時空の狭間の狂宴/共演
そこには壁も天井も床もない。
只々ぽっかりとした空間の中に、大きな八人がけの円卓が一つ。
人っ子一人いないように見えても実は一人だけ、其処には人影が立っている。
昏くて煌るい、星月夜の中に。
これより始まるは、世界を跨ぐ座談会。さぁ、狂躁劇の始まりだ!
[水平線]
「えー。お集まりの読者の皆様、どもっす。俺は[漢字]影廼 界人[/漢字][ふりがな]かげの かいと[/ふりがな]っていうっす。」
人影が月に照らされて、ようやくその姿が見えて来た。
黒い髪に黒の三白眼、それに…いかにも魔法使いらしいローブ。普通に見たら、少々キツめな印象を受けるであろう見た目をしている。
どうやら人影…影廼界人は、次元の壁を超えて、貴方を認識しているようだ。
「今回は作者が頑張ってリメイクしたんで、こんな感じで進行してくらしいっす。」
しかも、それだけではない。彼は、[漢字]此処が小説の中だと正しく理解している[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・・・・・・・・・・・[/ふりがな]。
何故?と考える暇もなく、星月夜に更に人影が加わった。
「おい、まずあんたがなんなのか説明しないと話にならないだろ。相変わらず馬鹿だな本当。」
新たな陳客も、揃いの魔法使いらしいローブを着込んでいる。
眠たそうな黒の目に同じ色の蓬髪の、本を台車に乗せた彼。
当然のように席に座りながら口を開く彼は、どうやら中々の毒舌の持ち主のようだ。
「それもそっすね。俺は今作者が書いてるハーミットシリーズの前身である未発表ミステリーの…言うなればワトソン役、ってやつっすね。つーか単、アンタも名乗っとけって。」
そう言って、界人は蓬髪の青年に水を向ける。だが、彼は乗り気では無いようだ。
「面倒くさい。なんだって俺がそんな事しなくちゃならない訳?」
そう言って、彼は本を開き始める。話はこれで終わり、という事なのだろうか。
「いや話進まねぇんすけど…まぁいいか、コイツは[漢字]六波羅 単[/漢字][ふりがな]りくはら ひとえ[/ふりがな]っす。俺の世界のホームズ役っすね。頭は実にいいっすよ。性格も口も悪いっすけど。」
呆れたように口を開いた界人がそう説明する。“俺の世界”?どういう事なのだろう。貴方は困惑する。
「おい、ちょっと待て。それ、聞き捨てならないんだけど?」
しかも、そんな不平をものともせずに更に界人は言い募る。
「あー、そーゆーのいいっすから。あとは…そうそう、すげぇめんどくさがりっす。ダル男っすダル男。」
そう貴方に向けて告げた矢先の事だ。また一つ、この場に人影が増えた。
「そうだねー…単くん頭はいいんだけどなー…」
頭を振りながら現れたのは、日向の色の髪と目を持つ少女。やはりというかなんというか、揃いのローブを着ているようだ。
「うっわぁ!ってアンタ、いつの間に…」
界人からしても、予想外の出現だったようで、かなりの驚きを見せている。
「あ、そっかそっか!紹介まだだったね!私は[漢字]火威 陽[/漢字][ふりがな]ひおどし ひなた[/ふりがな]だよ!」
天真爛漫に手を振る彼女は、明らかに世界の外の貴方に向かって自己紹介をしている。
「界人くんたちと同じ世界の人でーす!よろしくね!」
如何やら彼女らは知り合いらしい。気安い会話が次から次に、渓流の如く流れていく。
「はぁ…もういいか、訂正するのも面倒くさい。俺は寝る。」
「いや寝んな!また台車でアンタ運ぶのは嫌っすからね!?」
そう言い放つや否や、単は既に、安らかな寝息を立て始めている。大きなテーブルに突っ伏しながら。
そこに界人の大声が虚しく響き渡る。“また”とは、一体如何いう事なのだろうか。
「…まぁいいっす。コイツいつもこんなんなんで、もう諦めた。」
「そだねー…界人くんと単くん、元の世界でもしょっちゅうこんなんだったし…」
気を取り直すかのように発言する彼ら。如何やらアレは何時もの事であるらしい。
「えー、というわけで…寝ちまったスカタンは無視して、次を紹介するっす。」
おいスカタンって何だよ。
思わず素で突っ込みたくなってしまうが一先ず置いておこう。
