時空の狭間の狂宴/共演
「つーか、そろそろ次呼べよなー。どーせまだ何人かいんだろー?テメェが呼ばなきゃなんもできねぇだろーが。」
そう言い放ったのは月姫。無造作に机の上に足を放り出している。
「そっすね、悪ぃ。えー、気を取り直して次行くっす。かつて作者がキャラ考えるだけ考えてほっぽり出したざまぁ系小説の、アリシア・ヴィントさんっす!」
そうして出て来たのは小柄な少女…
いや、本当に少女なのだろうか。
「えっと…よろしく、お願いしますね?」
その一言は甘く耳を打つ。鈴の転がるような声、とはまさしくこんな声なのだろう。
(え、めちゃくちゃかわいい人来ちゃったんすけど、どうしようどうしようどうしよう)
(え、めっちゃかわいい。妹そっくり。)
(くっそ、かわいいじゃねーかコイツ。)
上から、留歌、陽、月姫の心の声である。
唯一気にしていなさそうな単は、相も変わらずの…いや、今まで以上の呆れ顔だ。
「あんたら、揃いも揃って百面相して何してんの?どうせなら、もっと面白い顔してみなよ。というか、こいつ…」
彼には何が見えているのだろうか。如何やら、アリシアを警戒しているらしい。
「単くんちょっと黙ってて。」
「痛い、突然押し除けるな…っておい!」
彼の静止を聞かずに陽は飛び出してアリシアの頭を撫でている。
それもそのはず、吸い込まれそうな銀の髪に、海を湛えた大きな瞳。
加えて、神が充分すぎるほどの念を込めて無駄な肉の一切を廃したかのような細い肢体。まるで人形のような愛らしさだ。絶世の美少女、という表現に相応しい。
「かっわいー!!アリシアちゃんかわいーねー!!あ、でも私より年上なんだっけ?でもかわいー!妹みたーい!!」
「えっと…ありがとう、ございます?」
あっという間に虜にされた陽は、今度はぎゅうぎゅうとアリシアを抱きしめている。
…まぁ、人形をかわいがるような系統だし平気だろう。
(そいつ、一番厄介な類の女だぞ気づけよ…)
「あ、あ…」(どうしようどうしようどうしよう、そうだ、目逸らせば見えねぇ、挙動不審にだけはならないように…)
「…べ、別に…そんなんでもないだろ。オラさっさと次行け次ー!!」
上から、単、留歌、月姫と三者三様の反応に、渦中の少女達はキョトンとした表情をしている。
「っす、了解っす。えーお次は…お、二人まとめてっすね。」
そう界人が話し始めた途端、二人の人影が現れる。
「こちらもかつて作者がキャラ考えるだけでほっぽり出したイタリアマフィア小説より、エルマ・アンサルディさんとルーカスさんっす!」
おいやめろ、その術は僕に効く…じゃ、なくて。
現れたのは、ブロンドの長い髪を下ろした薄桃色の目で、紅色のナイトドレスを着た女性。
そして、控えるように後ろに付く薄茶色の髪と目の、いかにもマフィアな帽子にスーツの青年。
「エルマと申します。よろしくお願いしますね。」
丁寧に頭を下げる所作は、何故か見る者に威圧感を与える。
「ボースー。猫被んのやめましょー?ほらほらー。いつもみたいに…」
それを和らげるかのように語り出す彼は、ボス…エルマに睨まれている事に気づかない。
「いい加減にしてくれないかしらこの駄犬。」
「おお怖。でもそっちじゃないんだよなぁ…」
突如として飛び出した“駄犬”発言を物ともせず肩を竦める青年…ルーカスは、エルマに高そうな靴を思い切り踏まれている。
「あー、なんか迫力に欠けると思ったら…エルマさん、今日は髪結んでないんすね。」
界人の発言でようやく足を上げて向き直る彼女は、まさしく夜の華とでも言うべき端正な顔を困り笑いの表情に変えている。
「まぁ結んでもいいのですけれど…ほら、ルーカスと来たら、結ぶの自分以外の前じゃ嫌だって拗ねるのよ。」
「だってそうでしょう!?ボスのかっこいい所は俺だけが知ってればいいんですー!他の男になんて見せませーん!」
