時空の狭間の狂宴/共演
「離して、離して下さい!!私、ほんとに何もしてません!!」
あーいい眺め。アレだよな、ボスが読んでたニホンのマンガの…
そうそう、百億の名画にもなんたら、みたいなヤツ。
まさにそんな感じ。壁括り付けとくと身動きとれないからさ、マジで死ぬほど恐怖心煽れるのな。
見た目的にも…il migliore、最高だしな。
いやぁ、天才だと思ったね。初めてアレ見た時はさ。
「離せって言われてもなぁ。あんたも知ってるだろ?俺らマフィアは裏切り者に容赦しねぇのさ。」
「だから、何もしてないって言ってるじゃないですか!!」
うーん、なんか違ぇ。ギャーピーギャーピー騒がれるのはシュミじゃねぇんだ俺。むしろこういう時はこう、静かに泣いててほしいんだよなぁ…
まぁでも?多少は多めに見ないとなぁ。なんせ久々の拷問だし。
ちょっと気抜いたらすぐ死んじまうからなぁ、特に女って。
いやでもやっぱすげぇうるせぇのな、こいつ。耳障りだしイライラするから猿轡でもしとくかなぁ…っと、あったあった。
「何するんですか!やめて下さ…んー!んー!!!」
るせぇな。
「ッ!!」
あやっべ、つい撃っちまった。まぁ当たってないしいっか。
「よーしよし、そのまんまいい子にしとけよお嬢さん?あそうそう、しらばっくれてもムダだからそのつもりでな?」
うーん、でもやっぱなんか足りねぇ気がすんだよな。
あー…
何かな……
何足しゃあいいかなー………
うーん…あ、目隠しかなー…………
ま、とりあえず目隠ししとくか。よいしょっと。
「ふぐ、ふ、ぐ、!!」
あーあーよく泣きやがるなぁこいつ。一瞬で目隠しビッショビショじゃねぇか。
しかもジタバタ暴れやがってさ。
んなコトするから手錠が腕に食い込むんだ。ったく、ムダな傷つくの嫌いなんだよな、俺。几帳面だろ?そうだろそうだろ。
「んー!!ん、んー!!!!」
「るっせぇぞこのクソアマァ!!!…っと、いけね。俺ぁ気が短くてさぁ、なんつーの?すぐ殺しそうになるんだよなァ。」
ま、まだまだ遊び足りないし殺さないように頑張るけどさ。俺ってばちゃんと“待て”もできるのよ。
さぁて、と。
何からやるかなぁ…首か?やっぱ首からか?
いやでも、力加減上手い事やらないとすぐ死んじまうからなぁ…
あそうだ、アレ使うか。
確か、この辺りに…よし、あったあった。しかもちょうどいい感じじゃねぇの?
「はーい、ここでクイズでーす。俺が今持ってんのはなーんだ。」
「ふ、ぐ、ん、んー!!」
あ、猿轡。つけっぱなしだった。
やっべやっべ、取ってからじゃねぇと喋れねぇからなぁ…っと、取れた取れた。
「はぁ、はぁ……」
「オイ、さっさと答えろよ。目は塞がってても口は付いてんだろうが、あんたみてぇなメスネコにもよ!?!?」
あーくっそイライラする。俺が質問してんだからさっさと答えろっての。
ま、いいや。コレで肌でもなぞってやれば…って、なんか妙に肌出てねぇ服着てんなぁ……
気に入らねぇし裂くか。えい。よしオッケー。カンペキ。
「っ!!」
あ、血ぃ出て来たな…
いいなぁ、血。
真っ赤で綺麗でさ。やっぱ人間の体って綺麗にできてんなぁって思うぜ、こういう時は特に。
神なんぞ特に信じちゃいねぇが…最高傑作ってまさにこーゆー感じなんじゃねぇのかな。知らねぇしキョーミもねぇけどさ。
「お、やっと分かったか?何が当たってる?何であんたの肌が裂けた?何であんたは斬られようとしてるんだ言ってみろ!!!」
「…うぁ!?言います!!!ナイフです!!!だからやめて!!!」
おー、御名答。ナイフってのも良いよなぁ、奥が深ぇんだコレが案外。
ちなみにこのナイフ、実は思いっきり錆びてんだ。こいつは気づいてないっぽいんだけどさ。
そ、ギザギザの刃物で切ると痛いだろ?
