少女に明日を
人は慣れる生き物だ。
かかる時間は違えどいつかは慣れていく。
だからこそ、作戦で重要なのは敵を慣れさせない事だ。
慣れた瞬間にはもう…攻略は完了しているのだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
零「2人目。次に行きましょうか。」
淡い青と黒の髪を持つ彼女は1人、そう呟く。その瞳は勝利に浸るでもなく既に、次の標的を見据えていた。
桜ノ王国は5人の桜ノ使者と10人の幹部が戦闘の鍵となっている。ちなみに桜ノ使者の中にも順位があり、最上位の剣神、二位の眠夢、三位の病毒、四位の氷冷、最下位の雷火だ。彼女が突破したのは使者の三位1人、幹部1人だろう。幹部は正味“あの者”でなんとかなる。つまり、彼女が倒すべきは桜ノ使者。桜ノ使者はどうしても目立つ。探す価値はあると言えるだろう。
彼女は軽く宙へ浮き、その瞳は素早く首都全体を見据える。そして呟く。
零「見つけた。」
駅の方で燃え盛る炎に落ちる雷。十中八九雷火だと分かる。民衆を威嚇、抵抗する者は重症化。まるでルールに沿った行動。これは自分で考えていない様な行動。馬鹿の一つ覚えに近いものを感じる。
彼女は宙から駅より少し離れた場所で降り、歩いてそちらに向かい、顔を見せる。そんな彼女に対して、赤髪の男は問う。
「ようよう、子供が何の様だ?ここはお前が立ち入る場所じゃねぇんだわ!降伏しやがれ!」
その荒い言葉に彼女は呆れた様に軽くため息をついてから返す。
零「はぁ、あなたは馬鹿なのね。私の名前は空音 零よ。聞き覚えないかしら?」
「んっ?空音 零……眠夢がなんか言ってた気もするな。ってか、名前一方的に知ってるのも癪だな。」
零(やっぱり情報は漏れてるのね。…というか癪って…なんで?馬鹿なの?)
「俺の名前は炎雷 佐須羅(えんらい さすら)だ。しっかり覚えやがれ!」
零「へぇー。そうなのねー。(二つ名とほぼ同じ苗字なのね。最早隠す意味なくないかしら?)…ところで何でこの国に従うのかしら?」
途中まで呆れた様な顔で聞いていたが、問いかけるその言葉は何処までも鋭く警戒を孕んだものだった。それに対して赤髪の彼は軽く首を傾げる。
佐須羅「ん?理由なんかいるか?国があるから従うんだよ。よく分からんが取り敢えず…殺り合おうぜ!なぁ!」
彼はそう叫びながら手を前に突き出し能力を発動させる。
【雷火炎砲】『落雷』
曇っていた空から光が突如として輝く。それは、高い建物等の全てを無視してピンポイントで彼女を狙う。本来そのままそれは、彼女の腕に当たるはずだった。そう、そのはずだったのだ。
虚無魔法『物質無化』
刹那、暗闇が光を包み込み、一瞬にて消え失せる。暗闇の中、彼女の赤い瞳だけが不気味に輝いて見えた。否、彼女だけではない。彼もまた、その瞳を楽しげに輝かせていた。
佐須羅「なんだ?!今のすげぇ!じゃあこれはどうだ!」
そう言いながらまた能力を使用する。今度は赤い、ただ赤く、広範囲を一気に焼き尽くす炎。地面に今も尚燃え残っている炎だった。
【雷火炎砲】『業火』
それに対して彼女は呆れた様子で軽くため息を吐くと、こう呟く。
