少女に明日を
足を進める。自分の足で道を歩く。山道なだけあって雨で足場が不安定になっていたけど、それでも足に力を込めて、自分の足で向かう。
歩く、歩く、歩く。
一面に雨が降り注いでいるように思えた。駅から遠いし、道は険しいけど、あの場所は自分の足で歩かないと入らないようになっている。だから、歩き続けた。
山々の隙間。山に囲われた小さめの丘。そこだけが雨は降っていなかった。そこはあの時と同じ様に虹がかかっていた。土砂降りの中に広がる少し幻想的な光景。その光を見て急いでそこに向かう。疲れた足が悲鳴をあげていたけど、それでも走る。
そこは一面にシロツメクサが広がっていた。真っ白でまるで銀世界の様に美しかった。
その空間に入った瞬間、息切れが一気に収まり、足が悲鳴をあげていたのも一瞬で治った。そこは、懐かしい記憶の場所だった。
だって、だって…
[明朝体]幼い私達はそこで出会ったから。[/明朝体]
[水平線]
私達は哀れな子供だった。幸せを日常だと信じていた。外の世界なんて知らず、ちっぽけな世界の中で笑っていた。
それに気付いたのは失った後だった。運が悪かった。私だけが幸運だった。
私は目の前で親を失った。親に庇われて、自分だけが生き残った。焼け爛れた建物の跡、爆風、人々の悲鳴。その全てが私を壊した。水がばしゃりと私を濡らした。火が消える。それと同時に私の手を握っていた2人の温もりも少しずつ消えていたの間にか冷え切ってしまった。
その日、初めて外の世界がどんな世界なのかを知った。
行く宛もなく、彷徨い続けた。足が心が視界が、悲鳴をあげても歩き続けた。ずっと雨の降る音だけが私の側で響いていた。
そんな時だった。
不意に、光が見えた。光が私を照らした。光。そこは、そこだけはどれだけ土砂降りでも、虹がかかっていて、決して雨に濡れる事はなかった。
幼い私はそこを見て、まるで[漢字]天国[/漢字][ふりがな]楽園[/ふりがな]みたいだと思った。美しいその世界を見て、そこに佇む1人の同い年くらいのはずなのにずっと美しく見える少女を見て、私が倒れる寸前で発した言葉は一言だけ。
「妖精さん…?」
その言葉と共に私の意識は暗転した。暗転する直前、妖精さんは驚いた様な、安心した様な、悲しそうな、そんな顔をしていた。
そして、その数時間か、数日後目を覚ました時、視界にいたのは綺麗な少女だった。眠る前に出会った彼女とは違う人だけど、綺麗な人だと思った。そして、その後ろ、少し離れたところには美しい彼女がいた。
綺麗な彼女が話しかけてくる。
「ねぇ、あなたの名前は?私は永遠。あの子は零。」
「…私は明日華。」
言葉を返す。それと同時にもう一度綺麗な彼女を見つめれば、その瞳はほんの少しだけ寂しそうで、それは美しい彼女も同じだった。
その瞬間、多分みんな悟った。
(あぁ、この子は失った子なんだ。)
って、ね。暫く静寂が続いた。風に揺られるシロツメクサだけが視界の端で元気に揺れていた。
その静寂を破ったのは美しい彼女だった。
零「…ここは、魔法のかけられた丘。別名は白詰草ノ丘。ここでは怪我は簡単に治るし、疲れも勝手に取れる。」
その言葉にほんの少しだけ不思議そうに問う声が響いた。
永遠「あれ?でも代償は?魔法を使うには魔力か、それ相応の代償があるはずでしょ?」
幼いとは思えない2人の会話に私は置いて行かれていた。そんな事を気に求めずに2人は会話を続けた。
零「代償はここに辿り着くまでの疲れと、苦労。だから、ここは行く途中で魔法を使っても、能力を使っても、辿り着けない。」
そう淡々と告げるちょっと無表情な美しい彼女を遠い目で見つめていると、綺麗な彼女は少し考え込む様にした後、告げた。
「ねぇ、家族になろうよ。」
話の内容を要約すればこうだ。
[明朝体]失った者同士、絶対に3人でこの世界を生き抜いて、3人揃ってこの世界に光が差すのを見る。[/明朝体]
今思えば、無茶苦茶な夢。でも、それでも私達は、その言葉を胸に生きて来た。
[水平線]
…だから、だから。
「…1人だなんて思わないで欲しかった。」
その呟きに同意する様に言葉が背後からかけられる。そこには見知った顔があった。
「…私も、そう思う…だから、あなたも勝手に1人になろうとしないで。」
1番上の姉が…あの時の綺麗な少女がそこに立っていた。
あの出来事の数日後に作ったシロツメクサの冠。わざわざ3人で共同制作したせいでぐちゃぐちゃになったけど、それでも、大切な思い出。一本の大きな木下にポツンと置かれたそれは、思い出を象徴するものだった。
