獣人専用高校で人間だけど恋愛します
陽気な音楽が、無駄に大きく聞こえる。
空は眩しいくらいの晴天だけど、私の心は全然晴れないままだ。
「はあ...」
ちょっとでも可愛く見えるように、ハチマキを慎重に巻く。
先輩が見ているとは到底思えないけれど。
私が出る借り人競争は、プログラムの後ろから三番目だ。
暇だなぁ。
ぼんやりと競技を眺めてどれくらい経っただろうか。
視界の端っこに、紫が映った。
慌ててそれを視線で追いかける。
...いた、先輩。
その姿を見るだけで、胸がぎゅうっと苦しくなる。
目は合わない。
そうだよね...。
言わずもがな、颯爽と走る先輩はとてつもなく格好よかった。
『借り人競争に出場する生徒は、集まってください』
時間が経つのは、案外早いらしい。
もう借り人競争の番になってしまった。
運動会も終わろうとしている。
ドキドキしながら、紙を引く。
開いて出てきたのは、『帽子を被っている人』。
一瞬、思考が止まった。
ああ、もう駄目だ。
ゆるゆると、辺りを見渡す。
そんなのいっぱいいるし、もう誰を連れていったらいいのか分からない。
先輩は?ううん、帽子なんて被っていなかった。
...あれ?先輩が見つからない。
顔を下げて、地面を見つめる。
泣きそうだったけど、泣いたら負けだと思って、必死でこらえた。
.........
周りの音が段々遠のいていって、ああ、喉が乾いたな、とぼんやり考える。
やばい。倒れる、かも......。
あともう少しで地面に体を打つ、というところで体が止まった。
あれ?どうして?
ゆっくり顔を上げると、信じられない人がいた。
「せんぱい......」
何で?
今、来ないでよ。諦められなくなるじゃん。
期待しちゃうじゃん。
頭がくらくらして何も考えられない。
そっと目尻をぬぐわれて、ようやく、自分が泣いていることに気がついた。
「私と、来てくれますか」
言葉の意味は分からなかったけど、私は必死にうなずいた。
それを確認すると、先輩は走り出す。
先輩はびっくりするほど足が速くて、私は落とされないようにしっかり先輩にしがみついた。
あっという間にゴールテープを切った先輩が、私のつむじにキスをした。
「...えっ?」
真っ赤になる私に向かって、先輩が問う。
「私のお題、何だったと思います?」
そんなこと聞かれても...。
後輩?ポニーテール?
ううん、それじゃわざわざ私のところに来る理由がない。
もしかして......
「『自分のことを好きな人』?」
「.........」
先輩は困ったように笑った。
違う?でもそうとしか思えない。
私は先輩が好き。
でも、そんなお題書いたっけ?
私が考え込んでいると、先輩はゆっくりと私を地面に降ろした。
それから、私の手に何かを握らせる。
少し手に力を込めると、くしゃ、と音がした。
どうするのが正解か分からなくて、先輩を見上げる。
先輩は、まっすぐこちらを見ていた。
「.........あなたが好きです」
え?
誰に言っているの?
ふんわりと手を握られて、ようやく理解する。
唇が震えて、上手く言葉を紡げない。
でも、先輩は、じっと私の言葉を待っている。
「私も、あなたが好きです」
ああ、やっと言えた。
空は眩しいくらいの晴天だけど、私の心は全然晴れないままだ。
「はあ...」
ちょっとでも可愛く見えるように、ハチマキを慎重に巻く。
先輩が見ているとは到底思えないけれど。
私が出る借り人競争は、プログラムの後ろから三番目だ。
暇だなぁ。
ぼんやりと競技を眺めてどれくらい経っただろうか。
視界の端っこに、紫が映った。
慌ててそれを視線で追いかける。
...いた、先輩。
その姿を見るだけで、胸がぎゅうっと苦しくなる。
目は合わない。
そうだよね...。
言わずもがな、颯爽と走る先輩はとてつもなく格好よかった。
『借り人競争に出場する生徒は、集まってください』
時間が経つのは、案外早いらしい。
もう借り人競争の番になってしまった。
運動会も終わろうとしている。
ドキドキしながら、紙を引く。
開いて出てきたのは、『帽子を被っている人』。
一瞬、思考が止まった。
ああ、もう駄目だ。
ゆるゆると、辺りを見渡す。
そんなのいっぱいいるし、もう誰を連れていったらいいのか分からない。
先輩は?ううん、帽子なんて被っていなかった。
...あれ?先輩が見つからない。
顔を下げて、地面を見つめる。
泣きそうだったけど、泣いたら負けだと思って、必死でこらえた。
.........
周りの音が段々遠のいていって、ああ、喉が乾いたな、とぼんやり考える。
やばい。倒れる、かも......。
あともう少しで地面に体を打つ、というところで体が止まった。
あれ?どうして?
ゆっくり顔を上げると、信じられない人がいた。
「せんぱい......」
何で?
今、来ないでよ。諦められなくなるじゃん。
期待しちゃうじゃん。
頭がくらくらして何も考えられない。
そっと目尻をぬぐわれて、ようやく、自分が泣いていることに気がついた。
「私と、来てくれますか」
言葉の意味は分からなかったけど、私は必死にうなずいた。
それを確認すると、先輩は走り出す。
先輩はびっくりするほど足が速くて、私は落とされないようにしっかり先輩にしがみついた。
あっという間にゴールテープを切った先輩が、私のつむじにキスをした。
「...えっ?」
真っ赤になる私に向かって、先輩が問う。
「私のお題、何だったと思います?」
そんなこと聞かれても...。
後輩?ポニーテール?
ううん、それじゃわざわざ私のところに来る理由がない。
もしかして......
「『自分のことを好きな人』?」
「.........」
先輩は困ったように笑った。
違う?でもそうとしか思えない。
私は先輩が好き。
でも、そんなお題書いたっけ?
私が考え込んでいると、先輩はゆっくりと私を地面に降ろした。
それから、私の手に何かを握らせる。
少し手に力を込めると、くしゃ、と音がした。
どうするのが正解か分からなくて、先輩を見上げる。
先輩は、まっすぐこちらを見ていた。
「.........あなたが好きです」
え?
誰に言っているの?
ふんわりと手を握られて、ようやく理解する。
唇が震えて、上手く言葉を紡げない。
でも、先輩は、じっと私の言葉を待っている。
「私も、あなたが好きです」
ああ、やっと言えた。