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この作品は拙作、「ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。」と世界観を共有しています。

ですが、一応それを読んでいなくても分かるように話を作っていく予定ではあります。

また、作品の都合上、多少暴言や暴力などの表現が含まれる可能性があります。お気をつけ下さい。

お客さんお待ちしております。

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【参加型】アークライト魔道具店に今日も何方か来たようです。

#6

-Fire&Water-

《side アル・イズモンド》

 我の名前はアル・イズモンド。横におるんは我の大事な弟、ナキ・テンペストや。
 ほんで今、めっちゃ困ってん。ココは一体どこなんや?

「ねぇ、アル…?ここ、一体どこやろか…」
「我にも分からへんなぁ。」

 いやホンマどないなってんねん。移動魔法の練習しよっただけでこんなんなるか、普通?
 明らかに森やないかい。行こうとしたんはショッピングモールやぞ。

「いや暴発ったってこうはならんやろ!」
「せやけど、なっとる…よね…」

 せやなぁ、ホンマどうしたモンか。そう思いつつよくよく辺りを見回してみると、よう見慣れへん植物が生えとる。
 多分魔法界とはちゃうな、ココ。本格的に妙な所に来てもうたわ。

 座学が得意なナキになら分かるんやろか?と思って聞いてはみるが、「いや、僕にも分からへん…」と申し訳無さそうな顔をしとる。
 まぁ、ココまで完全に見覚え無いってなると案外新種かもしれんなぁ。って、さすがに無いか。

 なんて思いながらペチペチと木の幹を叩いていると、急にナキが声をあげた。

「あ、アル。あっちの方、家みたいなんが建っとる…もしかしたら色々分かるかも、やない?」

 言われて指の方向を見てみれば、よく目を凝らさんと見えへんような辺りにポツンと一軒家が建っとる。

「ホンマやな…行ってみっか!」
「せやね、そうしよ。」

 周囲を眺めつつゆっくり歩いて行くと、意外にも三分もしない内に到着した。結構遠くにあるように見えたんは気のせいか?それとも、時空でも歪んどるんやろか?

「いや、多分気のせいやない…ココ、“異界”、やと思う。」

 我はその手の授業あんま取ってへんから詳しくは分からんけど…
 確か理屈とか成り立ちが若干違う、世界同士の狭間にある小さなスペースやったか。
 ナキにそう聞くと、こくりとうなづいた。良かった、コレでテスト困らへんわ。
 異界なんてしょっちゅう行けるモンでもないし、楽しまんとソンやな。それに、実地訓練なら得意やし。

「あ、看板、やね…ここ、お店なんやろか?」
「ふむふむ…“アークライト魔道具店”、やと。営業中、とも書いてあるし、入ってみっか!」

 燻んだ赤色の重たいドアを開けると、カランとベルが頭上で鳴った。ちょいと古めかしいけど落ち着く、良い感じの店構えやな。

「なんだ、客か?悪ぃが今、主…ここの店主はいねぇぞ。」

 んー?声はすれども姿は見えず…やな。
 ホンマ、一体どこからこの声出とるんや?そもそも誰なんや、店員か?

「何キョロキョロしてんだよ、ココだココ。」
「うわぁ!?びっくりした……」
「うっわホンマや、いきなり目の前に出てきよった!?」

 目の前に出てきた店員らしいそいつは、ボサっとした黒い髪に鋭い金の目で、なんちゅーか…ちょいと人間離れした見た目しとる。
 いや、ホンマ誰やねん。そんでどっから出てきたんや?

「何をそんなに…ってああ、そうかよ。」

 我もナキも大分混乱してる事に気づいたのか、はたと手を打ちながら目の前のそいつは喋りだしよった。

「突然出てきたんじゃねぇ。最初からお前らの足元にいた。」
「足元…?」
「ったく、そっからかよ。」

 呆れたように舌打ちすると、自分は猫だと言いよった。
 猫?猫てあの猫か?せやかてお前、明らかに人型やがな。

「へぇ…てコトは、君…使い魔、なんか?」
「ああ、そっちのお前は中々物分かりがいいな。その認識で間違ってねぇぜ。お前らが見てんのは幻覚みてぇなモンだ。」

 ナキの質問に答えつつ、使い魔扱いされんのは嫌いだけどよ、なんて言って笑っとる。いや、よう見ると目はあんまし笑ってへんな。
 しっかし、なんやミョーな所に来てもうたなぁ…
 とかなんとか考えとったら、店の奥からなんとなく見慣れた気がする、黒と赤の頭が飛び出してきよった。

「…あれ?どったのエラン?お客さん来た?警備した方がいい感じ?」
「まあ十中八九客だろうな。ホラ、今主がいねぇだろ。仕方ねぇから俺が対応してたんだよ。」

 およ?よう見たらあれ、アモやないか。
 そういや、最近バイト始めたから寮住み辞めたとかなんとか言いよったな。
 ここやったんか?