歩く、歩く、歩く。
一面に雨が降り注いでいるように思えた。駅から遠いし、道は険しいけど、あの場所は自分の足で歩かないと入らないようになっている。だから、歩き続けた。
山々の隙間。山に囲われた小さめの丘。そこだけが雨は降っていなかった。そこはあの時と同じ様に虹がかかっていた。土砂降りの中に広がる少し幻想的な光景。その光を見て急いでそこに向かう。疲れた足が悲鳴をあげていたけど、それでも走る。
そこは一面にシロツメクサが広がっていた。真っ白でまるで銀世界の様に美しかった。
その空間に入った瞬間、息切れが一気に収まり、足が悲鳴をあげていたのも一瞬で治った。そこは、懐かしい記憶の場所だった。
だって、だって…
[明朝体]幼い私達はそこで出会ったから。[/明朝体]
[水平線]
私達は哀れな子供だった。幸せを日常だと信じていた。外の世界なんて知らず、ちっぽけな世界の中で笑っていた。
それに気付いたのは失った後だった。運が悪かった。私だけが幸運だった。
私は目の前で親を失った。親に庇われて、自分だけが生き残った。焼け爛れた建物の跡、爆風、人々の悲鳴。その全てが私を壊した。水がばしゃりと私を濡らした。火が消える。それと同時に私の手を握っていた2人の温もりも少しずつ消えていたの間にか冷え切ってしまった。
その日、初めて外の世界がどんな世界なのかを知った。
行く宛もなく、彷徨い続けた。足が心が視界が、悲鳴をあげても歩き続けた。ずっと雨の降る音だけが私の側で響いていた。
そんな時だった。
不意に、光が見えた。光が私を照らした。光。そこは、そこだけはどれだけ土砂降りでも、虹がかかっていて、決して雨に濡れる事はなかった。
幼い私はそこを見て、まるで[漢字]天国[/漢字][ふりがな]楽園[/ふりがな]みたいだと思った。美しいその世界を見て、そこに佇む1人の同い年くらいのはずなのにずっと美しく見える少女を見て、私が倒れる寸前で発した言葉は一言だけ。
「妖精さん…?」
その言葉と共に私の意識は暗転した。暗転する直前、妖精さんは驚いた様な、安心した様な、悲しそうな、そんな顔をしていた。
そして、その数時間か、数日後目を覚ました時、視界にいたのは綺麗な少女だった。眠る前に出会った彼女とは違う人だけど、綺麗な人だと思った。そして、その後ろ、少し離れたところには美しい彼女がいた。
綺麗な彼女が話しかけてくる。
「ねぇ、あなたの名前は?私は永遠。あの子は零。」
「…私は明日華。」
言葉を返す。それと同時にもう一度綺麗な彼女を見つめれば、その瞳はほんの少しだけ寂しそうで、それは美しい彼女も同じだった。
その瞬間、多分みんな悟った。
(あぁ、この子は失った子なんだ。)
って、ね。暫く静寂が続いた。風に揺られるシロツメクサだけが視界の端で元気に揺れていた。
その静寂を破ったのは美しい彼女だった。
零「…ここは、魔法のかけられた丘。別名は白詰草ノ丘。ここでは怪我は簡単に治るし、疲れも勝手に取れる。」
その言葉にほんの少しだけ不思議そうに問う声が響いた。
永遠「あれ?でも代償は?魔法を使うには魔力か、それ相応の代償があるはずでしょ?」
幼いとは思えない2人の会話に私は置いて行かれていた。そんな事を気に求めずに2人は会話を続けた。
零「代償はここに辿り着くまでの疲れと、苦労。だから、ここは行く途中で魔法を使っても、能力を使っても、辿り着けない。」
そう淡々と告げるちょっと無表情な美しい彼女を遠い目で見つめていると、綺麗な彼女は少し考え込む様にした後、告げた。
「ねぇ、家族になろうよ。」
話の内容を要約すればこうだ。
[明朝体]失った者同士、絶対に3人でこの世界を生き抜いて、3人揃ってこの世界に光が差すのを見る。[/明朝体]
今思えば、無茶苦茶な夢。でも、それでも私達は、その言葉を胸に生きて来た。
[水平線]
…だから、だから。
「…1人だなんて思わないで欲しかった。」
その呟きに同意する様に言葉が背後からかけられる。そこには見知った顔があった。
「…私も、そう思う…だから、あなたも勝手に1人になろうとしないで。」
1番上の姉が…あの時の綺麗な少女がそこに立っていた。
あの出来事の数日後に作ったシロツメクサの冠。わざわざ3人で共同制作したせいでぐちゃぐちゃになったけど、それでも、大切な思い出。一本の大きな木下にポツンと置かれたそれは、思い出を象徴するものだった。