くっそう君らイチャつきやがって…じゃなかった。
青年…もといルーカスに、犬の耳と尻尾が見える気がする。
なおエルマにぐりぐりと頭を押し付けているが、哀れにも首を絞められ始めた。
「あのー…髪結ぶとかってどういう事なんすか?」
「確かに、それ私も聞きたい!」
それを見かねたのか、留歌と陽がエルマの気を逸らそうと質問している。
「そうですね…優先順位をちょっと変える、おまじない…みたいな物ですよ。」
パッとルーカスを離して向き直る所作は隅々まで洗練されているが、している行動はお嬢様のそれではない。
「色々あってマフィアのボスになった時にね。普通の私を封印する方法、みたいな感じで、私の世話係になった人に教えて頂いたんです。」
前者はうんうんと頷いて聞いていたルーカスにとっても如何やら後者は初耳だったらしく、雰囲気が研ぎ澄まされる。
「…まさかソレ、あの気取り屋で慇懃無礼な陰険執事ですか?…[小文字] くっそ、俺のいない所でそんな事しやがって[/小文字]…ちょっとボス。俺帰っていいですかね。」
「どうせあの人を締めるとか言い出すんでしょう。良い加減にしないと本気で怒るわよ。」
あ、これマジのやつー…と言いながら引き下がるルーカスに、ここまで傍観していたナマケモノ…もとい単が言い捨てる。
「はいはいそういうのいいからもう面倒くさい。」
「めんどくさいってなんだよ。“俺の”ボスだぞ。」
それに変な所で突っかかり、ルーカスは臨戦体制。今にも銃を出そうとしているが、単は全く意に介さない。
でも留歌とアリシアは後ろで慌てているので、そろそろ辞めて頂きたい。
「あーもう。こっちの女じゃなくて、あんたが面倒くさいって言ってんだよ。その程度を理解する脳味噌も無い訳?」
「というかそもそも私、貴方の物になった覚えはございませんけど?」
集中砲火を食らってもヘラヘラと笑っているルーカス。なんならその軽い口に油でも引いたかのように更に回り始める。
「まぁたそんな事言ってー。ボスってば照れ屋さん?そんな所も最高だけどー。」
「おい、俺を無視するなよ…はぁ、もういいか。」
諦観の表情で、寝るのは無理そうだし俺は本でも読んでるから邪魔するなよ、と宣言する単。
続けて、この茶番が終わっても呼ぶなと言い切るが、おそらくそれは無理だと思われる。
「…陽キャって怖いっすね。俺もう帰っていいっすか。ちょっと無理っす。」
ふるり、と震えている留歌は、既に大分逃げ腰だ。
まぁそりゃあ…そうだよなぁ。
「わたしも…ちょっと、怖くなって来ました…」
「っうぇ!?ちょま、やめ、くっつかないでくれっす待ってくれマジで!!」
そして、アリシアの思わぬ行動に、かなりパニックになる留歌。
対人関係の経験値、ほぼ0だからね君。
「あ…ごめんなさい…」
「あはは、留歌くんは多分人慣れしてないだけだから気にしなくていいよー!」
そう言う彼女は、似たような人物に心当たりでもあるのだろうか。
「…あー…俺も…最初はそんなモンだったっす。…強く生きてくれ。」
界人が口を濁す。多分こいつだろうな、と貴方は見当をつけた。
正解である。
「え、あー…頑、張る…っす…?」
留歌、そこで困惑するんじゃない。
「そ、れ、よ、り!アリシアちゃんはこっち!」
そう口を挟んだ陽は、アリシアを膝の上に載せて撫でている。
「あんた、本当…」
「…?どしたんすか単、苦い顔して。まぁいいっす。これで八人、全員集合っすね。」
そう界人がまとめたその時。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「俺達、“名無しの会”の代表として、その判断に異議を申し立てる!」
突如として現れる、いる筈のない人影が二つ。
「うっわ、なんすか!?つか誰っすか!?」
あー、留歌?なんで君困惑してんだ?一人は君が知らないとおかしい人なんだけどな?
