二次創作
光の子守り人
その後、私たちは魔王城をあとにした。
怪我を治した魔王たちはすでに戦う気力を失っていて、何もする必要がなかったのだ。
ただ一人、ハルトくんはフラフラしながら立ち上がって私に問いただした。
「お前は……●●、君は、俺や魔王のことを恨んでいないのか……?」
私は首を振って、それ以上何も言わなかった。
それから私たちはあの森に向かい、ドズル社と名乗るようになった彼ら五人と平穏に過ごすこととなった。魔王の動きはパタリと静かになり、同時に魔物たちは人々を襲わなくなったと聞いたけれど、それが魔王と関係しているのかは分からない。
「もし魔王がまた動き出したら、僕たちが戦うよ」
すっかり大人のフィジカルお化けになったドズルは私にそう言ったが、その必要はないと何度も言葉を返していた。もう誰も傷ついて欲しくなかったし、戦う必要があるなら、私ももう一度騎士として立ち上がるつもりだったからだ。
だけど、私の僧侶としての力は完全に失われていた。本来、転職しても前の職の魔法は継続出来るはずだったが、あの日、魔王たちの治療でほとんどの魔力を使い切ってしまい、私はただの魔力のない騎士となっていたのだ。
「怪我したら俺が治すから大丈夫」
とぼんは言ってくれたけど、魔物の彼からしたら治療の魔法は少し苦手のはず。それでも、ぼんの言葉は嬉しかったから、私はありがとうと言うだけに留めた。
「……ここにいていいんですか?」
おんりーは心配そうに、私にそう聞いてくることがあった。私が人里から離れて魔物である彼らと共に過ごすことを気にしていたのだと思う。でも、私の回答は変わらなかった。
「私の家は、ここだから」
人の街の方が楽だという面はあるけれど、何より私はドズル社が好きだ。あの日、何も言わずにこの森から離れてしまった詫びにはならないかもしれないけれど、私は、ここにいたかったから。
それに、変化したこともあった。
「ほら、クワガタがあっちに行ったぞ!」
「ほんとだ!」
「違うって! 僕はデビふくんのおらふくんだよ!」
森に時々遊びに来る子どもたちに追いかけられているのはおらふくんだ。見た目はすっかり大人の魔物になったけれど、二本の角と黒い翼が、子どもたちの目にはクワガタムシに見えるみたいだ。
「……きっと、未来は」
まだ、人と魔物が手を取り合って生きていくには様々な困難がある。人は魔物を恐れていたし、魔物も人を恐れていた。だけど、あのおらふくんと子どもたちみたいに、きっといつかは人と魔物が仲良く過ごす未来がくる。私はそう信じていた。
「おい、変な魔物が来たぞ!!」
そこに、MENが大きな声を上げて走ってきた。まだ気性の荒い魔物がいるのかもしれない。私は剣を手に取って立ち上がった。
「どんな魔物なの?」
「そう急くな、小さき者たちよ」
私が聞いた瞬間、その声は飛び込んできた。
私は、その魔物を見た瞬間言葉を失った。
「え……」
「私は元魔王、ザルベルクだ。ここに、人と魔物が協力し合う団体があると聞いてな。私と仲間たちを、その団体にぜひ加入させてもらいたい」その魔王が、私と目を合わせた。「……久しぶりだな、●●」
人と魔物が、歩み寄った瞬間だった。
おしまい
怪我を治した魔王たちはすでに戦う気力を失っていて、何もする必要がなかったのだ。
ただ一人、ハルトくんはフラフラしながら立ち上がって私に問いただした。
「お前は……●●、君は、俺や魔王のことを恨んでいないのか……?」
私は首を振って、それ以上何も言わなかった。
それから私たちはあの森に向かい、ドズル社と名乗るようになった彼ら五人と平穏に過ごすこととなった。魔王の動きはパタリと静かになり、同時に魔物たちは人々を襲わなくなったと聞いたけれど、それが魔王と関係しているのかは分からない。
「もし魔王がまた動き出したら、僕たちが戦うよ」
すっかり大人のフィジカルお化けになったドズルは私にそう言ったが、その必要はないと何度も言葉を返していた。もう誰も傷ついて欲しくなかったし、戦う必要があるなら、私ももう一度騎士として立ち上がるつもりだったからだ。
だけど、私の僧侶としての力は完全に失われていた。本来、転職しても前の職の魔法は継続出来るはずだったが、あの日、魔王たちの治療でほとんどの魔力を使い切ってしまい、私はただの魔力のない騎士となっていたのだ。
「怪我したら俺が治すから大丈夫」
とぼんは言ってくれたけど、魔物の彼からしたら治療の魔法は少し苦手のはず。それでも、ぼんの言葉は嬉しかったから、私はありがとうと言うだけに留めた。
「……ここにいていいんですか?」
おんりーは心配そうに、私にそう聞いてくることがあった。私が人里から離れて魔物である彼らと共に過ごすことを気にしていたのだと思う。でも、私の回答は変わらなかった。
「私の家は、ここだから」
人の街の方が楽だという面はあるけれど、何より私はドズル社が好きだ。あの日、何も言わずにこの森から離れてしまった詫びにはならないかもしれないけれど、私は、ここにいたかったから。
それに、変化したこともあった。
「ほら、クワガタがあっちに行ったぞ!」
「ほんとだ!」
「違うって! 僕はデビふくんのおらふくんだよ!」
森に時々遊びに来る子どもたちに追いかけられているのはおらふくんだ。見た目はすっかり大人の魔物になったけれど、二本の角と黒い翼が、子どもたちの目にはクワガタムシに見えるみたいだ。
「……きっと、未来は」
まだ、人と魔物が手を取り合って生きていくには様々な困難がある。人は魔物を恐れていたし、魔物も人を恐れていた。だけど、あのおらふくんと子どもたちみたいに、きっといつかは人と魔物が仲良く過ごす未来がくる。私はそう信じていた。
「おい、変な魔物が来たぞ!!」
そこに、MENが大きな声を上げて走ってきた。まだ気性の荒い魔物がいるのかもしれない。私は剣を手に取って立ち上がった。
「どんな魔物なの?」
「そう急くな、小さき者たちよ」
私が聞いた瞬間、その声は飛び込んできた。
私は、その魔物を見た瞬間言葉を失った。
「え……」
「私は元魔王、ザルベルクだ。ここに、人と魔物が協力し合う団体があると聞いてな。私と仲間たちを、その団体にぜひ加入させてもらいたい」その魔王が、私と目を合わせた。「……久しぶりだな、●●」
人と魔物が、歩み寄った瞬間だった。
おしまい