二次創作
光の子守り人
それからどれくらい瓦礫を掻き分けていたか。必死になっていたところに、不思議な声が聞こえたのだ。なんて形容したらいいか分からないような、聞いたことのない言葉の声で。
「……?」私は顔を上げて驚いた。「うわぁ?!」
そこにいたのは、コウモリの羽をした小さな何かがいたのだ。頭には黒い角、顔は雪だるまのように白い。
こんな魔物、見たことないと思いながら私は手放したままだった杖を咄嗟に拾ったが、小さい魔物は攻撃してくる気配がない。私は一人首を傾げた。
「あ、いたいた。そんなところにおったんやね、子デビふくん」
「え」
次に声が聞こえてきて私はますます驚いた。よく知った仲間の声ではないことだけが分かり、恐怖心のまま目を上げる。
小さい魔物はまた聞いたこともないような声で鳴きながらその声の主の方へ飛んで行く。私は、用心深く声の主を観察したが……。
「こ、子ども……?」
そこにいたのは、子どもだった。六歳かそこら辺くらいの、子ども。
ただ、見た目は頭から角が生えていて、背中にコウモリのような羽があるという姿ではあるが、どう見ても子どもだった。白い髪と青い目をした。
「あ、こんちゃっちゃ。こんなところに人間さんがおるなんて珍しいなぁ」とどうやら人外の子どもが話す。「初めまして、僕はデビふくんのおらふくん。クワガタじゃないからね〜」
「クワガタ……」
そう言われると、確かにその子はクワガタムシに見えた。私がそう呟くと、おらふくんとやらはふわりと空を飛んで目の前まで詰め寄った。
「違いますよ、クワガタじゃないです!」
と膨れるおらふくんがあまりにも可愛くて可笑しくて。私が笑ってしまうと、その内におらふくんも諦めたように笑っていた。あまり悪い魔物? ではないみたいだ。
「それでお姉さん、こんなところで何してたん?」
ひとしきり笑い合ったあと、おらふくんが聞いてきてハッとした。そうだった。私は仲間を助けようとしていたんだ。
「仲間が、瓦礫の下に……」
そこまで言って言葉が詰まる。私の声はあまりにも震えていた。信じられない現実を、言葉にするとそれはますます恐怖を深めた。私は本当に、仲間を失ったのだろうか?
「え、お姉さんの仲間が瓦礫の下に入っちゃったの?」一方のおらふくんは目を丸くして驚いた。「分かった。僕も手伝ってあげる!」
「ありがとう……」
私はなんとかそう言ったが、手は動かなかった。瓦礫の下に、動かなくなった彼らがいたらどうしよう。そんな嫌なことばかり浮かんで手足が竦む。
そうとは知らないおらふくんは、小さな体で一つ一つ瓦礫を持ち上げて手伝ってくれていた。私もなんとかしないと。ようやく体を動かすと、もう一つの声が飛び込んで来た。
「おーい、おらふくん!」
「あ、ぼんさん!」
おらふくんが振り向いた先を見やると、またまた子どもが走ってきていた。紫の髪の毛に黒い眼鏡のようなものを掛けた子ども。パッと見人間にも見えたが、繊細な装飾が施された紫のマントとそこに纏うオーラが、彼は人間ではないと本能が囁いた。
「いきなりどこかに行くから心配したよ〜。ほら、みんな待ってるから行くよ……って、誰? その人」
と紫髪の男の子が私の視線とぶつかる。こんなに連続で人外と遭遇することもなくて私は一瞬怯んだが、相手は言葉の通じる魔物だし、普通に自己紹介することにした。
「私は●●。この遺跡を調査していたの」
「チョウサ……?」
ぼんと呼ばれていた彼がきょとんとする。子どもには難しい言葉だったかな。
「遺跡のことを調べていたの。君たちは、この遺跡のことを何か知って……」
「丁度良かった!」とぼんが大きな声をあげる。「俺たちも困ってたんだよな〜! なんで俺たちがここにいたか覚えてないんだよ!」
「え」
「おーい、みんな! この人間はここのチョーサをしていたんだって! 俺たちのことも分かるかも!」
「え、ちょ、ちょっと待って……」
ぼんが次々と話を進め、追いつかない私は困惑するばかりだ。
「本当ですか? ぼんさん」
そうこうしている内に、奥からまた別の声がした。見るとそこには、三人の魔物の子どもたちが。
「俺たちって、人間と関わっちゃいけないんじゃないです?」
顔に札を貼っている緑髪の魔物少年と、
「でも誰がそんなこと言ったんだよ、おんりー」
豚の顔をした魔物の子ども……。
「それは……覚えていないけど……」
と言う、おんりーと呼ばれた少年が俯く。そこに、最初に出てきた半裸の魔物子どもが話し始めた。
「こんにちは、●●さん。僕たち、自分の名前と自分が魔物だってこと以外、何も覚えていないんだ。僕たちのことが分かる?」
