少女に明日を
傘を刺して、2人で家に帰る。道にはすでに水溜りがいくつも出来ていて、水が、地が、空から落下してきた水を弾いていた。大雨。土砂降り。話し声が聞こえにくいくらいの。
明日華(姉さんは気付いていない…けど、気付かせることはできるかも…?)
そんなことを思って話しかける。私が話しかければ、直ぐ近くを歩いていたからちゃんと声は届いたみたいでスッと振り返って冗談巻いた様子で聞いてくる。
永遠「どうしたの?何か忘れ物でもした?」
明日華「してないよ…タブン。」
永遠「まぁ…大した物は持って行ってなかったわよね?」
明日華「うん。」
私の返事に少し呆れた様なそんな表情で言葉を返され、私はその言葉に頷く。なんとなく外に出たからそこまで覚えていた訳ではないけど、大した物は持ってきていないはずだった。
少しの間、雨の音が響くのを聞いた後、私は問いかける。
明日華「永遠姉さんは、この世界が変だって思った事はない?」
そんな言葉を、多分側から見たら神妙そうな顔で聞いたと思う。その問いに対して、少し真剣そうな表情で考えた後、やがて答えが返ってくる。
永遠「あるわよ。だってこの世界は不条理だらけだもの。なんで、どうして、なんて何度も思ったし、この世界がおかしいだなんて…理不尽だなんて何度も思ったもの。…急にどうしたの?なにかあった?」
その答えは至極真面目で真っ当で、模範解答みたいだと思わずにはいられなかった。
明日華「…うん、そうだね。そう。ただ、世界が少し変に見えてしまって、怖くなっただけ。」
そんな言葉を返す。空も曇っていて、私も多分曇っていた。理解してしまったから。革命に関する違和感を抱かない時点で、話は終わってしまったから。私が何を言っても、多分響かないから。
少しずつ、少しずつ雨の音で声が聞こえなくなっていく。一歩、一歩と、聞こえなくなってしまう。ほんの少しの隙間。追いたいと思えば簡単に埋まる距離。虚な返事を返しながら、それが少しずつ大きくなるのをただ見つめていた。
[小文字]明日華「…なんで。」[/小文字]
漏れた呟きは雨の音によって掻き消されていく。ほんの少しだけ濡れた髪の毛から水滴がぽたりと垂れていた。
その瞬間、おでこから温もりが伝わってくる。ハッと前を向けば、そこには白いタオルがあった。ふかふかで温かいタオル。にこっと笑って花みたいに可愛くて温もりのある笑顔で告げる。
永遠「そんな暗い顔してどうしたの?」
泣きそうになりながら、必死にそれを隠しながら言葉を渡す。
明日華「伝えられない。言葉にできないの。分かんない。私にも、分かんないよ…!でも、助けを求めてる人がいるから…!」
気付けば感情が溢れ出して、やっと、頰を伝った水の正体を知った。
置いていかないで欲しかった。だから、離れたくなかった。嫌だ、嫌だ。追いつけるはずな距離が、私にとって途方もないみたいに思えて、それを詰めた優しさが、私のこれまでなんとか隠していた感情を、重さを、剥き出しにした。
私が続きの言葉を渡す前に、水を拭いながら告げる。
永遠「自分が救われてないのに他者を救おうとしなくていいんだよ。」
明日華「永遠姉さんは…!永遠姉さんは、自分を傷つけながら必死に革命をした…!姉さんに…姉さんにそんな綺麗事を言う資格なんてないよ…!ないんだよ…!」
間違えた。そう思った時には遅かった。優しい言葉を聞いて、上手く自然に振る舞えなくなって。居た堪れなくなって、逃げ出した。
追ってくる足音は最早聞こえなかった。ただひたすらに雨の音が強く鳴り響いていた。
明日華(姉さんは気付いていない…けど、気付かせることはできるかも…?)
そんなことを思って話しかける。私が話しかければ、直ぐ近くを歩いていたからちゃんと声は届いたみたいでスッと振り返って冗談巻いた様子で聞いてくる。
永遠「どうしたの?何か忘れ物でもした?」
明日華「してないよ…タブン。」
永遠「まぁ…大した物は持って行ってなかったわよね?」
明日華「うん。」
私の返事に少し呆れた様なそんな表情で言葉を返され、私はその言葉に頷く。なんとなく外に出たからそこまで覚えていた訳ではないけど、大した物は持ってきていないはずだった。
少しの間、雨の音が響くのを聞いた後、私は問いかける。
明日華「永遠姉さんは、この世界が変だって思った事はない?」
そんな言葉を、多分側から見たら神妙そうな顔で聞いたと思う。その問いに対して、少し真剣そうな表情で考えた後、やがて答えが返ってくる。
永遠「あるわよ。だってこの世界は不条理だらけだもの。なんで、どうして、なんて何度も思ったし、この世界がおかしいだなんて…理不尽だなんて何度も思ったもの。…急にどうしたの?なにかあった?」
その答えは至極真面目で真っ当で、模範解答みたいだと思わずにはいられなかった。
明日華「…うん、そうだね。そう。ただ、世界が少し変に見えてしまって、怖くなっただけ。」
そんな言葉を返す。空も曇っていて、私も多分曇っていた。理解してしまったから。革命に関する違和感を抱かない時点で、話は終わってしまったから。私が何を言っても、多分響かないから。
少しずつ、少しずつ雨の音で声が聞こえなくなっていく。一歩、一歩と、聞こえなくなってしまう。ほんの少しの隙間。追いたいと思えば簡単に埋まる距離。虚な返事を返しながら、それが少しずつ大きくなるのをただ見つめていた。
[小文字]明日華「…なんで。」[/小文字]
漏れた呟きは雨の音によって掻き消されていく。ほんの少しだけ濡れた髪の毛から水滴がぽたりと垂れていた。
その瞬間、おでこから温もりが伝わってくる。ハッと前を向けば、そこには白いタオルがあった。ふかふかで温かいタオル。にこっと笑って花みたいに可愛くて温もりのある笑顔で告げる。
永遠「そんな暗い顔してどうしたの?」
泣きそうになりながら、必死にそれを隠しながら言葉を渡す。
明日華「伝えられない。言葉にできないの。分かんない。私にも、分かんないよ…!でも、助けを求めてる人がいるから…!」
気付けば感情が溢れ出して、やっと、頰を伝った水の正体を知った。
置いていかないで欲しかった。だから、離れたくなかった。嫌だ、嫌だ。追いつけるはずな距離が、私にとって途方もないみたいに思えて、それを詰めた優しさが、私のこれまでなんとか隠していた感情を、重さを、剥き出しにした。
私が続きの言葉を渡す前に、水を拭いながら告げる。
永遠「自分が救われてないのに他者を救おうとしなくていいんだよ。」
明日華「永遠姉さんは…!永遠姉さんは、自分を傷つけながら必死に革命をした…!姉さんに…姉さんにそんな綺麗事を言う資格なんてないよ…!ないんだよ…!」
間違えた。そう思った時には遅かった。優しい言葉を聞いて、上手く自然に振る舞えなくなって。居た堪れなくなって、逃げ出した。
追ってくる足音は最早聞こえなかった。ただひたすらに雨の音が強く鳴り響いていた。