不遇水魔法使いの禁忌術式 オケアノスの塔
カチッカチッと盤上に駒を置く音が響く。今、俺と目の前にいるヴェルダーがやっているのはビットナイトという異世界のボードゲームだ。ルールはチェスに近いだろうか。
「それで旅にいつ行くかとかは決めたのか?オレももう騎士団は辞めたし、いつでもいいぞ」
駒を動かしながら尋ねられた。
「まだ予定はないかな。ただあんまり長くこの家に、いるつもりはないかな。話は変わるけど騎士団にいた頃の面白い話とかないか」
「それ私も聞きたいです!」
俺も駒を動かし質問をするとサーシャも興味津々で話に入ってきた。
「そうだな…まず前提として犯罪者は投獄または処刑、事情がある奴は追放の処分が下るんだが、王都の地下には例外としてかなりヤバい犯罪者が封印されてる」
「封印…」
「それで封印されるような犯罪者をオレは捕まえたことがある。そいつは本来なら処刑なんだがオレでも殺しきれなくてな」
「そんな奴がいるのか…」
「本人曰くほぼ不死身らしい。さて、余計な話は終えてこれでチェックメイトだ」
「またかよぉ」
「後で私と練習しましょう」
チェックメイトの宣言がされ対局が終了する。俺もサーシャもこのボードゲームでヴェルダーに勝ったことがない。サーシャの言う通り後で一緒に練習することにしよう。
[水平線]
同時刻 王都地下500mの地下牢にて
「ねぇ看守さん、いくら私が食べなくても生きていけるとはいえ食料の一つぐらいくれてもいいんじゃない? 私だってお腹は減るんだよ」
「黙ってろ。相変わらず不気味だな…」
牢屋の中の私に対して見張りをしている看守がそう答えた。不気味だと言われたのは心外だがしょうがないだろう。なぜなら私は牢屋の中でおびただしい数の剣に串刺しにされているからだ。それでも私は痛みを感じないし死ぬこともない。
「不死身だとか言ってたが今日はお前を殺しに魔法のプロが来る予定だ。ほら…早速来たぞ」
現れたのは魔導書のようなものを手に持った男だった。
「この女が例の不死身か?」
「ええ、そうです。いつもこうして串刺しにしているんですが全く死ぬ様子がないんですよ」
男の質問に看守が答えた。そのまま看守は牢の鍵を開け男を中に入れた。
「やあ、私はミリル・エルニアス。キミと同じ魔法使いだ。キミの名前は?」
「悪いが俺は名乗る気はない」
「そっか…でも魔法使い相手に無防備に近づいていいのかい?」
「その特別製の剣で魔力を練るのを封じているのはお前も分かっているだろう?大人しく不死身のカラクリを解析されて死ぬんだな」
そう言って男は私の銀髪に触れ解析を始めた。
「これは…回復魔法…水魔法の応用か。禁忌術式と言っても過言ではないものだな。どうやって回復魔法をここまで昇華させたんだ?」
「それを調べるのがキミの仕事なんじゃないかい。それに言っただろ?無防備に近づいていいのかって」
「何を──」
何かを言いかけた男の首が水の刃で刎ねられた。そのまま水の刃は串刺しの原因の剣を全て切断した。
「たとえ魔力を練れなくとも触れた相手の魔力を利用することだってできるのさ。まあ私より何段も下の魔法使いのキミには思いつかない発想か」
そうして体の自由を得た私は牢の外へ出ようとした。
「何をやったんだ!?この化け──」
叫んでいた看守の首も刎ねて今度こそ私は牢を出た。
「さて、まずはこの地下からの脱出から始めないとね」
不死身の水魔法使いが封印から解き放たれた。
「それで旅にいつ行くかとかは決めたのか?オレももう騎士団は辞めたし、いつでもいいぞ」
駒を動かしながら尋ねられた。
「まだ予定はないかな。ただあんまり長くこの家に、いるつもりはないかな。話は変わるけど騎士団にいた頃の面白い話とかないか」
「それ私も聞きたいです!」
俺も駒を動かし質問をするとサーシャも興味津々で話に入ってきた。
「そうだな…まず前提として犯罪者は投獄または処刑、事情がある奴は追放の処分が下るんだが、王都の地下には例外としてかなりヤバい犯罪者が封印されてる」
「封印…」
「それで封印されるような犯罪者をオレは捕まえたことがある。そいつは本来なら処刑なんだがオレでも殺しきれなくてな」
「そんな奴がいるのか…」
「本人曰くほぼ不死身らしい。さて、余計な話は終えてこれでチェックメイトだ」
「またかよぉ」
「後で私と練習しましょう」
チェックメイトの宣言がされ対局が終了する。俺もサーシャもこのボードゲームでヴェルダーに勝ったことがない。サーシャの言う通り後で一緒に練習することにしよう。
[水平線]
同時刻 王都地下500mの地下牢にて
「ねぇ看守さん、いくら私が食べなくても生きていけるとはいえ食料の一つぐらいくれてもいいんじゃない? 私だってお腹は減るんだよ」
「黙ってろ。相変わらず不気味だな…」
牢屋の中の私に対して見張りをしている看守がそう答えた。不気味だと言われたのは心外だがしょうがないだろう。なぜなら私は牢屋の中でおびただしい数の剣に串刺しにされているからだ。それでも私は痛みを感じないし死ぬこともない。
「不死身だとか言ってたが今日はお前を殺しに魔法のプロが来る予定だ。ほら…早速来たぞ」
現れたのは魔導書のようなものを手に持った男だった。
「この女が例の不死身か?」
「ええ、そうです。いつもこうして串刺しにしているんですが全く死ぬ様子がないんですよ」
男の質問に看守が答えた。そのまま看守は牢の鍵を開け男を中に入れた。
「やあ、私はミリル・エルニアス。キミと同じ魔法使いだ。キミの名前は?」
「悪いが俺は名乗る気はない」
「そっか…でも魔法使い相手に無防備に近づいていいのかい?」
「その特別製の剣で魔力を練るのを封じているのはお前も分かっているだろう?大人しく不死身のカラクリを解析されて死ぬんだな」
そう言って男は私の銀髪に触れ解析を始めた。
「これは…回復魔法…水魔法の応用か。禁忌術式と言っても過言ではないものだな。どうやって回復魔法をここまで昇華させたんだ?」
「それを調べるのがキミの仕事なんじゃないかい。それに言っただろ?無防備に近づいていいのかって」
「何を──」
何かを言いかけた男の首が水の刃で刎ねられた。そのまま水の刃は串刺しの原因の剣を全て切断した。
「たとえ魔力を練れなくとも触れた相手の魔力を利用することだってできるのさ。まあ私より何段も下の魔法使いのキミには思いつかない発想か」
そうして体の自由を得た私は牢の外へ出ようとした。
「何をやったんだ!?この化け──」
叫んでいた看守の首も刎ねて今度こそ私は牢を出た。
「さて、まずはこの地下からの脱出から始めないとね」
不死身の水魔法使いが封印から解き放たれた。