零「はぁ、学習しませんね。」
彼女は指を軽く鳴らす。その瞬間、魔法が発動する。
虚無魔法『物質無化』
消える。灯火が、赤い熱さが暗闇に一瞬にて呑まれて消える。それだけではない。放った技だけでなく地面に燃え残っていた炎ごと一瞬にて消し去られていた。それを見て、彼は余計楽しげに告げる。
佐須羅「おぉ!じゃあ魔法はどうなんだ!」
その瞳にあったのは恐怖ではない。だが、同時に慢心でもない。ただの子供の様な無邪気な興味と好奇心だけだった。
雷魔法『雷鳴空間』
先程とは比べ物にならない量の雷。一切光源がない暗闇に大量の光が降り注ぐ。それはその場全体に。だが、絶妙に負傷者を避けながら。繊細な制御をしてみせた彼に対して、彼女は一切動じることなく淡々と手を空に翳す。
虚無魔法『魔法無効』
その瞬間、黒が辺りの空を覆い尽くした。光が一瞬にて消え失せる。並大抵の人間なら絶望するこの状況でも、彼はまだ遊べる、寧ろ楽しいといった様に彼女に告げる。
佐須羅「まだまだぁー!」
その表情は楽しげで、どこまでも邪気を孕んではいなかった。
火魔法『火炎連加』
次は炎の連続攻撃。辺りを覆い尽くす様な炎が何度も、何度も重なって放たれる。それは1つの魔法を大量に重なった炎が演奏するが如きものだった。
虚無魔法『魔法無効』
だが、それも彼女が触れた途端一瞬で消える。彼女はまるでその炎に息を吹きかけるが如き行動しただけで消え失せるのだ。それを見てもまだ諦めない、寧ろ楽しげに笑う彼は何処までも楽しげだった。
佐須羅「なるほどなぁ!なら、本気を出してやる!」
そう叫びながら彼は魔力を集中させる。辺りの空気が揺らぐ、そう感じた瞬間に彼は能力を使用した。
【雷火炎砲】『不知火』
突如、彼女の腕に火が付く。初めは小さな小さな火だったが、それはあっという間に燃え広がり、炎となって腕全体を包み込んだ。
佐須羅「その炎は対象の命尽きるまで消えないんだよ!ちと俺にも負担がかかるがな!分かったら諦めやがれ!」
そう告げる彼の表情は破綻を感じさせないが、彼の体は軽い不調を訴え始めていた。それに対して腕が炎に包まれているにも関わらず、彼女は一切顔色を変えずに呟く。
零「…嗚呼、ずっと感じていた違和感はこれね。病咲もこいつも能力を扱いきれてない。だから、魔法の方が威力が出たりする。能力本来の力はこんな物が何発も打てると言ったところかしら。…でも、甘いわね。」
ぶつぶつ呟いていた彼女はやがて言葉を止める。彼女はもう片方の腕で炎に触れ、その瞬間唱える。
虚無魔法《真髄解放》『能力無効』
炎が消える。ふわり、と。表側だけでなく、中身までも炎に侵食され始めていた筈なのに、その腕に怪我は一切なかった。
零「まだやるかしら?」
その問いには絶対強者の風格が見え隠れし、その赤い瞳は今となっては彼の炎よりも強い光を帯びていた。
その場を静寂が支配する…そう、彼女は思っていたが、彼は案外直ぐに答えを出した。
佐須羅「なるほどな、俺はお前を気に入った!」
零「はぁ?」
豪快に笑いながらそう告げる彼に対して、流石に予想外だったのか、少し引いた声を返す。
