二次創作
推しが第四の壁を超えてきたSS
中原中也/文豪ストレイドッグス
「酷いよ…なんで、私の、缶バッジ…」
「分かった分かったwww謝るからwww」
アイツら…マジでふざけんな。あたしの大事な友達泣かせやがって。しかもグッズ壊すとかマジで許せない。
「ねぇアンタらさぁ、それ謝ってないの分かんないかな?」
はぁ、もうマジでコイツら…心底ムカつく。殴りたい。
でもとりあえず殴っちゃいけない。それだけは絶対にダメ。
深呼吸、アンガーマネジメント…
「つーかお前らそんなの好きなの?オタクとかきっしょwww」
「てゆうかー、そんなに怒んなってwwwシワの原因になりますよー?wwwただでさえ熊なんだからさーwww」
うんごめん無理だわ。あたしの忍耐はそこまで強くない。堪忍袋の緒ってのが存在するとしたら、あたしのはきっとボロボロだろう。
気付けば、ガス、と足元から音がしている。やっべ。
うっかり全力で目の前の男子の足を踏み抜いてしまった。怒られるかな、コレ。
[水平線]
「おーいお前ら、何を言い争ってるんだ?」
ああ、ようやく強権のお出ましだ。周囲の友人が状況を説明してくれる。そうすれば、あっという間に悪者の完成。
うん、なんか申し訳ない気もするけどコイツらに温情を持ってはいけない。なんせ、つい先月も似たような事があったばっかりなんだから。
その時はあたしの中也のキーホルダーだっけか。
「あ、先生、この人達がこの子の…太宰さんのグッズ壊したのにちゃんと謝んないんですー!」
「あー…でも、それであたしが腹立てて相手の靴踏んじゃって…ごめんなさい…」
「でもこの子泣いてて、それでこっちが怒ってくれてー!!」
自首はちゃんとしておくのが大事。もちろん、しおらしい態度でね。
罷り間違ってイジメの犯人とかにされたら目も当てられたモノじゃないから。実際、手を出した時点であたしが悪いのは事実だし。
「分かった、分かったからお前らは落ち着けって。あとそっちはちゃんと話聞かせろよ。で?そこ二人はまたやったのか?ちょっとこっちに来なさい。」
おお、見事にしょっ引かれてった。
アイツら、先生が出てくると途端に大人しくなるんだからほんとイライラする。
「あの…ありがと…」
「あはは、いいのいいの。それより、多分アンタ呼ばれるだろうけど…その時はちゃんと吹っかけるんだぞ?」
正直、アイツらのせいで壊れたから弁償しろー、ぐらい言ってやっても良いと思う。マジで。とは言っても、どうせなぁなぁになるんだよなぁ…
[水平線]
「いやぁ今日のアレ、カッコよかったよー!」
「ふへへ照れるなぁふはははもっと褒めろ!」
いつもの帰り道、いつもの四人、いつもの分かれ道。
「じゃあ、ね…」
「うん、また明日!」
ここから家まで、三分ぐらい一人で歩きだ。いつもちょっと寂しいんだよね…っと、出やがったあの馬鹿ども。
「おい巨人!」
うっわうっぜ。アイツら懲りないのかな。
無視無視、っと。
「無視してんじゃねーよwww」
「それとも一人だとなーんも出来ないんですかーwww」
…特大ブーメランって知ってるのかなアイツら。二人いるくせに言ってんなよ。
なんだよ、一匹見たら確実にもう一匹いるとか。Gじゃないんだからさ。
というか、やっぱ脳みそ空っぽなんじゃないの。
「ビビってんじゃんwww」
「お前いけよwwwもっと言ったれwww」
…ここで絡むと絶対悪者にされる。手は出さない、手は出さない…
「いい加減にしてくんない?暇なの?」
「は?なんてぇ?www」
「あ、聞こえてないなら良いですサヨウナラ」
よーし帰ろーう。こんな奴らに関わってると精神衛生上良くない。
くっそ気持ち悪い顔(当社比)してるくせに。あたしの最推し…中也の、百分の一の顔面偏差値もないくせに。とゆーか比べんのも失礼だわ。中也に。
もういいや、と、文ストのお気に入りの巻を開く。読みながら帰ろうかな、いっそのこと。
なんて思っていると、
「ッぶねェ!手前ェら、退け!」
目の前に、そう言いながら法定速度無視級のスピードで爆走していく赤いバイクが突然現れた。
なんか、すごく見慣れたデザイン…って、あたしの最推し、中也のバイクにそっくりだ!?
