時空の狭間の狂宴/共演
これは、もしかするとありえたかもしれない……ちょっと不思議な、俺らの幕間の話。
[水平線]
「探検に行こう。」
「へ?」「え?」
ある日の午後。いつものようにコーヒーを飲んでいた灰さんが突然、妙なことを言い出したっす。
咄嗟に聞き返す俺と柚月さんの声がキレイなユニゾンになってるのにもお構いなく、灰さんは相変わらず飄々としている。
「だって、せっかく[漢字]こんな面白そうな所[/漢字][ふりがな]ハーミット[/ふりがな]にいるんだぞ〜? 古い魔術にたくさん触れられる、いいチャンスだと思わないのか〜?」
「あの、危険じゃねぇっすか……? 俺なんてこの間、廊下のトラップで死にかけたんすけど……」
『あぁ、あれは大変だったよねぇ……』とうなづく柚月さん。いや、まさか火炎放射トラップが学校にあるとは思わねぇっすよ……
「まぁここに限らず、魔法の学校は大抵大昔の砦だからな〜。それが今なお動くって、本当にすごい事なんだぞ〜?」
「うーん……でも、やっぱり危ないよ。」
柚月さんが賛成してくれて助かった。
灰さんにはすげぇ申し訳ねぇっすけど、でも……
俺にはこんな所を意味もなく探検できるほどの勇気も実力もねぇっす……と、固唾を飲んだその時。
『だけど、ごめん。先に、留歌に謝っとくね。』と、柚月さんが言い出した。
「……正直、ちょっとだけ楽しそうかも。」
「そうこなくっちゃな〜!」
そういえば、柚月さんもちゃんとあっち側だったっす……
当たり前すぎてつい忘れそうになるが、この学校にいるのは全員ただ頭がいいってだけじゃない“天才”、そして天才はやっぱり、行動力も段違いっすね。
そしてそうなるとつい載せられてしまうのは、やっぱり俺の悪いクセで。
「それじゃあ、ハーミット探検隊、出動だな〜!」
「おー!」「お、おぉ……」
と、思わず拳を突き上げてしまったっす……
[水平線]
と、ここまでは回想。そんなこんなで、校内の探索に出たって感じっす。つい数分前までは気楽な探検で、ときおり見かけたトラップにもノリノリで灰さんが食いついていた。
けど、俺らは今……
どういうワケだか、異常なくらい広くなった寮の談話室の中に、閉じ込められているっす。
いやマジで、何故なんすかね……?
「……コレが、噂の八番出ぐ……」
「留歌〜、それ以上はやめといた方が良いぞ〜。」
目印を作ろうにも傷一つ付かない壁を触り、いくつか呪文を唱え、そして『これ、多分進化するタイプだからな〜』と、飄々と言い切る灰さん。相変わらず、最年少とは到底思えない落ち着きっす。
「八番……んん、例のゲームっぽくなったとしたら、脱出方法が分かりやすくなる代わりに色々出て来るから……って事っすか?」
「あぁ。柚月も、今は楽器を持ってないし……普段なら作れても、ここだと多分、ちょっと大変だろうな〜。」
「そもそも、ここにあるもの何もかも全部変えられないっぽいし……同じ扱いになってるお化けとか、ちょっと考えたくないよね……」
ぐにゃりと曲がったようにも見える廊下を見て、珍しく三人揃って盛大なため息を吐いた。
なんでも普段からブチ抜かれまくってるハズの壁にも印すら付けられないし、普通なら動かせるハズの机や椅子すら一切動かせないから、単純にループしているのか、あるいは全く同じように見える空間が増えただけなのかを確かめる術すらないらしいっす。
よく見ると、窓の外もなんだかおかしい。空じゃなくてモヤモヤ、グニャグニャした渦が……いやなんなんすかね、アレ……
しかも、俺の未来視も完全に不発。それどころか、無駄に発動しちまったせいで魔力ポーションのお世話になるハメになったっす……
マジで、肝心な時に限って役にたたねぇっすね……と、自己嫌悪に陥りかけたその時。
「……留歌、ちょっと下がって。」
「あぁ、人の気配だな〜。」
杖を取り出して構える二人。ジリジリと前進しながら、戦闘体制を整える。
