二次創作
推しが第四の壁を超えてきたSS
初音ミク/VOCALOID
[中央寄せ]※バッドエンド※[/中央寄せ]
はぁ、と、屋上のドアを開けながら溜息を一つ。
溜息なんてつくと幸運が逃げる?生憎だが、俺に幸運なんてあった試しはない。
もういっそここから飛べば楽になるんだろうか、なんて考えてしまうあたり、我ながら相当参っているな。
「あー…やべぇ、何にもできないなこれ。」
鬱、ってやつなんだろうか。何もする気が起きないし、最近気づくと何も考えずに虚空を見つめている。
受験生にとって肝心要の勉強だって、ここ数ヶ月マトモにしていない。
風に吹かれながら考える。いいや、もう考えるのもめんどくさい。
そもそも原因だってあってないような物だ。
俺たち男特有のおふざけ…もとい、俺に対する陰険なイジメ。それに加えて、思春期特有のくっだらねぇ親との軋轢に進路の問題。
誰にも俺の気持ちは分からない、なんて自惚れもその一つか。
そもそも俺は集団行動に向いてないんだよ。というか多分、人間に向いてない。俗に言う、陰キャ、ってヤツ。
まぁでも一応好きな物ぐらいある。結局二次元だけど。
あーあ。せっかく最推し…ミク引けたってのに、こりゃ完全に壊れたな…
ランダムでゲットした缶バッジだったものを眺めてもう一つ溜息。
やっぱり俺に幸運なんてない。
いや、仮にあったとしても、遥か昔に無くなっているんだろう。
「あーあ。二次元、二次元ね…」
気持ち悪い、だったか。まぁ否定はしないが。でも、人の趣味を小馬鹿にするしか能がないんだろうか、あいつらは。
そんな風に、屋上で思う。想う。憶う。
脳裏をよぎるのは、昔聞いた曲。
屋上で靴を脱ぎかけた時に、先客に声をかけてしまった、みたいな歌詞の。
『ねぇ、やめなよ』
なんて、ここの開け方を知ってるのは俺くらいだろう。避難のために、必死でピッキング覚えたんだから。
さらに言うと、俺は三つ編みではない。当たり前だ。黄色いカーディガンも着ていない。
そしてもちろん、止めてくれるヤツも現れない。当たり前だ。鍵はさっき、俺自身が閉めた。
というかむしろ、見つかったらさらに笑い物にされるのがオチだろう。
そもそも屋上は立ち入り禁止だ。つまり、それをネタにまた強請られる。
っはは、まじで笑える。
「こんな僕が消えちゃうだけで
何億人のひとが喜んで
誰も何も憎まないなら
そんなうれしいことはないな」
静かに歌う声に嗚咽が混じる。我ながら大分感傷的だな。
まぁ、この曲の真に良いところはここじゃなく、ラスサビ部分にあるんだろう。
そう、「だけど僕を止める何かが」、っていうあの辺。
じゃあその[漢字]ハッピーエンド[/漢字][ふりがな]ラスサビ[/ふりがな]に、俺は辿り着けるのか?答えは否だ。
せいぜい一番止まりのモブ。
それが俺だし、俺の人生だ。
…人生だった。
「っし、やめだやめ。もうやめよう。」
決めてしまえば存外晴れやかな気分だ。遺書は…別に書かなくていいか。
あいつらを告発した所で、どうせ大事になんてならない。なんか偉い奴が親らしいし。
「そんなのどうでもいいんだよ、」
っははは、そのせいで教師も見て見ぬふりだったんだ。じゃあもういいだろう。
「最期に何か曲でも聴くか…って、イヤホンまでイカれてるな。」
水没させられたんだから当然か。そう思うとなんだか笑えてきた。
ったく、これじゃもうゲームもできない。どっちみち、もうすぐやれなくなる訳だけど。
「『untitled』か。俺のスマホにもないかな。死ぬよりは何倍もいい。」
だが、生憎ここは現実だ。最推しがいる「セカイ」行きのチケットなんて、俺のスマホには入っていなかった。
今なら俺の箱推しグループの内一人、紫の髪の朝比奈まふゆ…あの子が考えてしまった事が分かるかもしれない、なんて自惚れか。
自分の感情が、もう、分からない。
「もう辛い事なんてないんだよ、」
それにここ数日、何を食べても味が分からないんだ。
っはは、ネタとか、カッコつけとか、厨二病とか、二次元と三次元の区別がついてない痛い奴とか、言うか?