「ふっふっふ、ヒーローは遅れてくるものなんだよ!と言うわけで、俺たちもその座談会に入れろー!」
[中央寄せ][大文字]つづく?[/大文字][/中央寄せ]
そう言い放ったのは月姫。無造作に机の上に足を放り出している。
「そっすね、悪ぃ。えー、気を取り直して次行くっす。かつて作者がキャラ考えるだけ考えてほっぽり出したざまぁ系小説の、アリシア・ヴィントさんっす!」
そうして出て来たのは小柄な少女…
いや、本当に少女なのだろうか。
「えっと…よろしく、お願いしますね?」
その一言は甘く耳を打つ。鈴の転がるような声、とはまさしくこんな声なのだろう。
(え、めちゃくちゃかわいい人来ちゃったんすけど、どうしようどうしようどうしよう)
(え、めっちゃかわいい。妹そっくり。)
(くっそ、かわいいじゃねーかコイツ。)
上から、留歌、陽、月姫の心の声である。
唯一気にしていなさそうな単は、相も変わらずの…いや、今まで以上の呆れ顔だ。
「あんたら、揃いも揃って百面相して何してんの?どうせなら、もっと面白い顔してみなよ。というか、こいつ…」
彼には何が見えているのだろうか。如何やら、アリシアを警戒しているらしい。
「単くんちょっと黙ってて。」
「痛い、突然押し除けるな…っておい!」
彼の静止を聞かずに陽は飛び出してアリシアの頭を撫でている。
それもそのはず、吸い込まれそうな銀の髪に、海を湛えた大きな瞳。
加えて、神が充分すぎるほどの念を込めて無駄な肉の一切を廃したかのような細い肢体。まるで人形のような愛らしさだ。絶世の美少女、という表現に相応しい。
「かっわいー!!アリシアちゃんかわいーねー!!あ、でも私より年上なんだっけ?でもかわいー!妹みたーい!!」
「えっと…ありがとう、ございます?」
あっという間に虜にされた陽は、今度はぎゅうぎゅうとアリシアを抱きしめている。
…まぁ、人形をかわいがるような系統だし平気だろう。
(そいつ、一番厄介な類の女だぞ気づけよ…)
「あ、あ…」(どうしようどうしようどうしよう、そうだ、目逸らせば見えねぇ、挙動不審にだけはならないように…)
「…べ、別に…そんなんでもないだろ。オラさっさと次行け次ー!!」
上から、単、留歌、月姫と三者三様の反応に、渦中の少女達はキョトンとした表情をしている。
「っす、了解っす。えーお次は…お、二人まとめてっすね。」
そう界人が話し始めた途端、二人の人影が現れる。
「こちらもかつて作者がキャラ考えるだけでほっぽり出したイタリアマフィア小説より、エルマ・アンサルディさんとルーカスさんっす!」
おいやめろ、その術は僕に効く…じゃ、なくて。
現れたのは、ブロンドの長い髪を下ろした薄桃色の目で、紅色のナイトドレスを着た女性。
そして、控えるように後ろに付く薄茶色の髪と目の、いかにもマフィアな帽子にスーツの青年。
「エルマと申します。よろしくお願いしますね。」
丁寧に頭を下げる所作は、何故か見る者に威圧感を与える。
「ボースー。猫被んのやめましょー?ほらほらー。いつもみたいに…」
それを和らげるかのように語り出す彼は、ボス…エルマに睨まれている事に気づかない。
「いい加減にしてくれないかしらこの駄犬。」
「おお怖。でもそっちじゃないんだよなぁ…」
突如として飛び出した“駄犬”発言を物ともせず肩を竦める青年…ルーカスは、エルマに高そうな靴を思い切り踏まれている。
「あー、なんか迫力に欠けると思ったら…エルマさん、今日は髪結んでないんすね。」
界人の発言でようやく足を上げて向き直る彼女は、まさしく夜の華とでも言うべき端正な顔を困り笑いの表情に変えている。
「まぁ結んでもいいのですけれど…ほら、ルーカスと来たら、結ぶの自分以外の前じゃ嫌だって拗ねるのよ。」
「だってそうでしょう!?ボスのかっこいい所は俺だけが知ってればいいんですー!他の男になんて見せませーん!」
くっそう君らイチャつきやがって…じゃなかった。