しかし物陰から出てきたのは、意外な人物だった。
「あ!!いたいたー!! かいりん、人いたよー!! 誰か分かんないけど!!おーい!!」
「ちょっと、在最、引っ張るの、やめて……それに、もし、敵、だったら……」
黒と赤の髪、テンション高くぴょこぴょこと跳ねる元気な方はアモ・ユタリさんで、黒と黄色の髪、どうしようかと怯える怖がりな方が真華竟海琳さん。二人とも俺らの後輩っす。
……まぁ、お二人とも俺よりよっぽど強いんすけど……
「良かった、アモと海琳だ。昨日ぶり、かな?」
「あ、ゆっちー先輩だー! へへー、昨日ぶり! イエーイ!」
そう言って楽しそうにハイタッチする柚月さんとアモさん。なんというか、柚月さんはテンションを合わせるのが上手すぎると思うっす。
そんでアモさん、今日もテンションが高いっすね……と、思いつつ灰さんの方を見ると、こちらも海琳さんと何か話している。
「あの、先輩も、出られないんですか…?」
「残念ながら、まだ難しそうだな〜。それに、”なんでも壊せるはず“のアモがまだここにいるって事は、“破壊できなかった”って事だろ〜?」
「はい……」
灰さんの方もこの会話で何かを掴んだらしく、『じゃあ、ここはもう“破壊不可”ってルールだと思った方が良いだろうな〜』なんて、割と絶望的にしか思えない仮説を相変わらず淡々と立てていたっす。
「えっと……結界系ってこと、ですよね。それか、ルールの違う異界って可能性も……」
「さすが海琳。まぁ多分どっちか、あるいはどっちもだろうな〜。」
……あの、正直何の話してんのかサッパリなんすけど……と思いつつアモさんの方を見ると、こちらもやはりポカンとした表情っす。助けを求めて柚月さんの方を見ると、どうやって説明したものか、と言いたげな顔をしていた。
「えっと……まず、異界って何か分かるかな?」
「なんか変な空間ってコトしか分かんないや。」
アモさんに同意するようにコクコクと頷くと、柚月さんがにっこりと笑う。
「うん、それで合ってるよ。強い魔力とかで発生する、特殊なルールが適用される世界のこと、なの。普通の魔法より強いから、ルールに逆らう行動はほぼできないって思っていい……かな。」
「なら、“壊せない”ってのはだいぶ厳しいルールっすね……」
つい俺がそう言った途端、ため息が五人分になった。
だが、あーとかうーとか言いながら頭を掻きむしっていたアモさんがキッと顔を上げる。
「まぁグズグズ悩んでても仕方ないし、とりあえず次行こ! ボク、悩まない主義だから!」
「お、前向きだな〜。じゃあ今回は寮を出るんじゃなく、上の階に向かってみるか〜。」
そう言って、階段を登っていく。ぐるんと何かがひっくり返ったような感覚がして、登りきった先に広がっていたのは……
やっぱり、談話室だったっす。
「範囲はこの階だけ、みたいだね。寮全体じゃない分、ちょっとだけマシ……かな?」
柚月さんがそう言った途端。
ぐぅうう…と、大きな腹の虫の音。
「あ。お腹減ってきちゃった。」
「仕方ないね。クッキーでよければ私のおやつを分けてあげよう。」
「わーい! ありがとー!」
モシャモシャと嬉しそうにクッキーを咀嚼するアモさん。
……いや待って欲しいっす。今のソレ誰から貰ったんすか。
「やぁ、びっくりしているようだね。出てくる前に、『ヒノ・マインド、颯爽登場!』とか言った方が良かったのかい?」
虚無った表情(失礼)と黒髪のポニーテールにダボダボな制服……そしてなぜかイーゼルとキャンバスを抱えて突然現れたその人は、こんな異常事態の中でさえいつも通りのテンションだった。
いや、違うっすね。なんかこう、珍しくトンチキなコト言ってるっす……
「さっきまでいなかったけど……ヒノ、どこから来たの?」
「まぁまぁ、そんな事はどうだっていい。今重要なのは、ここからの脱出方法だろう? それにあまり私が出るのが遅くなると、クイがまた責任を感じて廊下を自分の血でぐしょ濡れにしかねないからね。そうなると、掃除が終わるまで廊下を通るのが面倒になってしまう。」