だからこの間使った時に放置しといたんだよ。敢えて血ぃつけたまんま。
いやぁ、いい具合に仕上がってる。コレで斬ったら痛いだろうなぁ…どんな泣き声あげるんだろうなぁ……
やっべぇ、本気でスイッチ入りそうだ。ゾクゾクする。
「さぁてどうだ?そろそろ言う気になったか?」
そう、コレはあくまでも拷問。情報を引き出すのが目的。ソレを忘れちゃぁいけねぇよな。
つっても今吐かれると…不完全燃焼っっつーの?絶対イライラして殺しちまうからさ……
むしろダンマリの方がイイぜ?
「知りません!!知らないって言ってるでしょう!!!だから離してください!!ルミナさんに言いつけますよ!!!」
よぉし100点満点。
でもさぁ、誰だよルミナ。
いや、どっかで聞いた気はすんだけどさ。案外、思い出せねぇのな。
あー、しっかしこいつ、ホントよく叫ぶのな。思い出すのに集中できねぇしやっぱもっかい猿轡…ってのもめんどくせぇし、布突っ込んどくか。おりゃ。
おーよしよし静かになったぞ。
しっかしなんだ、誰だったかな…
ってあー、思い出した、刃物マニアだ。そういやあいつそんな名前だったわ。
ビタイチ興味無かったから忘れてたぜ。
え、何、つまりこのクソアマ、俺があの偏執狂の話なら従うと思ってんのか?
「馬鹿も休み休み言いなお嬢さん?…そいつぁ笑えねぇジョーダンだぜ?良い加減にしやがれ!!!!」
俺が傅くのはボスだけなんだよふざけんなこのネズミ如きがァ!!!
って、あー、やっちまった。
何って?いやぁ、うっかり首締めちまったのよ俺ってばさ。
うっわぁ…顔真っ青……
生きてっかな…死んじまったかな……
まいっか、今の内に書類探しと行こうじゃねぇか。どうせ服の下に隠し持ってるだろ。
あれ、この服どうなってんだ?ポケット多すぎんだろ…うっわなんかココとかすげぇ頑丈にできてやがる。
まぁいっか刃こぼれしても。
うわココ切っても脱げねぇのか…めんどくせ。じゃコッチか。って違ぇのかよ!!!
だー!クソうっぜぇ!!ったくもうちょい探しやすい服着とけやこの女狐!!!
んじゃこのポッケか?よいしょっと…畜生ココにもねェ!!!!
あー…ワケ分かんねぇからまとめて切っちまうか。うぜぇし。
オラよっと。
よーしオッケー。カンペキ。あとはココから探すだけ…
…ねぇな。書類ねぇ。ドコにもねェ。
まぁいっか、電気ショックかなんか使って起こしてから本人に直接聞きゃあなんとかなるだろうしな。
ああそうだ、守衛どもに伝えとくか今の状況。このお嬢さんがおねんねしてるうちに。
ついでに情報屋にも回しといて…と。
「あー、ヘラヘラ情報屋か?」
『へいへい、コチラ楼…って、ルーカスの旦那っすか。そのあだ名、中々イカしてますけど…もうちょいこう、別なのは無いんで?』
ったく、いっつもコイツヘラヘラヘラヘラと喋くりやがって。情報に間違いはねぇし優秀ではあるんだけどさ、大丈夫かよって思うんだよなぁ。偶に。つーかしょっちゅう。
「アン?気に入んねぇってのか?」
『いやいやぁ、違いますよ。そんで、今回はなんの御用です?ああ、そちらのボスちゃんのお好きなもんなら、只今調査してますですよっと。』
違ぇわ。いや、確かに頼んだけどさ。そりゃそうだ、ボスの誕生日プレゼント外すわけにいかねぇからな。当然だろ。…っていや、そうじゃねぇの。ソレ今カンケーねぇ。
「いやソレはいいから。とっとと調べろ、仕事だ。こっから逃げてったヤツがいるかどうかだけでいい。ああそうだ、三時間以内な。後で請求しろ。」
『はいはぁい。相変わらず“無茶振り”って言葉をよぉくご存知っすねぇ旦那は…』
…切りやがった。結局、何が言いたかったんだあいつは?