佐須羅「俺はお前に付くぜ!」
零「…嬉しい誘いだけど良いの?」
佐須羅「全然良いぜ!」
少し疑った様子でそう聞くも、彼は即答する。これで良いのか桜ノ王国。彼女が思わずそう思ったのは仕方のない事だと思う。ついでと言わんばかりに彼女は問いを投げかける。
零「炎雷、他の桜ノ使者がどこにいるかわかる?」
答えられない事も考慮した上での問いに対して彼はあっさり答える。
佐須羅「佐須羅でいいぜ!えーと、一位と二位は政府の建物内部だろ!で三位が中央通り!で四位がショッピングモール!で俺が駅って感じだ!」
零「佐須羅、ありがとう。佐須羅の腕を見込んでお願いがあるんだけど…」
佐須羅「おう!なんだ?」
零「幹部を片付けて欲しいの。私の仲間2人が頑張ってくれているんだけど心配で…」
佐須羅「おう!分かったぜ!俺に任せとけ!」
即答だった。本当に即答。情報がダダ漏れで彼女はそろそろ引くのではなく諦めの域に達しかけていた。
やがて、赤髪の彼が思いっきり手を振りながら去っていくのを軽く手を振りかえしつつ見送る。そして、彼女もまた自身の仕事をこなす為に次の目的地に向かうのだった。
彼女はショッピングモールに着いた…が氷に覆われている。本来騒がしくも明るい筈であろう場所は氷の冷たさによって冷め切った場所へと変貌していた。彼女はその奥に居る水色がかった白髪の女性をその瞳に映しつつ、にこやかに話しかける。
零「…初めまして。桜ノ使者四位氷冷さん。」
「えぇ、初めまして。空音 零さん。私の名前は冷刃 雪(れいは ゆき)。そして、さようなら。」
話しかけられた彼女は言葉をにこやかに返した後に、冷め切った雰囲気を纏う。鮮やかな水色の瞳が冷たく輝き、鮮やかな赤と淡い青を真正面から見据える。
【氷冷呪法】『氷漬け』
一瞬にて黒と淡い青の髪を持つ彼女ごと、ある程度の空間を氷漬けにする。そして氷を静かに見つめつつ、呟く。
雪「みんな何で油断するのでしょうか。最初に能力を使う。それだけで勝てる。先手必勝です。」
その言葉には余裕が見えていた…が、同時に何処かで不安や自分に言い聞かせる様な、そんな感じが漂う。氷漬けにした筈なのに、それを事実として鮮やかな水色の瞳はそれを見ている筈なのに…手応えを一切感じなかった。まるで抵抗できたのにしなかったかの様に。
そんな不信感を覚えつつも気の所為として背を向けようとしたその瞬間、世界を暗闇が覆った。
闇魔法『漆黒世界』
一切の言葉はなかった。ただ、気付けば、暗闇が世界を覆っていた。否、暗闇以外が自身の認識する世界には存在できなくなっていた。
雪「は?」
零「能力や魔法は口に出す物ではない。脳で使う物よ。あなたも能力を扱い切れていない。詰めが甘いんじゃないかしら。」
背後から声をかけられる。先程と一切変わらない、何の動揺もない。何かされたといった感じもしない。まるで、日常を普通に生きているかの様に平然と彼女は話しかけてきたのだ。それに対して鮮やかな水色の瞳は動揺によって揺れ、その上でまだ戦う意志を持っていた。
雪「っっ、まだ!」
そう言いながら拳銃を取り出す。拳銃を瞬時に構え、躊躇なく撃つ。
(バンッ!)