「作者の代表作、ハーミットシリーズより、[漢字]星見 留歌[/漢字][ふりがな]ほしみ るか[/ふりがな]さんっす!」
そう界人が発言した途端、何も無い空間に急に人影が現れた。この星月夜と同じ、真夜中の空の色の髪に、黒と見紛う紫の三白眼。
彼らとは違うがやはり魔法使いらしいローブを着ている。
「あー…どもっす。えっと…紹介に…預かった、星見留歌っす。あのー…早速で申し訳ねぇっすけど…一個聞いてもいいっすか。」
周りが座っているのを見て席に着きながら遠慮がちに言った彼は、貴方ではなく寧ろ彼らに言っているようだ。
構わねぇっすよ。なんすか?と問う界人に頭を下げつつ、留歌は尋ねる。
「えっと…さっきから言ってる、サクシャ…って、なんすか?」
「あーそれ、界人くんの固有魔法がちょっと特殊なんだよね。世界の外を観測できる目…みたいな…?」
そう答えた陽は、どうやらその絡繰を知っているらしい。
「そんで実は観測するだけじゃなくて、干渉もできる…みたいな…感じっす?」
界人も引き継いで口を開くが、如何せん何方も説明が拙い。留歌は困惑しているようで、
「…誠にすんません、正直訳分かんねぇっす。」
とすまなげに言っている。当然だ、余りにも抽象的なのだから。
「単…おーい、起きろ、起きてくれっす。んで俺の代わりに説明してくれ。」
「その程度で俺の安眠を妨害するな。というかあんたら、揃いも揃って説明下手くそにも程があるだろ…」
呆れたような顔をしている単に説明する気は無いようだ。
…実に怠惰だ。
「…まぁ、分かんなくても問題ないっすよ。その関係でこの空間に招待させて貰った、って事だけ分かっていただければヘーキっす。」
諦めたように笑う界人。その言葉で気にしない事にしたのか、困惑しながらも留歌は頷いた。
「留歌くん、って呼んでいいかな?の、疑問も解けたところで、次行こっか!」
「そっすね。次は、大正聖杯異譚より、[漢字]火威 月姫[/漢字][ふりがな]ひおどし つき[/ふりがな]さんっす!」
陽と界人がそう言うと、またも人影が…
「…あれ?出てこないね?おーい兄さまー!出番だよー!」
出てこない。何故だ。
ちょ待てよ、まじでなんで?
「んー?おお、悪ぃ。飯食ってて遅れたー。」
あ、出て来たわ。じゃなくて。
…新たに現れたのは、血のような赤の混じった黒い三白眼に、焦茶色で逆だった髪の小柄な青年。
「遅い!すっごく遅い!」
「ああん?別にいいだろうがよー。つーか、最初から出しときゃいい話だろーが。」
陽の文句を適当に躱し、テーブルに着こうとする彼。あ、こら、椅子を引き摺るんじゃない。壊れるからやめろ。
「まぁまぁ…あ、月姫さん良けりゃそこのナマケモノ起こしてくんねぇっすか。」
「おう、いいぜー。オラ、起きろォ!」
そう言うが早いか、月姫は単を揺すりだす。椅子ごと揺らすものだから、ガタガタとうるさい。
留歌は(あ、俺コレ空気っすね。と言うか皆さん陽キャばっかなんすけど。とても辛い。)とばかり考えている。そのため、彼には止められない。
この場に止める人はいないのか、と貴方は酷く混乱する。
「んぐ…痛い、何するんだよ。人がせっかく気持ち良く寝てたって言うのに、気遣いとかない訳?」
ようやく目を開けた単は、明らかに嫌そうな顔をしている。
「ンな事言ったってなー。テメェも会話に参加しねーとだろうがよー?」
そんで君はほんと何も気にしないな。
月姫は呆れ半分、面白がり半分でからからと笑っている。
「つかぬ事をお聞きするっすけど…皆さん、知り合いなんすか…?」
「そうっすよ!こっちも未発表なんすけど…俺らの話のスピンオフでちょっと絡みがあるっす。」
「まぁ、それは別世界のオレなんだけどなー。こっちのオレに妹はいねーからよ。」
留歌の質問に答える彼らは、どうやら揃いも揃って説明が苦手なようだ。
「でもまぁ、私の世界では兄さまだからさ、つい、ね…」
「なるほど……あ、でも確かに俺も、この世界来てからはなんか知らねぇ記憶がたくさんあるっす。」
多少の分からない事は無理矢理飲み込む事にしたのか、留歌は頷いた。
「あーそれ、俺じゃ説明難しいんすよね…俺あんま頭よくねぇんすよ。つーわけで単!説明任したっす!」
丸投げっておい。界人、それ君の固有魔法なんだけどな?
