少女に明日を
人は考える生き物である。
そのため、誰か、何かに勝つためにあらゆる思考をする。
ただし、思考は自分だけの特権ではない。
思考を止めた間にも相手は思考を続けているだろう。
それは…思考をやめた瞬間が負けという事でもある。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
国は既に動き出していた。多くの者が首都で鎮圧を行っている。彼女もその1人だった。メールが届くと、行動を始める。ビルの屋上に佇む彼女は黒髪を風に吹かれながら、黒いフードの下の瞳で先を見据える。
「…作戦を…開始…。」
闇に紛れて行動する彼女の姿は民衆の目には映らない。だからこそ、味方は慢心していたのだ。彼女は捕まらないと。
ーーーその前提が崩れたらあなた達はどうするの?
一瞬だった。ビルとビルの間を軽く飛び移ろうとした時に、その隙間から手を引かれ、そのままそこに落下する。彼女は民衆に被害を出さないまま捕まったのだ。
「っ、…。…誰?……何者?」
焦った様にそう問うも、その問いに答える者はもう居なかった。魔法・能力無効の縄で縛った後はとっとと別の場所に行ったのだろうか。捕まえた人物は気配すらも感じられなかった。そもそもこの場に居たのかすらも分からない。そんな状況だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黒いフードを被った少女は静かにそこに佇む。建物内の人が気付いてももう遅い。
閃光が煌き、彼女が音もなく移動したと思った瞬間、斬られていた。致命傷には至らない。だが、明らかにそれは狙ってやった事だった。
ーーー虚無魔法『虚無世界』
そして彼女以外のその場に居た者は虚無世界に強制転移する。彼女は何事もなかったかのように堂々と道を歩き、管理室に向かう。管理室には多くのコンピュータがある。暗い部屋の中、彼女がスイッチを押した瞬間、画面の光が一気に辺りを照らす。彼女はコンピュータを慣れた手つきでいじると次の瞬間、ピッと音が鳴る。彼女は罠の解除を確認するとすぐさま移動を始める。国は力でねじ伏せに来るそれが彼女の読みだった。そして、それは命中していた。
ーーー全ては彼女の読み通りに動いていた。
コンピュータ以外は何もない部屋で彼女は口元に弧を描く。
「愚かね。あなた達は私たちを舐めすぎよ。」
鮮やかな赤い瞳が不穏に、恐怖を駆り立てる様に、黒いフードの下で輝いて見えた。
ーーーまだ、彼らは気付かない。本当の脅威に。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中央通りは首都の中でも最も人通りが多い場所だ。その中央通りでは、多くの人が倒れていた。死んではいない。だが、もう行動はできないだろう。その中でただ1人そこに立つ白髪のウルフカットの男性がいた。
「患者さん、何の様かな?」
そう言いながら彼はその碧の視線を後ろに向ける。その問いに対して黒フードの少女は姿を現し、静かに答える。
「あなたを治しに来たのよ。」
「不思議なことを言うんだね。患者さん。ところでその姿、患者さんは空音 零さんで合ってるかな?」
その問いに対して少女…否、零は黒フードをとり、黒と淡い青の髪、そして淡い青と赤のオッドアイを見せながら、少し楽しげに笑い、答える。
零「えぇ、そうよ。私の名前は空音 零。」
「自己紹介してもらったし、僕もしようかな。僕の名前は病咲 壱河(びょうさき いちが)。」
そう言いながら綺麗にお辞儀をする彼を彼女はひどく冷めた目で見つめつつ、問いかける。
零「そう。なぜあなたはこんな国につくのかしら?」
壱河「自国だしね。それに国王だけだよ。こんな僕を受け入れてくれたのは。」
零「利用されているだけでしょう。それにこちら側も受け入れるわよ。」