音が暗闇に響く。暗闇故に視界は狭かったが、それでもほぼ当たった筈だった。それだと言うのに当てた筈の者から平然と声をかけられる。
零「命中率はなかなかね。でも、あなたを一目見た時点で拳銃を持っていたのは知っている。対策するのは当たり前でしょう?」
その言葉と共に、淡い青が鮮やかな水色を射抜いた…と思った瞬間、雪の視界が完全に闇に塞がれる。それを見て彼女は呟く。
零「…チェックメイト。」
その言葉は冷め切っていた。そして、闇に囚われた彼女の額に手を翳すと呟く。
【ーーーー】『霊魂支配』
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『さてと、もう取れるピースは揃った。あとは終わらせるだけよ。ねぇ、今頃勝利を確信しているのでしょうね。その慢心があなたの敗因よ。』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『地下に入ってきた敵は倒せた。もしものことがあっても俺が守り切るだけだ。このーーーーの名にかけてな。この国は渡さない。』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
場所を変えて、声が重なり合う。2人の者の声が。
ーーー『守りたくば/奪いたくば、玉座に来い!』
かかる時間は違えどいつかは慣れていく。
だからこそ、作戦で重要なのは敵を慣れさせない事だ。
慣れた瞬間にはもう…攻略は完了しているのだから。
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零「2人目。次に行きましょうか。」
淡い青と黒の髪を持つ彼女は1人、そう呟く。その瞳は勝利に浸るでもなく既に、次の標的を見据えていた。
桜ノ王国は5人の桜ノ使者と10人の幹部が戦闘の鍵となっている。ちなみに桜ノ使者の中にも順位があり、最上位の剣神、二位の眠夢、三位の病毒、四位の氷冷、最下位の雷火だ。彼女が突破したのは使者の三位1人、幹部1人だろう。幹部は正味“あの者”でなんとかなる。つまり、彼女が倒すべきは桜ノ使者。桜ノ使者はどうしても目立つ。探す価値はあると言えるだろう。
彼女は軽く宙へ浮き、その瞳は素早く首都全体を見据える。そして呟く。
零「見つけた。」
駅の方で燃え盛る炎に落ちる雷。十中八九雷火だと分かる。民衆を威嚇、抵抗する者は重症化。まるでルールに沿った行動。これは自分で考えていない様な行動。馬鹿の一つ覚えに近いものを感じる。
彼女は宙から駅より少し離れた場所で降り、歩いてそちらに向かい、顔を見せる。そんな彼女に対して、赤髪の男は問う。
「ようよう、子供が何の様だ?ここはお前が立ち入る場所じゃねぇんだわ!降伏しやがれ!」
その荒い言葉に彼女は呆れた様に軽くため息をついてから返す。
零「はぁ、あなたは馬鹿なのね。私の名前は空音 零よ。聞き覚えないかしら?」
「んっ?空音 零……眠夢がなんか言ってた気もするな。ってか、名前一方的に知ってるのも癪だな。」
零(やっぱり情報は漏れてるのね。…というか癪って…なんで?馬鹿なの?)
「俺の名前は炎雷 佐須羅(えんらい さすら)だ。しっかり覚えやがれ!」
零「へぇー。そうなのねー。(二つ名とほぼ同じ苗字なのね。最早隠す意味なくないかしら?)…ところで何でこの国に従うのかしら?」
途中まで呆れた様な顔で聞いていたが、問いかけるその言葉は何処までも鋭く警戒を孕んだものだった。それに対して赤髪の彼は軽く首を傾げる。
佐須羅「ん?理由なんかいるか?国があるから従うんだよ。よく分からんが取り敢えず…殺り合おうぜ!なぁ!」
彼はそう叫びながら手を前に突き出し能力を発動させる。
【雷火炎砲】『落雷』
曇っていた空から光が突如として輝く。それは、高い建物等の全てを無視してピンポイントで彼女を狙う。本来そのままそれは、彼女の腕に当たるはずだった。そう、そのはずだったのだ。
虚無魔法『物質無化』
