]嶺[/漢字][ふりがな]れい[/ふりがな]はマメだねぇ…親族全員諦めている遺書を探しにくるなんて…」

出された麦茶を飲みながら、至る所に扇風機がある部屋で涼む。
いくら北海道でも、地球温暖化には逆らえないようだ。

窓が全開なので、蚊や泥棒が入ってこないか心配になる。

「まぁね。にしても…ずいぶん暑くなったな、ここも。」
避暑がてら来たつもりだったのに、とぼやくのは[漢字]桜咲嶺[/漢字][ふりがな]おうさかれい[/ふりがな]。
大学生だが画家であり、水彩画が得意だ。

「そうだねぇ…おじいちゃんが生きてた頃はもうちょっと涼しかったんだけどねぇ…」
嶺「うん…ってはッ!忘れてた!“思い出”探さないと!」

“思い出”とは、嶺の祖父が残した最後の絵である。
祖母ですら見たことがないらしく、幻の“遺書”として扱われている。

「まぁ、焦る必要はないんじゃ無いかい?二ヶ月ここにいるんでしょ、どこか観光でもしてきたら?レンタカー…じゃなくて車でも借りて。」
嶺「…定期的にくるよね、カタカナを使わないブーム。」

「あら?そうかしら?」

孫に指摘されてもこの表情ということは、無自覚に違いない。
母によると祖母は昔から天然ボケだったそう。

よく忘れ物をしたり道に迷ったりする嶺は、祖母似だ。

「そういえば…あの子…なんて名前だったかしら…?」
嶺「珍しいね、物忘れとか。どんな子?」
「綺麗な白い髪の…」

少し考えるような素振りを見せたまま、口からぽろりと声が出る。
嶺「もしかして…[漢字]紐[/漢字][ふりがな]ひも[/ふりがな]ちゃん?」

「そうそう!嶺が小さい頃よく遊んでくれた…」

嶺「やっぱり!確か、今日本一周旅行してるんだっけ?」

[漢字]紐[/漢字][ふりがな]ひも[/ふりがな]───[漢字]雫香紐[/漢字][ふりがな]しずくこうひも[/ふりがな]という名前を聞くと、白く透き通った癖毛やほがらかな藍色の瞳が脳裏に浮かぶ。
嶺より4つ年上だが、子供扱いせずに相手をしてくれて嬉しかったのを覚えていた。

現在は日本一周旅行で『一期一会』をモットーにしながら、着々と友達を全国展開しているそう。さすが、距離の近い北海道で生まれ育っただけある。

学生寮のある遠くの高校に入学してしまってから、滅多に会っていない。
最後に会ったのは、祖父の葬式の時だろうか。

「その日本一周旅行で、紐ちゃんここに寄るって!」
嶺「何ぃ⁉︎」

思いがけず叫んでしまった後、先ほどまで飲んでいた麦茶が気管支の方に入ってきたのに気がつく。

案の定、激しくむせた嶺。


「変なとこ入った?大丈夫?」

しわしわの手で背中をさすられながら、紐はどのような大人になっているか、気になって仕方がなかった。



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2025/01/18 15:30

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