「あ、アモさん…お久しぶり、やね。」
「あれ?アル先輩にナキ先輩!?ひっさしぶりー!!」

 そう言って駆け寄ってくるアモは、途中で派手にすっ転んでナキにぶつかりよった。
 当然ながらナキが受け止められるハズもなく、二人して魔道具の山に突っ込んでまう。
 それを見て真っ青な顔しとるソイツ…アモにはエランと呼ばれとった…が、半ば諦めたような表情でこっちを向いた。

「あー…お前、アモの知り合いか?」
「ああ、アイツは学校の後輩やで。我はアル・イズモンド。あっちが弟、ナキ・テンペストや。そっちは?」
「俺はエラン。ここの店主の管理責任者みてぇなモンだ。」

 そう言った直後、助けてー!と、くぐもったアモの声が聞こえよる。まぁ完全に埋まっとるし、しゃあないか…
 エランは「仕方ねぇからアイツら掘り出してやるか…」と呟いて、ふっと山の方を見とる。
 いや、目が大分死んどるやないか。本人…いや、本猫?曰く猫のハズなのに、まるで魚みたいや。それも死んどる方の。

「苦労、しとるんやな…」
「同情すんじゃねぇ。何の役にも立たねぇからな。」

 それでもやれやれと一息付くと、ちょっとでもバランスを見誤りゃ派手な雪崩を起こしそうな魔道具の山を的確に解体する。すると、数分もせずアモもナキも顔を出した。

「手際ええんやな…我が手伝う必要も無かったわ。」
「そうか?…ま、手前に褒められても嬉しくねぇけどよ。」

 あ、照れとる。明らかに照れとる。
 なんや、ちょっと斜に構えとるけどええ奴やないか。

「うるせぇ。照れてねぇよ。」
「いや、顔赤いで?」
「照れてねぇったら照れてねぇ!…良いからさっさと魔道具を選べ。」

 エランは、「こっちだ。」とだけ端的に言って、店の奥に向かって歩き出した。

「ちょ、早いて!悪かったから置いていかんといてくれ!!」
「まぁまぁ…僕たちも、急ご?」
「せやな、置いてかれたら敵わんわ。」


[水平線]

「ホラ、着いたぜ。好きなだけ見ろ。」
「もー!エラン、早いってば!ナキ先輩もアル先輩も通り慣れてないからヘロヘロじゃんかー!」

 いや、ホンマヤバいわココ。あっちゃこっちゃにダンボールやら魔道具やらが転がってるから気ぃ使うし、ミョーなモンはようけ転がっとるし……
 運動能力は自信ある方なんやけどなぁ…

「なんや、ムダに体力消費した気がするわ……」
「せやね……僕も、へとへと……」

 とはいえ顔をどうにか上げて眺めてみると、そこは目も眩むぐらい高い棚の数々やった。

 なんやよう分からん魔法陣の描かれた紙に…
 車のシートみたいなモンもある。
 ……いや、なんやコレ。さすがにおかしいやろ。何やねんシートって。

「うわぁ……」
「こりゃ…すごいな……」

 横のナキも言葉失っとる。まぁ、しゃあないやろ。我かて正直ビビっとるからな。

 って、アレ…なんや?パッと見は指抜き型の手袋やけど……妙に、目に留まる。
 我でも手が届かないぐらいに高い棚の一番上やけど、目に入った途端に初めっから我を待っとったような気すらした。
 ナキは丁度反対側見とるな、同じようになんか見つけたんやろか。

「目に留まるようなモンでもあったか?」

 その声に思わず後ろを振り返ると、ニヤリと笑うエランの姿が。
 なんで分かったんや。

「待ってろ、今下ろしてやっから。」

 そう言うが早いか、猫の姿になって棚の上に登っていく。最上段に辿り着いたら人間の姿に戻って、手袋をひょいと掴んで飛び降りた。

「ほら、これだろ。」

 そう言って手渡したのは、黒地に赤の入った指抜き手袋。デザインもシンプルでカッコええな。なんでか片手だけやけど。
 持った途端信じられんぐらい濃い魔力を感じて、我を待ってたような感覚は間違いやない、そう思わされた。
 というか…

「いやなんで分かっとんねん!」
「ボクもそーゆー魔法としか聞いてないや。エラン知ってる?」
「俺に聞くな。」

 そう言うが早いかこちらに背を向けて、ナキの見つけた魔道具も同じような手順で回収した。
 いや、曲芸師かいな。

 見てみるとそっちは黒地に水色の指抜き手袋で、我の手の中にあるのとは対にあるようなデザインやった。
 やっぱすごい濃い魔力やし、さぞや名のある魔道具士が作ったんやろなぁ……

「あ、せや!値段確認すんの忘れとった……」

 コレ、絶対高いよなぁ!?明らかにそんじょそこらのモンやないで。どないしよ、けど諦められんしな…
 なんて考えとると、エランが呆れたような表情をした。コイツ、ほんまに店員なんか。

「はぁ……お前ら、種族は?」
「? ドラゴンのハーフやけど……」

 この質問、なんの意味があるんや?

