彼女の名は[漢字]猪塚実花[/漢字][ふりがな]いのつかみか[/ふりがな]である。
実花はぼっちではない。
いじめられてもいない。
友達がいる。
だけど親友はいない。
習い事をしていない。
小6にもなって学童クラブに通っている。
友達といえる人も同級生には少ない。
休日はずっと家にいる。

実花は自分が頭がいいのを自覚している。
運動は得意じゃないが。
だけど六年生となると友達は増やしにくい。
中学生になったら友達はできるのか。
中学校の生活が心配である。

実花はこう思う。
もしも…
誰かが自分の好きなアニメの話題について話しかけてくれたら。
新発売のゲームについて話しかけてくれたら。
同じポポモンファンとして話しかけてくれたら。

実花の友達はみんなゲーム好きではない。
実花はかなりのゲーム好きなのに。
それはそうだ。
ゲームをしたことなさそうな見た目をしているから。
落ち着いた顔に眼鏡。
普段は物静かな自分を演じている。
別に美人でもない。
他人から見たらブスかもしれない。
六年間演じたキャラは変えられない。

今さらアニメ好き女子達の話にも入れない。　
今さら好きな人と話すこともできない。
今さらみんなのように趣味について話すことはできない。

クラスに自分より可哀想な人がいないからか。
クラスが明るすぎるからか。
クラスがアニヲタまみれだからか。

クラスでたった一人取り残されている気がする。

[大文字]もしも、もう一つの世界があったら[/大文字]