- 閲覧前にご確認ください -

夢小説ではないですが、一応それに近いモチーフではあります。よって、夢小説苦手なら見るのはオススメできません。
バッドエンドを含みます。主人公が死ぬほど喋ります。

文字サイズ変更

二次創作
推しが第四の壁を超えてきたSS

#2

ラスサビに辿り着けた

初音ミク/VOCALOID
[中央寄せ]※バッドエンド※[/中央寄せ]

 はぁ、と、屋上のドアを開けながら溜息を一つ。
 溜息なんてつくと幸運が逃げる?生憎だが、俺に幸運なんてあった試しはない。

 もういっそここから飛べば楽になるんだろうか、なんて考えてしまうあたり、我ながら相当参っているな。

「あー…やべぇ、何にもできないなこれ。」

 鬱、ってやつなんだろうか。何もする気が起きないし、最近気づくと何も考えずに虚空を見つめている。
 受験生にとって肝心要の勉強だって、ここ数ヶ月マトモにしていない。
 風に吹かれながら考える。いいや、もう考えるのもめんどくさい。

 そもそも原因だってあってないような物だ。
 俺たち男特有のおふざけ…もとい、俺に対する陰険なイジメ。それに加えて、思春期特有のくっだらねぇ親との軋轢に進路の問題。
 誰にも俺の気持ちは分からない、なんて自惚れもその一つか。

 そもそも俺は集団行動に向いてないんだよ。というか多分、人間に向いてない。俗に言う、陰キャ、ってヤツ。
 まぁでも一応好きな物ぐらいある。結局二次元だけど。
 あーあ。せっかく最推し…ミク引けたってのに、こりゃ完全に壊れたな…

 ランダムでゲットした缶バッジだったものを眺めてもう一つ溜息。
 やっぱり俺に幸運なんてない。
 いや、仮にあったとしても、遥か昔に無くなっているんだろう。

「あーあ。二次元、二次元ね…」

 気持ち悪い、だったか。まぁ否定はしないが。でも、人の趣味を小馬鹿にするしか能がないんだろうか、あいつらは。
 そんな風に、屋上で思う。想う。憶う。
 脳裏をよぎるのは、昔聞いた曲。
 屋上で靴を脱ぎかけた時に、先客に声をかけてしまった、みたいな歌詞の。

『ねぇ、やめなよ』

 なんて、ここの開け方を知ってるのは俺くらいだろう。避難のために、必死でピッキング覚えたんだから。
 さらに言うと、俺は三つ編みではない。当たり前だ。黄色いカーディガンも着ていない。
 そしてもちろん、止めてくれるヤツも現れない。当たり前だ。鍵はさっき、俺自身が閉めた。
 というかむしろ、見つかったらさらに笑い物にされるのがオチだろう。
 そもそも屋上は立ち入り禁止だ。つまり、それをネタにまた強請られる。

 っはは、まじで笑える。

「こんな僕が消えちゃうだけで
何億人のひとが喜んで
誰も何も憎まないなら
そんなうれしいことはないな」

 静かに歌う声に嗚咽が混じる。我ながら大分感傷的だな。
 まぁ、この曲の真に良いところはここじゃなく、ラスサビ部分にあるんだろう。
 そう、「だけど僕を止める何かが」、っていうあの辺。
 じゃあその[漢字]ハッピーエンド[/漢字][ふりがな]ラスサビ[/ふりがな]に、俺は辿り着けるのか?答えは否だ。
 せいぜい一番止まりのモブ。
 それが俺だし、俺の人生だ。
 …人生だった。

