「起きて…起きてください！」

誰かの声がする。気持ちよく寝ていたのに……というかベッドで寝ていたのにその感触が無くなっている。

「やっと起きましたか。いきなりですかあなたを異世界から召喚しました。」
「は？」

唐突にありえないことを言われて混乱するしかなかった。



落ち着いてきた頃ようやく話を聞くことができた。この街はライスタルトの街ということ、この世界には魔法があり召喚魔法もあること、今この街に危機が迫っていることがわかった。

「俺の置かれてる状況はわかったがこの街の危機ってなんだ？」
「ええと…まずこの街の近くの丘には『オケアノスの塔』というものがあるんですよ。その塔は何百年も前に人工雨雲を作り農業をするために建てられました。ですが数年前、魔物が住み着いて塔の機能が暴走し豪雨を降らせるようになったのです。」

確かに今も家の外で雨が降っている音がする。

「豪雨がそんなにやばいのか？」
「もちろんそれもありますが、それだけならなんとか生活できます。1番の問題はその塔が湖上にあり、水位が上がってきていて1年後には水が溢れこの街が水没するかもしれないことです。」

「それで何で俺を召喚したんだよ。特に何かできることはないぞ」
「豪雨を止めるには塔を制圧して機能を元に戻すしかないのですが、街の人は魔物を怖がって手伝ってくれないのです。」

彼女は一拍置いて怪しい笑みを浮かべながらさらに続けた。

「そこで異世界から召喚した人なら頼れる人をいないし、わからないことだらけなので手伝ってくれるんじゃないかって。そこで召喚魔法を学んで何とかあなたを呼び出したということです。」

最悪すぎる

「俺が断ったらどうするんだ」
「知らない土地で野垂れ死ぬことになりますね。」

彼女は性格悪い笑顔でそう言った。俺に拒否権はないらしい。

「わかったよ。塔の攻略手伝ってやるよ。」
「やったー！2人なら何とかできますよ！私は魔法使えますし！」
「…ところであなたの名前は何ですかこれから一連托生ですしそれぐらい知っておかないと」

俺はもう逃げられないらしい。怖い怖い。

「雨傘速秋だ」
「ハヤアキさんですね。私はサーシャ・アクエリオス。水の魔法使いです。」

そうして性悪魔法使いとの異世界での冒険が始まった。