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今作は第1部「能力者たちの詩編歌」、第2部「希望に満てる知識欲」、第3部「誠と偽りの狂情曲」
の続編です。
まだそれらを見ていない人は、先にそちらをご覧いただけると話がわかりやすいと思います。
第1部→https://novelcake.net/works/lite/?mode=view&log=1969&no=1
第2部→https://novelcake.net/works/lite/?mode=view&log=2089&no=1
第3部→novelcake.net/works/lite/?mode=view&log=2280#JumpTitle

暴言、暴力表現があります。苦手な人は逃げて想像内で柵を飛び越えるサフォーク羊を数えてください((

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【質問コーナー開催、コメントしてね】真実、誠実の優等生

#8

求真レイル

「ねえ何度目かな?」

「…っ…ごめん、なさい…」

「ごめんなさいで許されると、思ってるのかな?」

「………」

母の優しい怒りが痛かった。

齢3歳。すでに私は、親子の上下関係を知っていた。

普通、3歳児なんてものは、あそんで笑っていれば周りに愛される存在だろう。

しかし私は違った。

「どうして私の子なのにできないのかな?昨日のよりは簡単だよね?これ。」

そうして母に投げつけられたのは小学6年生の算数のプリント。

「…はい。」

「それがわかってんなら解けてもいいよね?」

「…ごめんなさい」

今まで家のために働いてきた父の急死、
それで母は変わってしまった。

とにかく娘に教育を。

とにかく娘に稼がせよう。

そんな人間に変わってしまった。

…母に、自分で稼ごうという気はなかったらしく。

幸い母に無駄遣い癖はなく、すべてを子供の養育費と生活費に回していたため、
父が遺した大量のお金で私は教育漬けにされながら育った。

期待の目はすぐに失望に変わって、

幼稚園の年長になるころには虐待が始まった。

「[太字]なんで!!どうしてできねえんだ、クズが!![/太字]」

「いたいっ、いたいよお母さんっ!」

「[太字]うるさい!!どうして教えなきゃできないんだ、木偶の坊が!!あんたの存在価値がわからないわ![/太字]」

周りには中学2年生の問題集。

全く分からない数式に読解問題でパンクした頭には、
ただただ叩かれ怒鳴られる声と音が響き続けていた。

「お母さんでもね、さっき小学校の6年生のハイレベルは全問正解したの!!だから許して、お願い!!」

「[太字]はあ?小学校レベルで何を偉そうに?とっとと勉強しろ。勉強勉強勉強勉強勉強!!![/太字]」

[水平線]

「ほらシエル、いい子ね」

シエルが生まれてからは、より一層私への暴力が強くなり。

小学校6年生。腕には既に大量の切り傷があった。

そして目の前には東大受験レベルの問題集。

当然解けるわけがない。

しかも、教育のすっ飛ばしすぎが問題で学校の勉強もままなっていなかった。

おかげでテストは散々で、
また怒られ。
そのテストを解くための勉強をしていると、
何を時間稼ぎしているんだと殴られ。

もう息が詰まりそうだった。

シエル「おねえちゃ?」

レイル「…」

そんなにきれいな目で見ないでほしい。

私がダメな子になってしまうから。

ダメな子のそばにいたら、

あなたまで駄目になる。



姿も
心も
役割も
みんなみんな 誰も望んでくれない。
それを痛くても耐えて偽るのが、私の人生の道。



高校生になった。

高校の問題は小学生からやってきたので、すらすら解ける…

わけではなかった。

今私は国立大学の問題をやらされている。

おかげで高校の勉強法と大学の勉強が混ざって散々だ。

でも積み重ねというものは嫌でも効くようで、今までよりはいい成績だった。

それでも…

「失敗作。あなたは失敗作。」

レイル「…はい」

顔は腫れていたから、毎日絆創膏を貼りなおして学校に行った。

ストレスでやつれて、目にはクマができていたが…

「シエルはあんなにいい子になったのに、あんたはどうして思い通りにならないのかしらねえ…」

レイル「…私が、ダメな子だから」

「そうね。やっとわかってくれたわね。」

腕の切り傷を見て、「ああ、ちゃんと自分を戒めてるのね。」
と満足そうな一言を放ち去っていく母親。

自分でも異常だとは思っていたけど、もう逆らえなかった。

シエル「お姉ちゃん」

レイル「シエル…どうしたの?」

シエル「お母さん、痛いことするね」

レイル「まぁね。…仕方ないわよ、私がテストダメだったから」

シエル「…どうして、頑張ってるお姉ちゃんは報われないんだろう」

レイル「頑張ってないからよ」

シエル「頑張ってるよ」

レイル「あなたのほうがすごいわよ。前算数100点だったんだって?」

シエル「そんなの大したことないよ。お姉ちゃんなんてその時から高校のお勉強してたんでしょ?」

レイル「まあね。」

「こら、シエル。あなたお姉ちゃんと喋るのは1分までって言ったでしょ」

シエル「なんで?もっと話したいよ」

「[太字]お姉ちゃんの無能がうつるでしょう?[/太字]」

レイル「…」

シエル「…」

シエルには優しいんだね。

そんな嫌な感情が通り過ぎて行った。

でも私は、シエルを嫌いにはなりたくなかった。

…なりたくなかったんだ。

[水平線]

シエルが高校生になって、私は25歳。

もういい年で、引っ越しもして、やっと教育の呪縛からは逃げ出した。

…けれど。

「ねえまだなの仕送り?シエルを教育しなきゃいけないんだからさっさと全額頂戴よ」

そんな電話の数に頭を悩ませる。

働いて稼いだ全額をこうして渡しているせいで、いまだに生活は安定しなかった。

「さっさとしてね」

その言葉を最後に、聞こえなくなったけど…

電話を切り忘れたのか、かすかにこんな声がした。

「[小文字]シエル、あなたどういうつもりなの!![/小文字]」

シエル「[小文字][太字]どうもこうもない、あたしは高校を中退して、
この家からも出ていって、知りたいことを追い求めるから。
聞こえなかった?何度でも言ってあげるよ。あたしは折れない。[/太字][/小文字]」

レイル「…っ」

シエルの声がする。…高校を、中退?

「[小文字]このままいい子にしてれば、もっといい職業につけるのよ!?[/小文字]」

シエル「[小文字]で?それが何。興味ない、そんなの。[/小文字]」

シエル「あたしはもう、そんないい子いい子の立場は、嫌なの!!!!」

シエル「[小文字]…貴女がこんなに拘束してよしよしした子にも、こうして逃げられた。
もう希望はないんじゃない?[/小文字]」

「[小文字]…親に向かってなんて態度…!![/小文字]」

シエル「[太字]お前こそ娘に向かってどーゆー態度してんだクズ!!お前のせいで
何度お姉ちゃんは泣くことになったと思ってんだ!![/太字]」

シエルのその声は、今までの苦労をすべて吐き出すように荒かった。

でもそれは、私を救うための怒号。

そんなに、私の泣いた声や跡を見ていたの?

どんな気持ちで見ていたの。

そんなことは浮かんだけれど、とりあえず消した。

レイル「っ…シエル…」


それから、母が仕送りをせがむことはなくなった。

おかげでしっかりと生活できていて、今は愛猫まで迎えている。

それもこれもシエルのおかげだ。

でも…

結局、自分はダメな子だって主観までは消えなくて。

私はそうしても、前を向けなくて。

作者メッセージ

2章のシエルの過去回と対比になるような表現がけっこうあるよ、探してみてね。

総文字数2452文字。((なっが

2025/01/04 00:38

おとうふ ID:≫rpvJPv02lqkiQ
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