十六歳編のストブリで[漢字]阿呆鳥[/漢字][ふりがな]アルバトロス[/ふりがな]からもらった(と思われる)、あの赤いバイク!
目の前でポカンとしているアイツらを尻目に、あたしは駆け出した。実在するんだ、あのバイク!
[水平線]
いた!ちょうどあたしの家の目の前で止まってる…今はこっち向いてないけど、話しかけてみたい!!今こそ唸れあたしのコミュ力!!!
「あの、そのバイクって、」
「ん?如何した?」
くるりと振り返ったその顔に絶句する。紛れもなくあたしの最推し、中原中也がそこにいた。鋭い蒼の目、特徴的な赤茶の髪、それに何より、ほんとにあたしより一回り背が低い。
ダメだこれ以上直視できない目がかっこよさでイカレる無理だ死ぬ。
いやそもそも一体どうなってる。なんで二次元の存在がここにいる。
そう思い、思わず後退る。
「え、あ、っちょ、え?」
「いや如何したんだよ、手前から声掛けといて…」
「…、中原…中、也…」
嗚呼気付かれたか、なんて彼が言っているのを横目で見ながら考える。うっそでしょ、どうなってんのコレ、マジで意味わかんない、お化け?幻覚?え?
そう混乱するあたしに彼は構わず話しかけてくる。
「如何にも、俺は中原中也だ。で、手前は?軍警にでも電話掛ける積りか?」
その前に殺す、そう言外に告げられている気がするし、その辺りさすがポトマだなぁとか思うけど、とりあえずそんなのどうでもいい。
「いや、スマホ持ってないんであたし…というかここヨコハマじゃないんで軍警はいないっていうか…」
待ってくれ本格的に何を言っているんだあたしは。
方向性がかなり間違っている気がする。言いたいのはこんな事じゃない。
「いや何云ってやがる、何処から如何見てもヨコハマだろ?」
「いや確かに横浜なんですけど…あー…あなたがお住まいの異能都市ヨコハマじゃなくてですね…?」
あーダメだ、説明できる気がしない。そう思ったのも束の間、彼ははたりと手打った。
「嗚呼成程なァ。此処、「外」なのか。」
「え、あー、ハイ。そーゆー事、です。」
そういや何時だったかあの[漢字]放浪者[/漢字][ふりがな]バガボンド[/ふりがな]が云ってやがったな…とか言っている中也。
いや理解力すごいな。さすが中也…というか、この場合むしろ太宰さんか。なんであの人、第四の壁を観測してるんだ。
というか、実際最推しが目の前に立っているとなるとやばい、とてもアレだ。とりあえず、語彙はどこかに飛んでいってしまった。
しかし悲しいかな、語彙力はすぐに戻ってきた。さっき置いてけぼりにしたコイツらのせいで。
「おいお前、何逃げてんだー?」
「やっぱり一人じゃ何もできないんですかー?」
…死ね。アイツらマジで死ね。人の会話遮んじゃねぇよ。
いや、このままここにいると中也のイケメンっぷりに目がやられて死ぬし、もうどうでもいいや。
「うるさ、家の前でわざわざ騒ぐとかほんとやめろよ。近所迷惑って言葉を知らないわけじゃないよね?てかそもそも、まだちゃんとあの子に謝ってないって聞いたけど?」
とりあえずこの馬鹿どもが中也に向かってチビとか言うような事態だけは避けねばなるまい。
この現実で異能力が使えるかは分からないし、銃とかナイフとか持ってるとも限らないけど…持ってたらどうなるか想像がつかないからなぁ……
なんて思って、アイツらが喋る事すらできないように、ペラペラと捲し立てる。
「だいたいさ、いつもいつもわざわざ絡んできてなんなの?気持ち悪いんだけど。つーかうざい。人が楽しく楽しくアンタらより何千倍もかわいい友達と女子トークしてる事の何が気に食わないわけ?」
いいぞ、完全にこっちのペースだ。相手もかなり意気消沈してきた。
「いやもうほんとやめてくんね?それすらできないなら…うん、話変わるけどこっちはさぁ、アンタらのせいで大事なグッズ壊されてるわけ。アンタらのポケモンのカードぐらいなら…引き裂いてもいいと思わない?」
「え、こわ」
「ヤベェやつじゃんwwwキモwww」
そうは言っても腰引けてんだよばーか。帰れ帰れ、できれば土に。
アイツらがトンチンカンな方向に走っていくのを眺めていると、右斜め下から声がした。そのままポンポンと肩を叩かれている。
誰に?って、中也だ!?