「っし、やめだやめ。もうやめよう。」

 決めてしまえば存外晴れやかな気分だ。遺書は…別に書かなくていいか。
 あいつらを告発した所で、どうせ大事になんてならない。なんか偉い奴が親らしいし。

「そんなのどうでもいいんだよ、」

 っははは、そのせいで教師も見て見ぬふりだったんだ。じゃあもういいだろう。

「最期に何か曲でも聴くか…って、イヤホンまでイカれてるな。」

 水没させられたんだから当然か。そう思うとなんだか笑えてきた。
 ったく、これじゃもうゲームもできない。どっちみち、もうすぐやれなくなる訳だけど。

「『untitled』か。俺のスマホにもないかな。死ぬよりは何倍もいい。」

 だが、生憎ここは現実だ。最推しがいる「セカイ」行きのチケットなんて、俺のスマホには入っていなかった。

 今なら俺の箱推しグループの内一人、紫の髪の朝比奈まふゆ…あの子が考えてしまった事が分かるかもしれない、なんて自惚れか。
 自分の感情が、もう、分からない。

「もう辛い事なんてないんだよ、」

 それにここ数日、何を食べても味が分からないんだ。
 っはは、ネタとか、カッコつけとか、厨二病とか、二次元と三次元の区別がついてない痛い奴とか、言うか?
 でも残念、そんなのは、自分が一番よく分かってるさ。
 誰かが助けてくれるフェーズってのは、もうとっくのとうに通り過ぎたんだろう。

「あっははは!それじゃあ、あばよクソッタレな世界。なんて、クサすぎるか。」

 だから待って、と、そう声が聞こえた気がした。何度もゲームで聞いた声。いや、それ以上に、何度もお気に入りの曲で聞いた音。
 でも知らねぇよ。もういいよ。そう思った。

「待って!!!」

 突然、目の前に水色が現れた。最近では、親の顔より見ていたかもしれないあの色が。
 見慣れた服、見慣れたネクタイ、見慣れたツインテ。
 “ソレ”は宙に浮いている。当然、およそ全ての物理法則を無視している。

「キミを、助けに来たよ!」

 なんて、そんな言葉を。俺が何よりほしかったその言葉を、その手を、こちらに向けている。
 ああでも、残念だな。

「あー…初音、ミク、さん?」
「…、そん、な…、間に、合わ、なかった…」

 既に柵は壊れている。ボロボロに風化していた柵に体重をかけただけで俺は終わる。
 その手は届かない。自由落下には、さしもの二次元の存在も敵わないらしい。

 絶望に歪むその顔を見ながら、俺は落ちる。墜ちる。陥ちる。
 最推しが俺のせいで辛そうな顔してるのを見ながら死ねる。
 俺が死ぬのを理由に、顔を、その綺麗な顔を、涙で、滲ませているのを、見ながら、死ねる。

「__!___!!」

 なんだ、俺は[大文字]『[漢字]モブじゃなかった[/漢字][ふりがな]ラスサビに辿り着けた[/ふりがな]』[/大文字]じゃないか。ああでも、確かにコレは、笑えな








[水平線]
[明朝体] 次のニュースです。
 東京都〇〇市の中学校で男子生徒が死亡、事故死か。

 現場と見られる屋上でも、靴や遺書などは発見されていません。柵が壊れていた事から警察は事故であると判断し、学校側に厳重注意を言い渡しました。

 また、当該の場所では、柵の著しい劣化が進んでいたため立ち入り禁止となっていました。
 どのようにして男子生徒が入ったのか、早急な原因究明を求められています。
[/明朝体]
[水平線]








「助けてあげられなかった」

作者メッセージ

バッドエンドも良い物なのだ。
ちなみに、ミクさんは途中から話しかけています。
不自然なセリフを探して見てくださいね。

2024/12/30 09:50

文スト民な豆腐マスター ID:≫ppOwyaLqNDBvA
続きを執筆
小説を編集
パスワードをおぼえている場合は、ご自分で小説を削除してください。【削除方法

小説削除依頼フォーム

お名前 ※必須
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
削除の理由 ※必須

パスワードについて

ご自分で投稿した小説ですか? ※必須

この小説は、あなたが投稿した小説で間違いありませんか?

削除後に復旧はできません※必須

削除したあとに復旧はできません。クレームも受け付けません。

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL
/ 3

コメント
[0]

小説通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

※できるだけ具体的に記入してください。
特に盗作投稿については、どういった部分が元作品と類似しているかを具体的にお伝え下さい。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL