二次創作
スパイボーイズ後日談 拝啓、みんなへ
#1
拝啓 先代スパイボーイズへ
「……行ったかな。」
あっくんたちはテストだー!!!と騒ぎながら出口へと走っていった。
さて、ここらで報告の手紙を書くとしよう。
きっと彼らも、俺からの報告を待ちわびているはずだ。
机の中から紙と鉛筆を取り出し、机に向かう。
何から書こうか、そんな事は考えずとも、手が勝手に動き出した。
[水平線]
拝啓、みんなへ。
終わったよ。終わったんだ。全部、全部。
アクマ社は滅びたんだ。仇を取ったんだ。
……ねぇ。聞いて。
みんなにそっくりな子たちが、今のスパイボーイズなんだ。
不思議でしょ?
ほら、みんながいなくなって早数十年経つのにさ。
俺は、彼らを見た瞬間、みんなとの冒険の日々を思い出したんだ。
みんなと一緒だったのは、ほんの、ほんの数年なのに。
この数十年で忘れようと努力したのに。
俺の人生というパズルの、たった1ピースに過ぎないのに。
けれど、その1ピースは、他のどのピースより輝いているんだよ。
「Xさん、そっちにいるかな。」
あの日、あなたは突然現れた。彼らにとっての俺みたいに。
貴方によって、俺たちは彼らみたいにスパイボーイズになった。
小学四年生。まだまだ子ども、遊び盛りのときなのも同じ。顔すら、そっくり。
彼らと違っているのは、メンバーが【四人】ではなく、【五人】だったことだけだ。
そして、俺たちの体に刻みつけられていたのは、ひし形ではなく、五芒星。
……いや、今でも、俺の体に、深く深く刻みつけられている図形だ。
俺たちの最初で最後のミッションは、当時アクマ社が本拠地としていた城から国家秘密書類を奪い取ること。
俺たちは得意げだった。
選ばれた人っていうところが、かっこいいと思っていた。
絶対に負けないって思っていた。
主人公補正なんて、物語の中にしかないのにね……。
見張りにも誰にも見つからなかった。関門も通り抜けられた。
行けるって、楽勝だって、一瞬でも思ってしまったんだ。
ついに戦いの時が来た。あのときのアクマ社も、幹部は3人だった。
一人はブラックビーナスの父親、ブラックウラヌス。
ザックとガオガオは昔から幹部だった。
そういえば、最近、ブラックウラヌスは病で倒れたと聞いた。
ちょうど代替わりの、ちょっと混乱した時期だったのか。
ラッキー……と言っていいのかな?わかんないや。
何がともあれ俺たちは、アクマ社に何度も殴りかかったよな。
戦いに慣れていない体で何度も。
けれど、負けた。俺たち、相手を過信しすぎたんだ。
しかも俺たちは全員、超進化できていなかった。
超進化のことすら知らなかった。
八回目に殴りかかった後は、みんなで逃げた。
このままじゃ勝てないとわかったから。
子供の足で、大人に敵うはずもないのに全力で。
追いつかれて、俺だけ縮こまってしまったのも覚えてる。
流石にカッコ悪かったよな。
みんなのもとで笑い話の種になってなければいいけど。
……先代Xは当然テレポーテーションができなかった。
だから、先代Xは俺達を直接助けに来たっけ。
先代Xは相当な武闘派。まるでみんなのようだったよ。
俺たちが太刀打ちできなかった三人を、一気に抑えてみせた。
その背中が、どうにもかっこよかった。
けれど、流石に三対一はきつくて、Xは何も残さず、俺たちを守るために消えてしまった。
俺たちを守って死んでしまった。
最期に、俺たちを城から逃がしてさ。
俺は、あのときのことを一生忘れないと思う。
―絶対おっちゃんの仇とりましょう!―
―僕らならできますよ!―
―絶対に、次こそ負けません。―
―もうこれ以上、煮え湯飲まされてばっかじゃいられんでしょ。―
やっぱりみんなは勇敢だったね。
死んでしまったXの姿が俺の脳裏に浮かんでは消えていた。
止めればよかったんだ。やっぱり子どもがこんな事するべきじゃないって。
でも、止められなかった。
俺が内心ヒーロー好きだったのもあるんだろうけど。
また、俺たちはアクマ社と戦った。体はボロボロだった。
それでも戦い続けた。けれど、無駄だった。
一人、一人と倒れていった。
俺は最後に残ってしまった。恐怖が、痛みが、体を飲み込んでいった。
その時、体が勝手に動いたんだ。
一瞬にして俺の体は、別の場所にテレポーテーションしていた。
これが、俺の超進化だよ。といっても別に攻撃に転用はできないけれど。
ぽん、と放り出された見知らぬ森の中で、みんなの名を呼び続けた。
返事が返ってくることはなかったけど。
俺はそのまま森を彷徨って、一人で寂しく家に帰ったんだ。
母さんは何もしらないから、いつものようにお帰り、と言ってくれた。
それに、どんなに救われたことか。
……ねぇ、聞いて?
次の日になって、いつもみたいに学校に行ったんだ。
行きたくなかったけど、行くしかなかった。
で、行ってみて、何を見たと思う?
みんなの席に、知らない子が座っていたんだ。
誰に聞いても、みんなの名前を知っている人はいなかったんだよ!?
みんなのこと、忘れ去られていたんだ。
信じられないだろ?みんな、あんなに人気者だったっていうのにさ。
どうして忘れ去られたのか、俺にはさっぱり。なんにもわかんない。
でも、ちょっと悔しかった。
みんなが消えて、その記憶が全部、この世界から消えてしまったのは。
だから、あの後俺は、約束を守るためにXさんになりきったんだ。
Xさんの家も、見つけたよ。今は本部って呼んでる。
絶対にアクマ社を倒す。そのために新しいスパイボーイズが必要だ。
この数十年、それだけを考えて生きてきた。
探して、探して、そして、見つけた。彼らを。
あっくん、よっしーくん、ぐっちくん、とんきちくん。
彼らこそ、次代のスパイボーイズだった。
最初はちょっと怪しがられたけど、何度か行ってみたら心を許してくれた。
彼らと関わって思ったんだ。
もう二度とあんな失敗はしたくないって。
だから、彼らの命が危険な時に、信号も送られるようにした。
離れたところから他人をテレポーテーションさせる練習もした。
医学を学んだり、スパイボーイズについて徹底的に調べたり。
超進化もちゃんと調べて、教えて、それを彼らは身につけた。
そして………アクマ社を倒したんだ。
最期にみんなは言ったよね?
―いつか絶対、アクマ社を倒してください。― って。
ねぇ、見てよ。倒したのは俺じゃないけどさ。
ほら、ねぇ。約束、守ったよ。守れたよ。守れたんだよ。
もう、アクマ社はこの世に存在しない。
けれど、残党たちがいつか立ち上がらないとも限らない。
いつか、他の悪の組織がつくられないとも限らない。
これからも、彼らのスパイボーイズとしての物語は続いていくだろうね。
それで、俺のXとしての物語も続いていくんだ。
だから、俺はまだそっちに行けないや。
行きたいけど、彼らを、スパイボーイズを、助けなきゃね。
この物語が終わるのは、自分の命が尽きる、その日。
ねぇ先代スパイボーイズさん。
まだまだこの物語の終わりまでは長いけど、空から見守っていてくれるかな?
ずぅぅっと俺の側にいてくれるかな?
その答えが、もし、もし、YESなら、、、、。
また会えるその日には、みんなで一緒に遊ぼうね。
敬具
次代Xより
[水平線]
書き終えた。鉛筆と紙を置き、一つ伸びをした。
ふと、風が俺の横を通り抜けていく。屋内なのに。
「そんなの誰でもできますねぇ。」
「ずっと見とるよ!」
「大丈夫。」
「任せて!」
みんなの声。懐かしい。あぁ。あぁ!!
大丈夫だよ。生きていくよ、これからも。名もなきXとして。
あの恐怖をなかったことにしないためにも。
この世界を守っていくよ。
俺は。俺たちは。今も。これからも。
「“スパイボーイズ”なんだから。」
あっくんたちはテストだー!!!と騒ぎながら出口へと走っていった。
さて、ここらで報告の手紙を書くとしよう。
きっと彼らも、俺からの報告を待ちわびているはずだ。
机の中から紙と鉛筆を取り出し、机に向かう。
何から書こうか、そんな事は考えずとも、手が勝手に動き出した。
[水平線]
拝啓、みんなへ。
終わったよ。終わったんだ。全部、全部。
アクマ社は滅びたんだ。仇を取ったんだ。
……ねぇ。聞いて。
みんなにそっくりな子たちが、今のスパイボーイズなんだ。
不思議でしょ?
ほら、みんながいなくなって早数十年経つのにさ。
俺は、彼らを見た瞬間、みんなとの冒険の日々を思い出したんだ。
みんなと一緒だったのは、ほんの、ほんの数年なのに。
この数十年で忘れようと努力したのに。
俺の人生というパズルの、たった1ピースに過ぎないのに。
けれど、その1ピースは、他のどのピースより輝いているんだよ。
「Xさん、そっちにいるかな。」
あの日、あなたは突然現れた。彼らにとっての俺みたいに。
貴方によって、俺たちは彼らみたいにスパイボーイズになった。
小学四年生。まだまだ子ども、遊び盛りのときなのも同じ。顔すら、そっくり。
彼らと違っているのは、メンバーが【四人】ではなく、【五人】だったことだけだ。
そして、俺たちの体に刻みつけられていたのは、ひし形ではなく、五芒星。
……いや、今でも、俺の体に、深く深く刻みつけられている図形だ。
俺たちの最初で最後のミッションは、当時アクマ社が本拠地としていた城から国家秘密書類を奪い取ること。
俺たちは得意げだった。
選ばれた人っていうところが、かっこいいと思っていた。
絶対に負けないって思っていた。
主人公補正なんて、物語の中にしかないのにね……。
見張りにも誰にも見つからなかった。関門も通り抜けられた。
行けるって、楽勝だって、一瞬でも思ってしまったんだ。
ついに戦いの時が来た。あのときのアクマ社も、幹部は3人だった。
一人はブラックビーナスの父親、ブラックウラヌス。
ザックとガオガオは昔から幹部だった。
そういえば、最近、ブラックウラヌスは病で倒れたと聞いた。
ちょうど代替わりの、ちょっと混乱した時期だったのか。
ラッキー……と言っていいのかな?わかんないや。
何がともあれ俺たちは、アクマ社に何度も殴りかかったよな。
戦いに慣れていない体で何度も。
けれど、負けた。俺たち、相手を過信しすぎたんだ。
しかも俺たちは全員、超進化できていなかった。
超進化のことすら知らなかった。
八回目に殴りかかった後は、みんなで逃げた。
このままじゃ勝てないとわかったから。
子供の足で、大人に敵うはずもないのに全力で。
追いつかれて、俺だけ縮こまってしまったのも覚えてる。
流石にカッコ悪かったよな。
みんなのもとで笑い話の種になってなければいいけど。
……先代Xは当然テレポーテーションができなかった。
だから、先代Xは俺達を直接助けに来たっけ。
先代Xは相当な武闘派。まるでみんなのようだったよ。
俺たちが太刀打ちできなかった三人を、一気に抑えてみせた。
その背中が、どうにもかっこよかった。
けれど、流石に三対一はきつくて、Xは何も残さず、俺たちを守るために消えてしまった。
俺たちを守って死んでしまった。
最期に、俺たちを城から逃がしてさ。
俺は、あのときのことを一生忘れないと思う。
―絶対おっちゃんの仇とりましょう!―
―僕らならできますよ!―
―絶対に、次こそ負けません。―
―もうこれ以上、煮え湯飲まされてばっかじゃいられんでしょ。―
やっぱりみんなは勇敢だったね。
死んでしまったXの姿が俺の脳裏に浮かんでは消えていた。
止めればよかったんだ。やっぱり子どもがこんな事するべきじゃないって。
でも、止められなかった。
俺が内心ヒーロー好きだったのもあるんだろうけど。
また、俺たちはアクマ社と戦った。体はボロボロだった。
それでも戦い続けた。けれど、無駄だった。
一人、一人と倒れていった。
俺は最後に残ってしまった。恐怖が、痛みが、体を飲み込んでいった。
その時、体が勝手に動いたんだ。
一瞬にして俺の体は、別の場所にテレポーテーションしていた。
これが、俺の超進化だよ。といっても別に攻撃に転用はできないけれど。
ぽん、と放り出された見知らぬ森の中で、みんなの名を呼び続けた。
返事が返ってくることはなかったけど。
俺はそのまま森を彷徨って、一人で寂しく家に帰ったんだ。
母さんは何もしらないから、いつものようにお帰り、と言ってくれた。
それに、どんなに救われたことか。
……ねぇ、聞いて?