でも残念、そんなのは、自分が一番よく分かってるさ。
誰かが助けてくれるフェーズってのは、もうとっくのとうに通り過ぎたんだろう。
「あっははは!それじゃあ、あばよクソッタレな世界。なんて、クサすぎるか。」
だから待って、と、そう声が聞こえた気がした。何度もゲームで聞いた声。いや、それ以上に、何度もお気に入りの曲で聞いた音。
でも知らねぇよ。もういいよ。そう思った。
「待って!!!」
突然、目の前に水色が現れた。最近では、親の顔より見ていたかもしれないあの色が。
見慣れた服、見慣れたネクタイ、見慣れたツインテ。
“ソレ”は宙に浮いている。当然、およそ全ての物理法則を無視している。
「キミを、助けに来たよ!」
なんて、そんな言葉を。俺が何よりほしかったその言葉を、その手を、こちらに向けている。
ああでも、残念だな。
「あー…初音、ミク、さん?」
「…、そん、な…、間に、合わ、なかった…」
既に柵は壊れている。ボロボロに風化していた柵に体重をかけただけで俺は終わる。
その手は届かない。自由落下には、さしもの二次元の存在も敵わないらしい。
絶望に歪むその顔を見ながら、俺は落ちる。墜ちる。陥ちる。
最推しが俺のせいで辛そうな顔してるのを見ながら死ねる。
俺が死ぬのを理由に、顔を、その綺麗な顔を、涙で、滲ませているのを、見ながら、死ねる。
「__!___!!」
なんだ、俺は[大文字]『[漢字]モブじゃなかった[/漢字][ふりがな]ラスサビに辿り着けた[/ふりがな]』[/大文字]じゃないか。ああでも、確かにコレは、笑えな
[水平線]
[明朝体] 次のニュースです。
東京都〇〇市の中学校で男子生徒が死亡、事故死か。
現場と見られる屋上でも、靴や遺書などは発見されていません。柵が壊れていた事から警察は事故であると判断し、学校側に厳重注意を言い渡しました。
また、当該の場所では、柵の著しい劣化が進んでいたため立ち入り禁止となっていました。
どのようにして男子生徒が入ったのか、早急な原因究明を求められています。
[/明朝体]
[水平線]
「助けてあげられなかった」
[中央寄せ]※バッドエンド※[/中央寄せ]
はぁ、と、屋上のドアを開けながら溜息を一つ。
溜息なんてつくと幸運が逃げる?生憎だが、俺に幸運なんてあった試しはない。
もういっそここから飛べば楽になるんだろうか、なんて考えてしまうあたり、我ながら相当参っているな。
「あー…やべぇ、何にもできないなこれ。」
鬱、ってやつなんだろうか。何もする気が起きないし、最近気づくと何も考えずに虚空を見つめている。
受験生にとって肝心要の勉強だって、ここ数ヶ月マトモにしていない。
風に吹かれながら考える。いいや、もう考えるのもめんどくさい。
そもそも原因だってあってないような物だ。
俺たち男特有のおふざけ…もとい、俺に対する陰険なイジメ。それに加えて、思春期特有のくっだらねぇ親との軋轢に進路の問題。
誰にも俺の気持ちは分からない、なんて自惚れもその一つか。
そもそも俺は集団行動に向いてないんだよ。というか多分、人間に向いてない。俗に言う、陰キャ、ってヤツ。
まぁでも一応好きな物ぐらいある。結局二次元だけど。
あーあ。せっかく最推し…ミク引けたってのに、こりゃ完全に壊れたな…
ランダムでゲットした缶バッジだったものを眺めてもう一つ溜息。
やっぱり俺に幸運なんてない。
いや、仮にあったとしても、遥か昔に無くなっているんだろう。
「あーあ。二次元、二次元ね…」
気持ち悪い、だったか。まぁ否定はしないが。でも、人の趣味を小馬鹿にするしか能がないんだろうか、あいつらは。
そんな風に、屋上で思う。想う。憶う。
脳裏をよぎるのは、昔聞いた曲。
屋上で靴を脱ぎかけた時に、先客に声をかけてしまった、みたいな歌詞の。
『ねぇ、やめなよ』
なんて、ここの開け方を知ってるのは俺くらいだろう。避難のために、必死でピッキング覚えたんだから。
さらに言うと、俺は三つ編みではない。当たり前だ。黄色いカーディガンも着ていない。
そしてもちろん、止めてくれるヤツも現れない。当たり前だ。鍵はさっき、俺自身が閉めた。
