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獣人専用高校で人間だけど恋愛します

#62

辛い

その夜から、匠は毎晩裏庭に来た。
匠は何も言わずに地面に腰をおろして、一人で色々話始める。
速すぎず、遅すぎず、ぽつりぽつりと話が進む。
匠の声は心地よかった。
最初は匠の行動が理解できなかった。...いや、今もできていないが。
何にせよ、毎晩匠がいる裏庭で練習をするのが当たり前になった。

二年になって、後輩ができた。
その後輩4人組に呼び出された。
リーダーらしき男が、不機嫌を隠そうともせず言った。

「おい、お前のボール寄越せよ」

こいつに敬語を使われたことは一度もない。
無駄だと思いつつも、反論してみる。

「こんなにボロいのにか?」
「うるせえ。さっさと渡せよ」
「...無理だ。これは渡せない」
「は?」

まさか断られるとは思っていなかったのか、リーダーは間抜けな声を出した。
取り巻きたちが焦って、口々に言った。

「おい、お前、この方が誰か分かってんのか!?」
「ボールくらい譲れよ!この貧乏性!」
「何だその生意気な目は!謝れ!」

このボールは、父から貰った大切なものだ。
手入れも欠かさなかった。

俺が無言でいると、もう我慢できないとばかりに、リーダーの男に腹を蹴られた。

ドッ

痛い。暴力には慣れている...が、久しぶりだ。

暴力が止むまで、ひたすらに耐えた。
変なところで慎重なのか、服で隠れないところは殴られなかった。
アイツらが飽きるまで、暴力は続いた。

一日一回、呼び出されて殴られる。

どれくらいそれが続いただろう。
でも、もう駄目だ。俺が、壊れてしまう。

サッカー部をやめる。
一応、匠にも伝えた。
驚いた顔をされたが、引き留めてくれることはなかった。
心のどこかで、匠は止めてくれると思っていた。
止められても、俺の気持ちが変わることはないが.........

もうよくわからない。
俺は、何のためにいるんだろう。

数日後、廊下を歩いていたら、いきなり腕を掴まれた。
匠だった。
匠はこう聞いてきた。

「何で部活を...サッカーをやめた」

ごめん。言えないんだ。
他の人に...匠に、迷惑はかけられない。

「言わない」

ぎゅうっと、俺の腕を掴んでいる匠の手に力が入った。
それでも全然痛くない。
優しいな、匠は。

「馬鹿!!何でだよ!!」

急に大きな声を出されて、体がびくっと跳ねる。
匠は下を向いていた。
もしかして...泣いている?

「もう、夜、10時じゃないと寝れなくなった」
「え...」
「お前のせいだよ」

遠回しなことを言って、匠は去っていった。

俺は、引き留められなかった。

作者メッセージ

匠、意外と気に入ってきました。笑
最初はモブの予定だったんだけど...

2025/04/16 04:49

まっちゃん ID:≫ 7tcdpCk/fMi.Q
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