不遇水魔法使いの禁忌術式 オケアノスの塔
荒れ狂う暴風、俺達はそれに飲み込まれた。
「2人とも無事か!?」
見渡すと2人は無事だった。なぜならその暴風は威嚇に過ぎなかったのだから。そして元凶の魔獣が空から舞い降りた。
「な…」
現れたのは緑色の竜だった。水竜より一回り大きく、翼がコウモリのそれのようだ。
「アレはワイバーンだな。昔、本で見たことがある」
ヴェルダーが解説を加える。どうやらクラーケンと同じく神話級の怪物らしい。ワイバーンは砂嵐の中を飛び回りこちらの様子を窺っている。その直後、すさまじい竜巻が発生しこっち向かってきた。
「(アクアレールガン)」
竜巻はサーシャの魔法と激突。オケアノスの塔を破壊した水の奔流だか、竜巻を相殺するに留まった。あの竜巻の威力は想像以上だった。すかさずヴェルダーが魔導ライフルで狙撃。しかしワイバーンの周りを吹き荒れる風によって軌道が逸れる上にワイバーンも高速で飛行するので当たらない。ワイバーンの反撃が始まった。
『(ご主人様!上だ!)』
デュランハルがそう叫んだ直後、上空から何かが降り注いだ。それは不可視の風の刃だった。目を凝らせば見えなくもないが砂嵐の中で捉えるのは困難だ。反応が遅れた。動きが間に合わない。避けられない。
風の刃によって血が噴き上がった。
だが攻撃を受けたのはヴェルダーだ。俺達2人を庇う形で全身を切り刻まれた。
「ヴェルダーさん!すぐ回復魔法をかけます!」
「大丈夫かおっさん!」
ヴェルダーは血塗れた体で砂の地面に倒れた。サーシャが回復魔法を使うために駆け寄った。だかワイバーンは攻撃の手を緩めない。また風の刃が降ってきた。
『(一度は見たんだ。ボクたちなら斬れるさ)』
「頼んだ」
サーシャがヴェルダーを治す間、俺が風の刃を防ぐ。デュランハルの言う通り完全に不可視というわけではないので何とか剣で防げる。だか風刃の雨は止まずに降り注ぎ続けた。
「どうにか打開策を見つけないとな」
[水平線]
オレは全身に風の刃を受け、倒れた。意識が朦朧とする。かなり深い傷だと思う。その証拠に走馬灯のように昔の記憶が蘇ってきた。
[水平線]
オレは小さい頃から強くなりたかった。強くなって何かをしたいのではなく最強の称号を手に入れることが夢だった。
18のときその夢のために騎士団に入った。だか不運なことに剣も魔法にも才能はなく鍛えたところで凡人止まりだった。
「剣も魔法も普通の凡才には騎士団に居場所なんかねぇぞ」
「お前が最強になりたいだなんて笑えるよな」
「強くなるのが夢とか…もっと現実見ろよ」
そう周りからは冷たく言われたが夢は諦めたくなかった。だから座学を鍛えた。戦術から始まり対人対魔物の知識、他にも各地の地理や歴史、果ては文学などを学び、知識量で強くなろうとした。そして知識があれば冷静になり、冷静になれば生き抜くことができた。実際オレより強い騎士は数多く死んだか、オレは死ななかった。
転機があったのは4年前、30のときだ。魔導ライフルという新兵器が開発されたのだ。これなら剣の才能も魔法の才能もいらない。オレが最強になるにはこれしかないと直感した。そして狙撃の能力を鍛えて鍛えて鍛え上げた。そして元々知識量や生き残るための戦術も合わさりオレは騎士団で最強になった。夢が叶ったと思ったが現実は厳しかった。
「騎士団でお前が最強だと?剣も魔法も使えない奴が何を言っているんだ」
「新兵器頼りなんて情けないな」
「今まで生き残るしか芸のなかった奴がいきなり最強名乗るなんて無理あるだろ」
任務でいくら結果を残しても、元々弱かったこともあり認められることはなかった。そして今回のこの任務だ。騎士団の奴らは魔獣の討伐なんてできると思っていない。追放者2人とまとめて魔獣の餌にするつもりだろう。オレは騎士団を見返したいわけじゃない。あんなところにいても意味はもうないだろう。だか最強になる夢は終わらせない。
だから何が相手でも負けたくない、剣士だろうと、魔法使いだろうと、魔物だろうと、圧倒的な強さを持つ魔獣だろうと──
[水平線]
意識がはっきりし目を開けることができた。
「よかった…まだ完全に回復させたわけじゃないので気をつけてください」
オレはその言葉を聞きながらも起き上がった。周りを見ると降り注ぐ風の刃をアマガサが全て防いでいる。
「この攻撃…いつまでアマガサが防げるかわからんだろ?」
「そうです…ですから一旦引いた方が…」
もちろんそれも手の1つだろう。だかワイバーンが素直に逃してくれるだろうか。そこである作戦を思いついた。
「オレは最強だ。だからオレの策に乗れ」