いやあの、サラッと話されてる内容が怖いんすけど……
「まぁ、あの人ならやりかねないかもな〜……」
「そうだねー……」
「そう、ですね……」
そんでサラッと納得してる灰さんとアモさん、海琳さんもちょっと怖いっす……
「しかし、このメンバーで脱出できないってよっぽどっすよね……?」
「うん、そうだね。生半可な結界なら、ヒノと灰の魔力を合わせただけで消し飛んじゃうから……」
俺にはよく分かんねぇっすけど、確か結界のルールを上回る魔力を中に入れると結界が持たない……とか、そんな感じだったハズっす。
つまり、目の前の二人の魔力はかなりとんでもないってコトになるっすね……
「えっと…つまりその、異界?の可能性が高いってコトだよねっ!」
「おや君達、もうそこまで推察が進んでいたのかい。」
少し目を見張った……ように見えないこともないヒノ先輩だが、『だが真実には一歩足りないな。』と相変わらず淡々としている。
「だって、魔力の源が分からなければ異界なんてどうにもできないだろう? 大元を絶たなければまず間違いなく、一生涯出る事は叶わないだろうね。」
『まぁ、それならそれで君達の死体は大切に保管してあげよう!』と呑気なコトを言うヒノ先輩には、どうやらあまり手伝う気はないらしいっす……
いや、なんと言うかこう……どっちに転んだってアリだ、ぐらいにしか思ってないっぽいんすよね……
「あ、ダメだ。ヒノ、絵描き始めちゃった……」
五人分のため息と筆を走らせる音だけが、この不思議な空間で響いていたっす。いやホントにコレ、出られるんですかね……?
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「探検に行こう。」
「へ?」「え?」
ある日の午後。いつものようにコーヒーを飲んでいた灰さんが突然、妙なことを言い出したっす。
咄嗟に聞き返す俺と柚月さんの声がキレイなユニゾンになってるのにもお構いなく、灰さんは相変わらず飄々としている。
「だって、せっかく[漢字]こんな面白そうな所[/漢字][ふりがな]ハーミット[/ふりがな]にいるんだぞ〜? 古い魔術にたくさん触れられる、いいチャンスだと思わないのか〜?」
「あの、危険じゃねぇっすか……? 俺なんてこの間、廊下のトラップで死にかけたんすけど……」
『あぁ、あれは大変だったよねぇ……』とうなづく柚月さん。いや、まさか火炎放射トラップが学校にあるとは思わねぇっすよ……
「まぁここに限らず、魔法の学校は大抵大昔の砦だからな〜。それが今なお動くって、本当にすごい事なんだぞ〜?」
「うーん……でも、やっぱり危ないよ。」
柚月さんが賛成してくれて助かった。
灰さんにはすげぇ申し訳ねぇっすけど、でも……
俺にはこんな所を意味もなく探検できるほどの勇気も実力もねぇっす……と、固唾を飲んだその時。
『だけど、ごめん。先に、留歌に謝っとくね。』と、柚月さんが言い出した。
「……正直、ちょっとだけ楽しそうかも。」
「そうこなくっちゃな〜!」
そういえば、柚月さんもちゃんとあっち側だったっす……
当たり前すぎてつい忘れそうになるが、この学校にいるのは全員ただ頭がいいってだけじゃない“天才”、そして天才はやっぱり、行動力も段違いっすね。
そしてそうなるとつい載せられてしまうのは、やっぱり俺の悪いクセで。
「それじゃあ、ハーミット探検隊、出動だな〜!」
「おー!」「お、おぉ……」
と、思わず拳を突き上げてしまったっす……
[水平線]
と、ここまでは回想。そんなこんなで、校内の探索に出たって感じっす。つい数分前までは気楽な探検で、ときおり見かけたトラップにもノリノリで灰さんが食いついていた。
けど、俺らは今……
どういうワケだか、異常なくらい広くなった寮の談話室の中に、閉じ込められているっす。
いやマジで、何故なんすかね……?
