赤えんぴつ[続編投稿中]
その日、学校から帰ってきたとき、私は母に「なんか言うことない?」と聞かれ、嫌な予感がした。悪いことを隠すようなことをした覚えはないが、母に呼び出されるということは、かなりやばいということだ。部屋を通されたとき、ピアノの椅子の上にくしゃくしゃになった学校のテストがあり、母が怖い顔をして仁王立ちのようなポーズをとっていた。その時になって気づいたのは、私が40点の算数のテストを丸めてごみ箱に捨てていたことだった。母は言った。「どうしてテストを見せずに捨てたの?のび太じゃあるまいし。」私は、のび太はテストを捨てるのではなくて隠しますよ、と突っ込みたくなったが我慢した。第一のび太はテストで40点も取れない。そう考えることにした。そのあともいろいろがみがみと言われたが、一番悔しかったのは、私の友達ならこんな点数を取らない、ということだ。確かにそうかもしれないし、私がばかなのは十二分わかっているけれど、面と向かって言われるのはやっぱり悔しい。テスト直しを要求され、赤えんぴつを持ったがやる気が出てくるわけもなく、ただただそれでテストをぐりぐりと塗りつぶしていた。赤えんぴつが折れたとき、私は自分の犯したことのとてつもない嫌さと、情けない現状を飲み込んだ。