刹那、暗闇が光を包み込み、一瞬にて消え失せる。暗闇の中、彼女の赤い瞳だけが不気味に輝いて見えた。否、彼女だけではない。彼もまた、その瞳を楽しげに輝かせていた。
佐須羅「なんだ?!今のすげぇ!じゃあこれはどうだ!」
そう言いながらまた能力を使用する。今度は赤い、ただ赤く、広範囲を一気に焼き尽くす炎。地面に今も尚燃え残っている炎だった。
【雷火炎砲】『業火』
それに対して彼女は呆れた様子で軽くため息を吐くと、こう呟く。
零「はぁ、学習しませんね。」
彼女は指を軽く鳴らす。その瞬間、魔法が発動する。
虚無魔法『物質無化』
消える。灯火が、赤い熱さが暗闇に一瞬にて呑まれて消える。それだけではない。放った技だけでなく地面に燃え残っていた炎ごと一瞬にて消し去られていた。それを見て、彼は余計楽しげに告げる。
佐須羅「おぉ!じゃあ魔法はどうなんだ!」
その瞳にあったのは恐怖ではない。だが、同時に慢心でもない。ただの子供の様な無邪気な興味と好奇心だけだった。
雷魔法『雷鳴空間』
先程とは比べ物にならない量の雷。一切光源がない暗闇に大量の光が降り注ぐ。それはその場全体に。だが、絶妙に負傷者を避けながら。繊細な制御をしてみせた彼に対して、彼女は一切動じることなく淡々と手を空に翳す。
虚無魔法『魔法無効』
その瞬間、黒が辺りの空を覆い尽くした。光が一瞬にて消え失せる。並大抵の人間なら絶望するこの状況でも、彼はまだ遊べる、寧ろ楽しいといった様に彼女に告げる。
佐須羅「まだまだぁー!」
その表情は楽しげで、どこまでも邪気を孕んではいなかった。
火魔法『火炎連加』
次は炎の連続攻撃。辺りを覆い尽くす様な炎が何度も、何度も重なって放たれる。それは1つの魔法を大量に重なった炎が演奏するが如きものだった。
虚無魔法『魔法無効』
だが、それも彼女が触れた途端一瞬で消える。彼女はまるでその炎に息を吹きかけるが如き行動しただけで消え失せるのだ。それを見てもまだ諦めない、寧ろ楽しげに笑う彼は何処までも楽しげだった。
佐須羅「なるほどなぁ!なら、本気を出してやる!」
そう叫びながら彼は魔力を集中させる。辺りの空気が揺らぐ、そう感じた瞬間に彼は能力を使用した。
【雷火炎砲】『不知火』
突如、彼女の腕に火が付く。初めは小さな小さな火だったが、それはあっという間に燃え広がり、炎となって腕全体を包み込んだ。
佐須羅「その炎は対象の命尽きるまで消えないんだよ!ちと俺にも負担がかかるがな!分かったら諦めやがれ!」
そう告げる彼の表情は破綻を感じさせないが、彼の体は軽い不調を訴え始めていた。それに対して腕が炎に包まれているにも関わらず、彼女は一切顔色を変えずに呟く。
零「…嗚呼、ずっと感じていた違和感はこれね。病咲もこいつも能力を扱いきれてない。だから、魔法の方が威力が出たりする。能力本来の力はこんな物が何発も打てると言ったところかしら。…でも、甘いわね。」
ぶつぶつ呟いていた彼女はやがて言葉を止める。彼女はもう片方の腕で炎に触れ、その瞬間唱える。
虚無魔法《真髄解放》『能力無効』
炎が消える。ふわり、と。表側だけでなく、中身までも炎に侵食され始めていた筈なのに、その腕に怪我は一切なかった。
零「まだやるかしら?」
その問いには絶対強者の風格が見え隠れし、その赤い瞳は今となっては彼の炎よりも強い光を帯びていた。
その場を静寂が支配する…そう、彼女は思っていたが、彼は案外直ぐに答えを出した。
佐須羅「なるほどな、俺はお前を気に入った!」
零「はぁ?」
豪快に笑いながらそう告げる彼に対して、流石に予想外だったのか、少し引いた声を返す。
佐須羅「俺はお前に付くぜ!」
零「…嬉しい誘いだけど良いの?」
佐須羅「全然良いぜ!」
少し疑った様子でそう聞くも、彼は即答する。これで良いのか桜ノ王国。彼女が思わずそう思ったのは仕方のない事だと思う。ついでと言わんばかりに彼女は問いを投げかける。
零「炎雷、他の桜ノ使者がどこにいるかわかる?」
答えられない事も考慮した上での問いに対して彼はあっさり答える。
