少女に明日を
届いた材料を組み合わせて、AIも駆使して、初心者なりに時間をかけながら機械を組み立てて行く。
昔描いた設計図通りには流石に行かない。まぁそれは当たり前だろう。昔は機械作りの方はあまり好きではなかったのでこんなのが出来たらいいなという幻想と、理論上不可能ではないというギリギリのラインを基準にした設計しか書けていなかったのだから。
プログラムと繋げる為に必要不可欠だったから、形にした中心となる部分から、生命を保つ為に必要な部分としてコードやあらゆる器具を取り付けて行く。AIを搭載できるようにもして、なんて色んな事を考える内にやっておけば良かったなんて後悔が込み上げて来た。
時間はかかる。だが、この間にも新たな患者が来て、彼女等の居場所が奪われるかも知れないと思えば、時間は一切無駄にはしたくなかった。
空調が完備されている為、体を大きく崩すことはない。それをいい事に、休む事なく体を動かし続けた。何時間もやっている内に集中が途切れかけ、時間が過ぎれば過ぎるほど、手先のブレも増えていったが、一刻も早く、2つだけでも完成させる必要があった。
〈必要な睡眠時間に達していません。即座に寝る事を推奨します。〉
〈必要な食事を取れていません。即座に宅配の注文をする事が可能です。〉
〈作業から15時間が経過しました。即座に休息を取る事を提案します。〉
建物の中、話し相手もいない。響くのはAIの淡々とした警告と、時折室内に流れるアラーム。そして作業の音だけ。
初心者と言っても、なんだかんだ言って方面は密接な関係であり、切っても切れない間柄なだけあって、普通の人よりは早く、回路に支障が出ず、生命もなんとか維持が可能で、体に負担がギリギリかからないラインの機械は僅か2日半強で完成していた。
完成図を政府の方に送りつけつつ、病院に頼んで運んで貰った親友を抱き抱える。
寝ているだけなんじゃないかと思うくらいには綺麗で、もう目覚める事はないだなんて信じたくないくらいだった。
そして、2つの並んだ機械の中に2人の人物が入る。上側がガラス…といっても少し特殊なものだが…でできているのは顔を見たいだなんて言う自分勝手な我儘でもあった。
機械から伸びた大量のコードは生命を維持する為に使われる物であり、まだ、死んでいない彼女等の命を蘇らせる事はなくても、死なせる事もないように出来ていた。
そして、昔、3人で作った仕組みは今でもちゃんと機能していた。
機会が無機質な光を放つ。パソコンの画面を向けば、パソコンの画面の中で、新たな2つ生命が誕生していた。
まだ今の世界に合わせた調整は出来ていない為、混乱した様子の2人がいたが、一先ずプログラムの中の仮想空間に完全に没入させる事は成功していた。
後はプログラムを少しずつ組み換えていくだけだった。
________________________________________________
人の世界は主観で組み立てられている。
自分の目に見える光景。
自分の耳に聞こえる音。
自分の鼻に匂える匂い。
自分の手に触れるもの。
そして、自分がこれまで経験して来た記憶。
それを元に、人は見た光景をそのまま見るのではなく、それを自分自身に分かる形に当て嵌めて見ているのだ。
この形はソファだ。
この色は青みがかった白だ。
この材料は硬い。
それは事実だ。
事実とは、人1人ではなく大多数の人がそうであると考えられる事。
そうなれば、それは事実なのだ。
事実とは、世界が決めた事ではない。
事実すら、人が人の手で推し量って漸く成り立つ。
ならば、
その記憶を消せば、
その目に映っているものが、
その耳に聞こえてくるものが、
その鼻に匂ってくるものが、
その手で触れられるものこそが、
その人にとっての世界になる。
そして、その世界に多数の人が住めば、それこそが事実になる。
だって、確かめようがないのだから。
この世界の外に本当に暮らしていた世界があるだとか、
この世界が人の手で生み出されたものだとか、
確かめようがないのだ。
確かめようがないそれは、
多くの人にとっての真実となる。
ならそれは、その世界に住む人々にとっては変えようのない事実なのだ。
________________________________________________
その日から、世界は目まぐるしく動いた。
この世界は人が過ごし、動いている間は少なからず戻る事はない。
その現実を受け入れた人々は、新たな世界を望んだ。
救いを求めた。
たった1人のまだ若い人物に、救いを求めた。
AIの技術を用いれば、私が作った機械は簡単に複製可能だった。
大きな建物内に機械はどんどん増えていった。
…そうして、世界は静寂に包まれた。
足を進めるのは私とAIだけ。
掃除しているのは建物の中だけだったから、世界はどんどん緑が侵食していった。
…否、元の形に戻ったと言ってもいい。
瓦礫のそばでまだ小さな命が咲き始めている。
世界の時は、人がその世界を[漢字]認識しなくなる[/漢字][ふりがな]去る[/ふりがな]事で戻り始めていた。
人々の世界は、新たな世界へと移り変わり、
残された世界は、元の形へと戻り始めた。