[水平線]
ぴくり、と指先が動く。
よぉし、やっと目ぇ覚ましやがった。
ったく、死んじまったかと不安になったじゃねぇか。
「おはよう、よく寝てたなぁお嬢さん?」
「ヒッ…」
おーおー結構ビビるのな。
まだまだ序ノ口なんだけどなぁ…コイツもダメか?
ったく、サツのスパイだか別のファミリーのスパイだか知らないけどさ。もうちょいこう、芯があるヤツを探せよな。
あーでも、演技かも…だな!!それならイイな、やりがいあるぜ!!!
「オラ目隠しは寝てる間に取ったからよく見えるだろ!?どうなんだよアアン!?!?」
目の前でナイフを振る。言っとくが、さっきの錆びたナイフなんかじゃないからな。
刃物マニアが昔寄越したヤツだから、切れ味は折り紙つきだ。
でもなんかこう、反応が薄いな。
酔わせたからよく見えねぇか?まぁなんでもいいけどな。
「どうだグラグラするだろ!?何されたか気になるよなァ!?!?」
「…う、ぁ…」
んー、答えんのすら無理か?
さっきは反応あったから、なんとかなるかと思ったんだがな…
テキトーにその辺にあるヤツ飲ませたのが悪かったか?
それともクスリぶち込んだせいか?
前回は丁度良かったんだが…
まぁ前回のはかなりデカかったしな。カクジツにやるならもう少し度数低くないと、ってコトだな。
よし、コレで一つ学んだ。
つっても、もう少し酔いが醒めてからじゃねぇとな。前後不覚でやったって何の意味も……意味、も………
いや、案外アリかもな。
待つのがメンドくさいから嫌だってワケじゃないんだぜ?決して。
「つーわけで、と。足先からにすっか。」
何って、百刻みだよ百刻み。知らねぇ?酔わせて痛覚鈍くして、ゆっくり先っちょからキザむの。
ほら、そのまま斬るのは痛めつけるだけですぐ死んじまうからさぁ。
逆に死ににくいのならムチなんだけどさ、今チョード切らしてんだわ。
ま、俺の場合は酒以外にも“イロイロ”使うけどな。
「っしょ、っと。」
ンー…
やっぱもうちょい酔い醒めてからじゃの方が良かったか?何回か斬ってみたが、人形でやってるみたいでつまんねぇ。悲鳴の一つもあげねぇのな。
とりあえず水飲ますか。普通に頭沈めるだけでイイだろ。
オラよっと。お、ビンゴだ。やっぱちょっと目ェ醒ましやがった。
あー、ゴボゴボ言ってんなァ…しかもバンバン床叩いてさ。死にたくない死にたくない、って叫んでるんだろうな…
っはぁ…堪んねぇ……
っといけね、溺れちまう。そろそろ引き上げるか。
「イイ感じに水飲めたか?よぉしイイ子だ。目が醒めて来た所で足元を見てみろ。」
くぐもった悲鳴をあげる女。
そうそう、足元もうケッコー斬れてんの。気づいた?
でも麻酔と酔いとその他イロイロでさ、結構自覚しにくいんだわ。
んで、自覚しちまった途端痛くなる。ホラ、虫刺されとかと一緒だ。アレ結構うぜぇからさ、蚊なんて滅びゃあいいのに。
「ま、ンなモンどうでもいいか。次はどこからイく?やっぱこのまま足?それとも腕か?爪でもイイぜェ?」
あーあーこいつ、やだやだー、なんてガキみてぇに頭振りやがってよ。
心底イラつくなァ!!!!
