二次創作
光の子守り人
「え……?」
私は、自分の目を疑った。
赤毛の青年らしきソイツが、そう言いながら階段を下りて来て魔王の横に並ぶ。私はその顔を知っている。だけど昔は、そんな目つきなんてしていなかった。
「……勇者くん?」
私がずっと信じていた事実が、ガラガラと音を立てて崩れた。
かつての勇者と思しき彼は私には何も答えず、ゾロゾロとやって来た魔王幹部へ目を向けた。私は魔王幹部たちに、言葉を失った。
全員、勇者の仲間たちだ。
どうして? という疑問は言葉にならなかった。私はただただ、膝から崩れ落ちただけ。そんな私に、追い討ちをかけるように魔王が言うのだ。
「我らと共に世界征服をしよう。我らの敵は、別にある」
そこに、元勇者がこう言った。
「だけどアイツ、ずっと役に立たない僧侶だったんすよ。見た目は騎士の真似事をしてるみたいっすけど、アイツを俺たちに引き抜くのはあまりいい策じゃないっす」
勇者くんは、そんなことを言うはずがない。
だって、私は……。
「ハッハッハッ! お前、仮にも奴の仲間だったのだろう? そんなことを言っていいのか」
魔王が勇者くんに言う。
「正直、お荷物だったんすよ。聖女だからって仕方なく連れてたんだけど」
と勇者が私を見下ろした。私は、何も言い返せなかった。
「困惑しているだろうから話してやろうか」魔王が話し出す。「あの日、遺跡に踏み込んだ勇者一行は、突如崩れた天井に押し潰された、事故だと思っているのだろう?」
何を言っているのか。
魔王は構わず話し続けた。
「あれは、唯一我を倒せる勇者一行をこちらのものにするために、わざと起こした事故だ」魔王の衝撃的事実は止まらない。「だが失敗だったのは、聖女の血筋であるお前が偶然にも生き残ったことが計算外であった。ネコおじに何度暗殺の依頼を託したことか……」
「ネコおじ……様が……?」
更なる事実に、私の言葉は震えた。
直後、バタンと背後の門が開いた。私は咄嗟に立ち上がったが、そこに立ち塞がる人物に、私は絶句した。
「素直に教会にいてくれたら、簡単に暗殺が出来たはずなんだがね……」
ドスの効いた声。私は今まで、聖職者と思い込んでいた彼を信じ切っていたというのだろうか。
つまり私には、味方がいなかった……?
そこに魔王がさらに話し始めた。
「困惑しているようだろうからな。ネコおじ、お前の口から語るがよい」
「はっ」
ネコおじは頭を下げ、次に私を見つめた瞳が人のそれではないということだけが分かった。ネコおじは、魔物だったとでも……?
「私は変身の得意な魔物でな……あの教会にいた元々の人間はこの私が食べてやったんだよ」ネコおじはスラスラと恐ろしい言葉を並べ続けた。「私は食べた人間の能力を得られる。だから治療の魔法も使えたし、職を与えてやる能力もあった。……ああ、それと、元の人間は人脈も広かったからな。金さえ出せば勇者の家に放火する人間を操るのも簡単だった」
なんてことか。
何も言い返せないでいる私に、魔王が問いかけた。
「ネコおじよ、今度こそ暗殺出来るな?」
ネコおじの回答に、躊躇はなかった。
「分かりました」
私は、自分の目を疑った。
赤毛の青年らしきソイツが、そう言いながら階段を下りて来て魔王の横に並ぶ。私はその顔を知っている。だけど昔は、そんな目つきなんてしていなかった。
「……勇者くん?」
私がずっと信じていた事実が、ガラガラと音を立てて崩れた。
かつての勇者と思しき彼は私には何も答えず、ゾロゾロとやって来た魔王幹部へ目を向けた。私は魔王幹部たちに、言葉を失った。
全員、勇者の仲間たちだ。
どうして? という疑問は言葉にならなかった。私はただただ、膝から崩れ落ちただけ。そんな私に、追い討ちをかけるように魔王が言うのだ。
「我らと共に世界征服をしよう。我らの敵は、別にある」
そこに、元勇者がこう言った。
「だけどアイツ、ずっと役に立たない僧侶だったんすよ。見た目は騎士の真似事をしてるみたいっすけど、アイツを俺たちに引き抜くのはあまりいい策じゃないっす」
勇者くんは、そんなことを言うはずがない。
だって、私は……。
「ハッハッハッ! お前、仮にも奴の仲間だったのだろう? そんなことを言っていいのか」
魔王が勇者くんに言う。
「正直、お荷物だったんすよ。聖女だからって仕方なく連れてたんだけど」
と勇者が私を見下ろした。私は、何も言い返せなかった。
「困惑しているだろうから話してやろうか」魔王が話し出す。「あの日、遺跡に踏み込んだ勇者一行は、突如崩れた天井に押し潰された、事故だと思っているのだろう?」
何を言っているのか。
魔王は構わず話し続けた。
「あれは、唯一我を倒せる勇者一行をこちらのものにするために、わざと起こした事故だ」魔王の衝撃的事実は止まらない。「だが失敗だったのは、聖女の血筋であるお前が偶然にも生き残ったことが計算外であった。ネコおじに何度暗殺の依頼を託したことか……」
「ネコおじ……様が……?」
更なる事実に、私の言葉は震えた。
直後、バタンと背後の門が開いた。私は咄嗟に立ち上がったが、そこに立ち塞がる人物に、私は絶句した。
「素直に教会にいてくれたら、簡単に暗殺が出来たはずなんだがね……」
ドスの効いた声。私は今まで、聖職者と思い込んでいた彼を信じ切っていたというのだろうか。
つまり私には、味方がいなかった……?
そこに魔王がさらに話し始めた。
「困惑しているようだろうからな。ネコおじ、お前の口から語るがよい」
「はっ」
ネコおじは頭を下げ、次に私を見つめた瞳が人のそれではないということだけが分かった。ネコおじは、魔物だったとでも……?
「私は変身の得意な魔物でな……あの教会にいた元々の人間はこの私が食べてやったんだよ」ネコおじはスラスラと恐ろしい言葉を並べ続けた。「私は食べた人間の能力を得られる。だから治療の魔法も使えたし、職を与えてやる能力もあった。……ああ、それと、元の人間は人脈も広かったからな。金さえ出せば勇者の家に放火する人間を操るのも簡単だった」
なんてことか。
何も言い返せないでいる私に、魔王が問いかけた。
「ネコおじよ、今度こそ暗殺出来るな?」
ネコおじの回答に、躊躇はなかった。
「分かりました」