涙が醒める日は最悪であってほしいとここに願う
土曜日の昼過ぎ。●●は例の神社に行ってみることにした。歴史は大好きだったので、とても楽しみだ。
「お、●●?」
なんということだ。家を出て数分、クラスメイトと会ってしまった...。たしか、彼の名前は...
「えっと、ウマフチくんだっけ。」
「チャウチャウ![漢字]馬渕[/漢字][ふりがな]まぶち[/ふりがな]だよ、馬渕!」
馬渕健吾はクラスでもかなりイケメンな方で、おちゃらけてるのに茶道部部長というギャップで人気を得ている。
「俺さぁ、お前と”マブダチ”になりたくて、ずっと探してたんだよ!あ、今馬渕とマブダチかけたの分かった!?やっぱ俺天才?」
[小文字]「...めんどくさ」[/小文字]
「え?なんか言った?」
「いや、なんでもないよ。あと、私これから神社に...」
「ええ!?お前用事あんのぉ?神社まで迷わねぇ?まあいいや。じゃあ、帰来●●。お前、ちゃんと’’帰’’って’’来’’いよ?」
「...」
「あ。今、帰来と帰って来いかけたの分かった?やっぱ俺天才!?アハハハサイコー!」
よし、チャンスだ!アイツは一人で爆笑してる!
今のうちに逃げるぞ!
馬渕から逃走していると、いつの間にか町の中心部に着いていた。
●●は神社がどこにあるか把握していなかったが、生憎スマホは持ち合わせていなかった。
そして人付き合いが苦手であり、親しくもない町の人々に道案内を頼むのは何だかとても恐ろしかった。
結局、●●は迷子になった。
太陽は西に沈みかけ、もう諦めようかと思った矢先。
前方に、古い建物が目に入った。
何なのかは分からないが、どこか惹かれるものがある。もう少し歩いて、それが目的の神社だと分かった。
足取りが一気に軽くなる。弾むように、吸い寄せられるように、神社に全身を投じる。
[太字][大文字]『架夜神社』[/大文字][/太字]
その文字がとても壮大で豪華に感じた。●●は嬉しかった。人に伝えようのないこの喜び。これは自分でも異常だと感じられた。
神社はかなり古い。というか脆そうだ。震度3でも崩れそうなほどに。一方で華やかな、美しい建物でもあった。
架夜神社には絵馬掛けどころがある。かなりの量の絵馬が掛けられていた。
●●は絵馬に書かれた願いを少し読んでみた。
「東大に絶対受かれ!!」
「理仁クンと付き合えますように♡」
[明朝体]「嘉縁がいなくなりますように。」[/明朝体]
「おかーさのねかいかなうよーに」
「おじいちゃんが死んでくれますように」
絵馬には平和に紛れて不穏もあった。
●●は少しずつ、ここは何かがおかしい場所だと思い始めた。
しかし、もう遅かった。
猛烈な目眩。足が竦む。吐き気がする。脳が激しく蠢くようだ。
ぐるんと、何かが動いた。
[水平線]
「え...なにコレ...」
真っ暗だ。何も見えない。もう夜になったの?足が冷たい。そうか、私は水に浸かっているのか?
下から水の跳ねる音がする。
勇気を振り絞って、少しずつ歩む。一歩一歩が重かった。
できるだけ、水がないところを目指して、夢中に歩く。
ふと真上を見上げると、月があった。今が夜であることは確実に思えた。
...じゃあ、なんで私は眩しくて目を細めたの?
生まれてこれまで月を見て眩しいなんて、思ったことがない。
そういえば、月の表面にある模様(?)みたいなものもない。
まるで球体自身が光を放っている。幻想的で優しい光ではない、明るく活発的な光。
そこで私は、あれが太陽だと理解した。
なんだこの世界は。太陽が出てるのに辺りは真っ暗。そして足元は未だに浸水している。
よく耳を澄ますと、狼の遠吠えが聞こえる。狼が見えた。しかも、発光している?
これほど暗いのに、狼は輪郭まではっきり見える。周りに木々があり、自然のど真ん中ということが目で見えた。
しかし私自身の手は果たして動いているのかさえ分からない。それほど暗い。
とにかく、このままじゃ私は凍死か孤独死の運命だ。
何か見つけるまで、ここから帰れるまで、歩くことにした。
続く
「お、●●?」
なんということだ。家を出て数分、クラスメイトと会ってしまった...。たしか、彼の名前は...
「えっと、ウマフチくんだっけ。」
「チャウチャウ![漢字]馬渕[/漢字][ふりがな]まぶち[/ふりがな]だよ、馬渕!」
馬渕健吾はクラスでもかなりイケメンな方で、おちゃらけてるのに茶道部部長というギャップで人気を得ている。
「俺さぁ、お前と”マブダチ”になりたくて、ずっと探してたんだよ!あ、今馬渕とマブダチかけたの分かった!?やっぱ俺天才?」
[小文字]「...めんどくさ」[/小文字]
「え?なんか言った?」
「いや、なんでもないよ。あと、私これから神社に...」
「ええ!?お前用事あんのぉ?神社まで迷わねぇ?まあいいや。じゃあ、帰来●●。お前、ちゃんと’’帰’’って’’来’’いよ?」
「...」
「あ。今、帰来と帰って来いかけたの分かった?やっぱ俺天才!?アハハハサイコー!」
よし、チャンスだ!アイツは一人で爆笑してる!
今のうちに逃げるぞ!
馬渕から逃走していると、いつの間にか町の中心部に着いていた。
●●は神社がどこにあるか把握していなかったが、生憎スマホは持ち合わせていなかった。
そして人付き合いが苦手であり、親しくもない町の人々に道案内を頼むのは何だかとても恐ろしかった。
結局、●●は迷子になった。
太陽は西に沈みかけ、もう諦めようかと思った矢先。
前方に、古い建物が目に入った。
何なのかは分からないが、どこか惹かれるものがある。もう少し歩いて、それが目的の神社だと分かった。
足取りが一気に軽くなる。弾むように、吸い寄せられるように、神社に全身を投じる。
[太字][大文字]『架夜神社』[/大文字][/太字]
その文字がとても壮大で豪華に感じた。●●は嬉しかった。人に伝えようのないこの喜び。これは自分でも異常だと感じられた。
神社はかなり古い。というか脆そうだ。震度3でも崩れそうなほどに。一方で華やかな、美しい建物でもあった。
架夜神社には絵馬掛けどころがある。かなりの量の絵馬が掛けられていた。
●●は絵馬に書かれた願いを少し読んでみた。
「東大に絶対受かれ!!」
「理仁クンと付き合えますように♡」
[明朝体]「嘉縁がいなくなりますように。」[/明朝体]
「おかーさのねかいかなうよーに」
「おじいちゃんが死んでくれますように」
絵馬には平和に紛れて不穏もあった。
●●は少しずつ、ここは何かがおかしい場所だと思い始めた。
しかし、もう遅かった。
猛烈な目眩。足が竦む。吐き気がする。脳が激しく蠢くようだ。
ぐるんと、何かが動いた。
[水平線]
「え...なにコレ...」
真っ暗だ。何も見えない。もう夜になったの?足が冷たい。そうか、私は水に浸かっているのか?
下から水の跳ねる音がする。
勇気を振り絞って、少しずつ歩む。一歩一歩が重かった。
できるだけ、水がないところを目指して、夢中に歩く。
ふと真上を見上げると、月があった。今が夜であることは確実に思えた。
...じゃあ、なんで私は眩しくて目を細めたの?
生まれてこれまで月を見て眩しいなんて、思ったことがない。
そういえば、月の表面にある模様(?)みたいなものもない。
まるで球体自身が光を放っている。幻想的で優しい光ではない、明るく活発的な光。
そこで私は、あれが太陽だと理解した。
なんだこの世界は。太陽が出てるのに辺りは真っ暗。そして足元は未だに浸水している。
よく耳を澄ますと、狼の遠吠えが聞こえる。狼が見えた。しかも、発光している?
これほど暗いのに、狼は輪郭まではっきり見える。周りに木々があり、自然のど真ん中ということが目で見えた。
しかし私自身の手は果たして動いているのかさえ分からない。それほど暗い。
とにかく、このままじゃ私は凍死か孤独死の運命だ。
何か見つけるまで、ここから帰れるまで、歩くことにした。
続く