「ったく、なんで私らがこんなことやらなきゃいけねぇんですか？」
　ガラの悪い少女と思われる者が愚痴を吐くようにドアを蹴破った。
「[大文字]さっむ！[/大文字]外と変わんねぇ～金とった野郎が[打消し]死体[/打消し]で見つかったからってなんで家の捜査なんかに…。」
　玄関の方に目線を映すと倒れている少年が目に飛び込む。
[大文字][大文字]「ガキっ⁉」[/大文字][/大文字]
「五月蠅いですね…。子供を捨てて逃げることくらいおかしくないでしょう？」
　柔らかな物腰の少年と思われる者はガラの悪い少女と共に中に入っていく。
「うわぁ、腐ってなくてよかったですぜ…。やっぱ包帯だらけ…ってことは[太字][打消し]虐待[/打消し][/太字]があったんすかね～。」
「[小文字]うん…？[/小文字]死体のくせして[下線]暖かい[/下線]ですね。」
　物腰の柔らかい少年が倒れている少年をつつくと生暖かい温度が手に伝わる。だが、死体が冷えていくように死んでいっていることは感じることができた。
[大文字]「えっ、生きてんのか[漢字][大文字]此奴⁉[/大文字][/漢字][ふりがな]コイツ[/ふりがな]」[/大文字]
「死にかけですけどね。[漢字]此処[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]は、慈善施設ではないのですよ。ほっといて山にでも埋めましょう。」
　笑う少年に少女は肩に手を置いた。少年は少しそっぽを向いた。
「流石にアンタもそんな事する[漢字]心算[/漢字][ふりがな]つもり[/ふりがな]ないのは分かってますよ。」
　倒れている少年を姫抱きして、外に持っていく。外には黒服が数人待っていた。
　黒服にあとは任せると伝え、少年らは車で去って行った。
[水平線]
[小文字][明朝体]「はぁッはぁッ…。」[/明朝体][/小文字]
　体温は徐々に戻ってきているようだが、苦しそうに呼吸をしている。
「大丈夫っすかねぇ？」
「[漢字]零歌[/漢字][ふりがな]れいか[/ふりがな]、仰向けに寝かせないほうが良いのかもしれません。[太字]もちろん[/太字]、うつ伏せもです。」
「[大文字]へ？[/大文字]なんでっすか？」
　物腰柔らかそうな少年は[下線]言いづらそうな[/下線]顔をした。
「…こういう奴には[打消し]身体売ったり性暴力[/打消し]が付きものなんですよ。」
「[小文字]そっすか。[/小文字]教えてくれてあざっした。取り敢えず、横向きにしときますね。」
　零歌は少年を横向きにし、静かに頭を撫でた。
[小文字]「はぁーッはぁーっ、…お[/小文字]とぉ…さ、[小文字]ん…。」[/小文字]
　呻き声のような声が漏れ、零歌が思わず手を離す。
「[明朝体]哀れ[/明朝体]ですね、どこぞのDV系の人間が父なんて。」
[小文字]「クソが…胸糞わりぃ…。」[/小文字]
　車は一つの家に止まった。3人は車から降り、家の中に入る。
「[大文字]おいっ！[大文字]医者‼[/大文字][/大文字]いるか？」
「その呼び方が気に食わないね。で？如何したのかな？」
　長髪の少女が廊下に顔を出した。白衣に聴診器。まさに医者と見えるような格好だ。
「金に手ぇ出した奴の息子、っぽい感じだ。恐らく数日は放置されてた。ま、息はあるからどうだろうな？」
「はい[大文字]はぁい[/大文字]、[明朝体]で？[/明朝体]ご本人は？」
「[漢字]此方[/漢字][ふりがな]こちら[/ふりがな]です。」
　少年が少女に手渡す。
「ナギ君、本当に[太字]厄介な[/太字]子ばっかり拾うねぇ、[漢字]此奴[/漢字][ふりがな]零歌[/ふりがな]とか。」
「[大文字]酷い！[大文字]私傷ついたなっ‼[/大文字][/大文字]厄介じゃねぇだろ、此処の収入にしっかり貢献してるし！」
「あ～五月蠅～い…この子男の子みたいだけど…？この子の裸体見るの流石に罪悪感がな…。」
　頭を撫でながら少し困った顔をする。その直後厳しめのツッコミが入る。
「[漢字]渚[/漢字][ふりがな]なぎさ[/ふりがな]さんの治療何回したんだよ。」
「ナギ君は特別ぅ～幼馴染、っていうバフがあるのでぇ～。」
　訳の分からない言い訳をして渚の頭を撫でる。この空間で彼女が一番背が高いのだった。
「何を言ってるのですか…[漢字]霞[/漢字][ふりがな]かすみ[/ふりがな]。」
「嗚呼、ナギ君のバフが盛られてきたぁ～ヨシッ、今日は気合入れてやってあげよ～。」
　気合を入れると言いながら腑抜けた言い方が引っかかるのか、零歌はあまり良い気持ちではないようだったが、少年を部屋の中へと見送った。