想い出は友情、時々希望。
あれから大人になって、
とりあえず廃屋に住んだ。
家を買うお金はないし、職がまず見つからない。
黄夏「どーしようっかなー。このままだと死んじまうぞー」
公園のベンチでゆったりそんなことを呟いていたその時。
「…あのー…」
黄夏「はい?」
「あなた大丈夫?…髪の毛ぼさぼさだし…」
黄夏「あー、あはは、大丈夫といえば大丈夫だしー。大丈夫じゃないといえば大丈夫じゃないですねー。」
「…よし、いったん私の家に来なさい?」
黄夏「?」
「私は[太字]求真レイル[/太字]…あ、怪しくないから。」
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それから、ちょっとばかりレイルさんの家に居候する日々が始まった。
レイル「黄夏ちゃん、ごめんねー?私も言うほど豊かじゃないからそんなにいいご飯は出せないけど…
職を紹介することぐらいは出来るし、ね?」
そうして笑ってくれる姿に居心地よさを感じて。
あれからレイルさんが頑張ってくれて、私はレイルさんと同じ会社で働くことになった。
呼び方も職場の方でのやつに慣れちゃって「先輩」呼びになった。
そんなある日。
黄夏「レイル先輩、お皿片付けましたよ…」
レイル「[小文字]…もしもし、お母さん?[/小文字]」
黄夏「…っ」
暗がりで電話口にそう言うレイル先輩の姿を見た。
「[小文字][小文字]ねえまだなの仕送り?シエルを教育しなきゃいけないんだからさっさと全額頂戴よ[/小文字][/小文字]」
もっと小さな声で、女性…レイル先輩の母だろう。
その声がそう急かす。
黄夏「…そっか…だから…」
あんなに働いても、生活がギリギリなのは…
お金を母にたくさん流してたからなんだ。
黄夏「…」
息をする音も聞かせたくない。
その場から静かに立ち去った。
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レイル「本当にいいの?」
黄夏「大丈夫ですよ、わたしも職ありますし。」
それからすぐ、レイルさんの家を出る決断をした。
少ない生活費を、わたしのために使わせないように。
もっと早くこうしてればよかったけど…
黄夏「それじゃ、長いことお邪魔しました」
もともと住んでた廃屋に住処を戻し、わたしは家を後にした。
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神威視点
神威「……そんなことが…」
黄夏さんは長い話を終えて、ふう、と息をついていた。
正直、言葉が出ない。
自分の幼少期とは比べるにも値しない過去を、目の前の方は超えてきたということに。
黄夏「うん…」
レイル「数年後に黄夏ちゃんから家買ったよって言われた時、私嬉しかったわよ。
…それにしても、そっか…あの電話聞いてたのね」
シエル「廃屋住んでたのってそういうことだったんだ…」
黄夏「…どうしよっかな。これから」
黄夏「通報してビークイーンを壊滅させて…それで終わりだと思ってたからさ。
まさか姉が生きてて、新しく組織作ってわたしを追ってたなんて…」
ソプラノ「かなりしぶといものだね…」
レイル「…黄夏ちゃん、組織になんか行かないわよね?」
黄夏「…」
レイル「だって黄夏ちゃんがいなかったら…装飾品を手に入れたって…」
黄夏「…大丈夫ですよ。わたしがあいつに屈するわけないです」
レイル「…そ、そうよね?」
黄夏「…」
神威「っ…」
笑いかけた黄夏さんが表情を変えたところに、ひとつの違和感を見つけて。
俺は嫌な予感に苛まれる。
____黄夏さんは、きっと_____
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黄夏視点
王巳「おっ!来たね?」
黄夏「…」
レイルさんに出会って、人を信じれるようにはなった。
___は?そりゃ一人で調べてたに決まってるでしょ。いい年した女が急に
『神のことが知りたい!一緒に調べて!!!』なんて言って信じてくれる人いないですよ。
でも、まだやっぱり信じてなかった。
___私たちは立派な仲間だ。
そうだね。
黄夏「…決まったよ、覚悟も…答えも」
王巳「…ふぅん?じゃあ聞かせてもらおうかな」
黄夏「[太字]…あんたの意見に…賛同させてもらう[/太字]」