壱河「かもね。でも、辛い時に助けてくれたのは国王だった。」
零「騙されているわよ。」
壱河「…それでも…良いよ。恩返しができれば。」
零「そう…残念ね。話が通じると思ったのだけど。」
壱河「君こそ、国につく気はない?」
零「残念ながらないわね。」
壱河「…そっか。じゃあ、…全力でやるだけ。」
彼はにこにこと、彼女も殺意は一切なく、ただ普通に会話している様にしか見えないレベルで2人はそんな言葉を交わしていたが、彼が手を翳した瞬間、辺りが殺意に塗れる。
【病毒支配】『毒霧』
その名の通り毒の霧が何処からともなく辺りを覆い尽くす。そして彼は告げる。
壱河「諦めて。僕は強いんだ。」
零「…(ボソッ)なるほど、ねぇ。」
それに対して彼女は毒霧を回避しようともせずに、ただ、見ていた。その冷静な淡い青の瞳は毒霧の中でも冷たく、異様さを醸し出していた。
壱河「何を考えてるのか知らないけど、僕の毒は死に至るんだ。だから、はやく降伏して。」
その未だに優しげな雰囲気を纏っている言葉と辺りの現状はあまりにも不一致だった。彼女は何も動じずに毒霧の一部を掴む様な動作をする。
虚無魔法『真空化』
その瞬間、辺りの空気が毒霧を巻き込んで虚無に呑み込まれていく。濁った空気が一転して何もないある種の美しさを取り戻していく。残った微かな空気を求めつつ、彼は声をあげる。
壱河「何やってっ、それじゃ…」
零「本当に甘いわね。」
壱河「なんで…喋って…」
零「あなたの能力は通用しない。負けを認めてくれないかしら?」
壱河「僕は…仲間を見捨てて裏切ることなんてできない!」
彼は覚悟を決めた碧の瞳で彼女を確かに見つめる。視線を逸らす事もなく、ただひたすらに。
零「そう…ならば手荒にいきましょう。」
そう少し残念そうに呟き、彼女は一気に距離を詰め、彼を額を指で弾きながらある技を発動させる。
ーーー【ーーーー】
ーーー『霊魂支配』
そのため、誰か、何かに勝つためにあらゆる思考をする。
ただし、思考は自分だけの特権ではない。
思考を止めた間にも相手は思考を続けているだろう。
それは…思考をやめた瞬間が負けという事でもある。
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国は既に動き出していた。多くの者が首都で鎮圧を行っている。彼女もその1人だった。メールが届くと、行動を始める。ビルの屋上に佇む彼女は黒髪を風に吹かれながら、黒いフードの下の瞳で先を見据える。
「…作戦を…開始…。」
闇に紛れて行動する彼女の姿は民衆の目には映らない。だからこそ、味方は慢心していたのだ。彼女は捕まらないと。
ーーーその前提が崩れたらあなた達はどうするの?
一瞬だった。ビルとビルの間を軽く飛び移ろうとした時に、その隙間から手を引かれ、そのままそこに落下する。彼女は民衆に被害を出さないまま捕まったのだ。
「っ、…。…誰?……何者?」
焦った様にそう問うも、その問いに答える者はもう居なかった。魔法・能力無効の縄で縛った後はとっとと別の場所に行ったのだろうか。捕まえた人物は気配すらも感じられなかった。そもそもこの場に居たのかすらも分からない。そんな状況だった。
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黒いフードを被った少女は静かにそこに佇む。建物内の人が気付いてももう遅い。
閃光が煌き、彼女が音もなく移動したと思った瞬間、斬られていた。致命傷には至らない。だが、明らかにそれは狙ってやった事だった。
ーーー虚無魔法『虚無世界』