「手前、中々やるなァ!あの莫迦ども、タジタジしてたじゃねェか!!格好良かったぜ!!!」
「うわぁあ!?って…中也…さん…」
やっべ、途中から忘れてた。そういえばいたんだった。
「てゆーか今あたし、推しに、中也に、[大文字] 『かっこいいって褒められた』[/大文字]?え??あ、ちょ、ま、無理ヤバい死ねる…」
すっげぇ脳直で喋ってしまったけど、中身空っぽすぎないかこの発言。いや、推しを目の前にして理性を保てる人間がそうそういてたまるか。無理です無理。
「如何した本格的に…推し?は?俺ァマフィアだぞ?」
あー待って、無理無理イケメンすぎるなんなの最高なの???あーもーなんなんだよ!!
「あはは…どうもありがとうございます…それでは…ここ家なんで失礼します…」
これ以上目合わせて会話なんてできるか!無理だわ!バックステップで離れて、家のドアノブに手をかけようとする。
「オイ待てよ。」
「ハイなんでしょう!!」
振り向かずになんとか耐えた。だって絶対これ以上見てたら目が潰れる、そう思った矢先の追い討ち。
「いや、一応訊いておこうと思ってな…。手前、帰り方知らねェか?」
あーもー!最推しから質問受けちゃったよどうしようマジで!!
ついうっかり振り向いてしまったが、生憎あたしは魔法使いでもなんでもない。よって知らないし、知っているわけもない。
「さぁ…?分かんない…ですね…」
「…だよなァ…如何したモンか…」
木枯らしの吹く十二月、あたしは…いや、中也も含めるとあたし達になるわけだけど…寒い路上で、顔を見合わせて立ち尽くした。
「酷いよ…なんで、私の、缶バッジ…」
「分かった分かったwww謝るからwww」
アイツら…マジでふざけんな。あたしの大事な友達泣かせやがって。しかもグッズ壊すとかマジで許せない。
「ねぇアンタらさぁ、それ謝ってないの分かんないかな?」
はぁ、もうマジでコイツら…心底ムカつく。殴りたい。
でもとりあえず殴っちゃいけない。それだけは絶対にダメ。
深呼吸、アンガーマネジメント…
「つーかお前らそんなの好きなの?オタクとかきっしょwww」
「てゆうかー、そんなに怒んなってwwwシワの原因になりますよー?wwwただでさえ熊なんだからさーwww」
うんごめん無理だわ。あたしの忍耐はそこまで強くない。堪忍袋の緒ってのが存在するとしたら、あたしのはきっとボロボロだろう。
気付けば、ガス、と足元から音がしている。やっべ。
うっかり全力で目の前の男子の足を踏み抜いてしまった。怒られるかな、コレ。
[水平線]
「おーいお前ら、何を言い争ってるんだ?」
ああ、ようやく強権のお出ましだ。周囲の友人が状況を説明してくれる。そうすれば、あっという間に悪者の完成。
うん、なんか申し訳ない気もするけどコイツらに温情を持ってはいけない。なんせ、つい先月も似たような事があったばっかりなんだから。
その時はあたしの中也のキーホルダーだっけか。
「あ、先生、この人達がこの子の…太宰さんのグッズ壊したのにちゃんと謝んないんですー!」
「あー…でも、それであたしが腹立てて相手の靴踏んじゃって…ごめんなさい…」
「でもこの子泣いてて、それでこっちが怒ってくれてー!!」
自首はちゃんとしておくのが大事。もちろん、しおらしい態度でね。
罷り間違ってイジメの犯人とかにされたら目も当てられたモノじゃないから。実際、手を出した時点であたしが悪いのは事実だし。