というかむしろ、見つかったらさらに笑い物にされるのがオチだろう。
そもそも屋上は立ち入り禁止だ。つまり、それをネタにまた強請られる。
っはは、まじで笑える。
「こんな僕が消えちゃうだけで
何億人のひとが喜んで
誰も何も憎まないなら
そんなうれしいことはないな」
静かに歌う声に嗚咽が混じる。我ながら大分感傷的だな。
まぁ、この曲の真に良いところはここじゃなく、ラスサビ部分にあるんだろう。
そう、「だけど僕を止める何かが」、っていうあの辺。
じゃあその[漢字]ハッピーエンド[/漢字][ふりがな]ラスサビ[/ふりがな]に、俺は辿り着けるのか?答えは否だ。
せいぜい一番止まりのモブ。
それが俺だし、俺の人生だ。
…人生だった。
「っし、やめだやめ。もうやめよう。」
決めてしまえば存外晴れやかな気分だ。遺書は…別に書かなくていいか。
あいつらを告発した所で、どうせ大事になんてならない。なんか偉い奴が親らしいし。
「そんなのどうでもいいんだよ、」
っははは、そのせいで教師も見て見ぬふりだったんだ。じゃあもういいだろう。
「最期に何か曲でも聴くか…って、イヤホンまでイカれてるな。」
水没させられたんだから当然か。そう思うとなんだか笑えてきた。
ったく、これじゃもうゲームもできない。どっちみち、もうすぐやれなくなる訳だけど。
「『untitled』か。俺のスマホにもないかな。死ぬよりは何倍もいい。」
だが、生憎ここは現実だ。最推しがいる「セカイ」行きのチケットなんて、俺のスマホには入っていなかった。
今なら俺の箱推しグループの内一人、紫の髪の朝比奈まふゆ…あの子が考えてしまった事が分かるかもしれない、なんて自惚れか。
自分の感情が、もう、分からない。
「もう辛い事なんてないんだよ、」
それにここ数日、何を食べても味が分からないんだ。
っはは、ネタとか、カッコつけとか、厨二病とか、二次元と三次元の区別がついてない痛い奴とか、言うか?
でも残念、そんなのは、自分が一番よく分かってるさ。
誰かが助けてくれるフェーズってのは、もうとっくのとうに通り過ぎたんだろう。
「あっははは!それじゃあ、あばよクソッタレな世界。なんて、クサすぎるか。」
だから待って、と、そう声が聞こえた気がした。何度もゲームで聞いた声。いや、それ以上に、何度もお気に入りの曲で聞いた音。
でも知らねぇよ。もういいよ。そう思った。
「待って!!!」
突然、目の前に水色が現れた。最近では、親の顔より見ていたかもしれないあの色が。
見慣れた服、見慣れたネクタイ、見慣れたツインテ。
“ソレ”は宙に浮いている。当然、およそ全ての物理法則を無視している。
「キミを、助けに来たよ!」
なんて、そんな言葉を。俺が何よりほしかったその言葉を、その手を、こちらに向けている。
ああでも、残念だな。
「あー…初音、ミク、さん?」
「…、そん、な…、間に、合わ、なかった…」
既に柵は壊れている。ボロボロに風化していた柵に体重をかけただけで俺は終わる。
その手は届かない。自由落下には、さしもの二次元の存在も敵わないらしい。
絶望に歪むその顔を見ながら、俺は落ちる。墜ちる。陥ちる。
最推しが俺のせいで辛そうな顔してるのを見ながら死ねる。
俺が死ぬのを理由に、顔を、その綺麗な顔を、涙で、滲ませているのを、見ながら、死ねる。
「__!___!!」
なんだ、俺は[大文字]『[漢字]モブじゃなかった[/漢字][ふりがな]ラスサビに辿り着けた[/ふりがな]』[/大文字]じゃないか。ああでも、確かにコレは、笑えな
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[明朝体] 次のニュースです。
東京都〇〇市の中学校で男子生徒が死亡、事故死か。
現場と見られる屋上でも、靴や遺書などは発見されていません。柵が壊れていた事から警察は事故であると判断し、学校側に厳重注意を言い渡しました。
また、当該の場所では、柵の著しい劣化が進んでいたため立ち入り禁止となっていました。
どのようにして男子生徒が入ったのか、早急な原因究明を求められています。
[/明朝体]
[水平線]
「助けてあげられなかった」