次の日になって、いつもみたいに学校に行ったんだ。
行きたくなかったけど、行くしかなかった。
で、行ってみて、何を見たと思う?
みんなの席に、知らない子が座っていたんだ。
誰に聞いても、みんなの名前を知っている人はいなかったんだよ!?
みんなのこと、忘れ去られていたんだ。
信じられないだろ?みんな、あんなに人気者だったっていうのにさ。
どうして忘れ去られたのか、俺にはさっぱり。なんにもわかんない。
でも、ちょっと悔しかった。
みんなが消えて、その記憶が全部、この世界から消えてしまったのは。
だから、あの後俺は、約束を守るためにXさんになりきったんだ。
Xさんの家も、見つけたよ。今は本部って呼んでる。
絶対にアクマ社を倒す。そのために新しいスパイボーイズが必要だ。
この数十年、それだけを考えて生きてきた。
探して、探して、そして、見つけた。彼らを。
あっくん、よっしーくん、ぐっちくん、とんきちくん。
彼らこそ、次代のスパイボーイズだった。
最初はちょっと怪しがられたけど、何度か行ってみたら心を許してくれた。
彼らと関わって思ったんだ。
もう二度とあんな失敗はしたくないって。
だから、彼らの命が危険な時に、信号も送られるようにした。
離れたところから他人をテレポーテーションさせる練習もした。
医学を学んだり、スパイボーイズについて徹底的に調べたり。
超進化もちゃんと調べて、教えて、それを彼らは身につけた。
そして………アクマ社を倒したんだ。
最期にみんなは言ったよね?
―いつか絶対、アクマ社を倒してください。― って。
ねぇ、見てよ。倒したのは俺じゃないけどさ。
ほら、ねぇ。約束、守ったよ。守れたよ。守れたんだよ。
もう、アクマ社はこの世に存在しない。
けれど、残党たちがいつか立ち上がらないとも限らない。
いつか、他の悪の組織がつくられないとも限らない。
これからも、彼らのスパイボーイズとしての物語は続いていくだろうね。
それで、俺のXとしての物語も続いていくんだ。
だから、俺はまだそっちに行けないや。
行きたいけど、彼らを、スパイボーイズを、助けなきゃね。
この物語が終わるのは、自分の命が尽きる、その日。
ねぇ先代スパイボーイズさん。
まだまだこの物語の終わりまでは長いけど、空から見守っていてくれるかな?
ずぅぅっと俺の側にいてくれるかな?
その答えが、もし、もし、YESなら、、、、。
また会えるその日には、みんなで一緒に遊ぼうね。
敬具
次代Xより
[水平線]
書き終えた。鉛筆と紙を置き、一つ伸びをした。
ふと、風が俺の横を通り抜けていく。屋内なのに。
「そんなの誰でもできますねぇ。」
「ずっと見とるよ!」
「大丈夫。」
「任せて!」
みんなの声。懐かしい。あぁ。あぁ!!
大丈夫だよ。生きていくよ、これからも。名もなきXとして。
あの恐怖をなかったことにしないためにも。
この世界を守っていくよ。
俺は。俺たちは。今も。これからも。
「“スパイボーイズ”なんだから。」
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