「分かった、分かったからお前らは落ち着けって。あとそっちはちゃんと話聞かせろよ。で?そこ二人はまたやったのか?ちょっとこっちに来なさい。」
おお、見事にしょっ引かれてった。
アイツら、先生が出てくると途端に大人しくなるんだからほんとイライラする。
「あの…ありがと…」
「あはは、いいのいいの。それより、多分アンタ呼ばれるだろうけど…その時はちゃんと吹っかけるんだぞ?」
正直、アイツらのせいで壊れたから弁償しろー、ぐらい言ってやっても良いと思う。マジで。とは言っても、どうせなぁなぁになるんだよなぁ…
[水平線]
「いやぁ今日のアレ、カッコよかったよー!」
「ふへへ照れるなぁふはははもっと褒めろ!」
いつもの帰り道、いつもの四人、いつもの分かれ道。
「じゃあ、ね…」
「うん、また明日!」
ここから家まで、三分ぐらい一人で歩きだ。いつもちょっと寂しいんだよね…っと、出やがったあの馬鹿ども。
「おい巨人!」
うっわうっぜ。アイツら懲りないのかな。
無視無視、っと。
「無視してんじゃねーよwww」
「それとも一人だとなーんも出来ないんですかーwww」
…特大ブーメランって知ってるのかなアイツら。二人いるくせに言ってんなよ。
なんだよ、一匹見たら確実にもう一匹いるとか。Gじゃないんだからさ。
というか、やっぱ脳みそ空っぽなんじゃないの。
「ビビってんじゃんwww」
「お前いけよwwwもっと言ったれwww」
…ここで絡むと絶対悪者にされる。手は出さない、手は出さない…
「いい加減にしてくんない?暇なの?」
「は?なんてぇ?www」
「あ、聞こえてないなら良いですサヨウナラ」
よーし帰ろーう。こんな奴らに関わってると精神衛生上良くない。
くっそ気持ち悪い顔(当社比)してるくせに。あたしの最推し…中也の、百分の一の顔面偏差値もないくせに。とゆーか比べんのも失礼だわ。中也に。
もういいや、と、文ストのお気に入りの巻を開く。読みながら帰ろうかな、いっそのこと。
なんて思っていると、
「ッぶねェ!手前ェら、退け!」
目の前に、そう言いながら法定速度無視級のスピードで爆走していく赤いバイクが突然現れた。
なんか、すごく見慣れたデザイン…って、あたしの最推し、中也のバイクにそっくりだ!?
十六歳編のストブリで[漢字]阿呆鳥[/漢字][ふりがな]アルバトロス[/ふりがな]からもらった(と思われる)、あの赤いバイク!
目の前でポカンとしているアイツらを尻目に、あたしは駆け出した。実在するんだ、あのバイク!
[水平線]
いた!ちょうどあたしの家の目の前で止まってる…今はこっち向いてないけど、話しかけてみたい!!今こそ唸れあたしのコミュ力!!!
「あの、そのバイクって、」
「ん?如何した?」
くるりと振り返ったその顔に絶句する。紛れもなくあたしの最推し、中原中也がそこにいた。鋭い蒼の目、特徴的な赤茶の髪、それに何より、ほんとにあたしより一回り背が低い。
ダメだこれ以上直視できない目がかっこよさでイカレる無理だ死ぬ。
いやそもそも一体どうなってる。なんで二次元の存在がここにいる。
そう思い、思わず後退る。
「え、あ、っちょ、え?」
「いや如何したんだよ、手前から声掛けといて…」
「…、中原…中、也…」
嗚呼気付かれたか、なんて彼が言っているのを横目で見ながら考える。うっそでしょ、どうなってんのコレ、マジで意味わかんない、お化け?幻覚?え?
