不遇水魔法使いの禁忌術式 オケアノスの塔
目の前にはクラーケンがいる、圧倒的な巨体を持つイカの魔獣だ。俺達が苦戦したあっさり水竜が喰われた現実が受け止められない。
「どのみち倒す予定だったんです。今この場で討伐しましょう。アクアガトリング!」
どうやらサーシャは事態を冷静に受け止めているようだ。そして水弾の連射をクラーケンに放った。触腕に当たるとクラーケンは血を流しダメージを与えられたようだ。だがあの大きさのほんの一部にダメージを与えただけだ。人間なら掠り傷程度の軽傷、致命傷どうやっても届かない。
クラーケンの反撃が始まった。触腕の一本を横薙ぎに振るう、技術も何もない、ただただ魔獣の巨体を使った攻撃。俺とサーシャはそれぞれ剣と魔法でガードしようとしたがそれも理不尽な暴力の前では意味なく吹き飛ばされた。十数mも吹き飛ばされ木に衝突した。
「ぐああっ!」
今までにない痛みとダメージで全身が悲鳴を上げる。
「体が…動かない…」
「お互い…生…きてますね…回復させます…アクアヒール」
2人の体を回復魔法の光が包み込みダメージを癒した。まだ全身が痛いが何とか動くことはできるだろう。起き上がると見えたのは湖の周りの森の木々が薙ぎ倒された惨状だった。
「これが…魔獣の力…」
俺が絶望し諦めかけたとき…
「策はあります。本当に一か八かですが。」
「本当か!?」
「封印魔法を使います。封印を解析したときについでに習得しました」
まさかの発言だ。あんな短時間で魔法を習得できるのか。サーシャがすごいのか、それともこの世界の魔法はすぐに習得できるものなのか、おそらく前者だということは少しの間だが一緒にいるのでよくわかった。
「封印は全属性の複合魔法って言ってなかったか?」
「ええ、ですから私が習得できたのは封印魔法の『水』の部分だけです。不完全なものなので前のように封印はできません。ですが一時的に動きを止めることはできます。せいぜい1分程度しか止められないのでその間に仕留めてください」
またしても無理難題を言い渡される。だかそんなことこの塔に来てからは日常茶飯事なので不思議と成功する自信があった。
クラーケンの攻撃が再開、今度は真上からの触腕の振り下ろし攻撃だ。
「大雨が降り注いで、豪雨が吹き荒れて、雷雨が轟いて
ーアクアプリズン」
俺達に直撃する寸前で触腕の動きが止まった。
「私は魔法の維持で動けません。援護はできないので気をつけて」
「了解!」
60ー俺は振り下ろされた触腕をよじ登り、そこから体の上を伝ってクラーケンの頭部へ向かって駆け出した。こうやって時間を数えるのはブリザードトレントとの戦いを思い出す。あれも今となっては懐かしいものだ。俺はそんな感慨を思いつつもデュランハルを強く握り締め直した。
魔獣討伐、その最後の1分間が始まった。
「どのみち倒す予定だったんです。今この場で討伐しましょう。アクアガトリング!」
どうやらサーシャは事態を冷静に受け止めているようだ。そして水弾の連射をクラーケンに放った。触腕に当たるとクラーケンは血を流しダメージを与えられたようだ。だがあの大きさのほんの一部にダメージを与えただけだ。人間なら掠り傷程度の軽傷、致命傷どうやっても届かない。
クラーケンの反撃が始まった。触腕の一本を横薙ぎに振るう、技術も何もない、ただただ魔獣の巨体を使った攻撃。俺とサーシャはそれぞれ剣と魔法でガードしようとしたがそれも理不尽な暴力の前では意味なく吹き飛ばされた。十数mも吹き飛ばされ木に衝突した。
「ぐああっ!」
今までにない痛みとダメージで全身が悲鳴を上げる。
「体が…動かない…」
「お互い…生…きてますね…回復させます…アクアヒール」
2人の体を回復魔法の光が包み込みダメージを癒した。まだ全身が痛いが何とか動くことはできるだろう。起き上がると見えたのは湖の周りの森の木々が薙ぎ倒された惨状だった。
「これが…魔獣の力…」
俺が絶望し諦めかけたとき…
「策はあります。本当に一か八かですが。」
「本当か!?」
「封印魔法を使います。封印を解析したときについでに習得しました」
まさかの発言だ。あんな短時間で魔法を習得できるのか。サーシャがすごいのか、それともこの世界の魔法はすぐに習得できるものなのか、おそらく前者だということは少しの間だが一緒にいるのでよくわかった。
「封印は全属性の複合魔法って言ってなかったか?」
「ええ、ですから私が習得できたのは封印魔法の『水』の部分だけです。不完全なものなので前のように封印はできません。ですが一時的に動きを止めることはできます。せいぜい1分程度しか止められないのでその間に仕留めてください」
またしても無理難題を言い渡される。だかそんなことこの塔に来てからは日常茶飯事なので不思議と成功する自信があった。
クラーケンの攻撃が再開、今度は真上からの触腕の振り下ろし攻撃だ。
「大雨が降り注いで、豪雨が吹き荒れて、雷雨が轟いて
ーアクアプリズン」
俺達に直撃する寸前で触腕の動きが止まった。
「私は魔法の維持で動けません。援護はできないので気をつけて」
「了解!」
60ー俺は振り下ろされた触腕をよじ登り、そこから体の上を伝ってクラーケンの頭部へ向かって駆け出した。こうやって時間を数えるのはブリザードトレントとの戦いを思い出す。あれも今となっては懐かしいものだ。俺はそんな感慨を思いつつもデュランハルを強く握り締め直した。
魔獣討伐、その最後の1分間が始まった。