再会は必ず紅葉とともに
紅葉が美しく、道が夕焼け色に染まる季節。
それは年号が明治だということに実感が湧き始めたころだった。
今夜は月が綺麗だそうだ。早めに帰って楽しもう。
そんなことを考えつつ、橋に一歩踏み出した時。
僕はある女から目が離せなくなった。
真っ白く、偏り無く塗られた白い肌に赤い目元と唇。
舞妓の女だった。
周りにいた舞妓と全く同じ化粧。
だが、僕の視界には彼女しか映っていなかった。
この感覚を僕は知っていた、いや、正しくは初めて経験する感覚だからこそ気がついた。
僕は恋に落ちたのだと。
目が合う。目が離せない。彼女も目を離さない。
3秒ほど経った時だろうか、彼女は目を逸らした。
今まで経験した中で一番長い3秒だったであろう。
途端に強く陽が差し込む。舞妓は和傘をさしはじめる。
ああ、隠れてしまう。彼女の目が口元が。
言葉を発する間もなく、彼女の顔は完全に隠れた。
名前を聞かなくては。
そう思ったが初めて恋に落ちた僕は喉が強く締め付けられ、出た声は情けなく、紅葉の落ちる音に掻き消された。
やがて舞妓は歩き始めた。
ああ、行ってしまう。
恋をするとこんなにも弱くなるのだろうか。
彼女を引き止めようと腕を伸ばすことさえできなかった。
僕の真横を通り過ぎる。その瞬間、
「また_逢いましょう。」
その声は琴の音のように上品で、今日見られるであろう月のごとく美しかった。
耳に絡んだその声は何度も何度も再生される。
彼女を見つけたい。
貴方に逢いに行きます。
貴方が誰かのものになろうとも。
必ず私のものにしたいのです。
今世で彼女と出逢うことは無かった。
それは年号が明治だということに実感が湧き始めたころだった。
今夜は月が綺麗だそうだ。早めに帰って楽しもう。
そんなことを考えつつ、橋に一歩踏み出した時。
僕はある女から目が離せなくなった。
真っ白く、偏り無く塗られた白い肌に赤い目元と唇。
舞妓の女だった。
周りにいた舞妓と全く同じ化粧。
だが、僕の視界には彼女しか映っていなかった。
この感覚を僕は知っていた、いや、正しくは初めて経験する感覚だからこそ気がついた。
僕は恋に落ちたのだと。
目が合う。目が離せない。彼女も目を離さない。
3秒ほど経った時だろうか、彼女は目を逸らした。
今まで経験した中で一番長い3秒だったであろう。
途端に強く陽が差し込む。舞妓は和傘をさしはじめる。
ああ、隠れてしまう。彼女の目が口元が。
言葉を発する間もなく、彼女の顔は完全に隠れた。
名前を聞かなくては。
そう思ったが初めて恋に落ちた僕は喉が強く締め付けられ、出た声は情けなく、紅葉の落ちる音に掻き消された。
やがて舞妓は歩き始めた。
ああ、行ってしまう。
恋をするとこんなにも弱くなるのだろうか。
彼女を引き止めようと腕を伸ばすことさえできなかった。
僕の真横を通り過ぎる。その瞬間、
「また_逢いましょう。」
その声は琴の音のように上品で、今日見られるであろう月のごとく美しかった。
耳に絡んだその声は何度も何度も再生される。
彼女を見つけたい。
貴方に逢いに行きます。
貴方が誰かのものになろうとも。
必ず私のものにしたいのです。
今世で彼女と出逢うことは無かった。