「……コレが、噂の八番出ぐ……」
「留歌〜、それ以上はやめといた方が良いぞ〜。」
目印を作ろうにも傷一つ付かない壁を触り、いくつか呪文を唱え、そして『これ、多分進化するタイプだからな〜』と、飄々と言い切る灰さん。相変わらず、最年少とは到底思えない落ち着きっす。
「八番……んん、例のゲームっぽくなったとしたら、脱出方法が分かりやすくなる代わりに色々出て来るから……って事っすか?」
「あぁ。柚月も、今は楽器を持ってないし……普段なら作れても、ここだと多分、ちょっと大変だろうな〜。」
「そもそも、ここにあるもの何もかも全部変えられないっぽいし……同じ扱いになってるお化けとか、ちょっと考えたくないよね……」
ぐにゃりと曲がったようにも見える廊下を見て、珍しく三人揃って盛大なため息を吐いた。
なんでも普段からブチ抜かれまくってるハズの壁にも印すら付けられないし、普通なら動かせるハズの机や椅子すら一切動かせないから、単純にループしているのか、あるいは全く同じように見える空間が増えただけなのかを確かめる術すらないらしいっす。
よく見ると、窓の外もなんだかおかしい。空じゃなくてモヤモヤ、グニャグニャした渦が……いやなんなんすかね、アレ……
しかも、俺の未来視も完全に不発。それどころか、無駄に発動しちまったせいで魔力ポーションのお世話になるハメになったっす……
マジで、肝心な時に限って役にたたねぇっすね……と、自己嫌悪に陥りかけたその時。
「……留歌、ちょっと下がって。」
「あぁ、人の気配だな〜。」
杖を取り出して構える二人。ジリジリと前進しながら、戦闘体制を整える。
しかし物陰から出てきたのは、意外な人物だった。
「あ!!いたいたー!! かいりん、人いたよー!! 誰か分かんないけど!!おーい!!」
「ちょっと、在最、引っ張るの、やめて……それに、もし、敵、だったら……」
黒と赤の髪、テンション高くぴょこぴょこと跳ねる元気な方はアモ・ユタリさんで、黒と黄色の髪、どうしようかと怯える怖がりな方が真華竟海琳さん。二人とも俺らの後輩っす。
……まぁ、お二人とも俺よりよっぽど強いんすけど……
「良かった、アモと海琳だ。昨日ぶり、かな?」
「あ、ゆっちー先輩だー! へへー、昨日ぶり! イエーイ!」
そう言って楽しそうにハイタッチする柚月さんとアモさん。なんというか、柚月さんはテンションを合わせるのが上手すぎると思うっす。
そんでアモさん、今日もテンションが高いっすね……と、思いつつ灰さんの方を見ると、こちらも海琳さんと何か話している。
「あの、先輩も、出られないんですか…?」
「残念ながら、まだ難しそうだな〜。それに、”なんでも壊せるはず“のアモがまだここにいるって事は、“破壊できなかった”って事だろ〜?」
「はい……」
灰さんの方もこの会話で何かを掴んだらしく、『じゃあ、ここはもう“破壊不可”ってルールだと思った方が良いだろうな〜』なんて、割と絶望的にしか思えない仮説を相変わらず淡々と立てていたっす。
「えっと……結界系ってこと、ですよね。それか、ルールの違う異界って可能性も……」
「さすが海琳。まぁ多分どっちか、あるいはどっちもだろうな〜。」
……あの、正直何の話してんのかサッパリなんすけど……と思いつつアモさんの方を見ると、こちらもやはりポカンとした表情っす。助けを求めて柚月さんの方を見ると、どうやって説明したものか、と言いたげな顔をしていた。
「えっと……まず、異界って何か分かるかな?」
「なんか変な空間ってコトしか分かんないや。」
アモさんに同意するようにコクコクと頷くと、柚月さんがにっこりと笑う。