そう混乱するあたしに彼は構わず話しかけてくる。
「如何にも、俺は中原中也だ。で、手前は?軍警にでも電話掛ける積りか?」
その前に殺す、そう言外に告げられている気がするし、その辺りさすがポトマだなぁとか思うけど、とりあえずそんなのどうでもいい。
「いや、スマホ持ってないんであたし…というかここヨコハマじゃないんで軍警はいないっていうか…」
待ってくれ本格的に何を言っているんだあたしは。
方向性がかなり間違っている気がする。言いたいのはこんな事じゃない。
「いや何云ってやがる、何処から如何見てもヨコハマだろ?」
「いや確かに横浜なんですけど…あー…あなたがお住まいの異能都市ヨコハマじゃなくてですね…?」
あーダメだ、説明できる気がしない。そう思ったのも束の間、彼ははたりと手打った。
「嗚呼成程なァ。此処、「外」なのか。」
「え、あー、ハイ。そーゆー事、です。」
そういや何時だったかあの[漢字]放浪者[/漢字][ふりがな]バガボンド[/ふりがな]が云ってやがったな…とか言っている中也。
いや理解力すごいな。さすが中也…というか、この場合むしろ太宰さんか。なんであの人、第四の壁を観測してるんだ。
というか、実際最推しが目の前に立っているとなるとやばい、とてもアレだ。とりあえず、語彙はどこかに飛んでいってしまった。
しかし悲しいかな、語彙力はすぐに戻ってきた。さっき置いてけぼりにしたコイツらのせいで。
「おいお前、何逃げてんだー?」
「やっぱり一人じゃ何もできないんですかー?」
…死ね。アイツらマジで死ね。人の会話遮んじゃねぇよ。
いや、このままここにいると中也のイケメンっぷりに目がやられて死ぬし、もうどうでもいいや。
「うるさ、家の前でわざわざ騒ぐとかほんとやめろよ。近所迷惑って言葉を知らないわけじゃないよね?てかそもそも、まだちゃんとあの子に謝ってないって聞いたけど?」
とりあえずこの馬鹿どもが中也に向かってチビとか言うような事態だけは避けねばなるまい。
この現実で異能力が使えるかは分からないし、銃とかナイフとか持ってるとも限らないけど…持ってたらどうなるか想像がつかないからなぁ……
なんて思って、アイツらが喋る事すらできないように、ペラペラと捲し立てる。
「だいたいさ、いつもいつもわざわざ絡んできてなんなの?気持ち悪いんだけど。つーかうざい。人が楽しく楽しくアンタらより何千倍もかわいい友達と女子トークしてる事の何が気に食わないわけ?」
いいぞ、完全にこっちのペースだ。相手もかなり意気消沈してきた。
「いやもうほんとやめてくんね?それすらできないなら…うん、話変わるけどこっちはさぁ、アンタらのせいで大事なグッズ壊されてるわけ。アンタらのポケモンのカードぐらいなら…引き裂いてもいいと思わない?」
「え、こわ」
「ヤベェやつじゃんwwwキモwww」
そうは言っても腰引けてんだよばーか。帰れ帰れ、できれば土に。
アイツらがトンチンカンな方向に走っていくのを眺めていると、右斜め下から声がした。そのままポンポンと肩を叩かれている。
誰に?って、中也だ!?
「手前、中々やるなァ!あの莫迦ども、タジタジしてたじゃねェか!!格好良かったぜ!!!」
「うわぁあ!?って…中也…さん…」
やっべ、途中から忘れてた。そういえばいたんだった。
「てゆーか今あたし、推しに、中也に、[大文字] 『かっこいいって褒められた』[/大文字]?え??あ、ちょ、ま、無理ヤバい死ねる…」
すっげぇ脳直で喋ってしまったけど、中身空っぽすぎないかこの発言。いや、推しを目の前にして理性を保てる人間がそうそういてたまるか。無理です無理。
「如何した本格的に…推し?は?俺ァマフィアだぞ?」
あー待って、無理無理イケメンすぎるなんなの最高なの???あーもーなんなんだよ!!
「あはは…どうもありがとうございます…それでは…ここ家なんで失礼します…」
これ以上目合わせて会話なんてできるか!無理だわ!バックステップで離れて、家のドアノブに手をかけようとする。
「オイ待てよ。」
「ハイなんでしょう!!」
振り向かずになんとか耐えた。だって絶対これ以上見てたら目が潰れる、そう思った矢先の追い討ち。
「いや、一応訊いておこうと思ってな…。手前、帰り方知らねェか?」
あーもー!最推しから質問受けちゃったよどうしようマジで!!
ついうっかり振り向いてしまったが、生憎あたしは魔法使いでもなんでもない。よって知らないし、知っているわけもない。
「さぁ…?分かんない…ですね…」
「…だよなァ…如何したモンか…」
木枯らしの吹く十二月、あたしは…いや、中也も含めるとあたし達になるわけだけど…寒い路上で、顔を見合わせて立ち尽くした。