オリキャラ短編集~~~
あれは初夏のことだった。
空は青く輝いていた。
「先生、まーたぼっちでご飯ですか?」
そう笑いかけるのは、初めて私を慕ってくれた存在だった。
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「皆さん、はじめまして。新しくこの学校で美術教師を務めることになりました。[太字]望月ラーシュ[/太字]と申します」
大勢の前に立ってこうして体育館で話をする。
緊張するが、この先も初めてのことだらけだろうから。
生徒A「えっ…でかくね?」
生徒B「でかいよ 何センチあんの」
生徒C「怖いんだけど、笑いもしないし」
ラーシュ「……」
ああ、やはり怖がられている。
____しかしどうしようもない。…なんとかして、もっと怖がられないような教師にならないと。
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オカルトに詳しい子「つぅまぁり、だよ!この世のなかには!普段潜んでいるだけでぇ…こわーい怨霊がいたりするんだー!」
女子生徒A「きゃあー!怖いーっ!」
オカルトに詳しい子「それでそれで、日常に潜むモノといえば…!!」
ラーシュ「超常現象。および心霊現象や超能力など。」
生徒たち「うわあああああああああ!?!?!(((」
ラーシュ「各種メディアでもとらえられているように、人間には時折逸脱した身体能力や超能力…生まれつきもつ力とは別の類稀なる能力を持つものがいるとされる。そしてネットや文献などを中心に広まる都市伝説なんかも有名なオカルト分野とされ_____
………
気づくと、彼女らはその場からいなくなっていた。
ラーシュ「…………。」
また怯えさせてしまった…。
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コンビニで適当に仕入れてきた食事を貪る。
暑い。身体がいまだに日本の夏に慣れていないのがわかる。
…慣れていない、のが。
ラーシュ「………」
慣れていないことがあまりにも多すぎる。
生徒ともどう関わればいいのかわからない。
授業だって不慣れだ。…怯えられるのが怖くて、注意もままならない。
ラーシュ「____教師になるべきではなかったのかもしれない、な。」
ぽつりといつの間にかそのような言葉がこぼれていた。
「あれ!?もしかして、あのでっかいラーシュ先生!?」
「こんなところで何してるんですかー?」
背後からの声に振り替える。そこには3年生の女子生徒___確か、名前は[太字]青山花火[/太字]だった気がする___がいた。
ラーシュ「…こちらの台詞だ、今は昼食の時間だろう」
花火「あ!ぼっち飯ってやつですか!デモスレ学園のタピオカ先生みたいな!」
デモスレ学園…?
ラーシュ「…?」
花火「えっ!?デモスレ知らないんですか!?!
国民的アニメになったと思うんだけど…本屋さんとかで見ません!??!」
ラーシュ「……いや…私はそういうものに疎いもので」
花火「あれぇーっ!?!?((」
ラーシュ「…いやそれより、お前は昼食はどうしたんだ」
花火「ああ、私はこれからおひとりで生徒会室で食べようと思って…」
花火「これでも私生徒会長ですから!!!(`・ω・´)」
ラーシュ「活動もないのに生徒会室に入るのはいくら生徒会の人間でもどうかと思うのだが…」
花火「大丈夫ですよ!!許可なら取ったも同然ですから!!」
ラーシュ「取っ…てないのではないかそれは?((」
花火「ううっ、それは言わないでください~~」
よくしゃべる子だな…それにしても、私を見ても全然驚かないんだな。
花火「じゃあお昼はここで食べます。それならいいでしょ?」
ラーシュ「…はあ?」
花火「だってここで食べてもいいんでしょ?先生が食べてるんだから。
…もし食べちゃだめなら先生も道連れですし。」
ラーシュ「…((」
なぜ人を道連れにするのか…。
ラーシュ「…ちゃんと教室に戻りなさい。」
花火「えーっ、なんでですかー?」
ラーシュ「生徒会長なのだろう。そのように身勝手にしていると信任もなくなるぞ」
花火「むぅ……」
納得がいかない様子で、彼女は教室のある方へと戻っていった。
…変わった生徒もいたものだ。
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それから数日が経った。
日が暮れてきていた。窓からオレンジ色の光が差し込んで、綺麗なコントラストを生んでいる。
少し席を外してしまっていたが、今日の部活動はきちんと終わったのだろうか。
ガラガラと扉を開ける。…目に入ってきたのは、一心不乱に絵を描く花火さんの姿だった。
ラーシュ「…花火さん?もう部活の時間は過ぎているはずだが」
花火「あ、ラーシュ先生!ごめんなさい、久しぶりの部活だったもので」
ラーシュ「久し…あぁ、生徒会のほうの仕事か」
花火「絵を描くのってほんっとーに楽しいですよね!私お絵かきが大好きで。
よくアニメの絵とか授業中に落書きして怒られちゃいます、てへ」
ラーシュ「……((」
花火「でもそうですね。もうそろそろ帰らないと。じゃあ先生、さよう____
花火「うわあ!?」
ガシャーンと音を立てて花火が転ぶ。持っていた筆箱から中身が散乱する。
花火「あああっ、ごめんなさい!!」
散らばった鉛筆、消しゴム、定規を拾い机の上に乗せる。
…すると。
ラーシュ「…これは?」
花火「あっ______」
缶バッジが一枚そこにあった。
花火「これは!!これはそのぉ…あのーーー……推しです。」
ラーシュ「…推し?」
花火「…校則違反ですよね。わかってます。けど…」
花火「みんなに私の好きなもの、わかってほしくて。」
花火「見てほしかった。」
ラーシュ「………」
その姿が、幼い自分に重なる。
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幼いラーシュ「みんな、見て!これ…」
「…うーん」
「ラーシュ君ってちょっと変だよね」
「ねー。」
「おばけ?かいぶつ?の絵とか…見せられてもよくわかんないよ。」
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花火「なんて…えへへ、自分語りしても許されたもんじゃないですよね…明日から家に置いてきます。
なくしたりしたらやっぱり嫌だし!」
このまま、花火さんを帰していいのだろうか。
ラーシュ「…待て」
私だったら___
幼い私が求めていた言葉は。
ラーシュ「…それなら、私にこれからは、花火さんの好きなことを教えてくれ」
花火「…え…」
ラーシュ「…勉学に必要のないものは、持ってきてはいけないから、現物を見せるのはよくないが…」
ラーシュ「……私に知識として教えてくれ。…私はそういうことをよく知らないから」
花火「…」
花火「…ラーシュ先生って面白い先生ですね。」
花火「…わかったです!じゃあ明日のお昼休みから覚悟しててくださいよ!!」
ラーシュ「…そうだな」
元気よく去っていく後ろ姿を見ていた。
私はあれでよかったのだろうか。
…いいや、そんなことはいま考えなくていい。
幼い自分を救う気持ちで、彼女に接すればいい。
私は初めて、だれかとの距離を適切に分かった気がした。