佐須羅「佐須羅でいいぜ!えーと、一位と二位は政府の建物内部だろ!で三位が中央通り!で四位がショッピングモール!で俺が駅って感じだ!」
零「佐須羅、ありがとう。佐須羅の腕を見込んでお願いがあるんだけど…」
佐須羅「おう!なんだ?」
零「幹部を片付けて欲しいの。私の仲間2人が頑張ってくれているんだけど心配で…」
佐須羅「おう!分かったぜ!俺に任せとけ!」
即答だった。本当に即答。情報がダダ漏れで彼女はそろそろ引くのではなく諦めの域に達しかけていた。
やがて、赤髪の彼が思いっきり手を振りながら去っていくのを軽く手を振りかえしつつ見送る。そして、彼女もまた自身の仕事をこなす為に次の目的地に向かうのだった。
彼女はショッピングモールに着いた…が氷に覆われている。本来騒がしくも明るい筈であろう場所は氷の冷たさによって冷め切った場所へと変貌していた。彼女はその奥に居る水色がかった白髪の女性をその瞳に映しつつ、にこやかに話しかける。
零「…初めまして。桜ノ使者四位氷冷さん。」
「えぇ、初めまして。空音 零さん。私の名前は冷刃 雪(れいは ゆき)。そして、さようなら。」
話しかけられた彼女は言葉をにこやかに返した後に、冷め切った雰囲気を纏う。鮮やかな水色の瞳が冷たく輝き、鮮やかな赤と淡い青を真正面から見据える。
【氷冷呪法】『氷漬け』
一瞬にて黒と淡い青の髪を持つ彼女ごと、ある程度の空間を氷漬けにする。そして氷を静かに見つめつつ、呟く。
雪「みんな何で油断するのでしょうか。最初に能力を使う。それだけで勝てる。先手必勝です。」
その言葉には余裕が見えていた…が、同時に何処かで不安や自分に言い聞かせる様な、そんな感じが漂う。氷漬けにした筈なのに、それを事実として鮮やかな水色の瞳はそれを見ている筈なのに…手応えを一切感じなかった。まるで抵抗できたのにしなかったかの様に。
そんな不信感を覚えつつも気の所為として背を向けようとしたその瞬間、世界を暗闇が覆った。
闇魔法『漆黒世界』
一切の言葉はなかった。ただ、気付けば、暗闇が世界を覆っていた。否、暗闇以外が自身の認識する世界には存在できなくなっていた。
雪「は?」
零「能力や魔法は口に出す物ではない。脳で使う物よ。あなたも能力を扱い切れていない。詰めが甘いんじゃないかしら。」
背後から声をかけられる。先程と一切変わらない、何の動揺もない。何かされたといった感じもしない。まるで、日常を普通に生きているかの様に平然と彼女は話しかけてきたのだ。それに対して鮮やかな水色の瞳は動揺によって揺れ、その上でまだ戦う意志を持っていた。
雪「っっ、まだ!」
そう言いながら拳銃を取り出す。拳銃を瞬時に構え、躊躇なく撃つ。
(バンッ!)
音が暗闇に響く。暗闇故に視界は狭かったが、それでもほぼ当たった筈だった。それだと言うのに当てた筈の者から平然と声をかけられる。
零「命中率はなかなかね。でも、あなたを一目見た時点で拳銃を持っていたのは知っている。対策するのは当たり前でしょう?」
その言葉と共に、淡い青が鮮やかな水色を射抜いた…と思った瞬間、雪の視界が完全に闇に塞がれる。それを見て彼女は呟く。
零「…チェックメイト。」
その言葉は冷め切っていた。そして、闇に囚われた彼女の額に手を翳すと呟く。
【ーーーー】『霊魂支配』
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『さてと、もう取れるピースは揃った。あとは終わらせるだけよ。ねぇ、今頃勝利を確信しているのでしょうね。その慢心があなたの敗因よ。』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『地下に入ってきた敵は倒せた。もしものことがあっても俺が守り切るだけだ。このーーーーの名にかけてな。この国は渡さない。』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
場所を変えて、声が重なり合う。2人の者の声が。
ーーー『守りたくば/奪いたくば、玉座に来い!』