その言葉に反論しかけた単は、諦めたように話し出す。
「まぁいいか、拒否する方が面倒くさそうだ。あんたも、一度しか言わないし聞き返すのも許さないから、精々よく聞きなよ。」
単が呼吸を置いて留歌を見ると、首肯してメモを取ろうとしている。
溜息と共に説明が再開する。
「簡潔に言うと、此処は時空の狭間なんだ。だからあんたも此処にいる俺達も、あらゆる世界の自分を統合した存在な訳。」
留歌には分かっていない。
貴方は、留歌の頭にハテナマークが浮いているような気がする。
「知らない記憶、ってのはあんたが俺達と違ってどっかの世界の特定のあんたを基準にしてるからだな。」
留歌にはやはり分かっていない。
貴方は、浮いているハテナマークが一つ増えたような気がする。
「後はそうだな。此処以外で俺達に関わった事がないのも、原因の一つなんじゃない?」
単は最後にそう言って説明を終えた。
相変わらず、留歌には分かっていない。
貴方は、ハテナマークが三つになったような気がする。
「はぁ、こいつも馬鹿かよ…面倒くさい。もう一度説明するなんて、俺は御免だからな。それじゃ眠いし、今度こそ俺は寝るから起こすなよ。」
心底呆れた顔で、単は机に突っ伏した。
如何やらこのまま寝る気らしい。
「はいはいそこまでっすよ。んで寝ないでくれ。留歌さん萎縮してるじゃないっすか。」
そう界人がとりなすも、あんたが説明しろって言ったんだろ、と単は聞く耳を持たない。
「ったく、五月蝿いな…下らない用事で俺の安眠を妨害したんだ、その程度当然だろ。」
「いや、当然じゃないよ!?単くんは言い過ぎです!そんなわけだから、留歌くんは気にしなくていいからね?」
「え、あ、はい…?」
陽の発言を受けても尚、自信なさげに小首を傾げる彼は相変わらずの困り眉だ。
[中央寄せ][大文字]つづく?[/大文字][/中央寄せ]
只々ぽっかりとした空間の中に、大きな八人がけの円卓が一つ。
人っ子一人いないように見えても実は一人だけ、其処には人影が立っている。
昏くて煌るい、星月夜の中に。
これより始まるは、世界を跨ぐ座談会。さぁ、狂躁劇の始まりだ!
[水平線]
「えー。お集まりの読者の皆様、どもっす。俺は[漢字]影廼 界人[/漢字][ふりがな]かげの かいと[/ふりがな]っていうっす。」
人影が月に照らされて、ようやくその姿が見えて来た。
黒い髪に黒の三白眼、それに…いかにも魔法使いらしいローブ。普通に見たら、少々キツめな印象を受けるであろう見た目をしている。
どうやら人影…影廼界人は、次元の壁を超えて、貴方を認識しているようだ。
「今回は作者が頑張ってリメイクしたんで、こんな感じで進行してくらしいっす。」
しかも、それだけではない。彼は、[漢字]此処が小説の中だと正しく理解している[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・・・・・・・・・・・[/ふりがな]。
何故?と考える暇もなく、星月夜に更に人影が加わった。
「おい、まずあんたがなんなのか説明しないと話にならないだろ。相変わらず馬鹿だな本当。」
新たな陳客も、揃いの魔法使いらしいローブを着込んでいる。
眠たそうな黒の目に同じ色の蓬髪の、本を台車に乗せた彼。
当然のように席に座りながら口を開く彼は、どうやら中々の毒舌の持ち主のようだ。
「それもそっすね。俺は今作者が書いてるハーミットシリーズの前身である未発表ミステリーの…言うなればワトソン役、ってやつっすね。つーか単、アンタも名乗っとけって。」
そう言って、界人は蓬髪の青年に水を向ける。だが、彼は乗り気では無いようだ。
「面倒くさい。なんだって俺がそんな事しなくちゃならない訳?」
そう言って、彼は本を開き始める。話はこれで終わり、という事なのだろうか。
「いや話進まねぇんすけど…まぁいいか、コイツは[漢字]六波羅 単[/漢字][ふりがな]りくはら ひとえ[/ふりがな]っす。俺の世界のホームズ役っすね。頭は実にいいっすよ。性格も口も悪いっすけど。」