っていけないいけない。まずは、情報吐き出させてから、だよなぁ。
あーでもなー。こいつ喋りそうにないなー。
もうすぐボス帰ってくるし、それまでに終わらせないと迎えにいけない。
もし出迎えに出られなかった、なんてコトになったら忠犬失格だ。
そう、趣味とボスなら俺ぁちゃんとボスを優先できるんだぜ。当然だろ。
「よぉしそうと決まりゃ遊びはココまでだ。オラとっとと吐きやがれェ!!!!」
思いっきり首を絞める。いや、ちゃんと息できなくなって来たタイミングで緩めるけどさ。じゃねぇとサックリ死んじまうから。
あー…やっぱなんだかんだでイチバン好きだわコレ。
しかもこいつ、イイ反応しやがる。スッゲェ暴れんだよ。コレで今日三回目の窒息だからさ、やっぱカラダが覚えてんのな。
「…ケホ、ァ、ぐ…ぁ……ヒュ……」
咳に力がない。ヒューヒューとした呼吸音は、俺の指が気道を塞いでるのが精々半分くらいだから。
手足の力が抜けて、唇が青っぽくなってくる。なんつーんだっけ、チアなんたらみたいなヤツ。
あぁそうそうチアノーゼだわ思い出した。酸素足りねぇヤツ。じゃあ離さないとな。
「オラ一旦休憩だ。思いっきり空気吸ってイイぜ?さぞかしウマいだろうからなァ?」
呼吸の仕方忘れちまったか?って思うぐらい、手を離しても浅い呼吸しかできてねぇ。
必死に息しようとしてんのとか、マジで堪んねぇ。
やっぱこう、俺ってホント好きなんだなぁ人壊すの…って実感できるのな、こーゆーの見てるとさ。
そう、苦しんでるカオってよりは、俺が苦しめてるのが好きなんだ。
親から捨てられて犬コロみてぇに生きて来た俺の存在理由ってのが、ちょっとだけ分かる気がして。まぁ、今はココで楽しくやってんだけどな。
「ッ、ヒュ、か…ッ…ハァ、ハ、ヒュゲホ、ゴホ…」
おっといけねぇ、ンなコト考えてるヒマねぇんだった。サッサと吐いてもらわねぇとさ、俺が困るんだわ。いやぁどうしよ。
「オイオイまぁ落ち着けって。」
そう言っても目の前の女は震えるばかりで話にならない。やべぇ、死ぬほどイラついてきた。ちょっと痛めつけすぎたかァ?いやでもそれは俺悪くねぇし。
根性ねぇこいつのせいだよなぁ。
「今素直に言やぁ殺さずにおいてやるよ。でも俺、あんま気ぃ長ェ方じゃねぇからさ……
十秒以内に吐かなきゃ殺すぞ!!!!」
そう言った直後。
…庭に投げ捨てた。今頃とっくに、上が回収してるはず。
目の前のクソアマは、泣き喚きいて咽せながらもそう言いやがった。
「あァ!?どうせウソだろ!?」
ま、嘘っぽい雰囲気はねぇんだけどよ。
でも一発撃っとくか。せっかくだし。
「っぐぁ!!」
しかしやっべぇ…やらかしたかな。急いで探しに…って…ん…?
いや、なんで俺がこんなのが言う事にイチイチ踊らされなきゃいけねぇんだ…?
そんで庭に投げ捨てたっつーなら、この敷地入んねぇとだろ?ココ入って来たら守衛が気づくよな。なんなら猟犬とか放し飼いにされてるし。
コイツは刃物マニアの使いだー、とかなんとか言えば通れるだろうけど…ってそれも通しちゃダメじゃね?
あとであいつら問い詰めねぇとな……
ってンなモンどうだっていいんだ。つまりこいつ捨て駒か…かわいそうに。
ま、どうでもいっか。電話電話…あ、やべぇ、血まみれになってんなぁ…
多分足斬ってた時にやっちまったっぽい。
「あーもしもし、俺だ。ルーカスだ。ああ…ああそうだ。執務室周辺の庭と…そっから離れた不審な人影を探せ。」
コレでよし、と。あとは…あの馬鹿にもメール送っとくか。『進捗どうだ?裏を取れ、一応吐いたから。』っと。
「教えてくれてありがとなお嬢さん?それじゃあ、せいぜい元気に過ごせよ。」
え、このまま放置してくぜフツーに。だって俺がワザワザこいつになんかしてやる義理ねぇし。
とはいえ情報がウソだった時に備えて、生かしとかなきゃいけないからな。そう、監禁ってヤツ。あとで監禁用の部屋に移動させるワケ。
いやぁ、昔ウソだって分かった時にはもうウッカリ殺しちまってて、酷く先代に怒られたコトがあったっけ。
懐かしいなぁ…
って、思い出に浸りたいのは山々だけどココでやるのはちょっとアレだよなぁ。この馬鹿の血で大事な記憶が汚れちまう。
まぁとりあえずココに置いとけばいいだろ。そんであとでテキトーなのに命令して運ばせよう。
俺はやらない。だって俺幹部だし。
それに俺は、今からボスの出迎え行くんだからな!
さぁて、戸締りもバッチリだし。
血まみれになっちまったスーツ着替える為にも、とっとと部屋に戻るとすっかな!