「ええ……っ?」
どうやら私は、記憶喪失の魔物の子どもたちと、出会ったようである。
「……?」私は顔を上げて驚いた。「うわぁ?!」
そこにいたのは、コウモリの羽をした小さな何かがいたのだ。頭には黒い角、顔は雪だるまのように白い。
こんな魔物、見たことないと思いながら私は手放したままだった杖を咄嗟に拾ったが、小さい魔物は攻撃してくる気配がない。私は一人首を傾げた。
「あ、いたいた。そんなところにおったんやね、子デビふくん」
「え」
次に声が聞こえてきて私はますます驚いた。よく知った仲間の声ではないことだけが分かり、恐怖心のまま目を上げる。
小さい魔物はまた聞いたこともないような声で鳴きながらその声の主の方へ飛んで行く。私は、用心深く声の主を観察したが……。
「こ、子ども……?」
そこにいたのは、子どもだった。六歳かそこら辺くらいの、子ども。
ただ、見た目は頭から角が生えていて、背中にコウモリのような羽があるという姿ではあるが、どう見ても子どもだった。白い髪と青い目をした。
「あ、こんちゃっちゃ。こんなところに人間さんがおるなんて珍しいなぁ」とどうやら人外の子どもが話す。「初めまして、僕はデビふくんのおらふくん。クワガタじゃないからね〜」
「クワガタ……」
そう言われると、確かにその子はクワガタムシに見えた。私がそう呟くと、おらふくんとやらはふわりと空を飛んで目の前まで詰め寄った。
「違いますよ、クワガタじゃないです!」
と膨れるおらふくんがあまりにも可愛くて可笑しくて。私が笑ってしまうと、その内におらふくんも諦めたように笑っていた。あまり悪い魔物? ではないみたいだ。
「それでお姉さん、こんなところで何してたん?」
ひとしきり笑い合ったあと、おらふくんが聞いてきてハッとした。そうだった。私は仲間を助けようとしていたんだ。
「仲間が、瓦礫の下に……」
そこまで言って言葉が詰まる。私の声はあまりにも震えていた。信じられない現実を、言葉にするとそれはますます恐怖を深めた。私は本当に、仲間を失ったのだろうか?
「え、お姉さんの仲間が瓦礫の下に入っちゃったの?」一方のおらふくんは目を丸くして驚いた。「分かった。僕も手伝ってあげる!」
「ありがとう……」
私はなんとかそう言ったが、手は動かなかった。瓦礫の下に、動かなくなった彼らがいたらどうしよう。そんな嫌なことばかり浮かんで手足が竦む。
そうとは知らないおらふくんは、小さな体で一つ一つ瓦礫を持ち上げて手伝ってくれていた。私もなんとかしないと。ようやく体を動かすと、もう一つの声が飛び込んで来た。
「おーい、おらふくん!」
「あ、ぼんさん!」
おらふくんが振り向いた先を見やると、またまた子どもが走ってきていた。紫の髪の毛に黒い眼鏡のようなものを掛けた子ども。パッと見人間にも見えたが、繊細な装飾が施された紫のマントとそこに纏うオーラが、彼は人間ではないと本能が囁いた。
「いきなりどこかに行くから心配したよ〜。ほら、みんな待ってるから行くよ……って、誰? その人」
と紫髪の男の子が私の視線とぶつかる。こんなに連続で人外と遭遇することもなくて私は一瞬怯んだが、相手は言葉の通じる魔物だし、普通に自己紹介することにした。
「私は●●。この遺跡を調査していたの」
「チョウサ……?」
ぼんと呼ばれていた彼がきょとんとする。子どもには難しい言葉だったかな。
「遺跡のことを調べていたの。君たちは、この遺跡のことを何か知って……」
「丁度良かった!」とぼんが大きな声をあげる。「俺たちも困ってたんだよな〜! なんで俺たちがここにいたか覚えてないんだよ!」
「え」
「おーい、みんな! この人間はここのチョーサをしていたんだって! 俺たちのことも分かるかも!」
「え、ちょ、ちょっと待って……」
ぼんが次々と話を進め、追いつかない私は困惑するばかりだ。
「本当ですか? ぼんさん」
そうこうしている内に、奥からまた別の声がした。見るとそこには、三人の魔物の子どもたちが。
「俺たちって、人間と関わっちゃいけないんじゃないです?」
顔に札を貼っている緑髪の魔物少年と、
「でも誰がそんなこと言ったんだよ、おんりー」
豚の顔をした魔物の子ども……。
「それは……覚えていないけど……」
と言う、おんりーと呼ばれた少年が俯く。そこに、最初に出てきた半裸の魔物子どもが話し始めた。
「こんにちは、●●さん。僕たち、自分の名前と自分が魔物だってこと以外、何も覚えていないんだ。僕たちのことが分かる?」
「ええ……っ?」
どうやら私は、記憶喪失の魔物の子どもたちと、出会ったようである。