青年…もといルーカスに、犬の耳と尻尾が見える気がする。
なおエルマにぐりぐりと頭を押し付けているが、哀れにも首を絞められ始めた。
「あのー…髪結ぶとかってどういう事なんすか?」
「確かに、それ私も聞きたい!」
それを見かねたのか、留歌と陽がエルマの気を逸らそうと質問している。
「そうですね…優先順位をちょっと変える、おまじない…みたいな物ですよ。」
パッとルーカスを離して向き直る所作は隅々まで洗練されているが、している行動はお嬢様のそれではない。
「色々あってマフィアのボスになった時にね。普通の私を封印する方法、みたいな感じで、私の世話係になった人に教えて頂いたんです。」
前者はうんうんと頷いて聞いていたルーカスにとっても如何やら後者は初耳だったらしく、雰囲気が研ぎ澄まされる。
「…まさかソレ、あの気取り屋で慇懃無礼な陰険執事ですか?…[小文字] くっそ、俺のいない所でそんな事しやがって[/小文字]…ちょっとボス。俺帰っていいですかね。」
「どうせあの人を締めるとか言い出すんでしょう。良い加減にしないと本気で怒るわよ。」
あ、これマジのやつー…と言いながら引き下がるルーカスに、ここまで傍観していたナマケモノ…もとい単が言い捨てる。
「はいはいそういうのいいからもう面倒くさい。」
「めんどくさいってなんだよ。“俺の”ボスだぞ。」
それに変な所で突っかかり、ルーカスは臨戦体制。今にも銃を出そうとしているが、単は全く意に介さない。
でも留歌とアリシアは後ろで慌てているので、そろそろ辞めて頂きたい。
「あーもう。こっちの女じゃなくて、あんたが面倒くさいって言ってんだよ。その程度を理解する脳味噌も無い訳?」
「というかそもそも私、貴方の物になった覚えはございませんけど?」
集中砲火を食らってもヘラヘラと笑っているルーカス。なんならその軽い口に油でも引いたかのように更に回り始める。
「まぁたそんな事言ってー。ボスってば照れ屋さん?そんな所も最高だけどー。」
「おい、俺を無視するなよ…はぁ、もういいか。」
諦観の表情で、寝るのは無理そうだし俺は本でも読んでるから邪魔するなよ、と宣言する単。
続けて、この茶番が終わっても呼ぶなと言い切るが、おそらくそれは無理だと思われる。
「…陽キャって怖いっすね。俺もう帰っていいっすか。ちょっと無理っす。」
ふるり、と震えている留歌は、既に大分逃げ腰だ。
まぁそりゃあ…そうだよなぁ。
「わたしも…ちょっと、怖くなって来ました…」
「っうぇ!?ちょま、やめ、くっつかないでくれっす待ってくれマジで!!」
そして、アリシアの思わぬ行動に、かなりパニックになる留歌。
対人関係の経験値、ほぼ0だからね君。
「あ…ごめんなさい…」
「あはは、留歌くんは多分人慣れしてないだけだから気にしなくていいよー!」
そう言う彼女は、似たような人物に心当たりでもあるのだろうか。
「…あー…俺も…最初はそんなモンだったっす。…強く生きてくれ。」
界人が口を濁す。多分こいつだろうな、と貴方は見当をつけた。
正解である。
「え、あー…頑、張る…っす…?」
留歌、そこで困惑するんじゃない。
「そ、れ、よ、り!アリシアちゃんはこっち!」
そう口を挟んだ陽は、アリシアを膝の上に載せて撫でている。
「あんた、本当…」
「…?どしたんすか単、苦い顔して。まぁいいっす。これで八人、全員集合っすね。」
そう界人がまとめたその時。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「俺達、“名無しの会”の代表として、その判断に異議を申し立てる!」
突如として現れる、いる筈のない人影が二つ。
「うっわ、なんすか!?つか誰っすか!?」
あー、留歌?なんで君困惑してんだ?一人は君が知らないとおかしい人なんだけどな?
「ふっふっふ、ヒーローは遅れてくるものなんだよ!と言うわけで、俺たちもその座談会に入れろー!」
[中央寄せ][大文字]つづく?[/大文字][/中央寄せ]