あーいい眺め。アレだよな、ボスが読んでたニホンのマンガの…
そうそう、百億の名画にもなんたら、みたいなヤツ。
まさにそんな感じ。壁括り付けとくと身動きとれないからさ、マジで死ぬほど恐怖心煽れるのな。
見た目的にも…il migliore、最高だしな。
いやぁ、天才だと思ったね。初めてアレ見た時はさ。
「離せって言われてもなぁ。あんたも知ってるだろ?俺らマフィアは裏切り者に容赦しねぇのさ。」
「だから、何もしてないって言ってるじゃないですか!!」
うーん、なんか違ぇ。ギャーピーギャーピー騒がれるのはシュミじゃねぇんだ俺。むしろこういう時はこう、静かに泣いててほしいんだよなぁ…
まぁでも?多少は多めに見ないとなぁ。なんせ久々の拷問だし。
ちょっと気抜いたらすぐ死んじまうからなぁ、特に女って。
いやでもやっぱすげぇうるせぇのな、こいつ。耳障りだしイライラするから猿轡でもしとくかなぁ…っと、あったあった。
「何するんですか!やめて下さ…んー!んー!!!」
るせぇな。
「ッ!!」
あやっべ、つい撃っちまった。まぁ当たってないしいっか。
「よーしよし、そのまんまいい子にしとけよお嬢さん?あそうそう、しらばっくれてもムダだからそのつもりでな?」
うーん、でもやっぱなんか足りねぇ気がすんだよな。
あー…
何かな……
何足しゃあいいかなー………
うーん…あ、目隠しかなー…………
ま、とりあえず目隠ししとくか。よいしょっと。
「ふぐ、ふ、ぐ、!!」
あーあーよく泣きやがるなぁこいつ。一瞬で目隠しビッショビショじゃねぇか。
しかもジタバタ暴れやがってさ。
んなコトするから手錠が腕に食い込むんだ。ったく、ムダな傷つくの嫌いなんだよな、俺。几帳面だろ?そうだろそうだろ。
「んー!!ん、んー!!!!」
「るっせぇぞこのクソアマァ!!!…っと、いけね。俺ぁ気が短くてさぁ、なんつーの?すぐ殺しそうになるんだよなァ。」
ま、まだまだ遊び足りないし殺さないように頑張るけどさ。俺ってばちゃんと“待て”もできるのよ。
さぁて、と。
何からやるかなぁ…首か?やっぱ首からか?
いやでも、力加減上手い事やらないとすぐ死んじまうからなぁ…
あそうだ、アレ使うか。
確か、この辺りに…よし、あったあった。しかもちょうどいい感じじゃねぇの?
「はーい、ここでクイズでーす。俺が今持ってんのはなーんだ。」
「ふ、ぐ、ん、んー!!」
あ、猿轡。つけっぱなしだった。
やっべやっべ、取ってからじゃねぇと喋れねぇからなぁ…っと、取れた取れた。
「はぁ、はぁ……」
「オイ、さっさと答えろよ。目は塞がってても口は付いてんだろうが、あんたみてぇなメスネコにもよ!?!?」
あーくっそイライラする。俺が質問してんだからさっさと答えろっての。
ま、いいや。コレで肌でもなぞってやれば…って、なんか妙に肌出てねぇ服着てんなぁ……
気に入らねぇし裂くか。えい。よしオッケー。カンペキ。
「っ!!」
あ、血ぃ出て来たな…
いいなぁ、血。
真っ赤で綺麗でさ。やっぱ人間の体って綺麗にできてんなぁって思うぜ、こういう時は特に。
神なんぞ特に信じちゃいねぇが…最高傑作ってまさにこーゆー感じなんじゃねぇのかな。知らねぇしキョーミもねぇけどさ。
「お、やっと分かったか?何が当たってる?何であんたの肌が裂けた?何であんたは斬られようとしてるんだ言ってみろ!!!」
「…うぁ!?言います!!!ナイフです!!!だからやめて!!!」
おー、御名答。ナイフってのも良いよなぁ、奥が深ぇんだコレが案外。
ちなみにこのナイフ、実は思いっきり錆びてんだ。こいつは気づいてないっぽいんだけどさ。
そ、ギザギザの刃物で切ると痛いだろ?