不遇な最強が夢のための戦いを始めた。
「2人とも無事か!?」
見渡すと2人は無事だった。なぜならその暴風は威嚇に過ぎなかったのだから。そして元凶の魔獣が空から舞い降りた。
「な…」
現れたのは緑色の竜だった。水竜より一回り大きく、翼がコウモリのそれのようだ。
「アレはワイバーンだな。昔、本で見たことがある」
ヴェルダーが解説を加える。どうやらクラーケンと同じく神話級の怪物らしい。ワイバーンは砂嵐の中を飛び回りこちらの様子を窺っている。その直後、すさまじい竜巻が発生しこっち向かってきた。
「(アクアレールガン)」
竜巻はサーシャの魔法と激突。オケアノスの塔を破壊した水の奔流だか、竜巻を相殺するに留まった。あの竜巻の威力は想像以上だった。すかさずヴェルダーが魔導ライフルで狙撃。しかしワイバーンの周りを吹き荒れる風によって軌道が逸れる上にワイバーンも高速で飛行するので当たらない。ワイバーンの反撃が始まった。
『(ご主人様!上だ!)』
デュランハルがそう叫んだ直後、上空から何かが降り注いだ。それは不可視の風の刃だった。目を凝らせば見えなくもないが砂嵐の中で捉えるのは困難だ。反応が遅れた。動きが間に合わない。避けられない。
風の刃によって血が噴き上がった。
だが攻撃を受けたのはヴェルダーだ。俺達2人を庇う形で全身を切り刻まれた。
「ヴェルダーさん!すぐ回復魔法をかけます!」
「大丈夫かおっさん!」
ヴェルダーは血塗れた体で砂の地面に倒れた。サーシャが回復魔法を使うために駆け寄った。だかワイバーンは攻撃の手を緩めない。また風の刃が降ってきた。
『(一度は見たんだ。ボクたちなら斬れるさ)』
「頼んだ」
サーシャがヴェルダーを治す間、俺が風の刃を防ぐ。デュランハルの言う通り完全に不可視というわけではないので何とか剣で防げる。だか風刃の雨は止まずに降り注ぎ続けた。
「どうにか打開策を見つけないとな」
[水平線]
オレは全身に風の刃を受け、倒れた。意識が朦朧とする。かなり深い傷だと思う。その証拠に走馬灯のように昔の記憶が蘇ってきた。
[水平線]
オレは小さい頃から強くなりたかった。強くなって何かをしたいのではなく最強の称号を手に入れることが夢だった。
18のときその夢のために騎士団に入った。だか不運なことに剣も魔法にも才能はなく鍛えたところで凡人止まりだった。
「剣も魔法も普通の凡才には騎士団に居場所なんかねぇぞ」
「お前が最強になりたいだなんて笑えるよな」
「強くなるのが夢とか…もっと現実見ろよ」
そう周りからは冷たく言われたが夢は諦めたくなかった。だから座学を鍛えた。戦術から始まり対人対魔物の知識、他にも各地の地理や歴史、果ては文学などを学び、知識量で強くなろうとした。そして知識があれば冷静になり、冷静になれば生き抜くことができた。実際オレより強い騎士は数多く死んだか、オレは死ななかった。
転機があったのは4年前、30のときだ。魔導ライフルという新兵器が開発されたのだ。これなら剣の才能も魔法の才能もいらない。オレが最強になるにはこれしかないと直感した。そして狙撃の能力を鍛えて鍛えて鍛え上げた。そして元々知識量や生き残るための戦術も合わさりオレは騎士団で最強になった。夢が叶ったと思ったが現実は厳しかった。
「騎士団でお前が最強だと?剣も魔法も使えない奴が何を言っているんだ」
「新兵器頼りなんて情けないな」
「今まで生き残るしか芸のなかった奴がいきなり最強名乗るなんて無理あるだろ」
任務でいくら結果を残しても、元々弱かったこともあり認められることはなかった。そして今回のこの任務だ。騎士団の奴らは魔獣の討伐なんてできると思っていない。追放者2人とまとめて魔獣の餌にするつもりだろう。オレは騎士団を見返したいわけじゃない。あんなところにいても意味はもうないだろう。だか最強になる夢は終わらせない。
だから何が相手でも負けたくない、剣士だろうと、魔法使いだろうと、魔物だろうと、圧倒的な強さを持つ魔獣だろうと──
[水平線]
意識がはっきりし目を開けることができた。
「よかった…まだ完全に回復させたわけじゃないので気をつけてください」
オレはその言葉を聞きながらも起き上がった。周りを見ると降り注ぐ風の刃をアマガサが全て防いでいる。
「この攻撃…いつまでアマガサが防げるかわからんだろ?」
「そうです…ですから一旦引いた方が…」
もちろんそれも手の1つだろう。だかワイバーンが素直に逃してくれるだろうか。そこである作戦を思いついた。
「オレは最強だ。だからオレの策に乗れ」
不遇な最強が夢のための戦いを始めた。