そして彼女以外のその場に居た者は虚無世界に強制転移する。彼女は何事もなかったかのように堂々と道を歩き、管理室に向かう。管理室には多くのコンピュータがある。暗い部屋の中、彼女がスイッチを押した瞬間、画面の光が一気に辺りを照らす。彼女はコンピュータを慣れた手つきでいじると次の瞬間、ピッと音が鳴る。彼女は罠の解除を確認するとすぐさま移動を始める。国は力でねじ伏せに来るそれが彼女の読みだった。そして、それは命中していた。
ーーー全ては彼女の読み通りに動いていた。
コンピュータ以外は何もない部屋で彼女は口元に弧を描く。
「愚かね。あなた達は私たちを舐めすぎよ。」
鮮やかな赤い瞳が不穏に、恐怖を駆り立てる様に、黒いフードの下で輝いて見えた。
ーーーまだ、彼らは気付かない。本当の脅威に。
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中央通りは首都の中でも最も人通りが多い場所だ。その中央通りでは、多くの人が倒れていた。死んではいない。だが、もう行動はできないだろう。その中でただ1人そこに立つ白髪のウルフカットの男性がいた。
「患者さん、何の様かな?」
そう言いながら彼はその碧の視線を後ろに向ける。その問いに対して黒フードの少女は姿を現し、静かに答える。
「あなたを治しに来たのよ。」
「不思議なことを言うんだね。患者さん。ところでその姿、患者さんは空音 零さんで合ってるかな?」
その問いに対して少女…否、零は黒フードをとり、黒と淡い青の髪、そして淡い青と赤のオッドアイを見せながら、少し楽しげに笑い、答える。
零「えぇ、そうよ。私の名前は空音 零。」
「自己紹介してもらったし、僕もしようかな。僕の名前は病咲 壱河(びょうさき いちが)。」
そう言いながら綺麗にお辞儀をする彼を彼女はひどく冷めた目で見つめつつ、問いかける。
零「そう。なぜあなたはこんな国につくのかしら?」
壱河「自国だしね。それに国王だけだよ。こんな僕を受け入れてくれたのは。」
零「利用されているだけでしょう。それにこちら側も受け入れるわよ。」
壱河「かもね。でも、辛い時に助けてくれたのは国王だった。」
零「騙されているわよ。」
壱河「…それでも…良いよ。恩返しができれば。」
零「そう…残念ね。話が通じると思ったのだけど。」
壱河「君こそ、国につく気はない?」
零「残念ながらないわね。」
壱河「…そっか。じゃあ、…全力でやるだけ。」
彼はにこにこと、彼女も殺意は一切なく、ただ普通に会話している様にしか見えないレベルで2人はそんな言葉を交わしていたが、彼が手を翳した瞬間、辺りが殺意に塗れる。
【病毒支配】『毒霧』
その名の通り毒の霧が何処からともなく辺りを覆い尽くす。そして彼は告げる。
壱河「諦めて。僕は強いんだ。」
零「…(ボソッ)なるほど、ねぇ。」
それに対して彼女は毒霧を回避しようともせずに、ただ、見ていた。その冷静な淡い青の瞳は毒霧の中でも冷たく、異様さを醸し出していた。
壱河「何を考えてるのか知らないけど、僕の毒は死に至るんだ。だから、はやく降伏して。」
その未だに優しげな雰囲気を纏っている言葉と辺りの現状はあまりにも不一致だった。彼女は何も動じずに毒霧の一部を掴む様な動作をする。
虚無魔法『真空化』
その瞬間、辺りの空気が毒霧を巻き込んで虚無に呑み込まれていく。濁った空気が一転して何もないある種の美しさを取り戻していく。残った微かな空気を求めつつ、彼は声をあげる。
壱河「何やってっ、それじゃ…」
零「本当に甘いわね。」
壱河「なんで…喋って…」
零「あなたの能力は通用しない。負けを認めてくれないかしら?」
壱河「僕は…仲間を見捨てて裏切ることなんてできない!」
彼は覚悟を決めた碧の瞳で彼女を確かに見つめる。視線を逸らす事もなく、ただひたすらに。
零「そう…ならば手荒にいきましょう。」
そう少し残念そうに呟き、彼女は一気に距離を詰め、彼を額を指で弾きながらある技を発動させる。
ーーー【ーーーー】
ーーー『霊魂支配』