だからこの間使った時に放置しといたんだよ。敢えて血ぃつけたまんま。
いやぁ、いい具合に仕上がってる。コレで斬ったら痛いだろうなぁ…どんな泣き声あげるんだろうなぁ……
やっべぇ、本気でスイッチ入りそうだ。ゾクゾクする。
「さぁてどうだ?そろそろ言う気になったか?」
そう、コレはあくまでも拷問。情報を引き出すのが目的。ソレを忘れちゃぁいけねぇよな。
つっても今吐かれると…不完全燃焼っっつーの?絶対イライラして殺しちまうからさ……
むしろダンマリの方がイイぜ?
「知りません!!知らないって言ってるでしょう!!!だから離してください!!ルミナさんに言いつけますよ!!!」
よぉし100点満点。
でもさぁ、誰だよルミナ。
いや、どっかで聞いた気はすんだけどさ。案外、思い出せねぇのな。
あー、しっかしこいつ、ホントよく叫ぶのな。思い出すのに集中できねぇしやっぱもっかい猿轡…ってのもめんどくせぇし、布突っ込んどくか。おりゃ。
おーよしよし静かになったぞ。
しっかしなんだ、誰だったかな…
ってあー、思い出した、刃物マニアだ。そういやあいつそんな名前だったわ。
ビタイチ興味無かったから忘れてたぜ。
え、何、つまりこのクソアマ、俺があの偏執狂の話なら従うと思ってんのか?
「馬鹿も休み休み言いなお嬢さん?…そいつぁ笑えねぇジョーダンだぜ?良い加減にしやがれ!!!!」
俺が傅くのはボスだけなんだよふざけんなこのネズミ如きがァ!!!
って、あー、やっちまった。
何って?いやぁ、うっかり首締めちまったのよ俺ってばさ。
うっわぁ…顔真っ青……
生きてっかな…死んじまったかな……
まいっか、今の内に書類探しと行こうじゃねぇか。どうせ服の下に隠し持ってるだろ。
あれ、この服どうなってんだ?ポケット多すぎんだろ…うっわなんかココとかすげぇ頑丈にできてやがる。
まぁいっか刃こぼれしても。
うわココ切っても脱げねぇのか…めんどくせ。じゃコッチか。って違ぇのかよ!!!
だー!クソうっぜぇ!!ったくもうちょい探しやすい服着とけやこの女狐!!!
んじゃこのポッケか?よいしょっと…畜生ココにもねェ!!!!
あー…ワケ分かんねぇからまとめて切っちまうか。うぜぇし。
オラよっと。
よーしオッケー。カンペキ。あとはココから探すだけ…
…ねぇな。書類ねぇ。ドコにもねェ。
まぁいっか、電気ショックかなんか使って起こしてから本人に直接聞きゃあなんとかなるだろうしな。
ああそうだ、守衛どもに伝えとくか今の状況。このお嬢さんがおねんねしてるうちに。
ついでに情報屋にも回しといて…と。
「あー、ヘラヘラ情報屋か?」
『へいへい、コチラ楼…って、ルーカスの旦那っすか。そのあだ名、中々イカしてますけど…もうちょいこう、別なのは無いんで?』
ったく、いっつもコイツヘラヘラヘラヘラと喋くりやがって。情報に間違いはねぇし優秀ではあるんだけどさ、大丈夫かよって思うんだよなぁ。偶に。つーかしょっちゅう。
「アン?気に入んねぇってのか?」
『いやいやぁ、違いますよ。そんで、今回はなんの御用です?ああ、そちらのボスちゃんのお好きなもんなら、只今調査してますですよっと。』
違ぇわ。いや、確かに頼んだけどさ。そりゃそうだ、ボスの誕生日プレゼント外すわけにいかねぇからな。当然だろ。…っていや、そうじゃねぇの。ソレ今カンケーねぇ。
「いやソレはいいから。とっとと調べろ、仕事だ。こっから逃げてったヤツがいるかどうかだけでいい。ああそうだ、三時間以内な。後で請求しろ。」
『はいはぁい。相変わらず“無茶振り”って言葉をよぉくご存知っすねぇ旦那は…』
…切りやがった。結局、何が言いたかったんだあいつは?