呆れたように口を開いた界人がそう説明する。“俺の世界”?どういう事なのだろう。貴方は困惑する。
「おい、ちょっと待て。それ、聞き捨てならないんだけど?」
しかも、そんな不平をものともせずに更に界人は言い募る。
「あー、そーゆーのいいっすから。あとは…そうそう、すげぇめんどくさがりっす。ダル男っすダル男。」
そう貴方に向けて告げた矢先の事だ。また一つ、この場に人影が増えた。
「そうだねー…単くん頭はいいんだけどなー…」
頭を振りながら現れたのは、日向の色の髪と目を持つ少女。やはりというかなんというか、揃いのローブを着ているようだ。
「うっわぁ!ってアンタ、いつの間に…」
界人からしても、予想外の出現だったようで、かなりの驚きを見せている。
「あ、そっかそっか!紹介まだだったね!私は[漢字]火威 陽[/漢字][ふりがな]ひおどし ひなた[/ふりがな]だよ!」
天真爛漫に手を振る彼女は、明らかに世界の外の貴方に向かって自己紹介をしている。
「界人くんたちと同じ世界の人でーす!よろしくね!」
如何やら彼女らは知り合いらしい。気安い会話が次から次に、渓流の如く流れていく。
「はぁ…もういいか、訂正するのも面倒くさい。俺は寝る。」
「いや寝んな!また台車でアンタ運ぶのは嫌っすからね!?」
そう言い放つや否や、単は既に、安らかな寝息を立て始めている。大きなテーブルに突っ伏しながら。
そこに界人の大声が虚しく響き渡る。“また”とは、一体如何いう事なのだろうか。
「…まぁいいっす。コイツいつもこんなんなんで、もう諦めた。」
「そだねー…界人くんと単くん、元の世界でもしょっちゅうこんなんだったし…」
気を取り直すかのように発言する彼ら。如何やらアレは何時もの事であるらしい。
「えー、というわけで…寝ちまったスカタンは無視して、次を紹介するっす。」
おいスカタンって何だよ。
思わず素で突っ込みたくなってしまうが一先ず置いておこう。
「作者の代表作、ハーミットシリーズより、[漢字]星見 留歌[/漢字][ふりがな]ほしみ るか[/ふりがな]さんっす!」
そう界人が発言した途端、何も無い空間に急に人影が現れた。この星月夜と同じ、真夜中の空の色の髪に、黒と見紛う紫の三白眼。
彼らとは違うがやはり魔法使いらしいローブを着ている。
「あー…どもっす。えっと…紹介に…預かった、星見留歌っす。あのー…早速で申し訳ねぇっすけど…一個聞いてもいいっすか。」
周りが座っているのを見て席に着きながら遠慮がちに言った彼は、貴方ではなく寧ろ彼らに言っているようだ。
構わねぇっすよ。なんすか?と問う界人に頭を下げつつ、留歌は尋ねる。
「えっと…さっきから言ってる、サクシャ…って、なんすか?」
「あーそれ、界人くんの固有魔法がちょっと特殊なんだよね。世界の外を観測できる目…みたいな…?」
そう答えた陽は、どうやらその絡繰を知っているらしい。
「そんで実は観測するだけじゃなくて、干渉もできる…みたいな…感じっす?」
界人も引き継いで口を開くが、如何せん何方も説明が拙い。留歌は困惑しているようで、
「…誠にすんません、正直訳分かんねぇっす。」
とすまなげに言っている。当然だ、余りにも抽象的なのだから。
「単…おーい、起きろ、起きてくれっす。んで俺の代わりに説明してくれ。」
「その程度で俺の安眠を妨害するな。というかあんたら、揃いも揃って説明下手くそにも程があるだろ…」
呆れたような顔をしている単に説明する気は無いようだ。
…実に怠惰だ。
「…まぁ、分かんなくても問題ないっすよ。その関係でこの空間に招待させて貰った、って事だけ分かっていただければヘーキっす。」
諦めたように笑う界人。その言葉で気にしない事にしたのか、困惑しながらも留歌は頷いた。
「留歌くん、って呼んでいいかな?の、疑問も解けたところで、次行こっか!」
「そっすね。次は、大正聖杯異譚より、[漢字]火威 月姫[/漢字][ふりがな]ひおどし つき[/ふりがな]さんっす!」
陽と界人がそう言うと、またも人影が…
「…あれ?出てこないね?おーい兄さまー!出番だよー!」
出てこない。何故だ。
ちょ待てよ、まじでなんで?