「ドラゴンのハーフだな。おいアモ、作成者んトコ行って何が要るか聞いてきて貰えっか?」
「オッケー!」

 バタバタと走っていくアモ。……あ、また転けよった。エランも頭抱えとるし。
 数秒店の奥からガヤガヤと会話する声が聞こえて、またアモがこっちに戻ってくる。

「えっとね!髪の毛一房だって!」
「だ、そうだ。そこのナイフで切れ。」
「いや、どーゆーことやねん!」

 代金が髪の毛ってなんや髪の毛って。意味分からんわ。

「あー、すまんなぁ。君ら、お客さんやろ?」

 ナキと二人して混乱しとると、店の奥からエプロン姿の紫の髪の青年が出てきた。…そういや、今の今まで大人おらんかったな。

「この二人、俺より先輩なんやけど……ちょっと説明が……」
「ミオってばひどーい!まぁ、確かに事実だからしょうがないけど!」
「すまん、馬鹿にするつもりは無かったんや。」

 その後に続いた自己紹介によると、そいつははミオ・スミーラっちゅうらしい。同じ関西弁やし、なんかちょっと親近感湧いたわ。

「で、説明なんやけど。ウチはちょっと特殊な魔道具を取り扱っとってな。材料も特殊なモンが必要なんや。」
「そこまでは分かった。けど、ほんまに髪なんかでええんか?」
「というか、そもそも何に使うんやろか……」

 ナキもそう呟いとる。
 まぁ実際そうや、髪とか言われてもぶっちゃけ怖いとしか思えへん。

「まぁ、当然の疑問やな……けどすまん、ちょっと答えられへんのや。」
「何やそりゃ!?」

 ヤベ、思わず突っ込んでもうたわ。

「変なコトには使わへんし、その辺りは魔術でしっかり契約する。けど、嫌やったらここで帰ってもかまへん。」

 確かに色々と疑問やけど……しっかり目を見て、丁寧に説明してくれとる。
 誠意、とでも言ったらええんやろか。目は口ほどにモノを言う、ってヤツは歴とした事実らしい…そんな気がして来よる。

「…分かった。まぁ我としちゃ、信用してもええような気がする。ナキ、どう思う?」
「うん、確かにせやね。アモくんもおる店やし…ミオさんもエランさんも、良い人そうや。」

 よし、せやったら決定やな。

「じゃ、頼むわ。髪切りゃええんやろ?」

 ナキに頼んで、スッパリと髪を切る。今多少前髪伸びとったし、ちょうどええかもな。
 あとは、ナキの髪も…って、どこから切ったらええんやろ。あんま目立たなそうな…この辺か?

「えっと……これで良かったんやろか……」
「あぁ、ありがとさん。」

 ナキがそっと髪を手渡すと、ミオさんがパパッと瓶に詰めて持っていく。引き換えに二人して手袋をポンと手渡され、我とナキは店を後にしようとした。

「あぁ、ちょいまち。それ暴走の可能性もあるから、制御札持ってっといてな。」

 そう言ってミオさんは複雑な魔法陣の描かれた札をぽぽいと投げてよこした。
 いや、色々不思議な店やな……

「そんじゃ、お買い上げありがとうございましたー!アル先輩もナキ先輩もまた来てね!」

 手をブンブンと振るアモに見送られて、我らは今度こそ店を後にした。

「あ!せっかくやし、ここでコレ試してみっか。」
「せやね。説明書、見てみよ…って、「着けるだけで魔法が扱いやすくなります」…だって。」
「そんなモンあるか?ってうわ、ホンマや。」

 説明書曰く、我の手袋の名前は【[漢字]焔[/漢字][ふりがな]ホムラ[/ふりがな]】、着けるだけで炎魔法を扱いやすくするモンらしい。
 一方でナキの手袋は【[漢字]翠[/漢字][ふりがな]ミリス[/ふりがな]】、同じく着けるだけで水魔法を扱いやすくするんやと。

「二つで一つ!って感じして、なんやカッコええな!」
「せやね、アルとお揃いや。」

 手袋をはめた手をこつんと突き合わせ、二人してバッと前へ向ける。
 そんで、いつもの調子で軽く魔力を込めると……

「うわ!?なんやこの火力!?」
「こっちも、水量すごいで……びっくりした……」

 あっという間に辺り一面丸焦げ&水浸しや。
 けど、このサイズでも普段と変わらず…それどころか、普段以上にコントロールしやすい。

「うっひゃー、想像以上におかしな性能しとるなぁ!」
「うん。できたらもういっぺん、あのお店行きたい。」

 二人して顔を見合わせる。

「「けど……」」

 まぁ多分、ナキも同じ事考えてんのやろな。

「まずは学校に帰らんとやな…」
「転移魔法も、もうちょい練習せなあかんし……」

 あーあ、中々キレイには締まらんモンやな!

作者メッセージ

関西弁むずいですね……
ようやく更新できましたよアークライト。長えよ。5000文字超えてました。
あ、お客さんはまだまだ待ってますんで、良けりゃよろしくお願いします。

2025/05/21 19:27

Ruka(るか) ID:≫ 6plUcmQRaF.2Y
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