[水平線]
ぴくり、と指先が動く。
よぉし、やっと目ぇ覚ましやがった。
ったく、死んじまったかと不安になったじゃねぇか。
「おはよう、よく寝てたなぁお嬢さん?」
「ヒッ…」
おーおー結構ビビるのな。
まだまだ序ノ口なんだけどなぁ…コイツもダメか?
ったく、サツのスパイだか別のファミリーのスパイだか知らないけどさ。もうちょいこう、芯があるヤツを探せよな。
あーでも、演技かも…だな!!それならイイな、やりがいあるぜ!!!
「オラ目隠しは寝てる間に取ったからよく見えるだろ!?どうなんだよアアン!?!?」
目の前でナイフを振る。言っとくが、さっきの錆びたナイフなんかじゃないからな。
刃物マニアが昔寄越したヤツだから、切れ味は折り紙つきだ。
でもなんかこう、反応が薄いな。
酔わせたからよく見えねぇか?まぁなんでもいいけどな。
「どうだグラグラするだろ!?何されたか気になるよなァ!?!?」
「…う、ぁ…」
んー、答えんのすら無理か?
さっきは反応あったから、なんとかなるかと思ったんだがな…
テキトーにその辺にあるヤツ飲ませたのが悪かったか?
それともクスリぶち込んだせいか?
前回は丁度良かったんだが…
まぁ前回のはかなりデカかったしな。カクジツにやるならもう少し度数低くないと、ってコトだな。
よし、コレで一つ学んだ。
つっても、もう少し酔いが醒めてからじゃねぇとな。前後不覚でやったって何の意味も……意味、も………
いや、案外アリかもな。
待つのがメンドくさいから嫌だってワケじゃないんだぜ?決して。
「つーわけで、と。足先からにすっか。」
何って、百刻みだよ百刻み。知らねぇ?酔わせて痛覚鈍くして、ゆっくり先っちょからキザむの。
ほら、そのまま斬るのは痛めつけるだけですぐ死んじまうからさぁ。
逆に死ににくいのならムチなんだけどさ、今チョード切らしてんだわ。
ま、俺の場合は酒以外にも“イロイロ”使うけどな。
「っしょ、っと。」
ンー…
やっぱもうちょい酔い醒めてからじゃの方が良かったか?何回か斬ってみたが、人形でやってるみたいでつまんねぇ。悲鳴の一つもあげねぇのな。
とりあえず水飲ますか。普通に頭沈めるだけでイイだろ。
オラよっと。お、ビンゴだ。やっぱちょっと目ェ醒ましやがった。
あー、ゴボゴボ言ってんなァ…しかもバンバン床叩いてさ。死にたくない死にたくない、って叫んでるんだろうな…
っはぁ…堪んねぇ……
っといけね、溺れちまう。そろそろ引き上げるか。
「イイ感じに水飲めたか?よぉしイイ子だ。目が醒めて来た所で足元を見てみろ。」
くぐもった悲鳴をあげる女。
そうそう、足元もうケッコー斬れてんの。気づいた?
でも麻酔と酔いとその他イロイロでさ、結構自覚しにくいんだわ。
んで、自覚しちまった途端痛くなる。ホラ、虫刺されとかと一緒だ。アレ結構うぜぇからさ、蚊なんて滅びゃあいいのに。
「ま、ンなモンどうでもいいか。次はどこからイく?やっぱこのまま足?それとも腕か?爪でもイイぜェ?」
あーあーこいつ、やだやだー、なんてガキみてぇに頭振りやがってよ。
心底イラつくなァ!!!!