そして、残された人は、私だけだった。
昔描いた設計図通りには流石に行かない。まぁそれは当たり前だろう。昔は機械作りの方はあまり好きではなかったのでこんなのが出来たらいいなという幻想と、理論上不可能ではないというギリギリのラインを基準にした設計しか書けていなかったのだから。
プログラムと繋げる為に必要不可欠だったから、形にした中心となる部分から、生命を保つ為に必要な部分としてコードやあらゆる器具を取り付けて行く。AIを搭載できるようにもして、なんて色んな事を考える内にやっておけば良かったなんて後悔が込み上げて来た。
時間はかかる。だが、この間にも新たな患者が来て、彼女等の居場所が奪われるかも知れないと思えば、時間は一切無駄にはしたくなかった。
空調が完備されている為、体を大きく崩すことはない。それをいい事に、休む事なく体を動かし続けた。何時間もやっている内に集中が途切れかけ、時間が過ぎれば過ぎるほど、手先のブレも増えていったが、一刻も早く、2つだけでも完成させる必要があった。
〈必要な睡眠時間に達していません。即座に寝る事を推奨します。〉
〈必要な食事を取れていません。即座に宅配の注文をする事が可能です。〉
〈作業から15時間が経過しました。即座に休息を取る事を提案します。〉
建物の中、話し相手もいない。響くのはAIの淡々とした警告と、時折室内に流れるアラーム。そして作業の音だけ。
初心者と言っても、なんだかんだ言って方面は密接な関係であり、切っても切れない間柄なだけあって、普通の人よりは早く、回路に支障が出ず、生命もなんとか維持が可能で、体に負担がギリギリかからないラインの機械は僅か2日半強で完成していた。
完成図を政府の方に送りつけつつ、病院に頼んで運んで貰った親友を抱き抱える。
寝ているだけなんじゃないかと思うくらいには綺麗で、もう目覚める事はないだなんて信じたくないくらいだった。
そして、2つの並んだ機械の中に2人の人物が入る。上側がガラス…といっても少し特殊なものだが…でできているのは顔を見たいだなんて言う自分勝手な我儘でもあった。
機械から伸びた大量のコードは生命を維持する為に使われる物であり、まだ、死んでいない彼女等の命を蘇らせる事はなくても、死なせる事もないように出来ていた。
そして、昔、3人で作った仕組みは今でもちゃんと機能していた。
機会が無機質な光を放つ。パソコンの画面を向けば、パソコンの画面の中で、新たな2つ生命が誕生していた。
まだ今の世界に合わせた調整は出来ていない為、混乱した様子の2人がいたが、一先ずプログラムの中の仮想空間に完全に没入させる事は成功していた。
後はプログラムを少しずつ組み換えていくだけだった。
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人の世界は主観で組み立てられている。
自分の目に見える光景。
自分の耳に聞こえる音。
自分の鼻に匂える匂い。
自分の手に触れるもの。
そして、自分がこれまで経験して来た記憶。
それを元に、人は見た光景をそのまま見るのではなく、それを自分自身に分かる形に当て嵌めて見ているのだ。
この形はソファだ。
この色は青みがかった白だ。
この材料は硬い。
それは事実だ。
事実とは、人1人ではなく大多数の人がそうであると考えられる事。
そうなれば、それは事実なのだ。
事実とは、世界が決めた事ではない。
事実すら、人が人の手で推し量って漸く成り立つ。
ならば、
その記憶を消せば、
その目に映っているものが、
その耳に聞こえてくるものが、
その鼻に匂ってくるものが、
その手で触れられるものこそが、
その人にとっての世界になる。
そして、その世界に多数の人が住めば、それこそが事実になる。
だって、確かめようがないのだから。
この世界の外に本当に暮らしていた世界があるだとか、
この世界が人の手で生み出されたものだとか、
確かめようがないのだ。
確かめようがないそれは、
多くの人にとっての真実となる。
ならそれは、その世界に住む人々にとっては変えようのない事実なのだ。
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その日から、世界は目まぐるしく動いた。
この世界は人が過ごし、動いている間は少なからず戻る事はない。
その現実を受け入れた人々は、新たな世界を望んだ。
救いを求めた。
たった1人のまだ若い人物に、救いを求めた。
AIの技術を用いれば、私が作った機械は簡単に複製可能だった。
大きな建物内に機械はどんどん増えていった。
…そうして、世界は静寂に包まれた。
足を進めるのは私とAIだけ。
掃除しているのは建物の中だけだったから、世界はどんどん緑が侵食していった。
…否、元の形に戻ったと言ってもいい。
瓦礫のそばでまだ小さな命が咲き始めている。
世界の時は、人がその世界を[漢字]認識しなくなる[/漢字][ふりがな]去る[/ふりがな]事で戻り始めていた。
人々の世界は、新たな世界へと移り変わり、
残された世界は、元の形へと戻り始めた。
そして、残された人は、私だけだった。