「んー?おお、悪ぃ。飯食ってて遅れたー。」
あ、出て来たわ。じゃなくて。
…新たに現れたのは、血のような赤の混じった黒い三白眼に、焦茶色で逆だった髪の小柄な青年。
「遅い!すっごく遅い!」
「ああん?別にいいだろうがよー。つーか、最初から出しときゃいい話だろーが。」
陽の文句を適当に躱し、テーブルに着こうとする彼。あ、こら、椅子を引き摺るんじゃない。壊れるからやめろ。
「まぁまぁ…あ、月姫さん良けりゃそこのナマケモノ起こしてくんねぇっすか。」
「おう、いいぜー。オラ、起きろォ!」
そう言うが早いか、月姫は単を揺すりだす。椅子ごと揺らすものだから、ガタガタとうるさい。
留歌は(あ、俺コレ空気っすね。と言うか皆さん陽キャばっかなんすけど。とても辛い。)とばかり考えている。そのため、彼には止められない。
この場に止める人はいないのか、と貴方は酷く混乱する。
「んぐ…痛い、何するんだよ。人がせっかく気持ち良く寝てたって言うのに、気遣いとかない訳?」
ようやく目を開けた単は、明らかに嫌そうな顔をしている。
「ンな事言ったってなー。テメェも会話に参加しねーとだろうがよー?」
そんで君はほんと何も気にしないな。
月姫は呆れ半分、面白がり半分でからからと笑っている。
「つかぬ事をお聞きするっすけど…皆さん、知り合いなんすか…?」
「そうっすよ!こっちも未発表なんすけど…俺らの話のスピンオフでちょっと絡みがあるっす。」
「まぁ、それは別世界のオレなんだけどなー。こっちのオレに妹はいねーからよ。」
留歌の質問に答える彼らは、どうやら揃いも揃って説明が苦手なようだ。
「でもまぁ、私の世界では兄さまだからさ、つい、ね…」
「なるほど……あ、でも確かに俺も、この世界来てからはなんか知らねぇ記憶がたくさんあるっす。」
多少の分からない事は無理矢理飲み込む事にしたのか、留歌は頷いた。
「あーそれ、俺じゃ説明難しいんすよね…俺あんま頭よくねぇんすよ。つーわけで単!説明任したっす!」
丸投げっておい。界人、それ君の固有魔法なんだけどな?
その言葉に反論しかけた単は、諦めたように話し出す。
「まぁいいか、拒否する方が面倒くさそうだ。あんたも、一度しか言わないし聞き返すのも許さないから、精々よく聞きなよ。」
単が呼吸を置いて留歌を見ると、首肯してメモを取ろうとしている。
溜息と共に説明が再開する。
「簡潔に言うと、此処は時空の狭間なんだ。だからあんたも此処にいる俺達も、あらゆる世界の自分を統合した存在な訳。」
留歌には分かっていない。
貴方は、留歌の頭にハテナマークが浮いているような気がする。
「知らない記憶、ってのはあんたが俺達と違ってどっかの世界の特定のあんたを基準にしてるからだな。」
留歌にはやはり分かっていない。
貴方は、浮いているハテナマークが一つ増えたような気がする。
「後はそうだな。此処以外で俺達に関わった事がないのも、原因の一つなんじゃない?」
単は最後にそう言って説明を終えた。
相変わらず、留歌には分かっていない。
貴方は、ハテナマークが三つになったような気がする。
「はぁ、こいつも馬鹿かよ…面倒くさい。もう一度説明するなんて、俺は御免だからな。それじゃ眠いし、今度こそ俺は寝るから起こすなよ。」
心底呆れた顔で、単は机に突っ伏した。
如何やらこのまま寝る気らしい。
「はいはいそこまでっすよ。んで寝ないでくれ。留歌さん萎縮してるじゃないっすか。」
そう界人がとりなすも、あんたが説明しろって言ったんだろ、と単は聞く耳を持たない。
「ったく、五月蝿いな…下らない用事で俺の安眠を妨害したんだ、その程度当然だろ。」
「いや、当然じゃないよ!?単くんは言い過ぎです!そんなわけだから、留歌くんは気にしなくていいからね?」
「え、あ、はい…?」
陽の発言を受けても尚、自信なさげに小首を傾げる彼は相変わらずの困り眉だ。
[中央寄せ][大文字]つづく?[/大文字][/中央寄せ]