っていけないいけない。まずは、情報吐き出させてから、だよなぁ。
あーでもなー。こいつ喋りそうにないなー。
もうすぐボス帰ってくるし、それまでに終わらせないと迎えにいけない。
もし出迎えに出られなかった、なんてコトになったら忠犬失格だ。
そう、趣味とボスなら俺ぁちゃんとボスを優先できるんだぜ。当然だろ。
「よぉしそうと決まりゃ遊びはココまでだ。オラとっとと吐きやがれェ!!!!」
思いっきり首を絞める。いや、ちゃんと息できなくなって来たタイミングで緩めるけどさ。じゃねぇとサックリ死んじまうから。
あー…やっぱなんだかんだでイチバン好きだわコレ。
しかもこいつ、イイ反応しやがる。スッゲェ暴れんだよ。コレで今日三回目の窒息だからさ、やっぱカラダが覚えてんのな。
「…ケホ、ァ、ぐ…ぁ……ヒュ……」
咳に力がない。ヒューヒューとした呼吸音は、俺の指が気道を塞いでるのが精々半分くらいだから。
手足の力が抜けて、唇が青っぽくなってくる。なんつーんだっけ、チアなんたらみたいなヤツ。
あぁそうそうチアノーゼだわ思い出した。酸素足りねぇヤツ。じゃあ離さないとな。
「オラ一旦休憩だ。思いっきり空気吸ってイイぜ?さぞかしウマいだろうからなァ?」
呼吸の仕方忘れちまったか?って思うぐらい、手を離しても浅い呼吸しかできてねぇ。
必死に息しようとしてんのとか、マジで堪んねぇ。
やっぱこう、俺ってホント好きなんだなぁ人壊すの…って実感できるのな、こーゆーの見てるとさ。
そう、苦しんでるカオってよりは、俺が苦しめてるのが好きなんだ。
親から捨てられて犬コロみてぇに生きて来た俺の存在理由ってのが、ちょっとだけ分かる気がして。まぁ、今はココで楽しくやってんだけどな。
「ッ、ヒュ、か…ッ…ハァ、ハ、ヒュゲホ、ゴホ…」
おっといけねぇ、ンなコト考えてるヒマねぇんだった。サッサと吐いてもらわねぇとさ、俺が困るんだわ。いやぁどうしよ。
「オイオイまぁ落ち着けって。」
そう言っても目の前の女は震えるばかりで話にならない。やべぇ、死ぬほどイラついてきた。ちょっと痛めつけすぎたかァ?いやでもそれは俺悪くねぇし。
根性ねぇこいつのせいだよなぁ。
「今素直に言やぁ殺さずにおいてやるよ。でも俺、あんま気ぃ長ェ方じゃねぇからさ……
十秒以内に吐かなきゃ殺すぞ!!!!」
そう言った直後。
…庭に投げ捨てた。今頃とっくに、上が回収してるはず。
目の前のクソアマは、泣き喚きいて咽せながらもそう言いやがった。
「あァ!?どうせウソだろ!?」
ま、嘘っぽい雰囲気はねぇんだけどよ。
でも一発撃っとくか。せっかくだし。
「っぐぁ!!」
しかしやっべぇ…やらかしたかな。急いで探しに…って…ん…?
いや、なんで俺がこんなのが言う事にイチイチ踊らされなきゃいけねぇんだ…?
そんで庭に投げ捨てたっつーなら、この敷地入んねぇとだろ?ココ入って来たら守衛が気づくよな。なんなら猟犬とか放し飼いにされてるし。
コイツは刃物マニアの使いだー、とかなんとか言えば通れるだろうけど…ってそれも通しちゃダメじゃね?
あとであいつら問い詰めねぇとな……
ってンなモンどうだっていいんだ。つまりこいつ捨て駒か…かわいそうに。
ま、どうでもいっか。電話電話…あ、やべぇ、血まみれになってんなぁ…
多分足斬ってた時にやっちまったっぽい。
「あーもしもし、俺だ。ルーカスだ。ああ…ああそうだ。執務室周辺の庭と…そっから離れた不審な人影を探せ。」
コレでよし、と。あとは…あの馬鹿にもメール送っとくか。『進捗どうだ?裏を取れ、一応吐いたから。』っと。
「教えてくれてありがとなお嬢さん?それじゃあ、せいぜい元気に過ごせよ。」
え、このまま放置してくぜフツーに。だって俺がワザワザこいつになんかしてやる義理ねぇし。
とはいえ情報がウソだった時に備えて、生かしとかなきゃいけないからな。そう、監禁ってヤツ。あとで監禁用の部屋に移動させるワケ。
いやぁ、昔ウソだって分かった時にはもうウッカリ殺しちまってて、酷く先代に怒られたコトがあったっけ。
懐かしいなぁ…
って、思い出に浸りたいのは山々だけどココでやるのはちょっとアレだよなぁ。この馬鹿の血で大事な記憶が汚れちまう。
まぁとりあえずココに置いとけばいいだろ。そんであとでテキトーなのに命令して運ばせよう。
俺はやらない。だって俺幹部だし。
それに俺は、今からボスの出迎え行くんだからな!
さぁて、戸締りもバッチリだし。
血まみれになっちまったスーツ着替える為にも、とっとと部屋に戻るとすっかな!