二次創作
# 最愛の君へ銃口を .
ターゲットの家の前で車が止まる。
目の前にそびえ立つ荘厳な門をくぐると、広大な庭園の奥に、光を放つ宮殿のような屋敷が見えた。
今夜はパーティーが開催されているらしく、楽しげな音楽と人々のざわめきが聞こえてくる。
俺はスーツの襟を正し、邸宅のドアを叩いた。
完璧な執事を演じなければならない。
その意を胸に。
ドアが開き、年老いた執事が俺を迎え入れてくれた。
その案内で、俺は華やかなパーティー会場へと足を踏み入れる。
シャンデリアの光が眩しく、ドレスやタキシードを身につけた人々がグラスを傾けていた。
俺は給仕の指示を受け、トレイに並んだシャンパンを手に、ゲストの間を縫うように歩き始めた。
( ボスが言っていた潜入済みエージェントが見つからん ... )
怪しまれぬ様そっと辺りを見渡すも、それらしき影は見つからない。
( 性別も分からんからな ... 相当の手練れとしか思えない )
そして、自身の雰囲気を別人にまで変える腕前を持っている同業者を、俺は一人しか知らない。
その時、一人の女性が視界に入った。
周りの男たちがあまりの美貌に少し騒ぎ始める。
( ターゲットに ... 女性の影?資料には無かったはずなんやけどな。)
彼女は、俺が探していたジュリアス・ウィンザーの隣にいた。
光を浴びて輝く、見覚えのある髪色。
顔立ちはメイクで誤魔化しているんだろうが、訓練された機敏な動きは隠しきれていなかった。
煌びやかなドレスをまとい、ジュリアスの腕に優しく寄り添う姿。
彼女が俺を見つけた瞬間、一瞬、その瞳が凍りついたように見えた。
「[小文字]○○ッ ... !?[/小文字]」
危うく、高級そうなシャンパンが入ったグラスを落とすところだった。
息が、出来なかった。
俺の恋人。
なぜ、ここに?なぜ、ターゲットと?
給仕の手を止め、トレイを握りしめる俺に、先輩執事が鋭い視線を送ってくる。
俺は、まるで何もなかったかのように再び歩き出した。
心臓は激しいドラムのように鼓動し、頭の中はボスの言葉が木霊していた。
[太字]「仲間を殺しても構わない」[/太字]…
俺は、完璧な執事を演じながら、愛する人が敵の腕の中にいるという、悪夢のような現実を前に、任務の第一歩を踏み出した。