「うん、それで合ってるよ。強い魔力とかで発生する、特殊なルールが適用される世界のこと、なの。普通の魔法より強いから、ルールに逆らう行動はほぼできないって思っていい……かな。」
「なら、“壊せない”ってのはだいぶ厳しいルールっすね……」
つい俺がそう言った途端、ため息が五人分になった。
だが、あーとかうーとか言いながら頭を掻きむしっていたアモさんがキッと顔を上げる。
「まぁグズグズ悩んでても仕方ないし、とりあえず次行こ! ボク、悩まない主義だから!」
「お、前向きだな〜。じゃあ今回は寮を出るんじゃなく、上の階に向かってみるか〜。」
そう言って、階段を登っていく。ぐるんと何かがひっくり返ったような感覚がして、登りきった先に広がっていたのは……
やっぱり、談話室だったっす。
「範囲はこの階だけ、みたいだね。寮全体じゃない分、ちょっとだけマシ……かな?」
柚月さんがそう言った途端。
ぐぅうう…と、大きな腹の虫の音。
「あ。お腹減ってきちゃった。」
「仕方ないね。クッキーでよければ私のおやつを分けてあげよう。」
「わーい! ありがとー!」
モシャモシャと嬉しそうにクッキーを咀嚼するアモさん。
……いや待って欲しいっす。今のソレ誰から貰ったんすか。
「やぁ、びっくりしているようだね。出てくる前に、『ヒノ・マインド、颯爽登場!』とか言った方が良かったのかい?」
虚無った表情(失礼)と黒髪のポニーテールにダボダボな制服……そしてなぜかイーゼルとキャンバスを抱えて突然現れたその人は、こんな異常事態の中でさえいつも通りのテンションだった。
いや、違うっすね。なんかこう、珍しくトンチキなコト言ってるっす……
「さっきまでいなかったけど……ヒノ、どこから来たの?」
「まぁまぁ、そんな事はどうだっていい。今重要なのは、ここからの脱出方法だろう? それにあまり私が出るのが遅くなると、クイがまた責任を感じて廊下を自分の血でぐしょ濡れにしかねないからね。そうなると、掃除が終わるまで廊下を通るのが面倒になってしまう。」
いやあの、サラッと話されてる内容が怖いんすけど……
「まぁ、あの人ならやりかねないかもな〜……」
「そうだねー……」
「そう、ですね……」
そんでサラッと納得してる灰さんとアモさん、海琳さんもちょっと怖いっす……
「しかし、このメンバーで脱出できないってよっぽどっすよね……?」
「うん、そうだね。生半可な結界なら、ヒノと灰の魔力を合わせただけで消し飛んじゃうから……」
俺にはよく分かんねぇっすけど、確か結界のルールを上回る魔力を中に入れると結界が持たない……とか、そんな感じだったハズっす。
つまり、目の前の二人の魔力はかなりとんでもないってコトになるっすね……
「えっと…つまりその、異界?の可能性が高いってコトだよねっ!」
「おや君達、もうそこまで推察が進んでいたのかい。」
少し目を見張った……ように見えないこともないヒノ先輩だが、『だが真実には一歩足りないな。』と相変わらず淡々としている。
「だって、魔力の源が分からなければ異界なんてどうにもできないだろう? 大元を絶たなければまず間違いなく、一生涯出る事は叶わないだろうね。」
『まぁ、それならそれで君達の死体は大切に保管してあげよう!』と呑気なコトを言うヒノ先輩には、どうやらあまり手伝う気はないらしいっす……
いや、なんと言うかこう……どっちに転んだってアリだ、ぐらいにしか思ってないっぽいんすよね……
「あ、ダメだ。ヒノ、絵描き始めちゃった……」
五人分のため息と筆を走らせる音だけが、この不思議な空間で響いていたっす。いやホントにコレ、出られるんですかね……?